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第22回:広告業界のクリエイターのクリエイティブ力の秘密<6>

2011.03.31

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こんにちは、パーチ長尾です。

「経営はアートだ」という言葉があるように、一見クリエイティブと縁がなさそうに感じられる経営や管理、営業といった仕事でも、広告制作と同じようにクリエイティビティーが必要な仕事だと昔から言われてきました。そして、この大変革期にあっては、特にその力が要求されることになると実感しています。広告業界に限らず多くの業界で変革が求められていて、新しい時代への対応は技術や知識の取得だけでなく、仕組みそのものと、考え方を、180度転換することが必須ですね。

広告制作におけるクリエイティブと、経営に求められるクリエイティブは確かに似ているところがあって、そのひとつが《リサーチ》です。ビジュアルクリエイターは広告主やアートディレクターのイメージをビジュアルで具現化する仕事ですので、彼らのイメージを深く理解する必要がありますが、そのためには事前に彼らの目的や《好み》を知っておくのが得策です。

今回は、広告業界のクリエイターがクライアント(広告主やアートディレクターなどの依頼者)をより深く理解するために行っているリサーチ方法についてお話しします。

それと、今回はこれまでのまとめもかねているので、優れたクリエイターになるためのひとつのヒントを見つけるのに役立つと思います。

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図1 「広告業界のクリエイティブ力 分解図」
代表的な6つのクリエイティブ力をブログの中で紹介。今回は「Research」


クライアントの好みを探る

どんな仕事もクライアント(お客様)が気に入るものやサービスを提供することが《良い仕事》であり、継続することで《優秀な人材》と認められていきますが、広告業界も全く同じです。常にクライアントを意識した仕事をすることの重要性は変わりませんが、特徴的なのは、【クライアントが言葉で依頼してきたこと】を【ビジュアル(コピーも含みます)に変換して表現すること】だと思います。いわば《ビジュアルの翻訳家》のような仕事ですね。

クライアントは依頼時にある程度の「ビジュアルイメージ」を持っているので、それに沿った内容であることに加え、そのイメージの想像以上のインパクトやパワーを持ったビジュアルイメージを提案する必要があります。しかし、ビジュアルイメージというのはくせ者で、その人の文化背景、好みに加え、その企業がこれまで制作してきた広告と競合他社の広告に大きく影響されます。

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図2 「ビジュアルイメージを形成する要素」
クライアントは4つの要素の影響を受けている


そこで事前に「リサーチ」を行います。主にリサーチを行うタイミングは、
1: 打合せ前
2: 打合せ後に提案内容を考えるとき
の2回です。特に競合プレゼンテーション(クライアントが発注を決める際に複数の広告会社に企画プレゼンを依頼し選定すること)の時は念入りに行います。

リサーチ内容ですが、クライアントのホームページや過去の制作物を調べます。ビジュアルイメージについては、たとえば以下のような点を詳しく見ていきます。
・全体の雰囲気はどのような感じか?
・コンサバティブか、自由で現代的か?
・リアルな表現か、イメージ寄りな表現か?
など、イメージが大きく狂わないように大枠でとらえておきます。

それと、企業イメージ・ブランド・商品については、文章による情報とビジュアルイメージの両方をとらえておきます。

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図3 「リサーチ項目」全体の雰囲気を探るために、いくつかの項目をポイントにリサーチする。


阿吽の呼吸

広告制作では、取引先との関係が長く続くことが多く、長いものでは数十年というケースもあります。そうなるとクライアントとの関係は非常に深くなり、先のリサーチで得られるようなことはもちろん、もっと細かな好みや感覚的なことまで理解できるようになります。

以前、数名の発注者の方に「制作会社(制作者)には、何を一番求めますか? 重視されるのはどんなところですか? 」とお聞きしたところ、「こちらがやりたいことを理解してくれること」だと皆さんおっしゃっていました。望んだレベルの表現力があることはもちろんですが、という条件付きではあります。しかし、私も一人のクリエイターとして、「品質を一番気にしているんだろう」と思っていたので意外でした。また同時に合点もいきました。それは、一流と呼ばれているクリエイターに共通しているのは、《クライアントが望んでいることを察知する力が強く、提案が早い人》だったからです。

人は自分のイメージを言葉にするのがそれほどうまくないのかもしれません。クライアントも自分の頭の中にあるイメージを明確な言葉にすることが難しく、漠然とした言葉や感覚的な言葉、それに近いイメージについて説明してくれます。それに対して、阿吽の呼吸でクライアントのイメージを具現化できるのが優れたクリエイターの特徴です。

長く付き合っているとクライアントの話し方や、こちらの提案に対する反応で、何を望んでいるかわかってきますが、時代の流れによって変化もしてきます。クライアントの製品や感覚、広告宣伝の仕方は年々変化していきますし、消費者の感覚も急速に変化していきます。

クリエイターはイメージ作りのプロとして、そのクライアントの先を行く感覚を身につけ続けていく努力をしています。そしてここが非常に難しいところですが、広告業界における種となるターゲット(広告を見るであろう消費者)は子供からお年寄りまでと幅広く、最も多いのは、10代~20代の若者層で、クリエイターも仕事を始める20代の頃から30代まではこの層に向けた広告を作ることが多くなります。しかし、40代に入る頃にはターゲット層との年齢差が20才も開き、感覚的な理解が難しくなってきます。そのため多くのクリエイターはこの感覚の溝を埋めるために、流行、ファッションを見たり、体感するようにしています。


感覚・技術・コミュニケーション力

優れた広告クリエイターの特徴は、感覚に優れ、それを具現化する技術を持ち、クライアントのイメージを理解して伝えるコミュニケーション力を持っている点です。どれが欠けても長く良い仕事をするのは難しいようです。

この6回の連載では、この3つの力をどのように見つけて、活用していくのか、についてお話ししましたが、いかがでしたか?
最終回はクライアントの好みを探るリサーチについてお話ししましたが、おそらく皆さんの周りで行っていることと大差はなかったのではないでしょうか。また他の能力に関しても似たようなところがあったかと思います。

どの仕事でも、感覚に優れた人が先を行き、技術が高い人に仕事が集まり、お客様の好みを深く理解している人が勝つ、というのは変わらないからだと思います。

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図4 「優れたクリエイターが持つ力」
3つの力が欠けることなく、制作に活かされているのが優れたクリエイターの特徴。


自分の仕事と、広告業界の仕事の共通点を見つけて、うまく活用してみてください。
それではまた。



・本連載(第12回~第16回)でもお話ししていた「3DCGのためのカラーマネジメント」について、専門的な情報を発信することになりました。具体的な設定方法等も分かりやすく解説していきますので、ご期待ください。
CG WORLD.jp連載コラム「CG de カラマネ!」 http://cgworld.jp/regular/cg-cms/

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