チュートリアル / 映像編集と道具としてのSmoke
第3回:素材を見る、記憶するという事
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みなさんいかがお過ごしでしょうか?オートデスク川船でございます。
映像編集に対しての私見をSmoke for Macを絡めながら述べさせていただいております。
前回のコラムでは素材を見る事から編集は始まりますと書きましたが、素材を見て記憶するにはいくつかの勘所があると思いますので、今回はその辺を書かせていただきます。
素材を記憶するには画像や音声を規則だった要素に分類して覚えていくのが一般的だと思います。
素材となる画を分類する要素はたくさんありますが、まず思いつくのは、画のアングルやサイズ、動き、長さなどを基準にして素材を記憶していく事でしょう。これらは画を編集する上で欠く事の出来ない重要な要素であり、複数ある画のバリエーションをテンポ良く繋ぎ合せる事で見る人を引き付ける事が可能になります。
画をアングルの観点から分類するだけでも、アオリなのか俯瞰なのか、正対なのかによって印象は変わります、そのほか動きの要素(いわゆるカメラワーク)などを含めると寄り画、引き画、Fix、ドリーイン/アウト、ズームイン/アウト、1ショット、2ショット、グループショット、FF、FS、BS・・・画をアングルや動きによって分類するだけでもさまざまな要素が組み合わされます。
その映像が明るい、暗い、色味はどうかという点も要素の一つです。ロケ素材やコンサート映像なので稀にみられるのが、正常ではない状態で撮影された素材です。その映像自体が使用に耐えうる範疇で撮影されているか、カラコレで調整すれば使える範囲かを含めて記憶しておく必要があります。ロケ素材を扱う場合などには収録された実時間も要素に含めておくと、日照の変化に応じて明るさや色味が変化しますので、カラコレの判断要素として使えます。また、音声も重要な要素です。
これらの要素を踏まえつつ画を見てゆくわけですが、膨大な素材を短時間でプレビューするために早送りで一通り流し見してポイントだけノーマルで見る事もあります。
Smokeではプレイヤーで再生速度を可変させながらプレビューすることが出来ます。Smoke for MacにはAvid Artist Transportを接続して使用する事も可能ですので、よりスムーズに素材のプレビューが行えます。
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SmokeではEditDeskはもちろんライブラリで選択した素材をUI上で表示するのと同時に、グラフィックカードのセカンドチャンネルまたはAJA KONA 3Gが実装されている場合はSDI OUTからフルサイズで出力されます。プレビュー出力には必要に応じてLUT(Look Up Table)を適用して出力する事も可能です。(ライブラリプレイヤーは除く)
ライブラリプレイヤーではクリップの基礎情報やメタデータを確認できます。
またWiretap Gatewayを経由するとネットワーク上に保存されているクリップを再生したり情報を確認できます。 Desktopではスタンダード、フルスクリーン、ソース&レック、トリプティックなど必要に応じてプレイヤーを切り替えて作業できます。
素材を見る際に画自身の要素も重要ですが、見るモニターやディスプレイのサイズも重要なポイントとなります。たとえば携帯コンテンツとして配信される動画の素材を50インチのモニターでプレビューしたとしても画に対する印象は違ったものになります。その逆も考えられるわけで、スクリーンで上映されるコンテンツをPC上のウィンドウでプレビューしても画の細部の確認が出来ません。編集が終わっていざグレーディングでスクリーンに投射したらバレ物があったなんて事になってしまいます。
バレ物はさておき、プレビューする表示サイズによって画に対する印象が変わるという点に関しては、常に気にしておく必要があります。同じ事は色に関しても言えるわけで、表示するサイズが異なれば当然面積も変わります。同じ比率だとしても原色に近い色は面積が多くなれば、より強調して感じられます。これらを考慮に入れると最終的に視聴されるサイズに可能な限り近いサイズでプレビューする事が望ましいわけですが、環境的にそれが無理なのであれば、それを踏まえた上でのプレビューをする必要があります。
プレビューする際の周りの環境も気を付ける必要があります。よく編集室に来られたディレクターさんやカメラマンさんが画を見て“なんか撮影の時に見た感じと違うね~”なんて発言をされるという話を聞きます。当たり前といえば当たり前ですが撮影現場と編集室では外光環境や視点が異なります。液晶モニターの場合は視野角も問題となります。特に気になるのはモニターの背景の状態だと考えられます。モニターの後ろが壁やパーティションの場合、その色がプレビューに影響を与えます。何もない場合は抜けた感じになりますので構図に対する印象に影響を与えます。
このように周りの環境を留意しつつ素材の印象を記憶しながら編集作業に取り掛かるわけですが、そこで重要となるのが編集機器の操作とレスポンス、作業性です。次回はその点を説明していきましょう。