プラチナゲームズ株式会社
VANQUISH(ヴァンキッシュ)
- MotionBuilder
- ゲーム
インゲームとカットシーンのアニメーション
続いて『VANQUISH』のアニメーションについて津田氏と山口氏にお聞きした。今作では全体を通して、いかにアニメーションで戦場感を表現するかが重要視された。しかし、こういった過酷な戦場にあっても主人公サムだけはスポーティーなカッコよさをアニメーションで追求している。このギャップこそが重要な要素であるという
まず、カットシーン制作について津田氏にお伺いした。全てのキャラクタアニメーション作業とカット構成の編集はSoftimageで行われているという。また、モーキャプデータ収録後にはカットシーン用のプレビズ制作もSoftimageで行ったという。強力なAnimation Mixer機能で、カット単位のアニメーションがクリップとして入れ替えられることや、スローモーション表現ではMixerのワープ機能が緩急の調整で力を発揮したそうだ。
カットシーン制作で利用したキャラクタリグは、『BAYONETTA』プロジェクトで利用したリグがベースになっている。手首を引っ張ると少し肩が追従するMotionBuilderのFBIKのような挙動もSoftimage上で仕込まれているそうだ。
フェイシャルアニメーションは、ビュー上に顔の形状で配置したコントロールオブジェクトを利用して行われた。全体を通じてゲームのスピード感を殺さないように余分な間を大胆にカットしながらもプレイヤを盛り上げるようなテンポが良い演出を心がけたという。
インゲームの人型キャラクタのモーションには、MotionBuilderが用いられている。人型リグ構造のフォーマットが決まっているために、モーションデータの再利用が行い易いためMotionBuilderを利用していると山口氏は解説してくださった。ゲーム中にスローモーションを発動させる「ARモード」では、プログラム処理で通常スピードのモーションをスロー状態にスケール再生している。このため、スローになる状態を初めから意識して通常のモーション付けを行う必要があったという。MotionBuilderではそのリアルタイムの高速なプレイバックパフォーマンスが魅力である。しかし、今回はフレームとフレームの間のモーションまでも再生出来るMotionBuilderならではの能力が正確なスローモーションの確認に最も役立ったという。
美しい放物線を描きながら飛び交う大量の敵ミサイルやビームのアニメーションは、プログラマが論理的に作り上げた動きのパターンを実機上で確認しながら採用したという。画面密度が高いなかで大量のエフェクトを生かすためにフィルターを利用して発光の度合いを下げる視認性の調整も細かく行われている。なお、ゲームエンジン上のフィルターには、コントラスト、トーンカーブ、輝度、被写界深度、フォグが存在するという。
インゲームのキャラクタでも関節が特殊なロボットに関しては、Softimageでアニメーションが行われている。ロボットのモーションも、右足が破損した場合と左足が破損した場合とで足をひきずるなどのパターンが細分化されている。このようなこだわりからプレイヤは無機質なロボットからも痛みを感じ取れる感覚さえ覚えるかもしれない。また、敵キャラクタのモーションには攻撃の予兆が意識的に加味されている。プレイヤが視認して攻撃を上手く避けてもらえるように導く工夫がされているのだ。これによりTPSゲームにアクション的な要素を盛り込んでいる。
なお、ロボットの腕がもげて外れた後のモーションは、Havokによる物理シミュレーションで処理されている。腕のパーツ以外にも破損時に飛び散る細かい破片のモーションは、ゲームエンジン側でプログラム制御されている。Havokについては敵キャラクタがやられる際のラグドール表現にも用いられているそうだ。
尻尾を持つ特殊なキャラクタに関しては、SoftimageのScriptedオペレータを利用して高度なリグ制御を実現したという。既存機能のコンストレイントやエクスプレッションの組み合わせよりも深いところにアクセスが可能なScriptedオペレータは様々な箇所で効果的に利用されている。
山口氏いわく、それでも従来のチェインベースのリグセットアップでは階層構造に縛られてしまう制約があるという。その点、階層構造に依存せずに自分自身でリグのロジックを組み上げられるICE Kinematicsに寄せる期待はかなり大きいという。柔軟な制御を実現しながらパフォーマンスも向上出来るようなICEリグをパイプラインで活用出来るよう積極的な検証を進めていると山口氏は今後の抱負について力強く語ってくださった。
最後に
ハイスピードな展開で自ら活路を切り開いていく新感覚シューティング・アクションの『VANQUISH』は、かつて無い解放感と爽快感を与えてくれるプラチナゲームズ会心のタイトルに仕上がっている。SoftimageとMotionBuilderを利用して生み出された圧倒的なグラフィックとスピード感をぜひ実際に体験して欲しい。
プラチナゲームズ株式会社
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久禮 義臣 氏 (背景モデル制作、技術面のサポートを担当)
山口 孝明 氏 (モーション制作、Havokとの連携を担当)
津田 国彦 氏 (カットシーン全般の統括、ライティングを担当)
今村 雅巳 氏 (キャラクタ及び小物までのモデリングを担当)
導入製品/ソリューション | ・Autodesk Softimage | ・Autodesk MotionBuilder |
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。