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第51回:次世代型カラーマネジメント〜測定マテリアルを活用した現実世界の正確な再現を行う最新事情〜
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正確で効率的なCGを作る次世代カラーマネジメント
お久しぶりです、PERCHの長尾です。この連載もずいぶん間が空いてしまいました。
以前にも書いたカラーマネジメントが新しい仕組みへと進化しました。「測定マテリアル」という素材の色と質感を正確にデジタル化する仕組みを活用して、CG制作・商品デザイン・製造管理を大きく効率化することが出来ます。
この仕組み・事例・メリットを紹介していきますので、数回のコラムにお付き合いください。
古い記事はカラーマネジメントの基礎を学べますので、合わせてお読みいただけると理解が深まると思います。PERCHが運営する情報サイト(https://perch-colormanagement.jp)もあります、そこでは次世代カラーマネジメントの情報をお伝えしています。
色と質感のDX化
DX/デジタルツインなど、現実世界のデジタル化が進んでいますが、色と質感を正確デジタル化する技術は、形状のデジタル化等と比べて遅れています。
これまでマテリアル作成は、現物とモニターを比較しながら行っていましたが、これでは現物に正確なマテリアル(デジタル化)を行うことが難しい。そこで、測色・スキャンを組み合わせた特殊な測定器が開発されました。測定結果はそのままCAD/CGで使用できるので、作成時間が短く、正確なデジタル化が行えるようになりました。
海外では2016年から導入が始まり、自動車/アパレル/化粧品/建築/家電と産業界で活用されています。
主な活用法と効果
製品開発、製品デザイン、品質管理など、広い領域でカラーマネジメントは利用されています。
・正確なシミュレーション
・これまで出来なかったシミュレーション
・製造時の色と質感を製品開発/デザイン段階で確認
各工程ごとの効率化に加え、各工程で連携することでより効率化が進んでいます。
・サプライヤー:現物サンプルをデジタルデータで提供して、提供時間とサンプル制作コストを大幅に削減
・製品開発/デザイン:製造時の色で意思決定して、製造段階での修正を削減。外光の反射や透過など実際の見え方をシミュレション。
・品質管理:色と質感データを前工程と数値で比較して、目視や環境に影響されない管理。検査カメラのAI学習画像を事前にCGで作成。
測定マテリアル
これまでCAD/CGのマテリアルは、一部でスキャンや測定などを使用しながらも最終的には目視で製作されていました。制作者の技量と体調に左右されるため精度も低く都度制作や修正が必要となり、制作時間もかかるため、大変非効率でした。
一方測定マテリアルは、測定器で素材を測定、そのままマテリアル情報として書き出す仕組みです。
迅速にマテリアルが作成される様子をご覧ください。
関連ブログ
素材ごとに適した測定器
塗板、プラスティック、ガラス、テキスタイルなどなど、色々な素材が製造や建築で使用されます。様々な特徴に合わせて最適な測定器があるので、選択のポイントと代表的な機材を紹介します。
塗板/皮革
自動車の外装など、塗料を塗った不透明な素材です。
見る角度によって色が変わるパール塗装や、細かな粒が入ったメタリック塗装などの特殊な素材も正確にデジタル化する必要があります。
x-rite MA-T12 は多角度から色/反射/模様を測定できるため、多くの塗板の測定に向いています。ただし測定窓が小さいため、大きい模様などはパターニングが出来ません。
OFFICE COLOR SCIENCE も同様です。
http://www.officecolorscience.com/top.html
テキスタイル/建築素材
大きな模様や変化を持つ素材は、タイリングするために大きなサイズでスキャンする必要があります。
例えば、テキスタイル(柄がある布地)は特殊な物を除いてB4程度あればパターン化できます。
xTexは、色(模様)だけでなく、凹凸、透過などもデジタル化出来ます。
https://www.borndigital.co.jp/product/xtex/
透過素材
ガラス、プラスティック(透明/半透明)、液体などの透過素材は、表面反射だけで無く、透過特性もデジタル化する必要があります。
x-rite Ci7600は、その両方をデジタル化出来ます。
ディスプレイ
自動車、家電、遊戯台などに搭載されているディスプレイは、発色特性と表面反射特性を測定する必要があります。
x-rite i1Proは、ディスプレイの発色特性を測定できます。
eldim EZContrastは、より高い精度でディスプレイの発色特性を測定でき、多角度から測定するため、斜めから見たときの見え方も再現できます。
https://eldim.com/product/ezcontrast/
ファイルフォーマット
測定結果がそのままマテリアルとして利用できるため、シェーダーの細かな設定など、時間のかかる作業が不要になります。
多くのソフトウェアで対応が増えているので、お使いのソフトウェアが使用できるか確認してください。
次回以降でMaya, Max, VREDに取り込む方法に触れていきたいと思います。
AxF
x-rite測定器の測定結果が保存されます。
PANTORAという専用ソフトウェアと併用することで書き出すことが出来ます。
AxFの中身は複数の仕様になっており、仕様によって対応可能かどうかが変わるので注意が必要です。
モード:CPA(Car Paint), SVBRDF(CPA以外の素材)
カラー:スペクトル、RGB
出典:AxF サンプルライブラリより
xTex
xTex社が開発したフォーマット。
x-rite測定器の測定結果が保存されます。
付属の専用ソフトウェアから書き出すことが出来ます。
Color, Roughness, Specular, Normal, Displacement, Alpha、それぞれのマップとシェーダ設定値が保存されます。
MDL
Adobe Substance、NVIDIAなど多くのソフトウェアで利用されるフォーマット。
汎用性や対応製品が多いのが特徴。
AxF, xTex 非対応の場合や、Substanceで加工したい場合に便利に活用されている。
正しいデジタル化 + 正しい表示 + 正しい観察
よくある誤解ですが、測定マテリアルを使用するだけで正しくモニターに表示されるというものです。
Color Managementという色管理システムは統合的な仕組みなので、全体像が分かりづらく一部だけ整えて大丈夫だと勘違いされやすくあります。
そこで、以下の3点に分けて考えると分かりやすくなります。
測定マテリアルは「正しいデジタル化」にあたります。これで現物とデジタルデータは一致します。
しかし、そのデータをモニターで正しく表示できるかは別です。例えば周りを見てください、オフィスにある沢山のモニターは色がバラバラなのが分かると思います。つまり同じデータがバラバラの色で表示されるというわけです。
それと照明を見てください、青白い光、黄色い光、色々な照明があると思います。当然色が変わりますが、それに加えてメタメリズムという現象によっても色が変わります。
今後数回に分けてカラーマネジメントに関する情報をお届けします。
次世代カラーマネジメントの特徴、Autodeskソフトのカラー管理機能を紹介していく予定です。
カラーマネジメントの基礎知識や、導入事例などをまとめた情報サイトもありますので、合わせてご覧頂けると理解が深まるかと思います。
https://perch-colormanagement.jp/
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