トレンド&テクノロジー / VFXの話をしよう
第4回:今さらですがVFXとはなんだ論 1

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新人研修の一環でVFXの説明をしたときのこと。意外だったのは、参加した全員が比較的映画に詳しいにもかかわらず、VFXの正式な英語表現を知らなかったことだ。このコラムの読者は当然それがVisualEffects(ビジュアル・エフェクツ)であることはご存知だとは思うし、私自身この名称は「CG」に並んでかなりポピュラーなものだと思っていたのだが、そうでもないようだ。これは改めて強く啓蒙しなければいけない!ということで、今回は、あらためてVFXとは何かを論じることにした。

そもそもVFXと似た言葉でSFXという言葉がある。これはSpecialEffects(スペシャル・エフェクツ)の略称で「特殊効果」という意味だ。80年代初頭、第1期「スターウォーズ」シリーズや「未知との遭遇」などのSF作品のヒットもあって、それまで見たことのない宇宙での戦闘機のバトルや巨大なUFOの表現などが観客の興味を引いたのだ。この舞台裏を紹介した本が「SFX映画の世界」(中子真治著)で、1983年に出版されそれ以後「SFX」という言葉が広く知られるようになった、と記憶している。

では、SFXとVFXとは何が違うのだろうか。どちらも映画表現の中で、物理的又は日常的にありえない事象、ないしは危険を伴うような出来事を表現するための手法であることは間違いない。では、何で両者が区別されるかと言えば、おなじみの「CG」なのである。

「なんだ、じゃあVFXなんて言わないでCGでいいんじゃない?」という声も聞こえてきそうだけど、否VFXもCGとは厳密に区別されなければならない。そこまでわかってもらうためには先ずはSFXのことを説明しなければならない。

SFXでくくられる代表的な手法をいくつか紹介すると、古くは1933年の「キングコング」に代表される「ストップモーション・アニメーション」で、怪物のミニチュアを1コマずつ動かして動画にして行く手法。いわゆる「コマ撮りアニメ」である。これに対して日本は「ゴジラ」に代表されるスーツアクション、いわゆる「着ぐるみ」での特撮という独自の手法を発展させた。これもSFXである。他にも特殊メイク、ミニチュア撮影などもSFXに入る。つまり、本誌「映像+」で毎号取り上げている特集テーマはSFXそのものなのだ。紙面の関係上、これ以上書き出せないのが残念だが、SFXに入る技術はまだまだたくさんある。

このようにSFXの中身をみてわかることは、多くの技術が実際の撮影作業と密接に絡んでいるということだ。つまり、ストップアニメにせよ、スーツアクションにせよ、特殊メイク、ミニチュアワークも実際に「それ」は撮影されるものだったする。つまり、SFXの多くは被写体そのものだったり、撮影そのものを意味しており、正に撮影時が「本番」なのだ。

一方、VFXは同じ特殊効果技術ではあっても、撮影という段階ではなく、その後の仕上げの段階=ポスト・プロダクションが作業の「本番」となる。SFXの中には「オプチカル」という光学的な合成技術も含まれている。じつはVFXとは、この合成技術の部分が「光学」から「デジタル」に置き換わったことによって確立された分野なのだ。

デジタル技術が登場するまで映画の世界では、合成映像はすべてフィルムで行わざるを得ず「オプチカル・プリンター」という、いわばフィルムのコピーマシンで作業していた。光学上の合成技術なので極めて合理的な手法ではあったが、専門性が高い上に時間もかかった。しかし、80年代の後半からのデジタル技術の登場、進化によって、90年代半ば以降、それまでの合成処理がコンピュータ上で可能になった。これによって、それまで極めて専門性が高く、特殊な装置が必要だった合成作業が市販のコンピュータと必要なソフトウェアがあれば誰でもできるようになったのだ。さらにデジタル処理によって、ピクセル単位の細かい作業が可能になったことで、これまでのオプチカル合成では不可能だった複雑な合成が可能になったため、劇映画でのニーズが爆発的に広がったのだ。VFXというジャンル誕生にはこんな背景があったのだ。

ここまで読まれた方の中には「だったら、VFXはSFXのひとつにすぎないんじゃないの?」と鋭く指摘される向きもおられるだろう。確かにSFXのジャンルにあった「オプチカル合成」が「デジタル合成」になったということで言えば、VFXという独立した名称ではなくても、SFXの中の1分野でも良かった。だが、デジタル技術は合成だけでなく、もうひとつ全く新たな「手法」を生んだことで、VFXという新たなジャンルの枠組みが決定的になった。それが「CG」なのだ。

次回はVFXとCGの違いを説明しながら、SFXとの関係をさらに掘り下げてみたい。



© 映像+/グラフィック社刊
現在、映像+に連載中 http://www.graphicsha.co.jp/

本稿は「映像+4」 2008年7月25日発行に掲載されました。

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