チュートリアル / 3ds Max:プラグイン活用で表現の幅を拡げよう!
第2回:生産工程ビジュアライゼーションのヒント
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こんにちは!
株式会社DEFT、代表取締役の子安と申します。
第1回に続き今回も3ds MaxとtyFlowを活用した内容となっております。
tyFlow導入の手順などは前回の「第1回:もう怖くない!無料で始めるtyFlowと仕組みを公開!」をご確認くださいませ。
前回の記事からtyFlow FREEのバージョンが更新されてましたので、今回はtyFlow FREE v1.123で進めて参ります。
また今回はV-Ray7 Hotfix .7.00.04を使用しております。
※.vrmeshを使用しているためです。
30日間のトライアル版もありますので、下記にリンクを貼っておきます。
https://www.chaos.com/jp/free-trial
早速ですが、今回はAUTODESK様より、製造ビジュアライゼーションにtyFlowが活用出来るのではないか?とのご意見を頂戴し、テストを兼ねて作成した記事となります。
今回私がCG表現として題材にした製造行程は「横ピロー包装機」の表現となります。
横ピロー包装機とは一体どの様な機械でしょうか?
参考動画を下記に貼り付けさせて頂きます。
フィルムが商品を覆い、下部で両端を合わせた後にフィルムを接着します。
その後商品の間を接着しつつカットして個包装にしていく流れとなります。
横ピロー包装機の概要と各行程説明
各パートを簡単に図に纏めました。
余談となりますが、こちらの図は3ds Maxで作成したものを標準マテリアル内のInk'n Paintでレンダリングしました。
観察を進め、以下のプロセスをどの様にCG表現するか?という点を課題にしました。
・ベルトコンベアとtyFlowのシミュレーション表現
・包装フィルムが送出される仕組み
・センターシーラーの仕組み
※ポテトチップスのパーティー開けで開封する箇所です
・カッターシーラー部の切断と接着
以上の行程をどの様に表現するか?
ローラーに巻かれたシートが一枚の長い帯となっており、商品を包み込んだ後、圧着と切断がなされる過程をシミュレーション表現するには、大変ハードルが高いと感じました。
CGはトンチを使い、あらゆる所でテクニックを活用し「ビジュアライズする事」が重要かと思います。
その変わり、今回は合成ソフトは使用せず「1発レンダリング」で完結する事を目指してみました。
今回の表現に関するプランとして、下記内容で纏めて行きました。
・Step1 ベルトコンベアと流れる商品
ベルトコンベアはCGのシミュレーション表現とする。
・Step2 包装フィルム
包装フィルムのローラーは回転のみとする。
送出される包装フィルムはセンターシーラー部分までを固定オブジェクトとする。
・Step3 個包装
カッターシーラー部以降はアニメーションキャッシュを活用する。
以降ベルトコンベアで運ばれ、トレイに乗る様子までをシミュレーション表現とする。
・Step4 包装機全体
全体をtyFlowで纏める。
以上の行程を踏まえて順に説明して参ります。
※今回は手順が多い為、動画説明が多くなっております。
Step1 ベルトコンベアと流れる商品
まずはtyFlowのPhysxにおいてベルトコンベアのシミュレーション表現が可能か調べる必要がありました。
この動画の通り、移動するオブジェクトに反応する為更に進んだ内容を考えました。
ベルトコンベアを作成する方法は何通りかあるかと思います。
・Path Deform
・Path Constraint
今回はこちらの2通りでトライしてみました。
Path Deform
オブジェクトをパスに沿わせて変形してくれる為、データ内で管理するオブジェクト数は少なくなり、構築も素早く出来る為期待しております。tyFlowのパーティクルが反応してくれるのを願うばかりです。
上の動画の通り、ベルトコンベアのセットアップと表現は素早く出来るのですが、tyFlowに取り込んだ際に衝突判定は行われるが、ベルトコンベアの動きに伴いパーティクルが移動しない為、表現は難しいと判断しました。
Path Constraint
パスに沿わせてオブジェクトをアニメーションさせ、個々のオブジェクトが移動する手続きとなる為、最初のテストの結果で考えると、ベルトコンベアの動きに伴いパーティクルが移動する良い結果が出る可能性が大きく感じられます。
パーティクルがベルトコンベアに落下した後、しっかりとベルトコンベアの移動に伴いパーティクルが移動しました!
しかしながらベルトコンベアのオブジェクトが大量になる為、データ内の管理面には注意が必要です。
手順としては以下となります。
①パスを作成する。
②オブジェクトを沿わせる。
③Followにチェック。
④複製コピーをして循環アニメーションにする。
↓
⑤物理シミュレーションを施す。
⑥エラーが出たので解析。
⑦Followのオブジェクトフリップが原因。
⑧Followのチェックを外し、回転はアニメーションにする。
⑩コリジョン登録する。
以上でベルトコンベアの表現が可能となりました。
Step2 包装フィルム
次はセンターシーラーまでのプロセスとなります。
この行程のビジュアル化はクラシックな考え方で突き進みました。
Step3 個包装
続いてカッターシーラー部の表現となります。
このポイントは非常に表現の難易度が高そうです。
今回はこの様なプロセスで構築しました。
①個包装のアニメーションを作成する。
②マテリアルIDを振り分けておく。
③個包装のアニメーションキャッシュを作成する。
プランを踏まえこの様な手順で進めました。
Step4 包装機全体
いよいよ全体を纏めて繋げていきます。
プランとしては以下の通りです。
①Step1の作り方でベルトコンベアに商品を流す。
②Step2の表現からStep3に乗り換える。
③個包装になった商品がベルトコンベアに乗ってトレイに落ちていく。
ここで大変なのは、やはりStep2からStep3の乗り換えです。
今回は合成ソフトを一切使用せず、CGレンダリングのみで完結を目指していたので、試行錯誤致しました。
②の行程に関してはこの様なプランで進めました。
②-①
センターシーラー部からカッターシーラーにかけて、フィルムを透明(無反射状態)にしていく。
②-②
Step3の商品はパーティクルエイジを利用して無反射透明のフィルムから反射ありの状態にtyFlow内で構築する。
②-③
商品はベルトコンベアの揺れを利用しつつ包装内の商品が大きくなり、Step①の商品サイズより若干大きくなった所でStep①の商品をtyFlow内でDeleteし乗り換える。
※今回のバゲットはテクスチャがある為、包装フィルムと同じ手法を取れない状態でした。テクスチャもUV座標の端から表示されて行くため、明滅する現象が出た為です。
この様な纏め方で進めて行きました。
最後のCustom Propertiesオペレーターは様々な情報を先にSETして、SETしたチャンネルを任意の名前で登録し、後のオペレーターでGETする流れとなります。
様々な事が出来るので以下の公式ページを参考にしてみてください。
https://docs.tyflow.com/tyflow_particles/operators/custom_properties/
今回は上記ページのMap Channelを活用しており、U(X)V(Y)W(Z)の座標を利用して、透明度をコントロールしている内容となります。
U(X)方向にグラデーションを作成し、時間(パーティクルエイジ)とともに横軸に移動していくイメージです。
上の動画の最後にも入っておりますが、完成動画は以下の様になりました。
今回作成したデータ内のパンのアセット等は再配布出来ないため、各商品をダミーとして入れ込んでおりますので、お持ちのアセットに読み替えて遊んでみてください!
V-Rayを導入されている方は、包装材ありのファイルも確認できます
また、次回はSmart Phoneで3Dスキャン(Nerf Scan)をした後、tyFlowと絡めて遊んでみようと思っております。
楽しみにお待ち下さい!