「CAPCOM GAMES COMPETITION」 オートデスク賞受賞『Turret Valet』 開発者学生チーム&『モンハン:サンブレイク』ディレクター対談「学生時代の大きなアドバンテージ」とは?
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株式会社カプコン(以下、カプコン)が主催する、ゲーム制作コンペティション「CAPCOM GAMES COMPETITION」において、アミューズメントメディア総合学院に所属する9人の学生チーム「Neighbor」が制作した対戦アクションゲーム『Turret Valet』が、優秀賞とAutodesk賞のW受賞に輝いた。それを記念してこの度、開発者の学生チーム・Neighborから3人に集まってもらい、審査員を務めたカプコンの鈴木佳剛氏(代表作:『モンスターハンターライズ:サンブレイク』ディレクター)との対談を行なった。MayaなどAutodeskのDCCツールを使った制作模様や、開発に際してカプコンの独自エンジン「RE ENGINE」を使用した際の苦労話、プロの開発者である鈴木氏の目から見た秀逸な出来栄えのポイントなど、学びの多い話題が飛び交った必読の内容だ。
「協調」をテーマに2人で1つのコントローラーを使用する協力型対戦ゲーム
古屋涼(Autodeskカスタマーテクニカルサクセス所属):まずはお一人ずつ自己紹介をお願いいたします。
清水美波(モーションデザイナー):アミューズメントメディア総合学院でCG学科2年の清水と申します。『Turret Valet』ではカットシーンを担当しました。
南井りん(リーダー):同じくアミューズメントメディア総合学院でゲームクリエイター学科2年の南井といいます。ディレクターとUIデザインを担当しました。
鷺谷吉哉(モーションデザイナー):アミューズメントメディア総合学院CG学科の2年の鷺谷と申します。今回はインゲームモーションを担当しました。
鈴木佳剛:カプコンの鈴木と申します。『モンスターハンター4』(2013年)からシリーズに関わっており、『モンスターハンターライズ:サンブレイク』ではディレクターを務めています
古屋:よろしくお願いします。Neighborの皆さんに伺いたいと思います。まず、この作品を一言で表すと、 どんな作品でしょうか?
南井:一言で表すならば「協調」だと思います。このゲームは2対2の協力型の対戦ゲームで、操作の際には2人で1つのコントローラーを持つことになるため、そこでの協調性が大事になります。また、ゲームの中身自体の話ではないのですが、チーム「Neighbor」が9人という少ない中、メンバーみんなで協調してゲームを完成させたので、「協調」はこの作品を表すピッタリの言葉だと思います。
古屋:作品の企画段階で最初に決めていた軸や大事にしたテーマは何ですか?
南井:「協調性を争う新しい対戦体験」を軸に制作を進めました。操作が上手い人だけが勝つゲームではなく、 2人の連携が上手くいくほどに勝てるようになっていくゲームを目指して作りました。
鈴木:より協調性の高いチームほど勝利に近づくように設計された、優れたゲームデザインだと思います。本作では4人マルチプレイ、かつ2人で1つのコントローラーを使うことを推奨するという、ユニークなプレイ形式になっていますが、これはどのような意図で決められたのでしょうか?
南井:4人にしたのは私自身が1対1の対戦ゲームが苦手だったからなんです(笑)。1人でプレイすると、自分の技術の下手さによって勝敗が決まってしまうので、2人で一緒の協力プレイにしようと考えました。コントローラーを分けたのは、学校のPCのUSBポートが3個しかなかったことがきっかけでした。プログラマーにそれを相談した際に、「だったら、2人で1つを使うおすそわけプレイにした方が面白いんじゃない?」という話になりこの形になりました。
鈴木:なるほど、このプレイ形式はハード面の制約からだったのですね(笑)。役割の異なるキャラクターをひとつのコントローラーに配置するにあたって悩むことはありましたか?
南井:魔法少女が中心に向かって弾を投げたりビームを撃ったりする際に、照準を合わせるボタンを導入するかどうかについては、かなり悩みましたね。移動+球を撃つという2つの操作に加え、3つ目のボタン操作をすることになります。テストで照準ボタンを入れてみたところ、パートナーに迷惑になるくらい操作がガタガタしてしまいました。そのためボタンは少なくしたほうが良いという判断をして2つだけに絞りました。
鈴木:ひとつのコントローラーを二人で触ることを前提としたボタン配置と機能の絞り込みは苦労のあとが窺えました。いま例に挙げて頂いた照準を合わせる場面の仕様についても、何らかのアシスト機能を入れるべきなのか、それとも追加の機能は設けずに入力値の調整のみで仕上げるべきなのか、実際にゲームに触ってもらった何人かの社内スタッフの中でも意見が分かれました。私個人としては、やはり少ないボタン操作でプレイできることを理想として、複雑な機能抜きでどこまでユーザーに分かり易く作れるかを試すと思います。
古屋:このゲーム全体を通して企画やテーマなど、鈴木さんはどんなところが印象に残りましたか?
鈴木:1人目のプレイヤーがエネルギーを溜め、2人目に受け渡す。このエネルギーで相手を拘束したところで、1人目がダメージを与える...と2人の間で役割を上手くバトンタッチしながら勝利を目指すメカニズムがよくできており、印象に残りました。
鈴木:今回は限られた時間の中で制作していただきましたが、もっといろいろな仕掛けができそうな伸びしろを感じます。ベースコンセプトがしっかりしているからこそ、遊ぶ側も「もっとこんな事がしたい、あんな事がしたい」という欲が生まれますし、ユーザーに何を体験させたいかを、作品内で体現できていた点は審査時の評価にも繋がっています。
古屋:次に実作業・技術面について、制作全体を振り返って大変だったのはどんな部分でしたか?
南井:まずはディレクターとして全体を総括して申し上げると、一番大変だったのはやはり「RE ENGINE」の習得だったと思います。初めて使用するエンジンで、しかもプロ向けのものなので難しく、チュートリアルを習得するだけでも1ヶ月はかかりました。制作期間が全部で5ヶ月で、平日は学校の授業もあったので、制作に充てられる時間は平日で3時間ほど、休日も10時間ほどでした。時間的制約があるなかで、いかに完成させれるかのスケジューリングが最も大変だったと思います。
鷺谷:デザイナー側では、作ったモーションデータを「RE ENGINE」上で動かそうとしても反映されていないことがありました。トライアンドエラーを繰り返し検証して、実際に動いた際にはそのワークフローを共有し、皆が迷わないよう効率的に進められるようにしました。
清水:私も「RE ENGINE」の扱いには最後まで慣れず、苦労しました。カットシーン制作においても、時間が足りなくて最終的にMayaの中でレンダリングすることになったりと、なかなか難しかったですね。
南井:カットシーンそのものを編集して作る機能は「RE ENGINE」にもあったのですが、マニュアルを読んだりしていろいろ試行錯誤をしても実装が難しく、いっそカットシーンをなくすという案さえも浮上しました。ただ、私としてはゲーム画面だけではキャラクターが大きく見えず、魅力が伝わりきらないと思っていたので、カットシーンは是が非でも入れたかったんです。そこでMayaの中でレンダリングをして、動画として挿入するという形にしました。動画はゲームとライティングが異なるのでどうしても違和感が生じてしまいます。清水さんには何度も調整してもらい、ゲーム画面とそっくりな動画を用意していただくことができました。
古屋:その判断は大正解だったと思います。自分が審査員としてNeighborさんを推した理由はあのカットシーンがあったからでした。キャラクターが生き生きとしてとても良いカットシーンでした。
南井:他にもあって。実は当初、キャラクターは3 vs 3の予定で、しかもそれぞれに性能差を付けようとしていたんです。でも、「RE ENGINE」の習得や実装が遅れて時間が足りなくなってしまったため、これらの要素を入れるかどうかかなり悩みました。ただ、私たちはこのゲームにおいて、キャラクターの役割の受け渡しというループ自体がすでに面白くなると確信していたので、追加要素はあえて切り離しました。
鈴木:物量のカットの仕方としては大成功だったと思います。 特に今回は限られた時間内で作っていただいているので、自分たちが一番見せたいものを見定めて、収まりきらないものに対してジャッジするというのがディレクターの役割です。逆に期間からはみ出たり、調整やバグ取りが間に合わなくなっては元も子もないですから、良い意味でのオミットできたと思います。
統一感のあるポップで可愛らしいグラフィック表現
鈴木:今作はビジュアルがとても可愛らしく作られていますね。純粋な3Dモデリングに加えて、セルルック表現も特徴といえますが、この表現を入れるにあたってチーム内ではどういった経緯で決まったのでしょうか?
南井:セルルックの見た目は完全に私の趣味でした(笑)。こういうカジュアルな対戦ゲームにおいて硬派な見た目は合わないので、可愛くて皆がこのキャラクターを操作してみたいと思ってもらえるような見た目にしていきました。世界観設定とキャラクター原案は私が考えて、それを清水さんに描き起こして頂いた形です。
古屋:ゲーム性からキャラクターや世界観を考えたというわけですね。
鈴木:なるほど。そこからは背景やエフェクト、UIなど様々なデザインについてデザイナーと連携しながら進めていったということでしょうか?
南井:デザイン周りはディレクターである私が統括して、デザイナーに対してラフを描いて発注しました。デザイナー側からも結構提案があって、すり合わせをしながら作り進めていった形です。
鷺谷:僕はモーションの方だったんですけど、こちらも同じくキャラクターや世界観設定を聞いた上で発注を受けて、自分からも提案したりしていきました。
古屋:グラフィックの方向性については、どの段階で固めていきましたか?
南井:最初に私がラフを描いて、それを清水さんに描いていただきました。召喚獣のモデルは当初、苦戦しました。腕が大きくなって相手にラリアットをして拘束するというキャラクターなのですが、それをどういったデザインに落とし込むか。カワイイ見た目は大事なんですけど、このアクションが不気味なのは間違いないので、それをデザインにも反映したくて。そこで、この子たちは無言で目もつぶらず、ちょっと怖い見た目の腕にして、不気味な動きにして違和感がないようにしてもらいました。
鷺谷:ある程度、南井さんの方で、世界観は出来上がっていたので、僕らモーションの方ではできるだけこの世界観にノイズにならないように、あくまでユーザーがこの世界観に集中できるように作ることを意識しました。
鈴木:そのなかでも鷺谷さんの個性が現れた箇所というと、どこになりますか?
鷺谷:南井さんから箒に乗っている女の子のリファレンスをいただいたのですが、あまり服の動きや髪の揺れがなかったので、せっかくであれば浮遊感を出したくて、僕の方で動きを入れてみました。
鈴木:引きのカメラではあっても、そうしたキャラクターの細かな動きはプレイ中も視覚情報としてしっかり入ってくるので、揺れ物も含めて細かなところまで作り込んでいただくことで、より生きているキャラクターを動かしている感覚が味わえます。ゲーム性だけではない大事なこだわりの部分だと思います。
古屋:神は細部に宿るといいますからね。そのあたりも行き届いていると思います。
鈴木:そして何よりカットシーンのアニメーションが可愛い。カメラワークも素晴らしいです。プレイ中の画面だけではなく、その前後に味付けとしてカットシーンが入ってることで、表情も含めたキャラクター性を全面に押し出すことができていますね。
古屋:グラフィック表現や演出面について、特にこだわったポイントを教えてください。
鷺谷:モーションとしては全体的になるべく自然に見えることを意識しています。 体の動きはもちろん、服や髪の揺れなど、セカンダリーモーションも手づけで調整しています。ゲーム中に繰り返し目に入る部分だからこそ、違和感のない動きを大切にしました。
清水:カメラワークでいうと、顔のアップを多用して キャラクターの印象を強めたり、指先の動きまでこだわって作ることを認識していました。演出に関しては、各カットでカメラを2つ使うことで 画面全体の動きを大きくできたかなと思います。背景に関しても 画面映えをするように、カットによってキャラクターの立ち位置を調整したり、キャラクターの存在感がより際立つように背景を動画編集ソフトでモーションの加工などをしたりしました。
南井:ビジュアルに統一感はかなり意識しました。このゲームを作る人は私一人ではないので、それぞれ個人の解釈が入っていきます。例えば、箒の発注を出したときに背景モデルの方が良かれと思って、箒にキャラクターの頭をつけてきたのですが、それだと存在感が大きすぎるので戻していただいて、でも可愛かったのでフィールドの余白を彩ってもらうように配置転換を行いました。統一感を図りつつ、すべてが私だけの世界観にならないように皆のアイディアを入れていくことを意識しました。
「RE ENGINE」でセルルック表現を実現するための工夫とは?
古屋:ビジュアル表現においてクオリティを上げるために調整を重ねた部分を、皆さんそれぞれ教えてください。
南井:ライティング回りにはかなり苦戦しました。「RE ENGINE」はリアル調を得意としているので、 自然な光をデフォルトのまま入れるとセルルックのキャラに影がついてしまって不気味になってしまうんです。ただそこで光を強く設定すると逆に白飛びしてしまいました。そこで、フィールドに5〜6個のライトを設置し、あらゆる方向から映すようにしました。さらにオブジェクトに関してはライティングだけでは足りないので、自己発光の処理を入れるという方法を採りました。
鷺谷:僕は勝利シーンのモーションも作っていたのですが、そこでのフェイシャルモーションをディレクターと相談しながら、何度も試行錯誤を繰り返しました。何パターンも試して、そのキャラクター性が伝わるような表現を探りながら目指していきました。
清水:私の方では、南井さんから背景をボカす加工した方がいいんじゃないかと提案されて、それによってクオリティが向上しました。
古屋:鈴木さんはグラフィックやビジュアル表現について、審査の際の第一印象と、今の皆さんのお話を聞いてどのように思われたかお聞かせ下さい。
鈴木:ゲーム全体を通してビジュアルの統一感が得られている点が印象的でした。初めて触るエンジンで、短期間にセルルック表現でここまでまとめ上げるのは決して簡単なことではありません。適切なディレクションとデザイナーの力量が求められます。限られた期間の中で意図に沿ったものをきちんと仕上げている。これはとても素晴らしいところだと思います。短期間ではどこかしら追従しきれない要素があったりするのですが、その辺りも綺麗にまとめられています。個人的にはライトの仕上げ方もとても丁寧にされていて好感が持てました。
古屋:プレイしていても始めから終わりまで実に統一感がありましたね。
鈴木:そうですね。 デモの部分もリアルタイムデモではなく、今回はMayaでレンダーデモを作られたそうですが、前後のつながりの部分も違和感なくプレイアブルの部分と繋がっていたのも素晴らしかったですね。
古屋:カットイン制作についてはどのように進めて行きましたか?
清水:まずは発注内容から演技プランを立てた後で、Mayaでレイアウト、プライマリー・セカンダリーと徐々に細かく作業を進めていき、 最終的にArnoldでレンダリングをしました。
古屋:カットシーン制作で一番大変だった点と、その解決策を教えてください。
清水:一番大変だったのは、短い秒数に収めることでした。それぞれ5秒前後のシーンになるように制作しています。最初に演技プランをしっかり立てた上で、 不必要な動きがないようにすることと、動きの関係を意識することで解決できたかなと思います。
古屋:今回のカットシーンを作るにあたって参考にされた何か作品はありましたか?
南井:『鳴潮』のキャラを引いたときに出てくるカットシーンや、『ウマ娘 プリティーダービー』の勝利シーンなどをいくつか清水さんに送って、それらを参考にしてもらいました。
清水:南井さんの発注が分かりやすかったので、最初のイメージ通りのものにできたと思います。
鈴木:魔法少女と召喚獣の性格やキャラクター性といったものも最初の発注の段階である程度入れていたんですか?
南井: ピンクのフルーラは天才型の性格で、あまり努力しないでできてしまうような子なので、「勝つのは当たり前」と勝利したときにも派手には喜ばない態度なんです。勝った時はすぐに去ろうして、それを召喚獣のアーリちゃんが「いや、まだ終わってないよ。決めポーズして」と、トントン叩くとフルーラは控えめに手を振ります。そんなふうに、キャラクター性からモーションを考えてそれを皆と共有しながら制作していました。
鈴木:キャラクター設定がデモからもしっかりと伝わってきたので、見ていて楽しかったです。欲を言えば、それぞれのキャラクターの性格に見合った特性がゲーム性にも反映されると、より楽しそうですね。これもキャラクター性が豊かだからこその欲求だと思います。
その意味で最初の発注からキャラクター設定を含めてしっかりされていたと思います。最初のコンセプトからしっかりしているし、その後のスタッフ間の横軸の連携も取れているから、完成したものに一体感があるんですよね。それはプレイしていて感じられます。制作の最中に方向性が定まらずに苦労されたことはありませんでしたか?
南井:キャラクターの方は既に3面図があったので、その通りを作っていただいて問題はなかったのですが、難しかったのは背景ですね。学校がフィールドなのですが、全景が映らないなかで、いかに学校だと分かっていただけるか。ディティールの詰め方については何度もテイクを重ねてこの形に落とし込みました。
鈴木:確かに、定点のカメラだけでは限界がありますね。たとえば冒頭は引きの画にして「Ready」のタイミングからPANダウンしてからスタートさせるような手法もありますし、今回はスタート前にキャラクターを見せるカットシーンがあるので、そこで背景も含めて見せる作りをするなど、やり方はいくつかありそうです。ですが今回は少ない時間のなかで最大限努力しているさまが伝わってきます。
古屋:ディレクションをしていく上で、チーム内でのコミュニケーションについて意識していたことは何でしょうか?
南井:私は対面でのコミュニケーションはかなり大事にしていました。発注や修正の依頼の際、テキストメッセージで送るとたしかに早いことは早いのですが、 伝わりやすさや意見交換の発生という面に関しては不利な部分があります。たとえばモーションについての指示を出す場合、私たちの学校にはモーションの機材はありませんので、そういうときは学校で清水さんに直接会って話して、モーションを再現します。そうすることで動画で見るよりも細かい動きや自分の意図が伝わりやすくなります。
古屋:5ヶ月の開発期間の間にコミュニケーションの仕方を変えることはありましたか?
南井:連絡頻度に関してはかなり変わったかなと思います。最初の方はデザイナーの方が「RE ENGINE」のチュートリアルをしていたので、その時はプログラマーとよく対面で話していました。後半になってくるとデザイナーの皆さんから素材ががってきますので、私自身が学校に行って皆さんに対面で話を聞く機会が増えたと思います。
鷺谷:僕は常に前向きなコミュニケーションを意識していました。自分に余裕がない時もあったんですけど、ディレクターからの依頼に対しては受け身になるのではなく、自分なりに複数の案を用意して提案するなどを心がけました。リテイクの際も修正意図を正確に理解して必要な調整をした上で、期限内に提出することを徹底して行っていました。
鈴木:素晴らしい。私も気をつけないと(笑)
(一同笑)
鈴木:受け身にならないというのは本当に大事です。これはプロであっても同様です、すべて受け身で待っていたら、言われた通りのことをして終わりです。そこで自分なりに一生懸命考えてアイデアを捻りだせてこそ、よりクオリティの高い作品が出来上がると考えていますし、私はそういった姿勢をとても大事にしています。
鈴木:我々の現場でも最初の頃はブレストが多いので、言葉を使ってコミュニケーションをすることが特に多いのですが、制作が進むにつれてリソースが作られ実装が進むことで、今度は実際に触りながら意見を交わすことになります。特に最後の調整ターンはとても大事で、この着地のさせ方次第でゲームの面白さはいかようにも変わってしまいます。今回、調整段階でディレクターとして苦労した部分は何かありましたか?
南井:UI周りがかなり大変でした。自分で最初に作ったUIでは当初、HPゲージを置いていた場所がキャラクターと被って見えなくなってしまうことがあったので、調整して四隅に置くことにしました。このように、実際に素材を入れて動かして初めて気づくようなことがありました。
鈴木:実際に動かしてみてはじめて使いにくかったことがわかったり、より良い改善点が見つかったりしますよね。先ほどもおっしゃっていたように優先順位の高いものから実装していくという判断は、今回の『Turret Valet』においてもできていると思います。今後将来的にプロとしてゲームづくりに携わっていただく上で、とても大事なことですので、ぜひその意識を忘れずに続けていただけたらと思います。
学生チームでゲームを制作・完成させることのアドバンテージ
古屋:完成後に「ここは特に上手く行った」と思えるポイントはどこになりますか?
南井:一つ目はやはり私たちが望んでいた対戦体験が実現できたことです。テストプレイで生徒の皆さんに遊んでいただいたときに、 ちょっと喧嘩しながらも楽しそうに声をかけ合っていたのを見ると、上手くいったなと思いました。もう一つはビジュアルの統一感です。作っているときは問題や不安を抱えていたのですが、ゲーム全体としては統一感がとてもあって、キャラクターが生きている世界がそこにある感じがして、上手くいったなと思いました。
鷺谷:ビジュアル面では、第一印象としてキャラクターの表情と動きが魅力的なゲームになったと感じました。それはこのゲームシステムやキャラクターデザイン、世界観がしっかり作られているからこそ生まれた魅力だと振り返って思います。
清水:カットシーンを作るにあたっては、キャラクターの魅力をとにかく引き出せるように努力したので、それが伝わっていればいいなと思っています。学校の先生や友人からもたくさんアドバイスをいただいて、やっと完成させることができたので、楽しんでもらえるようなゲームになって本当に良かったと思っています。
古屋:仮に時間や予算がたっぷりあったとした場合、入れたかった要素は何かありますか?
鷺谷:ギミックを増やしたいですね。それに伴いモーションも増えていくと思うので、そこに気持ちの良いアクションを入れることができたら、ユーザーにも楽しんでいただけると思います。例えば、このビーム以外にも追尾型のロケットを追加すると駆け引き要素が出て、よりゲームの魅力が伝わるかなと思いました。
清水:私からは演出面で。カットインで必殺技を放つというアイディアが制作中に挙がったのですが、実現できなかったので入れてみたいですね。
南井:これは審査員の方からも伺ったことなのですが、CPU戦の1人プレイ用モードを導入したいですね。私たちは学校にいるからすぐに4人集めることができるのですが、社会人の方からするとで人を集めるのがけっこう大変だったそうなので、そこはユーザーに寄り添いたいなと思いました。
古屋:もし鈴木さんがこのゲームのプロデューサーだったとしたら、入れてみたい要素は何かありますか?
鈴木:鷺谷さんがおっしゃるように攻撃のバリエーションを増やしたいですね。ほかには、キャラクターの速度を今よりも120〜150%くらいまで上げた、よりスピーディなバトルを楽しめるモードも増やしたい。但しレーザーの照準に課題があるのでそこの解決とセットです。ステージの形状やギミックについてもバリエーションを増やすことで様々な戦略性が生まれそうです。
古屋:学生の段階からこうしたMayaを使った制作経験を積んでいる価値について、鈴木さんはどのように感じますか?
鈴木:まずは学生の頃から「チームで何かひとつのものを協力して作り上げる」という経験をしている点が大きなアドバンテージです。誰かと一緒にものづくりをするなかで、自分がこうしたいと思ったことをきちんとわかりやすく他者に伝える、 もしくは、他者がやりたいと思ったものをどうやって形にするか考えるということを経験している。その上でMayaのような高度なツールを習熟していることは更に大きな武器になりますし、最終的にはプロの世界がより身近なものになるはずです。
古屋:今回の制作を通して、ゲームの表現や構成について、新しく意識するようになった点はありますか?
南井:私は「削ることで際立つ」ことを覚えました。先ほどのキャラクターを3体から2体にした際のことです。削ることは 一種の後退のように感じられるかもしれませんが、キャラクターの役割の受け渡しとシンプルなゲームシステムが逆に際立ったので、削ることもときには良い選択肢なのだと思いました。
鷺谷:ユーザーがゲームの世界観に集中するためには、表現がノイズになってはいけないのだという意識を持つようになりました。 自分の制作物は作品全体の一部であって、全体の面白さをいかに伝えるかが重要だと考えるようになりました。そのためにも、チーム全体での作品の理解、方向性を共有していくことがデザイナーの役割だと感じています。
清水:私は演出面で勉強になったことがたくさんありました。特に指先の演技など最後の仕上げの段階までこだわることが今回の作品作りで意識できました。
古屋:今回、「CAPCOM GAMES COMPETITION」に参加した経験を通して、ご自身の中で成長したと感じている点があれば教えてください。
南井:やはり完成に辿り着くまでの判断力と 取捨選択の重要性を学ばせていただきました。やはり限られた期間とリソースの中、理想と現実の間でどこまでが実現できるか冷静に見極めることを学ばせていただきましたので、今後の糧になっていくと思います。
鷺谷:技術はもちろん、作品全体の理解とそれに対する情熱を持って取り組むことの大切さを改めて実感しました。
清水:技術以外で言うと、最初の段階で方向性をしっかりと決めておくことが一番大事だなと感じました。
古屋:今後ゲーム制作のコンペティションに参加する方へ、心構えや「これだけは大事にしてほしい」というポイントがあれば教えてください。
南井:ディレクターの目線から言いますと、やっぱり完成させることを第一に考えてほしいなと思います。どれだけ素晴らしいゲームのアイデアであっても、完成しないとそれは届かないですし審査対象にもなり得ません。自分たちの持てるリソースと時間を加味した上で作業してどこが必要でどこが不必要か、逐一考えながら冷静に俯瞰しディレクションしていくことが求められると思います。
鷺谷:そのゲームにおいて何を伝えたいのかを明確に持っておくことが大切だと思います。制作を進めるにしたがって、やってみたいことが溢れていくことがあるかもしれませんが、自分の面白いものを各々が持って、どうすればそれが伝わるかという視点で取捨の判断ができればユーザーに伝わると思いますので、そういう意識を持って取り組んでいただければと思います。
清水:今回の作品は個人的に好きな内容だったので、楽しくできました。どんな内容であってもきちんと最後まで責任を持ってやり遂げる気持ちが大事だと思います。
鈴木:これまでの皆さんの言葉の中にもたびたび見られましたが、ゲームを開発していく上で一番大事にしてほしいのは、枝葉から入るのではなく、きちんと幹から作り上げることです。このゲームはどういう体験をユーザーに届けたいのか、そして実際にそのユーザーがプレイしているイメージを開発側が思い描けているかどうかです。私もまだまだ学びの途中ですが、可能な限りでよいので、作りたいゲームを頭の中でプレイできる状態に持っていけるのが理想ですし、ユーザーに届けられるゲームのクオリティもより高いものになるように思います。
古屋:私もゲーム体験はまさにそれだと思います。今回、さまざまなゲームをプレイしましたが、きちんとゲームスタートからクリアまで終えられた体験は評価として大きなポイントでした。最後に一言、振り返っての言葉をいただけますか?
南井:カプコンさんのゲームコンペは、審査員の方たちがしっかりゲームをプレイして分析をしてくださり、講評もとてもしっかりと書いていただけて、本当に良いコンペだと思います。学生の皆さんにとってとても良い経験になりますので、来年もぜひ開催してほしいなと思います。
鈴木:審査にあたって、まずは各チームの皆さんが短期間でこれだけのものを作り上げてくれたことに本当に感動しましたし、純粋に一つ一つのゲームを楽しんでプレイさせて頂きました。あらためて審査側としても学びを得られる、とても糧になるコンペティションだったと感じています。また、審査する側の目線でゲームを見ていくことはとても勉強になりますので、もし今後も開催の機会があるようでしたら、 私以外のスタッフにも審査に携わってほしいと考えています。





























