チュートリアル / 読んで触ってよくわかる!Mayaを使いこなす為のAtoZ
第62回:リアリティキャプチャっぽいことをしてみよう!Recap 360編(1/3)
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ここ最近は色々なところで「リアリティキャプチャ」という言葉を聞きます。でも具体的にどのぐらいの手間で、どのぐらいのデータやクオリティが手に入るのかよくわかりません。AからZと言わないまでも、ABCぐらいまでは知っておきたいところです。
というわけで、実際にリアリティキャプチャをしてみましょう!リアリティキャプチャは細かくやりだすと切りが無くなりそうなので、マイルールとして次のようなことを念頭に置くことにします。
・気軽におこなう。
・特別な機材は使わない。
・無料で出来る感じで。
・リアルタイムで描画できるところまでやる。
・すぐに結果を得られるように。
・難しいことは考えない。
ポイントは、とりあえず気軽にやってみて、それでどこまで出来るか見てみる、というところです。
出来上がる画と手間をご覧頂くことで、ゲームでリアリティキャプチャを採用しようと思い立った時の指針にして頂ければと思っています。上の画像が今回のリアリティキャプチャ(風?)の最終結果です。
(注:木の葉は上手く撮れないので、葉っぱの付いている木はPaint Effectでメッシュとして作ったものを配置しています。)
たとえば、 「このぐらいの作業量で、このぐらいのクオリティまではでるのだな。なら今回のゲームではもっと写実にしたいので、〇〇部分をもっと良くしよう。そのためには〇〇のマップも必要だ、〇〇の機材も必要だ…」 という指針になれば、はじめの一歩が軽くなるかしらと思っています。
では、「リアリティキャプチャ(っぽい)」のためにさっそく野外活動に行きます!といっても、海外のシャレオツなロケーションには気軽に行けるはずもなく、自転車こいで等々力渓谷に行ってきました。(等々力渓谷=東京23区で唯一の渓谷)
当日はたまたま何かの撮影クルーが沢山いたので、その目をかいくぐりつつ、別の場所では工事をしているようで、作業員に怪しまれつつ、広場では保育園の散歩コースのようで、園児に指を刺されつつ撮影しましたので、その様子をご紹介します。
撮影方法について
リアリティキャプチャを行うとき、その場所全てを完全に取り込む方法があります。レーザーを使って測量し・・・という感じで、本格的な方法です。利点としては、再現するシーンが実在するなら、そのまま取り込めるところがよいです。物と物とのつなぎ目も全て再現されますので、CGっぽい「物が突き刺さっている」感がなくなり、とても見た目がよいです。ただ、欠損のない状態で全てを取り込むにはかなり気を使う部分があり、お気軽というわけには行きません。
「お気軽」にどうにかしたいというズボラを達成するにはちょっと合わないので、今回は何でも手当たり次第とりあえず写真を撮って、Recap360で3D化することにします。それをMayaで適当に並べて組み合わせてシーンを構築しようと言う魂胆です。
早速階段を見つけたので、写真を撮ります。
幸いなことに当日は絶好(?)の曇りで、撮影するには適した状態です。曇りの日は影が出なくなり、物の色が自然になります。特別な機材を使わないということなので、三脚すら無いという体たらくですが、カメラだけは注意が必要です。
使ったカメラはコンパクトカメラで、マニュアルで露出をコントロールできるタイプです。これが最低限必要な条件です。露出が自動で変わってしまうと、撮影するごとに対象物の明るさが変わり、3D化した時にテクスチャがムラになってしまいます。露出を一定にできるマニュアル操作が可能であること、これが必須要件です。
とりあえず階段をグルっと囲うように写真を撮ります。18枚撮りました。八方を上から下からと撮っていきます。
360度ぐるっと回りこんで撮影できる小物と違い、外では180度程度しかカバーできないことがあります。でも特に問題なく3D化できます。
ちなみに、出来る限り枚数が多いほうが良いので、本格的に撮影するなら、一脚か三脚を使って、50枚程度は撮ったほうが良いです。
何枚の画像が必要?
3D化するのに沢山画像があると良いですが、最低何枚の画像が必要かというと、実は随分少なくても大丈夫です。 今回はせかせかと撮っていたうえ、180度までしか取れないものが多かったので、正面、左右二枚ずつの計5、6枚というパターンもありました。それでも3D化できました。
ただしRecap360では最低6枚の画像がないと処理出来ません。Recapで3D化するときになってこれを知ってヒヤッとしたのですが、どうせコンピューターにはわからないだろうということで、適当に画像を複製して6枚にして処理すると、意外と上手く行きました;)
一枚画像がダブっても大丈夫なようです。
Recap360いわく、20枚以上あるのが望ましいそうです。ただしこれは360度カバーするときの話ですので、角度が狭いならもっと少なくても大丈夫でしょう。
撮影の結果
以上のように、適当な感じで写真を撮って回って一時間。45個のターゲットを撮影しました。 これを Recap360サイト にアクセスし、アップロードしていきます。
数が数なのでアップロードはそれなりに大変です。撮影より時間がかかりました。 でも3D化の処理は速いもので、この数でもアップロード&3D化は1日程度で終わりました。
釣果はというと、
45個中、処理出来なかった(Recapが無理と言った)のが2個、ほか43個はとりあえず何かしらの3D化がされました。クオリティはさておいて。意外といい数字だと思います。
全体が完全に3D化できていなくても、上手く行っている部分をくり抜いて使う予定ですので、これだけデータがあればOKです。これはシーン全体をキャプチャしない利点ですね。
いくつか成功した物と失敗したものをご紹介します。地味~なものばかりですがこれを見ていただくと、どういうものが上手く行くか、行かないか、なんとなく掴んでいただけると思います。
基本的に次のものが苦手です。
・動くもの(木の葉、子供)
・光るもの(金属、葉っぱ、濡れた場所)
・透明なもの(川)
・同じパターンが多く繰り返しているもの(落ち葉、木の葉)
・当たりやパターンがないもの(地面)
そのままの傾向が結果に出てきます。地面のように、撮っているものに特徴的な部分がないときは、適当にダミーの石など置いて、3D化し易い状態にしてあげます。あとでその部分を3Dから削除すればOKです。
まとめ
曇りの日に、マニュアル露出で写真を撮る。それだけで結構よいデータが手に入りました。
Recap360で得られるデータは3Dモデルデータと色のテクスチャです。マテリアルを完全に再現するには少ない情報ですが、お気軽さは最高です。一時間でこれだけのデータを得られるのですから、モデリングを行うより断然速いです。
まあ、リアリティキャプチャの宿命として、撮った場所の雰囲気がそのまま出るので、日本に住んでいる我々は、どうやっても日本っぽい素材しか手に入らないという問題がありますが…。排水口の部分とか特に、日本っぽいですね。
次回は3D化したデータをMayaに持って行き、シーンを構築してみたいと思います。乞うご期待!