『GRANBLUE FANTASY: Relink』3Dアクションゲームでの「原作再現」に貢献したMayaとMotionBuilder のインテグレーション
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MayaとMotionBuilderのインテグレーション
ここまで主にMayaの活用の仕方を中心に伺ってきたが、リギングにおいてはMayaとMotionBuilder(以下、MB)との連携が重要な役割を果たしている。本作では人型キャラクターのフェイシャルを除き、全てMBで制作。最初にMayaでスケルトン作成とスキニング、補助骨の追加、Character Definitionの設定を用意し、それをFBXフォーマットでMBへインポートする。そしてpythonで開発したMB上で動くツールを用いて、Characterizeやコントローラーの作成、データ整理などを行い、セットアップ作業のほとんどを自動化するワークフローを構築したという。
このとき、ExpressionやDrivenKeyといった双方間で連携できない要素は、MB側のRelationコンストレイントを使って再現していった。とはいえ、MayaとMB間ではFBXを通じて共通して運用できる要素は多く、Mayaで用意したデータを基にMBでリグを構築するというインテグレーションがあったことで、少人数のリグパートでもアーティストがクオリティを上げることに専念することができたという。
「なぜMayaではなくMBを使うのか?」この質問にリードキャラクターアニメーターの安井氏は「特にインゲームのバトルアクションのモーションを制作しているときなど、チェックプレイしながらデータ修正を行ったり、追加要望に迅速な対応が求められたりすることもあります。MBはキーフレームのプロットが速く、付属品の多いキャラクターや多数のキャラクターをロードしても軽快にストレスのない動作をしてくれますので、速いイテレーションが求められることが多い制作環境にとてもあっていると思います」と、使い勝手の良さを挙げた。芝氏も「カットシーン制作において、大勢のキャラクターを登場させてもフレーム落ちせず、リアルタイムで動かすことができます」と話す。
巨大なボスキャラのヴォルカンボーラとの戦闘では、展開に従って背景が崩落していくドラマティックな演出が施されているが、安井氏によると、これをMBで制作していた時も、全ての道のアセットを1つのシーン内にデータをロードしてヴォルカンボーラを這わせても問題なく動作するほど軽快だったという。「これほどの大規模なシーンで大量のアセットを同時に読み込んでもスムーズに動作してくることもMBの強みだと思います」(安井氏)。
モーション作成中にめり込みが発生した場合は、リグパートと連携して対応にあたった。シミュレーションに対して手付けした揺れをブレンドしたり、補助骨を足したりしたという。結果、Mayaで追加した補助骨は全部で7種類あり、関節以外にも鎧などの装飾がめり込まないようにするために用いられた。「補助骨でめり込みを避けたにも関わらず、めり込みが発生した場合は、モーションパートでめり込み調整を行えるよう、補助骨の下の階層にジョイントを入れてスキンバインドする2段階の仕組みにして渡していました」(神田氏)。
攻撃モーションはモーション担当がディレクターとプランナー、エンジニアと相談をしながら動作やポージングを決めていった。このとき、アクションゲームとしての気持ちよさはもちろん、ユーザーの中にある「そのキャラクターらしさ」をしっかり掴んで作ることが重要になってくる。「アクションの手触りのよさとキャラクターらしさそれぞれのポイントについては共有が十分図られており、プロジェクト全員で共通認識を持って制作できました」(安井氏)。
まさに原作でイメージしていたようなアクションの爽快感を味わわせてくれる本作。その印象的な演出の一つが、攻撃のコンボをフィニッシュさせたときに表れる武器のスミア変形。軌道にしたがって武器の残像が見えるこの表現、これはエフェクトではなく、モデル上で武器を変形させている。残像が綺麗に見えるようにメッシュを分割し、さらにMB内の拘束条件などの機能を用いて、残像が追従するフレーム数のタイミングやダイナミックな演出が調整できるリグを組み、格好良くモーションのフォロー軌跡が見えるようブラッシュアップさせていった。「綺麗にアクションしているので、どこでフレームを止めても破綻のない画になっています」(神田氏)。
各キャラクターはゲージを貯めると強力な「奥義」を繰り出すことができる。このときキャラクターが繰り出す固有アクションはモーションキャプチャーを元にしており、それをアニメーターがMBでブラッシュアップして制作している。
奥義以外のアクションについても基本的にはモーションキャプチャーを元に制作されているが、アクションRPGゆえにキャプチャー不可能な動きももちろん存在する。例えば、空中回転斬りのような空中の動きはモーキャプ撮影では最初の飛び上がる動きと、着地して切るフィニッシュのモーションだけを撮影し、メインの空中回転斬りの動きはアニメーターが付けている。
ここまで制作上でMBを活用した個別の事例を伺ってきたが、制作全体を振り返ると、ワークフロー上のインテグレーションにも大いに力を発揮していたことを教えてくれた。特に、Mayaと連携をする上でMBがFBXフォーマットをネイティブでサポートしていることは大きい。神田氏は「リグパートでは、アニメーターにヒアリングを行い、モーションパートとカットパートそれぞれの意見を取り入れながら開発を進めていきました。その際に、MBは共通認識のプラットフォームとなり、各々と同じ認識を共有しながら作業を進めることができました。アニメーション制作に集中できる環境として、本作の開発にマッチしたソフトウェアでした」と語る。
最後に、今回使用したツールの使いやすさをそれぞれ聞いてみたところ、芝氏は10年ぶりにMayaに触れたそうだが、安定性が大きく向上したことやアニメーションレイヤーの使用感覚がスムーズになったことなどの改良点を挙げ、UIの使いやすさに好感を示したほか、「.maデータがASCII形式の為、テキスト編集ツールで直接編集することができるので、テクニカルな部分での時短ができました」という使い勝手も教えてくれた。
MayaとMBの両方を使用した神田氏は、Mayaについてプラットフォームとしての成熟による情報の多さや開発のしやすさを挙げ、MBについてはパフォーマンスの良さを挙げた。「MBにはアニメーション制作に必要な機能が揃っており、再生パフォーマンスが大変優れていると思います。あとはMayaのようにリファレンス機能も搭載していただけると助かります。また、Pythonで履歴が残せるようになることを期待しています。さらに小回りのきく開発がしやすくなってくれると嬉しいですね。本作では、人型以外のキャラクターのリグ制作も行っており、尻尾や鞭など伸縮に対応した独自のIKスプラインリグの作成や、テクニカルアーティストに協力してもらってMaya、MB、ゲーム内と3つの環境で同じ振る舞いをする補助骨のプラグインを作成するなど、本作の開発でリグの機能も充実しました」と話した。
安井氏はMBの長所として、「HumanIKで、フルボディIK、リグのFK/IKの切り替えが簡単にできたり、複数のテイクを持てたりするため、前後の繋がりのあるコンボアクションなどが、一つのシーンデータにまとめることが可能なので、開始・ループ・終了の構成も作りやすいです」と話す。また、Story機能についても「キャラクターのモーションデータをそのまま別のキャラクターに読み込むことができるのが便利ですね。例えばバトル仕様を試行錯誤しているときに、既に作ったキャラクターの攻撃を仮当てして試すことも簡単に行えます。また、キャプチャーデータからそのまますぐ編集作業に入れるのが便利です。短いアクションであれば、早くて15分ほどでキャプチャーから仮データを作ることができます。」と列挙してくれた。
本作はCygamesが渾身の思いをこめたAAAコンソールゲーム作品であり、世界中から高い評価を受けた。本作の制作を通じて培ったオートデスクソリューションの技術やアセット、挑戦したいアイディアも多々あることだろう。次はどんな景色を見せてくれるのか、早くも同社の次の作品へ期待する声は大きい。
TEXT:日詰明嘉
EDIT:Cygames、オートデスク
GRANBLUE FANTASY: Relink
ジャンル:アクションRPG
プレイ人数:1~4人(オンラインの場合)
プラットフォーム:PlayStation®5/PlayStation®4/Steam®
CERO:B (12歳以上対象)
© Cygames, Inc.
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。