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第58回:シルエットを使ったモデリング 実践編
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まずは皆さまにお詫びと訂正をしなければいけません。
前回のコラムで、シルエットが重要ということを表すためにマーカーの落書きを載せたところ、それを見たうちのカミさんに「シルエットでヤバそうなのか安全なのかわかる、って書いてあるけど、ヤバそうなのしかいないじゃん」とか言われたのでよくよく見てみると…ほんとでした。
うっかり日頃の嗜好が現れますね:)
特にこの三人。
トランプの騎士的なことをなんとなく考えていたのですが、シルエットが緩いため、「トリモチを持ったこんにゃく」「生首を持ったこんにゃく」と揶揄される始末です。それはそれでそんなゲーム面白そうですが。
ちょっとしたシルエットの違いで、対象物が何なのか、想像するものが変わってきます。今回はシルエットを使ったモデリングの具体例をご紹介します。
ポリゴンっぽさを消す=高品質
トリモチと槍の違いはなにか。結局、ふにゃっとしているからトリモチと言われたのでしょう。うっかりするとトリモチ以外のものと思われて大問題になるところでした。
別のポジティブな考え方をすると、有機的なシルエットにするとポリゴン臭さがなくなるということです。
ポリゴンモデリングでは、どうしても世の中に無いぐらい完全な形状が出来てしまいます。
例えばソフトセレクションでちょっとだけモデルを下に引っ張ると、完全性が失われてリアリティが出てきます。
これだけのことですが、柔らかいもの、大きなものを表現するときにとても有効です。
出来上がったモデルをちょっと引き下げる、それだけで物の重さを感じるようになり、ポリゴン臭さがなくなり、クオリティがアップします。逆に重力が無い宇宙のような場所を表現するなら、完全な球にしておきます。
ラインを崩すことができれば、崩さない表現も手に入れることができるわけです。
粘土で造形している時に粘土全体を手で包んで、ぐいっと下にちょっと押し込みます。すると重力に引きずられるような見た目になり、ものとしての量感がでます。この手法を3DCGにも適用したらうまく行った、という例です。
モデルを作ったけれどなにかしっくりこない、という時にこの方法を行うとしっくり来るようになることがあります。特に10mを超えるような生物系によく効きます。
余談ですが、背景製作ではビルの窓ガラスの法線をばらつかせるとリアリティが出ます。現実世界では、思いのほか平らなものがありません。
リダクション
シルエットを保ったまま、サーフェスをリダクションするという具体例をご紹介します。わかりやすいものはヘッドライトのような形状です。
どの角度から見ても反射面のシルエットが出てくることはありませんから、低ポリゴンで問題ありません。
最も多く見た目の情報を持つ反射面が低ポリゴンで、シルエットとなる輪郭が高ポリゴンになります。
同じ要領で円柱状のものをリダクション出来ます。
これで300ポリゴン→200ポリゴンです。2/3のポリゴン数になります。
まあ、あまりリダクションしすぎてエッジが選択しにくくなるとか、あとからデータを加工しにくくなるようでしたら、無理にリダクションしないというのも選択肢です。リダクションしないことで作業工数を節約し、かわりにGPUに負荷させる、と考えることが出来ます。
次はSvenというキャラのバックパック部分のリダクションです。
縦に伸びるエッジは、シルエットに与える影響が少ないので削除しやすいです。しかし、横に伸びるエッジは、中央部分にゆるやかな曲線があるために削除しにくいです。
でもシルエットをなるべく保つように削除すれば、意外とポリゴン数を減らせます。
サーフェス部分にカラーや法線マップが適用されて、曲線物が表現されていますので、ポリゴン数に比べてずいぶんなめらかな形状に見えます。スペキュラのマップでサーフェスに詳細を追加しているので、クオリティもほとんど変わりません。
気をつけているのは、シルエットを保つ、ということだけです。これでポリゴン数は1/3になっています。
まとめ
具体例を通して、どのようにシルエットを扱えばよいかつかめてきましたでしょうか?シルエットの品質と言っても別々の見方があります。
ひとつはポリゴン臭さをなくすために、柔らかく見せるためのシルエットの品質です。
ふたつ目はポリゴン数を減らしても低ポリゴン感を出さないようにするために、シルエットを崩さないという品質です。
どちらも感覚で覚えるには時間がかかるところですが、言われてみるとそういうものかなと実践しやすくなると思います。
普段からモデリングしている方も、初めて3DCGを始める方も、このノウハウを役立てていただければ嬉しい限りです。