トレンド&テクノロジー / 建築ビジュアライゼーションのニューノーマル
第3回:ビジュアルコンセプト

2021.04.05

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ビジュアルコンセプト

(※以下建築ビジュアライゼーションを建築ビズと略す)

皆さん、こんにちは。
すっかり春が香る季節になりました。

前回までは、建築パースは建築ビズへと呼称が移り変わりつつあること、建築パースは「モノの価値」を、建築ビズは「コトの価値」を主題に表現するコミュニケーションツールであること、をご説明しました。しかし、今後建築パースが消え、建築ビズに取って代わるとか、どちらかが良い悪いという話ではありませんので誤解無きようお願いします。両者にはそれぞれ役割があるので、臨機応変に描き分ける事が大事です。

さて今回は、前回の予告通り、「コトの価値」の伝え方や、心に訴えかける方法についてお伝えしたいところですが、その前に、ビジュアル制作の初期段階について綴りたいと思います。なぜなら、個人的な見解ですが、ビジュアルの良し悪しは約6割程度が初期段階で決まってしまうので、ここをきっちり抑えないと、途中でいくら改善しても満足のいく結果にたどり着くとは限らないからです。

ビジュアルコミュニケーションツール

ビジュアルコミュニケーションツール

早速ですが、まず初めに、建築パースと建築ビズは、「ビジュアルコミュニケーションツール」であることを認識しましょう。

両者とも建築を伝えるという目的の下生まれたコミュニケーションツールですので、普段の会話と同じように「相手ありき」で成立します。その為、ズレた発言=ズレた表現や、内容がない発言=意図のない表現(例えば、何も考えずカメラを置いてレンダリング)は避けなければいけません。
ビジュアルには相手の行動や印象を変える力が備わっているので、上手く使えば良い効果が生まれますが、悪い印象に繋がる場合もあります。だからこそ、出来るだけ客観的視点を持ち論理的に制作を始めることが大切です。

ライティングを変えて制作したビジュアル1
ライティングを変えて制作したビジュアル2
この2枚のビジュアルは、両方とも全く同じモデルを使用して制作。ライティングを少し変えるだけで、異なる印象を与えることが出来る。好みで決めるのではなく、何を伝えたいかで表現を決めるべき。

感覚だけに頼るのは危険

もし感覚だけを頼りに作業を始めてしまうと、相手に伝わらない独りよがりなビジュアルになってしまう危険があります。コミュニケーションを目的としているので、相手の事を考えていない、誤解を与える表現は避けるべきです。
残念ながら感覚だけを頼りに作られたビジュアルは、メッセージが弱く相手に上手く伝わりにくいものになりがちです。せっかくお金や労力をかけたのに効果が薄いのは、非常に勿体無いですよね。それに対し、意図や意味が論理的に構築されたビジュアルは、メッセージが強く、納得感をもって相手に伝わります。
それを回避する為に、手を動かす作業に入る前のプロセスを大事にしましょう。

ビジュアルコンセプトを立てる

VISUAL CONCEPT

それが「ビジュアルコンセプト」を立てることです。
ビジュアルコンセプトとは、上図の旗のようにビジュアルの方向性を明確に示すものです。なぜこのビジュアルが必要なのか?という、ビジュアルの存在理由そのものであり、ビジュアルの骨格になります。旗を立てれば進むべき道も定まり迷わなくなるので、表現も的確になります。

VISUAL CONCEPTを立てない場合

初めにビジュアルコンセプトを立てなければ、どこを目指せばいいのか迷い、間違った表現をしてしまうかもしれません。途中で表現を変えるとしても、余計な時間とエネルギーがかかってしまいます。だからこそ、初めにしっかりとビジュアルコンセプトを立て、クライアントと共有し、進むべき道を定めましょう。

5W1H

しかし普段ビジュアルコンセプトを意識していない人にとっては、いきなりビジュアルコンセプトを立てるのは難しいかもしれません。そこで5W1H(Why~How)で考えると、簡単にビジュアルコンセプトの材料が集めやすいのでオススメです。(Why)なぜこれが必要なのか?(Who)誰の為に描くのか?(What)どんなメッセージを伝えればいいのか?など、多角的に洗い出すことができます。面倒くさいかもしれませんが、言語化しておくことで客観的に自身の成果物を捉えることができるので、制作途中の表現のズレにも気付きやすくなります。

モノとコト、どちらを主題にするのか探る

では具体的にみていきましょう。
例えば、インテリアのビジュアルを描く依頼があったとします。
あなたなら、まず何から始めますか?いきなりモデリングに入り手を動かしますか?初期段階でビジュアルの良し悪しが大きく決まってしまうので、作業に入る前に一呼吸置いてビジュアルコンセプトを練るところから始めしょう。

モノ or コト

私の場合は、まず5W1Hで案件の情報を洗い出し、その後モノとコトのどちらが求められているのかを考えます。
壁や天井、家具、照明、食器など、インテリアデザインを描くのか、それともリラックスした時間を過ごしている人々の様子を描くのかでは、表現する内容や相手に伝わる印象は全く違うものになります。前者は「モノの価値」について、後者は「コトの価値」に注目して描くことになります。どちらを主題に置くかで、その後の大きな方向性が定まります。

蔑ろにされるビジュアルコンセプト

実際の仕事では、この初期段階はよく蔑ろにされています。なんとなく、とりあえず、で作業に入り、そのまま最後まで進む事がほとんどです。そうしてできたビジュアルは心に訴えかけるものにはならず、途中で挽回しようと思っても満足のいく結果に辿り着きにくいです。

インテリアを例にしてみましょう。空間全体を見せる為にアングルはとりあえず広角にしておく、といった場面です。意図があればいいですが、こういう場合、完成間近に「なんか説明的すぎる」「もっと没入感が欲しい」など、どうすることもできない指摘をされることが良くあります。画面をトリミングして、説明的な雰囲気を若干減らすことは出来ますが、それも結局対処療法的解決です。最悪の場合、信じられないかもしれませんが、最終成果物が良くなかった責任を、描き手のせいにされることもあります。

空間全体の構成をダイナミックに見せる為に広角レンズを意図的に使用したビジュアル
空間全体の構成をダイナミックに見せる為に広角レンズを意図的に使用。インテリアデザインを伝える事=モノを主題にしているが、ここで過ごす人々の様子=コトも同時に表現している。「モノ」と「コト」の描き分けについては次回詳しく触れる

私の場合、インハウスという環境を積極的に利用し、出来るだけ発注側(設計者)と会話をすることで、そういった状況がほぼ無くなりました。インハウスでなくとも、より意識的に発注側とコミュニケーションを取り、ビジュアルコンセプトを共有することをお勧めします。そうすると、初めのプロセスにかかる時間が少しだけ増えますが、途中で変更や修正が生じにくくなる分、結果ゴールに辿り着くのが早くなります。

今回はビジュアル制作の初期段階、ビジュアルコンセプトの大切さについてでした。
次回は、それを踏まえたうえで、モノとコトを描き分けて、メッセージを届ける方法について触れていきたいと思います。

To be continued.

あとがき 「VISUALIZE」について

昨今言語化が大事だと声高に言われておりますが、ビジュアルについては可視化、つまりビジュアライズする力(「VISUALIZE」)が問われます。その為にあらゆる視点でビジュアルを捉える事が大事になりますので、ビジュアル制作においても言語化は有用なプロセスと言えます。「VISUALIZE」については、建築ビズのニューノーマルを紐解く為の最重要概念ですので、覚えておいて下さい。

今月初旬に、CGWORLDデザインビズカンファレンスに登壇させて頂き、200名を超える方にプレゼンを聴いて頂きました。内容は、この連載テーマである、「建築ビジュアライゼーションのニューノーマル」についてで、私が「VISUALIZE」について言語化したことをお話しました。登壇のアーカイブは残さないので、見逃した方はまたの機会があれば是非ご参加ください。イベント等の告知は下記SNSでおこなっております。また質問等あれば同じくSNSにご連絡ください。

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著者

山口 大地

山口 大地

株式会社竹中工務店
大阪本店設計部 スペースデザイン部門
ビジュアライゼーショングループ

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