トレンド&テクノロジー / 3DCG の夜明け 〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜
第5回:井野元 英二 氏(オレンジ代表/CGディレクター)
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井野元英二氏(オレンジ代表/CGディレクター)
日本におけるフル3DCGアニメーション制作の未来を探るため、各界の専門家に話を伺う本連載。今回は15年以上の長きにわたり、アニメのCG制作を手がけてきた有限会社オレンジ代表の井野元英二氏にご登場いただく。「これまでの仕事の大半は、CGに対する視聴者の拒絶感との戦いで占められていたような気がします」とふり返る井野元氏。しかし、ここ数年はCGに対する視聴者の反応に大きな変化を感じているという。その変化をどう受け止め、今後の制作に反映させていくのか……、井野元氏が見据えるCGアニメの未来をじっくりと語っていただいた。
【聞き手:野口光一(東映アニメーション)】
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新しい表現に挑戦するなら、今がチャンスだと思う
東映アニメーション/野口光一(以下、野口):この連載は「日本にフルCGアニメは根付くのか?」というテーマで、各界の専門家に話を伺うことからスタートしました。以前は「フルCGアニメは日本だとヒットしない」という話を聞くことが多かったのですが、今年あたりから「CGもいけそうだ」という流れに変わってきたと感じています。
井野元英二(以下、井野元):そうですね。フルCGのTVアニメシリーズも作られ、それらがヒットするようにもなっている。私自身がこの流れを最初に感じたのは『コードギアス 亡国のアキト 第1章 翼竜は舞い降りた』(2012)の公開直後でした。視聴者のCGに対する評価が逆転した感触がありましたね。それ以前は、作中にメカCGをちょっと加えただけで「なんでCGなんだ」という反発がありました。
野口:トゥーン・シェーディング(セル画調のCG)であっても、そういう反応だったのでしょうか?
井野元:はい。作画のメカを見たいという視聴者が多数派でしたね。キャラクターは作画で、CGなのはロボットだけだったとしても、CGというだけで拒絶感をもつ人が多かった。長年作画アニメを見慣れてきた視聴者に、CGという違う要素を受け入れてもらうことは容易ではありませんでした。私がアニメのCG制作をやり始めてから15年以上が経過しましたが、その大半はCGに対する視聴者の拒絶感との戦いで占められていたような気がします。最初の頃はアニメの中にCGを入れるだけで、さんざん叩かれたわけですよ(苦笑)。視聴者に感情移入してもらうため、作画に寄せた表現をするなどして試行錯誤を繰り返してきました。その一方で徐々に同業他社も増え、CGを使うアニメが増えるにつれて、CGに対する視聴者の反応の変化も感じてきました。最近では視聴者の許容範囲が相当広くなっているので、新しい表現に挑戦するなら今がチャンスだと思いますね。
野口:『プリキュア』シリーズ(2004〜)も、最初にCGを使ったときには同様の反発があったようですが、最近は「良いんじゃない」といわれるようになっている。作る側の試行錯誤が実った面もあるでしょうが、視聴者の感性の変化に後押しされている面もあるでしょうね。井野元さんがアニメのCG制作を始めたのは15年くらい前とのことですが、それ以前には家電量販店に勤めた経験もあるそうですね。その時代からの変遷を伺っても良いですか?
井野元:出身は大分県なのですが、愛知県の大学の経済学部に進学し、2〜3の商社から内定をいただきました。そのうちの1つが愛知県にあった家電量販店で、就職してはみたものの1ヶ月で辞めてしまったのです。
野口:早いですね(笑)。
井野元:「何か違う。これはいかん」と急に思ったのですよ。そうして会社を辞めた後で、高校時代にやっていた漫画の投稿を再開しました。大学時代の4年間はまったく絵を描いていなかったのですが、高校時代には小学館の新人賞で佳作に入ったことがあったのです。何本か応募した結果、集英社の漫画賞で「あと1歩で賞」というのに入り、担当が付いてくれることになりました。「どんどん作品を送ってください」と言われたのを機会に、東京に引っ越すことにしたのです。
野口:その時に描いていたのは少年漫画ですか?
井野元:そうです。プロの少年漫画家のアシスタントをしたり、他のアルバイトをしたりしつつ、描き続けていました。でも、なかなか実を結ばなくて、限界を感じるようになったのです。当時、『少年ジャンプ』や『少年サンデー』に投稿してくる人は月に200〜300人くらいいました。その中から賞に選ばれるのは約10人。さらに連載までこぎつけられるのは1〜2人でした。
野口:相当に狭き門ですね。
井野元:結局漫画の道は断念して、イラストレーターに転向しました。Power MacintoshやPhotoshopなどを買いそろえ、デジタルの絵を描き始めたのです。そうこうするうちに、2Dだけでなく3DCGも手がけるようになりました。その当時、ダバカンさんというイラストレーターが3DCGを使った作品を積極的に発表しておられて、私もやりたいと思ったのがきっかけでしたね。
野口:ソフトウェアは何を使っていましたか?
井野元:最初はElectricImageを使っていましたね。ただしアニメーションをやるにはパワー不足だったので、Alias PowerAnimatorに乗り換えました。その頃公開されたディズニー映画の『アラジン』(1992)で実際に使用されたという記事を読んで、買うしかないと思ったのです。ただしこのソフトを動かすとなるとハードウェアも一新する必要があったので、SGI社のIndyも購入しました。さらにモデリング用に、当時から既にサブディビジョンサーフェス機能が搭載されていたLightWaveのSGI版も買いました。
野口:それら全部、個人で購入したのですか?
井野元:はい。
野口:凄い投資ですね……。
井野元:何百万円という投資でした。それでもIndyではAlias PowerAnimatorを満足に動かすことができず、頻繁にフリーズするし、レスポンスも悪かったのです。キャラクターアニメーションをするにはギリギリのスペックでした。当時の仕事は、何といいますかメインストリームではないものが多く、なかにはエロ系のものもありましたね。その後はPS2用ゲームのムービー制作や、『ウルトラマンティガ』(1996〜1997)、『ウルトラマンダイナ』(1997〜1998)などの特撮TV番組のCGカット制作にも携わりました。TVアニメシリーズの仕事は『ゾイド -ZOIDS-』(1999〜2000)が最初で、その頃にはWindowsマシンとSoftimageを使うようになっていましたね。さらにその後3ds Maxに切り替えて、今にいたります。
野口:トゥーン・シェーディング以外の仕事もやっておられたのですね。その間ずっと、フリーランスだったのでしょうか?
井野元:そうです。『ゾイド -ZOIDS-』の場合は、株式会社ジャパンヴィステックという会社に発注された仕事をフリーランスとして受けていました。もともと漫画を描いていたことも影響してか、『ゾイド -ZOIDS-』の仕事はもの凄く自分に合ったのです。加えて、後にアニメの仕事に深く関わるようになってから気付いたのですが、アニメ業界は一流のプロでなければ演出や監督を担えないシステムが確立されていました。力のある人たちと一緒に仕事ができる環境が嬉しくて、『ゾイド -ZOIDS-』以降はアニメの仕事を集中的に受けるようになったのです。
野口:日本のアニメ産業は60年近い歴史があるので、人材の層には厚みがあるし、制作システムも確率されていますからね。
自分に合うものを考え続けたら、今の仕事に流れついた
野口:『ゾイド -ZOIDS-』のCGはトゥーン・シェーディングでしたが、動きに関しては作画に寄せた表現ではありませんでしたよね?
井野元:『ゾイド -ZOIDS-』に限らず、当時のCGは1秒30コマで作って当然という風潮があり、TVアニメの規格に合わせて24コマに落とすだけでも抵抗を示す人が多かったですね。でも私はヌルヌルした動きが嫌いで、勝手に12コマに落としていました。
野口:あの時代にですか? 挑戦的ですね。
井野元:『ゾイド -ZOIDS-』の場合4社くらいがローテーションで作っていましたが、そんなことをするのは私だけだったようで、怒られはしなかったものの、放映時には24コマに直されていました(笑)。作画のコマ数に合わせてCGのコマ数を落とすことは、今では当たり前に実践されていますが、当時はそれを許さない空気が確実にありましたね。
野口:確かに、そんな時代でした。でも2コマ打ち、3コマ打ち(2コマ打ちは2回、3コマ打ちは3回、同じ絵を連続して表示する)を併用する作画のキャラクターと、フルコマのCGを合わせると、やっぱり違和感がありましたよね。
井野元:ええ。でも私が実際にCGでのコマ打ち表現をやりだしたのは、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002〜2004)からですね。この作品ではタチコマというキャラクターのアニメーション全般をまかせてもらえたので、絶好のチャンスだと思って2コマ打ちとフルコマをベースとしました。ごくまれに、ロングショットの場合は3コマ打ちも使いましたね。タチコマの横にいる作画のキャラクターは3コマ打ちがベースだったので、タチコマだけが完全なフルコマでヌルヌル動いたら合わないだろうと思ったのです。
野口:今現在は何コマ打ちが多いですか?ロボットの場合、特にバトルシーンでの3コマ打ちはカクカクしすぎて辛いなあと、私自身は感じるのですが。
井野元:辛いですね。作画のロボットなら3コマ打ちでも違和感がないのに、CGだと不自然に見える。その原因を探ったことがあるのですが、作画の場合、たとえロボットだとしても実はグニャグニャとした動きをしているのです。だから3コマ打ちの動きでも、柔らかで自然な映像に見える。CGの場合、そのグニャグニャ感がないので、同じように3コマ打ちにしてしまうと、もの凄く固い動きになるのですよ。4コマ打ちの作画のような印象になります。だから当社でロボットを動かす場合には、今も3コマ打ちはあまり使いませんね。2コマ打ちとフルコマをベースにしています。
野口:一方で、人間のキャラクターでドラマをやりだすと、3コマ打ちがベースになりませんか? 私が現在プロデューサーをやっている映画『楽園追放』(2014年11月公開予定)の場合、アニメーション制作は株式会社グラフィニカが担当していまして、ロボットのバトルシーンとキャラクターのドラマではコマの打ち方を変えようという方針になっているのです。
井野元:おっしゃる通り、キャラクターは3コマ打ちの方が馴染みますね。当社でも、ここ数年はキャラクターを扱う頻度が増えていて、視聴者の感情移入のしやすさを考慮すると、作画を模した3コマ打ちの方が良いかなと思うことがあります。ただし一方で、完全に作画に寄せた表現ではなくて、もう少しコマ数を足した、CGならではの表現をやりたいという欲求もあるのです。その辺は今現在も考えている最中です。
野口:いったん話を昔に戻して……、オレンジを設立したのはいつ頃ですか?
井野元:『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002〜2004)の後ですね。その前に株式会社サテライト制作の『ジーンシャフト』(2001)のCGをほぼ1人で担当しまして、もの凄く大変だったのです。モデリングして、アニメーションを付けて、シーンを組んで、レンダリングして、BETACAMに収録して、納品して……という一連の作業を全部1人でやっていたので、明記はされませんでしたがCG監督のような役回りでした。
野口:自宅でお1人でされていたわけですか?
井野元:そうです。ただ、再びサテライトと一緒に『創聖のアクエリオン』(2005)を作るに当たって、これ以上1人で続けるのは無理だなと思い、会社組織にすることを決めました。自宅を使って数人で始めた会社でしたが、数回の引っ越しを経て、今では70人規模にまで成長しました。自分に合うものは何だろうと考え続けていたら、今の仕事に流れついたという感じですね。
野口:最近のオレンジでは、井野元さん以外の方がCGディレクターを担当する場合も増えていますよね。仕事を任せられるスタッフが育ってきたということでしょうか?
井野元:会社設立後の5〜6年間はスタッフ数を7〜8人に抑えて、私が全作品のディレクションを担当していました。それで納得する映像ができはしたものの、徐々に閉塞感が生じてきたのです。自分の望む映像だけれども、新しいテイストが何も入っておらず、意表を突くような驚きがなかった。一定のクオリティは確保できていたので納品先には喜ばれましたが、新しい血を混ぜないと、オレンジは緩やかに衰退していくという危機感がありました。だから思い切って人を増やし、古株メンバーの何人かをCGディレクターに昇格させたのです。
野口:計画的に育てていったのではなくて、「やるしかない」と思ってやらせてみたという感じでしょうか?
井野元:そんな感じです。「ここでやらないと先がない」という焦りがあって、玉砕覚悟でやらせてみたら、彼ら全員が、私の指示に従っていた時よりも良い映像を作るようになったのです(笑)。
野口:(笑)。
井野元:良い意味で完全に予想を裏切られて、初めて気が付きました。人間というのは「やりたいようにやれ」といわれると、150%くらいのエネルギーが出せるものなのですよ。それからは安心して任せるようになりましたね。
野口:でもクリエイターとしての井野元さんには「俺もまだ負けないぞ」という葛藤があるのでは?
井野元:私自身がディレクションを担当する作品もあるので、自分の創作意欲はそちらで発揮しています。それから一口にディレクターといっても、それぞれに個性があるのです。ロボットものが得意な人もいれば、乗り物系がうまい人もいる。作品の内容に合わせて、適材適所で仕事を割り振るようにしています。
CGと作画、両方を使った魅力的な絵作りを探りたい
野口:先ほど「CGならではの表現をやりたい」とおっしゃっていましたが、具体的には、どのようなアイデアをお持ちですか?
井野元:かつてはCGを作画に寄せる努力をしていたのですが、『コードギアス 亡国のアキト』以降、少しずつCG寄りの表現に戻すようにしているのです。先ほども申し上げたように、視聴者の許容範囲は確実に広くなっているので、その反応を見ながら段階的にCGならではの良さを付け足すようにしています。作画でやれないことをやらないと、CGの存在意義がないのでは……という思いが根強くあるのですよ。作画の場合はコマ数の制限があるので、その時々のポージングを魅力的に作ることに力を注いでいます。どこかしら歌舞伎の動きに近い様式美を感じますね。それに代わるCGならではの魅力は何だろうと、ずっと考えているのです。
野口:コマ数を増やして単純に滑らかに動かすだけでは、おそらくそれほど好意的に受け取ってもらえないでしょうね。
井野元:そうだと思います。ディズニーの短編映画で『Paperman』(2012)というのがありましたよね。フルコマのCGアニメーションがベースになっているのですが、若干作画寄りの表現にしており、違和感なく感情移入できました。その原因がどこにあるのか……、我々がディズニーの動きを見慣れているせいもあると思うのですが、キャラクターの仕草の1つ1つが非常に魅力的だったことも影響していると思うのです。セリフがなくても、仕草を見るだけで何を考えているのか想像できました。ああいう魅力的な仕草を表現できれば、強制的に3コマ打ちのCGを作らなくても、視聴者に受け入れてもらえるのではないかと思っているのです。
野口:CGアニメが日本でも受け入れられつつある今が、実践のチャンスだというわけですね?
井野元:ええ。そういう表現に挑戦させてくれる作品があれば良いなと思っています。
日本のアニメを世界市場で売ろうとする動きは今後も加速するでしょうが、今のままではマイナーな存在から脱却できないように思います。完全にディズニーを模倣すれば良いというわけではないにしても、もうちょっと、すり寄る必要があるのではないでしょうか。一方で、ディズニーの表現だって変化しているのですよ。『Paperman』も結構目が大きく描かれていますし、徐々にフラットな表現にもなっている。日本のアニメの影響を確実に受けていると思います。
野口:むこうが日本にちょっとずつすり寄ってきているのと同じように、日本もすり寄る必要があると。ちょうど良い中間の表現は、どこにあるのでしょうね?
井野元:自動車に例えると、ハイブリッドの時代なのだと思います。ガソリンと電気の両方を使って動かす。つまりは、作画のテイストを生かしつつCGの良さも加味した表現ですね。CGと作画、両方を使った魅力的な絵作りを探りたいと思っています。その一貫で、もっとモーションキャプチャも活用してやろうと、虎視眈々と機会を伺っています(笑)。これに関してはフリーランス時代から考えていて、スタジオを移転する際には、必ずモーションキャプチャ用のスペースを確保してきました。
野口:凄いですね。アニメのCGをやる人たちは、モーションキャプチャーを使わないという印象がありますが……。
井野元:我々の作るCGも大半は手付けなのですが、もっと併用できないかなと思っています。例えばハリウッド映画の『テッド』(2012)では、セス・マクファーレン監督自身がモーションキャプチャスーツ(MVN)を着て演技していましたよね。その結果、主人公の熊のぬいぐるみ(テッド)の動きは非常に魅力的なものに仕上がっていました。メイキング映像の監督の動きと完成映像の動きを比較してみたら、後者はよりメリハリの付いた動きになっていて、一段と良くなっていたのです。ぜひともこの表現を、数年以内にやってみたいと思っています。
野口:その場合、スーツは井野元さんが着用するのでしょうか?
井野元:最終的には自分でやらざるをえないかもなという気はしています。アニメの動きは独特なので、プロの役者であっても訓練が必要です。だから『テッド』の監督も、自分が理想とする動きを自分で実演するという結論にいたったのでしょう。『テッド』の場合、監督が練り上げた動きをアニメーターがさらに良いものに修正していたので、あの境地まで到達できたのだと思います。
野口:そういう独特の動きを新人アニメーターが修得するまでには、どの程度の時間がかかると感じておられますか?
井野元:私の場合、『攻殻機動隊』シリーズを担当していた3年半の間に、約1,000カットをこなしました。それで過去をふり返ってみて、ちょっと上手くなったかなと感じたのです。おそらくCGアニメーターとして1人前になるまでには、そのくらいの物量をこなす必要があると思います。物量をこなすことで、作業のスピードも速くなりますからね。
野口:若い人の場合、1,000カットをこなすまでに、もっと時間がかかりそうですね。
井野元:ええ。3年だとちょっと短くて、5年くらいやらないと独り立ちできないかなというのが今のところの実感です。ちなみに平均的な作画のアニメーターの場合、これ以上のペースでカットをこなしています。動画は別の人が担当しますし、レンダリングなどの作業がないことも要因だとは思うのですが、CGアニメーター以上のペースで仕事をする人が多い。だから成長が速いのかなと感じています。今の社内でCGディレクターを担っているのは、物量をこなし、鍛え抜いて最後まで残った人たちです。ただ、そうやって一人前になる前に疲弊して辞めてしまう人が一定数はいて、それが一番辛いですね。
野口:ペース配分が難しそうですね。一定量の仕事をこなさなければ上手くならないし、かといって無理を重ねて疲弊しすぎると続かない。
井野元:アニメの仕事を長く続けるためには、自己管理が凄く大事だと思います。早い人は1ヶ月で辞めてしまいますからね。
野口:井野元さんも1ヶ月で家電量販店を辞めていますしね(苦笑)。その人たちにはアニメの仕事が合わなかったのでしょう。
井野元:私自身は、アニメ以上に面白いCGの仕事はないと思ってやってきました。ゲームムービー、特撮、建築、CMなども片っ端からやりましたが、アニメ以上に楽しい仕事はないと確信しています。自分が作った映像が公開なり放送なりされて、視聴者の反応を受け取った瞬間、本当にやって良かったと思える。マラソンランナーがゴールした時のような感動を味わえるのです。それを若い人たちにも味わってもらいたいし、味わえるまでは辞めないでほしいなと思いながらやっています。
野口:井野元さんの挑戦と合わせて、井野元イズムの継承者の成長にも期待しています。今日は有難うございました。
Eiji Inomoto
1970年生まれ。大分県出身。フリーランスのイラストレーターを経て、3DCGアニメーション制作の道へ進む。ゲームや特撮などのCG映像を手がけた後、TVアニメシリーズ『ゾイド -ZOIDS-』(1999〜2000)のCG制作にたずさわる。それ以降、アニメCGを活動の主軸に定める。TVアニメシリーズ『ジーンシャフト』(2001)、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002〜2004)などでのCG制作を経て、2004年に有限会社オレンジを設立。2014年時点で、同社は約70人のスタッフを抱える組織へと成長しており、TVアニメ、OVA、劇場用アニメなど、幅広い作品のCGを手がけている。作画アニメとCGの自然な融合を得意としており、TVアニメシリーズ『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』(2013)、劇場用アニメシリーズ『コードギアス 亡国のアキト』(2012〜)、『攻殻機動隊 ARISE』(2013〜)などにおけるロボットの演出で高い評価を受けている。
Supported by Enhanced Endorphin
INTERVIEWER_野口光一(東映アニメーション)
EDIT_尾形美幸(EduCat)
PHOTO_弘田 充
LOCATION 有限会社オレンジ