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第39回「カメラの構造 絞り・シャッタースピード・ISO感度・EV の関係」

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こんにちは、パーチ長尾です。

ここ数回《カラマネ》についての話でしたので、これから数回に分けて《カメラ》の話をしていこうと思います。

昨年から《カメラの構造》と、撮影現場で見て盗むことでしか得られない《カメラマンだけが持つレンズ選びと、それが視聴者に与える心理》に関するセミナーをすることが増えました。ゲーム会社さんや専門学校さんに訪問してセミナーしていますが、撮影現場でしか得られないノウハウなので大変興味深く聞いていただいてます。
このセミナー内容は、ビジュアルクリエイターには必須の基礎知識なんですが、撮影現場で生き残っているクリエイターが感覚で覚えていることなので、理論(わかりやすい言葉にしたつもり)で聞くとゲーム制作にも応用しやすいとのことでした。
(興味がある方はPERCHまでご連絡ください、セミナー内容をご案内します)

最近の3DCG制作は、カメラ・照明・マテリアル・サイズなど、現実世界にあわせた制作手法に変わってきています。実写との合成、現物にあわせたモデルとマテリアル制作などなど、設定が楽になるからでしょうか。

その流れでカメラについても現実世界の設定がそのまま導入されているので、それぞれの意味合いを知らないとうまく設定できなくなりました。

そこで今回は、カメラオブジェクトや環境設定に出てくるカメラ関連の設定に必要な知識について解説していこうと思います。3DCG制作にあわせた意味合い、3DCGクリエイターが必要とする視点で、わかりやすく解説したいと思います。


3DCGツールにある、露出に関する4つの設定項目

3DCGツールで、露出に関する4つの設定項目が登場するようになりました。
【露出】とは、被写体の明るさに合わせて、絞りやシャッタースピードなどの機能を使って、フィルムやCCDに入ってくる光の量を調整することです。なぜこんなことをするのかというと、フィルムやCCDは入ってきた光を記録するんですが、その量や範囲が決まっているので、調整してあげないとちょうどいい明るさに撮影することができないからです。
これは3DCGや動画編集でも同じことが行われているので、HDRやlogなどのファイル形式の概念を理解するのに【露出】の概念が役立ちます!

図1は3ds Maxの設定項目で、従来の実写撮影時にカメラで設定する項目名をそのまま移行したものです。
左は、Mental-rayを使用したときに設定する「環境」の中にある「mr フォトグラフィック露出制御」です。メニューバーのレンダリングから、「環境」で呼び出せます。
右は、V-ray Physical Camera の Basic parameters です。
これらの項目を変更すると、実写同様に画像の明るさが変わります。3DCGの場合は、レンダリング画像の明るさが変わることになります。


図1「3DCGツールの設定項目」
実写と同じ項目名があり、露出制御に活用される。効果は実写撮影と同様。


露出について

フィルムやCCDの露光(光を受けて記録することを指す言葉)について、もう少し見ておきましょう。カメラマンの重要な仕事の一つが《露出の決定》です。
これを機能面とアート面の2つの側面から見ていきましょう。
まずは機能面から見ると、被写体の明るさをフィルムやCCDに最適化させる、ということになります。撮影は屋外・屋内などいろいろな場所や照明の下で行われますので、それぞれのシーンごとに《カメラを向けた場所の明るさ》は異なります。
屋外などでは明暗差はかなり大きくなります。場所・季節・時間等によって異なりますが、ここではとりあえず15EV程度として説明していきます。【EV】という用語は後ほど説明するので、ここでは単なる数値として聞いてもらえれば大丈夫です。
一番明るいのは晴れた日の太陽周辺、一番暗いのは建物や木々の影で、これを一枚のフィルムやCCDに《納める》というのが撮影の理想ですが、現実には不可能なんです。その理由は、フィルムやCCDの物理的特性がこれほどの明暗差を納める能力を持たないためで、ネガフィルムで10EV、ポジフィルムやCCDで6EV程度しか記録できません。この範囲のことを【ラチチュード】と呼びます。
そのため、露出を行った瞬間に、明るい部分や暗い部分のディテールを破棄することになります。


図2「太陽光の写真と露出のバーチャート」
広い明暗をフィルムやCCDは記録できない。前後は白/黒につぶれてしまう

さてもう一つのアート面から見ていきましょう。
現実の明暗差を全て記録することができないわけですから、カメラマンはその一部を切り取る仕事をすることになります。どの部分を切り取るかは、目指すイメージの目的やコンセプトによって変わります。感覚的でアート的な作業で、明確な答えがあるわけではないので、カメラマンの能力や個性が生かされる部分です。
つまり、露出とは【明るさの一部を切り取る作業】と覚えると、わかりやすいかと思います。
この作業方法と理論を、アメリカで最も尊敬されるカメラマンであり、偉大な教師でもあるアンセル・アダムスは、【ゾーンシステム】と名付けて理論化しました。「アンセル・アダムスの写真術 The NEGATIVE」という本で紹介されているので、興味のある方は読んでみてください。
では、図3の写真を使ってどこを【切り取る】のがいいのか考えてみましょう。私は真ん中を切り取りました。理由は、子供の少しはにかんだ表情が、少し逆光気味で影になった暗さとマッチして、感情的な映像になったからです。全体的な雰囲気がバランス良くなった点もいいと思います。
どこを選ぶかはビジュアルの目的とコンセプトによりますが、その選択はクリエイターに任されているので、答えは1つじゃない、というのが露出のおもしろいところですね。


図3「露出を決定してみよう」
自分の好きな露出を選んでみてください。

《カメラを向けた場所の明るさ》が異なるわけですが、常にフィルムやCCDのラチチュードを超えるわけではありません。曇り、日陰、屋内照明などの場合はラチチュードに納まることが多いようです。
図4は曇りの日の日陰で撮影した写真ですが、ヒストグラムを見ると範囲内に納まっていることがわかります。


図4「ラチチュードに納まっている」ヒストグラム

一方で、図5は夕方に太陽を撮影した写真です。
ヒストグラムは、そのデータが表現できる範囲内と、その範囲のどこにピクセルが含まれているかを示している分布図のようなものです。波形の山ができていますが、山が高い部分はその明るさのピクセルが画面全体に広く含まれていて、山がない(0になっている箇所)はその明るさのピクセルが存在しないことを示します。


図5「ディテールが失われている」ヒストグラム

少し長くなってしまったので、今回はここまでにします。
次回は、ISO感度・EV値についてと、絞り・シャッタースピード・ISO感度・EV値の関係性について解説したいと思います。
3DCGのカメラオブジェクトや環境設定、実写撮影にぜひ活用してみてください。

冒頭でお話ししたセミナーに関するお問い合わせは、PERCHまでお願いします。

1:カメラマンの撮影手法を3DCGに生かして、品質アップさせるためのセミナー
・「カメラの構造と特徴を学ぶ!セミナー」
・「実写撮影のライティングを3DCGに応用する!セミナー」
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2:直接質問したいときは、《facebookでメッセージを送るか、私宛にメールください》
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