トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第22回:Realtime Rendering(VR)コンテンツを再考する その2

2012.05.11

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前回に引き続き「Realtime Rendering(VR)コンテンツを再考する」その2です。今回は引き続きRealtime Renderingコンテンツ(以後RRコンテンツ)のメリットや、建築で求められる機能、ビジネスとしての生かし方などをお話しします。

Realtime Renderingのメリットとは


前回のコラムで以下の6つのメリットを挙げました。

1. 一度質感を付けてしまえば、多枚数のパースをレンダリングしたことと同じ事になる。
2. 同様に、無限のアニメーションパスを持つ動的コンテンツが出来ている事になる。
3. 多枚数のパース制作や、多本数の動画(又は長尺もの)に比べると制作コストを十分押さえられる。
4. 自由に空間を移動出来るので、建築の空間を把握しやすい 。
5. 様々なアングルから建物を見ることが出来るため、デザインの打合せ時間(期間)を短縮出来る。(意志決定が早い)
6. 同様に、議場に挙がっていなかった(潜在的な)クライアントの要望を早期に発掘できる。(設計上の手戻り、問題点の先送りの防止効果)

これらのメリットの元となる他のコンテンツに無いRRの根源的な優位性を挙げてみます。

Ⅰ. パースその他の建築Visualizationコンテンツのスタートなるモデリング、レンダリング設定がRRコンテンツの成果品になり得る。

建築Visualizationの制作を行う場合に必ず通る道はモデリングとレンダリング(質感設定)です。アウトプットによってはモデリングの緻密さやレンダリング精度に違いは出てきますが、何らかのモデリングとレンダリングは必ず行っていると思います。このモデリングからレンダリングまでが各コンテンツのベースとなるデータで、このベースデータの先にパースやアニメーションがあります。しかしRRコンテンツの場合は、レンダリング設定されたデータを読み込めるのであれば、ベースデータの時点で取りあえずはコンテンツが出来ている事になります。(ベースデータを簡単にRRソフトに持って行けないようであればRRコンテンツの制作費又は制作時間のメリットは半減してしまいます。) ということは、パース制作を受注した際にちょっとでもRRコンテンツの事を頭に置いて制作作業を行えば、パース制作と同時にRRコンテンツが出来上がります。

だとすればどういう事が起こりうるでしょうか。パース制作を依頼するクライアントの中にはアニメーションも制作出来ればプロジェクトとしてより良いのはわかっているが制作費の問題(又は制作期間の問題)でパースで我慢している場合が多々あります。また、アニメーション制作を行う場合でも尺をもっと取りたい、もっと色々な箇所をウォークスルーで見せたいと思っていることが殆どです。前述のRRコンテンツを意識したベースデータ制作を行っておけば、アニメーション化は楽勝です。そうすると、少しの追加作業でアニメーションコンテンツが制作出来てしまいます。であれば、パース+αの制作コストで、パース+アニメーションのフィーを請求可能だと言うことになります。勿論、正式なアニメーションのコンテンツと比べるとクオリティが落ちるので、本来のアニメーション制作のフィーからすれば減額してしかるべきですが、それでもこれまでのパースやアニメーションのフィーと比べるとしっかりした制作費をクライアントに要求する事ができます。一方でクライアントのメリットとしては様々なモーションのアニメーションの依頼が可能で、尺も従来のアニメーション制作に比べればかなり延ばせます。更にこれらはかなり短時間で制作可能なので、パースに近いレベルでの修正も可能になってきます。つまりクライアント、制作者双方にメリットが大きいコンテンツと言えます。

これらを纏めると、

Ⅱ. 他のコンテンツと同時に制作を行えば、コストメリットが大きい。
Ⅲ. アニメーション化に際しては、 制作時間(レンダリング時間を含む)が従来のアニメーションに比べ遙かに短縮出来るので、 尺やカメラモーション等の自由度を大きく取れる。
Ⅳ. これらは制作者だけでなくクライアントにも多大なメリットをもたらす。

特にⅣの双方にメリットがあるという点は重要であり、今後の発展性を約束してくれるていると言える点です。また、アニメーション化に焦点を当てると優位性が分かり易いので例として挙げましたが、本来はリアルタイムで動くためアニメーション化の必要すらありません(ただし現状では諸条件によってアニメーション化は必要です)。ただし現状でRRコンテンツ制作を営業する際に、クライアントにこれらのメリットを中々理解してもらい難い事が往々にしてあるため(経験しないと中々理解出来ない)、RRコンテンツをアニメーション制作に置き換えてアニメーション制作のメリットからRRコンテンツのメリットを理解して貰えるよう話を進めれば、次の機会にはRRコンテンツを直接受注できる可能性が高まると思います。

建築におけるRealtime Renderingに求められる機能は

ここまではコンテンツの優位性をお話ししてきましたが、ここからは求められる機能やそれに付随する事柄をお話しします。最初にデータについてですが、RR用のデータを1から制作していてはこれまでお話ししたようなメリットを享受する事は出来ません。そのため普段使用しているCGソフトでレンダリング設定したデータがほぼそのままRRソフトに持って行けることが重要です。

次にハードウェアのグラフィック性能ですが、オンボードのチップでは現状での動作環境は厳しく別途グラフィックボードが必要であるのは否めませんが、高価なボードでなければRRコンテンツが動かないようだと問題になります。RRコンテンツでプレゼンテーションを行う場合はノートブックがメインのハードとなりますが、これが数十万もしていてはクライアントに経費負担を強いることになり(RRコンテンツを用いて実際にプレゼンテーションを行うのはクライアントです)、RR導入の妨げになります。ですので、安価なグラフィックボーでも動くことが必要になってきます。同様にソフト自身が安価で有る事も重要です。建築以外の業種では未だに数百万から一千万前後のものがよく使用されていますが、建築ではコストが合わず導入出来ません(これも多くはクライアントに買って頂くことになるので高価すぎては購入して貰えません)。

RRコンテンツに実装すべき機能としては、質感の変更、オブジェクトの移動、オブジェクトの変形、オブジェクトのON/OFF等があります。また前述しているように簡単なアニメーション機能や静止画(スナップショット)機能も必要になります。この辺りはRRソフトを経験していないと「そんなことCGでは当たりまえじゃん!」と思えるかもしれませんが、全てを実装している物はそんなに多くはありません。更にはプログラミング機能があれば鬼に金棒です。RRコンテンツの場合、プレゼンテーションの内容によって求められる機能が変わってきます。前述の機能は必須としてもそれ以外で様々なものが求められるようになります。これをソフトのアップデート待ちにしていては業務の受注機会を逸してしまいます。ですが多少のプログラムが組めるソフトであればこの点は解消できます。この点はRRコンテンツが普及してきた時にはかなり重要になります。というのもこれによって他社との差別化を図れるからです。更には制作フィーの上乗せが可能になるという側面も持っています。

これらを纏めると以下のようになります。

• ソフトウェアが安価であること。高価なバージョンが存在していても良いが、廉価版は最低でも50万は切っていること(クライアントに導入して貰うためにも必須)。
• 求められるハードウェアのスペックが低く、安価なハードで動作させられること。ノートブックで10万前後に抑えたい(クライアントに導入して貰うためにも必須)。
• 一般的なCGソフトのデータ(又は汎用的なレンダリングフォーマット)をインポート出来ること。
• 質感設定が出来る(ライブラリを利用した質感のすげ替えが簡単に出来る)。
• オブジェクトの移動/変形/ON-OFFが出来る。
• 静止画を制作出来る(アウトプット出来る画像サイズはA3/200dpi程度は欲しい)。
• アニメーションを制作出来る(ムービーファイルだけでなく、シーケンスファイルをはき出せると制作の汎用性がより高まる)。
• プログラミング機能を実装していること(RRコンテンツ制作のスタート段階では必ずしも必須では無いが、先々を考えるとビジネス的に必須)

RRコンテンツをビジネスとして見た時

RRコンテンツのメリットとして制作コストを圧縮しながらもアウトプットの自由度・幅を広げられることはこれまでのお話しでご理解頂けたのでは思います。ではビジネスとしてみた時はどうでしょうか。実に様々なビジネスチャンスがあるのですが、ここでは現在進行中の私が依頼されているプロジェクトを一例として挙げて置きます。


VAD習作パース 設計・CG制作:Next Picture

現在動いているプロジェクトの1つは営業案件です。つまり設計の前段階での受注に向けたプロジェクトです(実は営業案件や設計の上流段階で参入するほどRRコンテンツの価値は高まります)。この段階では多種多様な事が打合せで出てくるため、従来のパースだけでは枚数が膨大になり、時間や予算を含めて対応が難しくなっています(まだろくな図面がない段階なので絵で説明する必要性はコンペ等と比べても高い)。そこでRRコンテンツで対応しているのですが、これまで挙げたように比較的簡単に多枚数のパース及びアニメーションで対応しているため営業とクライアントとの折衝がスムーズに進んでいます。制作に関しては設計段階に入っていないためモデリングもボリュームベースで良く制作も容易です。業務依頼としては2つの制作目的があったのですが、途中でクライアントから別の要望が出たため作業量が増加しています。かといって制作が大変になったと言う程ではなく(追加内容や、打合せによる変更内容に関しては大体一晩で対応出来ています)、逆にバリエーションが増えたお陰で売り上げに貢献しています。また、もともとRRコンテンツの案件として受けていますが、アウトプットとしてパースを多枚数出しているので、RRコンテンツ制作以外の売り上げも出ています。設計の密度や打合せの内容によっては、本格的なパース制作もあるでしょうし、RRとしてクオリティの高いアニメーションの制作も見えてきています。これらの多種で多数のコンテンツの大元が1つのデータで出来ているのですからデジタルデータの有効活用の最たる例になっています。更には最低でも受注に至るまではプロジェクトが継続しますのでこの後も安定した収入が見込めています。受注出来た以降もこれまでのデータの蓄積から私が受注する確率が非常に高いことは言うまでもありません。
なんかこう書くとクライアントには言えないぼろ儲けのように聞こえますが、パースやアニメーションの制作に比べると遙かに安い見積で受注していますので、クライアントにもメリットは大きいはずです(実際にクライアントと営業の折衝はスムーズに進んでいるようで、コンテンツの内容がどんどん拡大してきています)。

更に更にと書き出すと枚挙にいとまが無くなりますのでこの辺にしておきますが、建築ビジュアライゼーションの理想的なビジネス形態の1つだと私は考えますが、如何でしょうか。

最後に

駆け足で説明してきましたが、何か感じるところはありましたでしょうか。余談になりますが、前回のコラムでのFBの「いいね」が0だったので皆さんはあまり興味がない内容かと思い第2回で話を止めました。すでにRRが当たり前になっていて、今更私から説明されるまでもないという世の中の状況であれば0も納得いくのですが、自分にさほど関係の無い話と思って興味がそそられていないようであれば老婆心ながらちょっと心配です。現在建築系の業態でもRRコンテンツを受け入れる土壌が出来つつあります。実際に私が活動しだしてからすぐに受注が出来ていますし、営業の引き合いも多い事からみてそれは明かです。パースの制作量はBIMの普及などによって間違いなくシュリンクしていく事が明白な時に、市場の準備が整いだしたコンテンツ制作に踏み込む事(最低でも視野に入れておくこと)は必須だと思うのですが如何でしょうか。興味がある方はメールでもFB経由でも質問等下さい。私もいっしょに動いてくれる仲間が欲しいのでウェルカムです。少しでも多くの方がRRに興味を抱いて頂ければ幸いです。

今月の一枚は以前載せたVAD出展パースの別バージョンです。実は此方の方が私は好きで、此方のバージョンの方が先に出来ました。本当はRRコンテンツの絵をお見せしたい所なんですが、守秘義務案件ばかりなのでお見せでき無い事、お詫びします。(これがRRコンテンツのデメリットの最たる所かもしれません)

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