トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第21回:Realtime Rendering(VR)コンテンツを再考する
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会社員や学生の方は新期、新学期がスタートする時期ですね。私はと言うと数年前とは違いそういう生活から隔離した世界に生きているのでただただ同じように日々が過ぎ去っていますが、世間に見習って気分を一新してコラムを書かせて頂きます。という訳でお題ですが、「Realtime Rendering(VR)を再考する」です。再考と言っているのは過去のコラムで部分的に取り上げていたためですが、ここ最近になってようやく市場もRealtime Renderingコンテンツを受け入れられ状況になってきました。そこで、建築分野におけるRealtime Renderingコンテンツの必要性や求めらるスペック、また問題点等を取り上げて現状のRealtime Renderingコンテンツ(以後RRコンテンツ)をどうビジネスに生かすかを考えて見たいと思います。
1. 計算はHardWare Renderingで行われる。
2. 使用するSoftWareの主なコンテンツはマウス、ゲームパッド等で自由に空間を移動出来るコンテンツである。
この2つです。この定義だとかなり幅が広がるように感じますが、Realtime Rendererというとそう言うことになります。ですので一般的にVRを謳うソフトはHardWare Renderingで描画するのでRealtime Rendererに属します。逆に、Realtime Rendererという括りでいえばVRソフトで言われる立体視が出来る等の機能を実装している必要はありません。お気づきかも知れませんが、3ds Maxも2012ではリアリスティックというHardWareシェーディング(影計算もHardWareで出来る)を実装していてビューポート上で表示できるのでRealtime Rendererの範疇に入っています。であれば、あれもこれもと最近のレンダラーはRealtime Rendererになるのでは無いかという話になってきますが、建築Visualizationでの使用を前提に考えると後述するスペックが必要になってきます。
本コラムでもちょくちょく取り上げていますが、建築Visualizationの枠組みの中でCGレンダリングを主体としたコンテンツにはパースとアニメーションがあります。特にパースは建築Visualizationでは無くてはならないものになりました(残念ながら重要性とフィーがリンクしていないのが最大の問題点ですが....)。また海外案件などではコンペであれ、実施設計後であれ、竣工間近のプロモーションであれアニメーションは必須といっても過言では無い状況です。この2大巨頭の中に新しいコンテンツを入り込ませる訳ですから、それ相応の特徴、言い換えれば前述の2つに勝るメリットがないとビジネスとして成立しません。ではそのメリットとは何でしょうか? 読者の皆さんはすぐに頭に浮かびますか?
以下にメリットを挙げていきます。
1. 一度質感を付けてしまえば、多枚数のパースをレンダリングしたことと同じ事になる。
2. 同様に、無限のアニメーションパスを持つ動的コンテンツが出来ている事になる。
3. 多枚数のパース制作や、多本数の動画(又は長尺もの)に比べると制作コストを十分押さえられる。
この3つが主に制作ベースでのメリットです。Realtime Renderingコンテンツなので、質感設定が終了した時点で完成と言えます。それ以降は様々な角度から見ることが多枚数の静止画を制作するのと同じ事になります。アニメーションと比べればカメラパスを作る必要がなく、当然何千枚ものシーケンスファイルをレンダリングする必要もありません。尺に関しては無限です。
何かもの凄く良い事ずくめのコンテンツのように聞こえますが、これらには1つ条件があります。何だと思います? それはRRコンテンツのRendering品質が高くないと駄目だと言うことです。Rendering品質が低くても計画段階などの設計の上流ではデザイン検討や打合せのツールとなり得ますが、一般的なパースやアニメーションの代替とはなりません。ただし幾らRendering品質が高いRealtime RendererとはいえSoftWare Renderingには敵いません。ですので、決めのパースや、プロモーション等を主たる目的とするアニメーションの場合は従来の手法が現状ではベストです。ただし、主観ではありますが、前述の用途を除いた場合は、現状のパースやアニメーション制作の5割前後(近い将来には大部分!)はRealtime Rendererに取って代わられる可能性が大いにあります。(パースの場合はRealtime Rendering画像をキャプチャーしてレタッチで仕上げるという手もありますが、この話をし出すと内容が拡散していきますのでここでは割愛してお話しします。)
制作ベースではなく、運用上でもメリットもあります。
4. 自由に空間を移動出来るので、建築の空間を把握しやすい 。
5. 様々なアングルから建物を見ることが出来るため、デザインの打合せ時間(期間)を短縮出来る。(意志決定が早い)
6. 同様に、議場に挙がっていなかった(潜在的な)クライアントの要望を早期に発掘できる。(設計上の手戻り、問題点の先送りの防止効果)
4~6はレンダリング品質がある程度のレベル(勿論高ければ高いほどgoodですが)があれば享受できるメリットです。5、6(特に6)は案外表に出てこないメリットですが、建築デザインプロセス全体を俯瞰してみた時には絶大な成果を上げる事ができるメリットです。案外設計者は自分の実務時間とコストの関係に無頓着ですが、デザインの打合せ時間が短いことは経費の中で最大を占める人件費の削減に貢献します。
どの位の経費削減につながるかというと、例えばこんな話があります。あるクライアントが自社ビルの設計を依頼したとします。設計がある程度進み、自社ビルに掲げるロゴの設置場所をどうするかという課題が出ました。設計側は設置位置の案をパース(大抵は1カット)で伝えるのですが、クライアントは納得しません。クライアントは全く駄目だと考えている訳ではないのですが、もっと良い案があるのではと思ってしまって決定には至りません。(クライアントの気持ちは最もな話で、設計者だってパースの発注の際になかなかアングルを決められない人がいますよね。そのため何枚も何枚も出させたりして...)
そうした場合は持ち帰ってクライアントの要望にあったパースを再度描いて打合せに望むことにないります。この間最低でも3~4日が費やされます。クライアントのスケジュールによっては1週間以上後になります。この場合、パースの代わりにRRコンテンツを使うとその場でロゴの位置のスタディが行えます。それを様々な角度から見ることで、様々な検討を行ったことと等しい効果を上げる事ができ、クライアントの迷いは解消され意志決定が迅速になります。恐らく最初の打合せ中に決定出来るでしょう。時間も打合開始から30分程度で十分ではないでしょうか。人件費の時間的なコスト削減の効果は目に見えて明らかだということをわかって貰えると思います。この話は例として上げましたが実は私が生で経験した実話です。実際に意志決定がなされるまでの時間は5分程度でした。実話は6も含んだ内容だったので、そのメリットは計り知れないものになりました。
マンション広告用パース 制作:Next Picture
毎度途中になって申し訳ありませんが、今回はここまでです。次回は運用上のメリットの補足と、RRコンテンツの位置づけ、機能として何が必要かなどをお話しして纏めたいと思いますので、興味が湧いた方は次回をご期待下さい。
今回のコラムには関係ありませんが、前回取り上げたVirtual Companyの内容に関してちょっとだけ訂正を。仕事を受注する会社の所で営業フィーを全体の10%程度と書きましたが、その後色々ご意見を頂いた結果、20~30%が妥当な線では無いかという話になりました。10%は少なかったですかね~。この辺りは実際にVirtual Companyを組む会社間で取り決めを行い、各社のコンセンサスが得られるのであれば何%でも構いません。最初に訂正といった表現を使いましたが、前回の内容が間違っているというのではなく、参加各社の考え方次第で前回の内容をどうアレンジしてもOKということです。
最後に今月の一枚です(←何かこんなタイトルが付きそうになってきました 笑)。前回に引き続き広告用のパースです。私は結構好きな一枚なんですが、皆さんの評価は如何でしょう?
ここでお話しするRealtime Renderingコンテンツとは
RRコンテンツは他産業と違って建築業界ではまだまだ未成熟の(活用されていない)分野なので、最初に本コラムで取り上げるRealtime Rendering(又はRealtime Renderer)という言葉を定義しておこうと思います。表題ではカッコ付きで「VR」と表記していますが、一般的にRRコンテンツの事をVRと呼んだ方が通りが良いため付けました。この辺りも言葉の定義が出来てない(曖昧)所以です。Realtime Renderingをここでは以下のように定義づけておきます。1. 計算はHardWare Renderingで行われる。
2. 使用するSoftWareの主なコンテンツはマウス、ゲームパッド等で自由に空間を移動出来るコンテンツである。
この2つです。この定義だとかなり幅が広がるように感じますが、Realtime Rendererというとそう言うことになります。ですので一般的にVRを謳うソフトはHardWare Renderingで描画するのでRealtime Rendererに属します。逆に、Realtime Rendererという括りでいえばVRソフトで言われる立体視が出来る等の機能を実装している必要はありません。お気づきかも知れませんが、3ds Maxも2012ではリアリスティックというHardWareシェーディング(影計算もHardWareで出来る)を実装していてビューポート上で表示できるのでRealtime Rendererの範疇に入っています。であれば、あれもこれもと最近のレンダラーはRealtime Rendererになるのでは無いかという話になってきますが、建築Visualizationでの使用を前提に考えると後述するスペックが必要になってきます。
Realtime Renderingの制作上の優位性は
定義上のRealtime Rendererソフトと建築Visualizationに求められるものにはにちょっと違いがありそうだぞと臭わせながら、その話の前に建築Visualizationの中で多くの一般的なCGコンテンツに対するRRコンテンツの優位性をお話ししようと思います。本コラムでもちょくちょく取り上げていますが、建築Visualizationの枠組みの中でCGレンダリングを主体としたコンテンツにはパースとアニメーションがあります。特にパースは建築Visualizationでは無くてはならないものになりました(残念ながら重要性とフィーがリンクしていないのが最大の問題点ですが....)。また海外案件などではコンペであれ、実施設計後であれ、竣工間近のプロモーションであれアニメーションは必須といっても過言では無い状況です。この2大巨頭の中に新しいコンテンツを入り込ませる訳ですから、それ相応の特徴、言い換えれば前述の2つに勝るメリットがないとビジネスとして成立しません。ではそのメリットとは何でしょうか? 読者の皆さんはすぐに頭に浮かびますか?
以下にメリットを挙げていきます。
1. 一度質感を付けてしまえば、多枚数のパースをレンダリングしたことと同じ事になる。
2. 同様に、無限のアニメーションパスを持つ動的コンテンツが出来ている事になる。
3. 多枚数のパース制作や、多本数の動画(又は長尺もの)に比べると制作コストを十分押さえられる。
この3つが主に制作ベースでのメリットです。Realtime Renderingコンテンツなので、質感設定が終了した時点で完成と言えます。それ以降は様々な角度から見ることが多枚数の静止画を制作するのと同じ事になります。アニメーションと比べればカメラパスを作る必要がなく、当然何千枚ものシーケンスファイルをレンダリングする必要もありません。尺に関しては無限です。
何かもの凄く良い事ずくめのコンテンツのように聞こえますが、これらには1つ条件があります。何だと思います? それはRRコンテンツのRendering品質が高くないと駄目だと言うことです。Rendering品質が低くても計画段階などの設計の上流ではデザイン検討や打合せのツールとなり得ますが、一般的なパースやアニメーションの代替とはなりません。ただし幾らRendering品質が高いRealtime RendererとはいえSoftWare Renderingには敵いません。ですので、決めのパースや、プロモーション等を主たる目的とするアニメーションの場合は従来の手法が現状ではベストです。ただし、主観ではありますが、前述の用途を除いた場合は、現状のパースやアニメーション制作の5割前後(近い将来には大部分!)はRealtime Rendererに取って代わられる可能性が大いにあります。(パースの場合はRealtime Rendering画像をキャプチャーしてレタッチで仕上げるという手もありますが、この話をし出すと内容が拡散していきますのでここでは割愛してお話しします。)
Realtime Renderingの運用上の優位性は
制作ベースではなく、運用上でもメリットもあります。
4. 自由に空間を移動出来るので、建築の空間を把握しやすい 。
5. 様々なアングルから建物を見ることが出来るため、デザインの打合せ時間(期間)を短縮出来る。(意志決定が早い)
6. 同様に、議場に挙がっていなかった(潜在的な)クライアントの要望を早期に発掘できる。(設計上の手戻り、問題点の先送りの防止効果)
4~6はレンダリング品質がある程度のレベル(勿論高ければ高いほどgoodですが)があれば享受できるメリットです。5、6(特に6)は案外表に出てこないメリットですが、建築デザインプロセス全体を俯瞰してみた時には絶大な成果を上げる事ができるメリットです。案外設計者は自分の実務時間とコストの関係に無頓着ですが、デザインの打合せ時間が短いことは経費の中で最大を占める人件費の削減に貢献します。
どの位の経費削減につながるかというと、例えばこんな話があります。あるクライアントが自社ビルの設計を依頼したとします。設計がある程度進み、自社ビルに掲げるロゴの設置場所をどうするかという課題が出ました。設計側は設置位置の案をパース(大抵は1カット)で伝えるのですが、クライアントは納得しません。クライアントは全く駄目だと考えている訳ではないのですが、もっと良い案があるのではと思ってしまって決定には至りません。(クライアントの気持ちは最もな話で、設計者だってパースの発注の際になかなかアングルを決められない人がいますよね。そのため何枚も何枚も出させたりして...)
そうした場合は持ち帰ってクライアントの要望にあったパースを再度描いて打合せに望むことにないります。この間最低でも3~4日が費やされます。クライアントのスケジュールによっては1週間以上後になります。この場合、パースの代わりにRRコンテンツを使うとその場でロゴの位置のスタディが行えます。それを様々な角度から見ることで、様々な検討を行ったことと等しい効果を上げる事ができ、クライアントの迷いは解消され意志決定が迅速になります。恐らく最初の打合せ中に決定出来るでしょう。時間も打合開始から30分程度で十分ではないでしょうか。人件費の時間的なコスト削減の効果は目に見えて明らかだということをわかって貰えると思います。この話は例として上げましたが実は私が生で経験した実話です。実際に意志決定がなされるまでの時間は5分程度でした。実話は6も含んだ内容だったので、そのメリットは計り知れないものになりました。
最後に
マンション広告用パース 制作:Next Picture
今回のコラムには関係ありませんが、前回取り上げたVirtual Companyの内容に関してちょっとだけ訂正を。仕事を受注する会社の所で営業フィーを全体の10%程度と書きましたが、その後色々ご意見を頂いた結果、20~30%が妥当な線では無いかという話になりました。10%は少なかったですかね~。この辺りは実際にVirtual Companyを組む会社間で取り決めを行い、各社のコンセンサスが得られるのであれば何%でも構いません。最初に訂正といった表現を使いましたが、前回の内容が間違っているというのではなく、参加各社の考え方次第で前回の内容をどうアレンジしてもOKということです。
最後に今月の一枚です(←何かこんなタイトルが付きそうになってきました 笑)。前回に引き続き広告用のパースです。私は結構好きな一枚なんですが、皆さんの評価は如何でしょう?