グッドスマイルカンパニー・Knead・マックスファクトリー Interview 「Autodesk 3ds Max で挑むデジタル造形の進化が
成長続けるフィギュア業界にイノベーションをもたらす」
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デジタル造形師とディレクターの共通言語を蓄積する
―――マックスファクトリーの3ds Max講習をご紹介ください
山枡氏:これはKneedの木村さんにカリキュラムを組み、講師を務めていただいている講習で、各講習だいたい3〜4週間程度。時間にして総計70〜80時間のコースを3回行いました。それぞれ6名ほどに受講してもらい、すでに合計で約18名。当社の主に原型制作に携わる者のうち、8割くらいは講習を済ませたことになります。
――講習の内容はどのようなものですか?
木村氏:全てモデリングをメインにした実践的な内容にしています。アニメーション関連でもモデリングに使える要素は取り入れていますが、基本はあくまでフィギュア造形に生かせる即戦力重視。昔ながらのコマンドパネルで行う作成でなく、いきなりグラファイトモデリングツールのポリブースト系の機能を使ってもらうなど、なるべく直感的に使えるツールを紹介しています。粘土の代わりとなるポリゴンと、加工するデザインナイフやヤスリに代わるモデリングツールに慣れてもらおうというわけですね。毎回いろいろオーダーいただいてまして、1回目は無かったんですが、2回目ねんどろいどを、3回目の今はfigmaを作ってみましょう、という課題作成形式で進めています。
――ねんどろいどとfigmaではだいぶ作り方が違うのでは?
木村氏:ええ、3回といっても初級・中級・上級ではなく、テーマやアプローチを少しずつ変えながら初級を3回にわたり行っている感じです。
山枡氏:受講者は、みんなCG未経験者なんですよ。まずは操作の基本をマスターして、とにもかくにも使えるようになるということが目標です。それに加えて、相互で補完できるような講習の組み方をしていただいています。つまり、各回アプローチを変えていただくことで、1回目と2回目で異なるノウハウが蓄積できるのではないか、と目論んでいます。その上で、各回の受講者同士が情報交換していけば、自ずと各人が学んだ内容の3倍のノウハウが共有できるのではないか、と。
――受講した方からはどんな感想が返ってきていますか?
© 諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
山枡氏:私自身も受講したのですが、3ds Maxの操作自体は思ったより簡単だな、という印象を受けました。他の方たちも、3DCGの基本的な概念やツールの扱い方については、1回の講習の中で十分に覚えられているようです。とにかく3DCGに対する意識のハードルのようなものは、だいぶ下げることができたと思いますよ。
――3ds Maxに馴染めれば、原型師さんの手段が1つ増えるわけですね
山枡氏:そうですね。もっとも、現状ではまだ3ds Maxの膨大な機能の一部さえ把握しきれてないので、まだまだこれからです。とにかく、この3DCGは、従来の原型製作の作業の捉え方を根本から覆す可能性が大いにあります。そうなった時、他社に先駆けていち早く対応できるようになっておけるといいかな、と思っています。今はその背中を押してあげる役が必要なので、そのあたりを協力しあって進めている状態ですね。
――講習を受けてみて、3DCGにどんな活用の可能性を感じましたか
山枡氏:いろいろありますが、いちばん期待したいのは3ds Maxで用意したポリゴンデータで金型を作ることですね。「ベリ型」は鋳造になるため、どうしても一発で原型と遜色のない形状を再現するのは難しく、調整を何度も繰り返すやり取りが必要です。ですから、もし美少女の顔のポリゴンデータが正しく金型に生かせるようになれば、フィギュアの作り方は一変するのではないでしょうか。まぁ、今のところは工場に納品するまでの苦労の圧縮というか、効率化のためだけのツールになっていますが、それでも用途はいろいろありますから。
小澤氏:もう少し具体的な所では、たとえば当社の主力商材であるfigmaでの活用を進めていますよ。figmaは可動式なので、頭、胴体、手、足と各部位に分かれています。そこで新しいfigmaを作る時、過去のfigmaのパーツから「頭はこれ、手はこれ」といろいろチョイスしていき、最も原型に近い複製品の組み合わせでスタートするわけです。デジタルならまずその複製作業が必要なくなり、組み合せのトライ&エラーも大幅に効率化できるんです。
――組み合せのトライ&エラーとは?
マネージャー
小澤 健一 氏
小澤氏:たとえば「形状はこれが良いが、大きさがちょっと」ということがしばしば起こるんですが、3DCGデータなら数値で容易に拡大縮小できる。まずスタート時点で、大きなメリットが出てくるわけですね。現状では当社の練度が足りず、なかなか上手くいきませんが、徐々にメリットを出していければと思っています。
山枡氏:3DCGを活用した原型製作フローにかかる時間・コストが、従来の原型製作フローとほぼイコールになれば、その後はもう3DCGの技術の進歩と共にどんどん差が付いていくことになるでしょう。そこまで持っていければ、メリットは確実に出てくる。もうその兆候はありますし......。ですから、手で作れる人にこそ3DCGを覚えていただきたい気持ちが強いですね。手で原型を作ることと同じセンスというのは必ず必要になりますし、そういった方に3DCGを覚えてもらって、使い方の上手い落ち着けどころも探してもらえれば、と。
――中村さん、木村さんは今後の課題についてはどうお考えですか?
中村氏:そうですね、原型の実物をやりとりするのに比べれば、データをメールで送ってやり取りできるだけでも、かなり時間短縮できていると思います。問題はそこから先で、たとえば木村さんとウチとの共通言語をいかに増やしていくか。修正のやり取りをいかにスムーズにしていくかが重要になります。たとえば「ここをこんな風に」がなかなか伝わらないんです。そこでの共通言語が増えていけば、「ここ、こうなんだよな」と言うだけですぐ伝わって、気持ちの良い形になって返ってくると......。どんどん続けることで、そういう共通言語を蓄積していきたいですね。
木村氏:制作者とディレクターの阿吽の呼吸ですよね。「ここはもっとシュッと」とか曖昧な言葉でも、分かってくると「この人の言う"シュッと"はこういうことだ」と伝わる。まぁ、そこまで抽象的にならなくても、たとえば直しの線1本の意味する所が、単にその方向から見てその線に合わせろってことじゃなくて、「こう描いてあるけど、こういう理由でここを曲げたいんだな」と分かれば、スピーディに正しく対応できる。それにはやはり、コンセンサスを積み重ねていくしかありませんね。
中村氏:そうやって、その共通言語が蓄積されていけば、現在データアップにひと月ちょっとかかっているのが、3週間でできるようになるかもしれません。そして、もう1体くらい並行していけるんじゃないか、と。木村さん的にはきつくなってしまうと思いますが(笑)
株式会社 グッドスマイルカンパニー
設立 2001年5月(2012年5月 株式に組織変更)
資本金 300万円
従業員数 50名
代表者 代表取締役社長 安藝 貴範
所在地 本社(東京都墨田区)
http://www.goodsmile.info
有限会社 マックスファクトリー
設立 1987年4月
資本金 300万円
代表者 渡邊 誠
所在地 本社(東京都墨田区)
http://maxfactory.jp
株式会社 Knead
設立 2010年3月
代表者 代表取締役社長 木村和宏
資本金 300万円
所在地 本社(京都府向日市)
http://knead.co.jp
導入製品/ソリューション | ・Autodesk 3ds Max |
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。