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第1回:「サイエンスを、正しく、楽しく。」サイエンスCGクリエーターになるまで その1

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「サイエンスを、正しく、楽しく。」

「サイエンスを、正しく、楽しく。」 私が中学生の頃から思い描いてきた夢です。

はじめまして。今月からArea Japanにて本コラムを書かせて頂くことになりました、株式会社サイアメント代表の瀬尾拡史(せおひろふみ)と申します。
このコラムでは、日本ではまだまだ馴染みの薄い「サイエンスCG」の世界をご紹介して行きたいと思います。

なぜ私が「サイエンスCG」と言う特殊な世界に足を踏み入れたのか、まずは勝手ながら私自身の自己紹介、これまでの生い立ちを少し紹介させて頂きます。

ときは1999年、私が中学2年生の頃、NHKで「驚異の小宇宙人体III 遺伝子・DNA」と言う大型シリーズ番組が放送されました。3DCGを至る所に駆使し、遺伝子・DNAと言う非常に複雑で難しい内容をとてもわかりやすく、且つ楽しく説明する番組で、当時まだ何の知識もなかった私にとっても思わず見入ってしまうような素晴らしい番組でした。

ちょうど同じ頃、私は中学入学と同時にパソコン部に入部し、C言語やアセンブラなどのプログラミングを学んでいたのですが、中学2年、3年と3DCGが部内でのテーマとなり、スキャンライン法やレイトレーシング法の数学的・物理的なアルゴリズムの基礎をお互いに教え合い、自身で簡単な3DCG作成プログラムを書いていました。


中学2年生のときにC言語及びアセンブラ言語を用いて自作したレイトレーシングプログラム


中学3年生のときにC言語及びアセンブラ言語を用いて自作したスキャンラインプログラム

これら2つが重なったこともあり、私はこのNHKの番組を見て以来ずっと「いつか、この番組を越えるような番組を自分で作り、私が感動したのと同じように、子どもたちが目を光らせて科学を楽しむようになってほしい。」と思うようになりました。

高校に入ると映像制作にも手を出すようになりました。実際には、自分から進んで手を出したのではなく、「CGとか作ってるし、きっと映像編集とかも出来るでしょ?」とクラスメイトたちから過度の期待をかけられたのが事の発端で、高校の文化祭用の映像を作るために半ば仕方なく当時の最新版であるAdobe After Effects 5.5を独学で触ることになりました。

それまで映像編集など全く経験がなく、右も左もわからない状態だったのですが、やるからには中途半端にはしたくないという自分の性格も加わり、海外の映像プロダクションが公開しているQuick Time形式の映像作品を毎日最低1つダウンロードしてはコマ送りで繰り返し流し、文字の出し方や場面転換時のエフェクトなどを勉強し、真似をしてみるところから始めました。 また、時間を見つけては学校帰りにゲームセンターに立ち寄り、ゲームをするのではなく、ゲーム内のUIや上位ランキング者の演出方法などを見て、格好良いアニメーション演出方法を自分なりに研究していました。


高校2年生のときに制作した、文化祭のカウントダウン映像より


高校3年生のときに制作した、文化祭企画用映像より

その一方で、高校2年生の生物の授業で免疫のはたらきを説明するために先生が補助教材としてNHK「驚異の小宇宙人体」シリーズを使うと言う、思わぬ再会がありました。中学2年生のときに虜になった番組に高校の授業で3年ぶりの再会を果たしたわけですが、ただ格好良いだけの3DCGではなく、きちんとした科学的な監修が加わることで、ゲームでも映画でもなく、単なるエンターテイメントだけにとどまらない、教育や授業にも使えるコンテンツを3DCGが可能になることを実感した瞬間でもありました。

加えて、自分が制作した映像が学校内で高評価だったこともあり、映像制作の楽しさを実感した私は、ますますサイエンスCG制作を仕事にしたいと強く思うようになりました。

高校卒業後の進路をどうするか?

サイエンスCGを作るためには、サイエンスの知識・経験とCGの知識・経験との両方を学ばなければいけません。ところが、日本中どこを探してもそれらのどちらも学べる大学は見つかりません。実は、アメリカとカナダには医療・医学とイラスト(手描き、2DCG、3DCG)とのどちらも学べるような大学院が存在するのですが、それはまた順を追ってご紹介することに致しましょう。

とにもかくにも、高校卒業後に国内の大学に進学するのであれば、美大を目指してサイエンスを独学で学ぶか、或いは理系の大学に入りCGを専門学校などで学ぶかのどちらかの選択肢しかなかったわけです。

私はお世辞にも絵を描くセンスがあるとは言えないほど美術が苦手でしたので、何年かかっても美大に合格することは不可能。よって大学ではサイエンスを学ぼう。では具体的に何を学ぶか。大学でしか学べないことを考えると、選択肢は自動的に医学部に決まりました。医学部を出て医師になり、現場で自ら働いてみることで、他のCGクリエーターでは決して気付かないようなことに気付けるかもしれない。そこでの「気づき」を形にすれば、患者さんやお医者さん、看護師さんや学生さんの助けになるかもしれないし、子どもたちも楽しんでくれるかもしれない。

そんなことを思い、1年間の浪人の後、2005年4月に東京大学理科三類に入学しました。

ここから私の「サイエンスCGクリエーター」の道が本格的にスタートしますが、それはまた第2回で。

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