トレンド&テクノロジー / PERCH長尾の知っ得!デザインビズ必読ポイント!
第1回:魅力的な広告写真を、3DCGで作るために必要なものとは?

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広告に写っている商品はすごく魅力的に見えて、『ほしい!』と思ってしまいます。
先日も電車の中刷り広告を見ていて、そのまま電車を降りて電気店に行ってしまいそうになりました。

ではなぜこんなに魅力的に見えるのか?
自分で3DCGソフトというバーチャルスタジオの中で製品モデルを配置してライティングをしてみると、『どうも広告とは違う』、でもその理由がわからない。 皆さんの中にもこんな思いを持った方がいらっしゃると思います。 今回のコラムではこの謎に迫ってみようと思います。

このコラムですが、広告業界とデザインビズ業界のこと、仕事をより良くするための情報などをご紹介していこうと思います。

あらためまして、パーチの長尾です、よろしくお願いします。
もとはグラフィックデザインや画像合成といったクリエイターをしていましたが、前職ではその経験を活かしてデザインビズ事業の起ち上げや、デジタル化の推進、ビジュアル著作権の制度化などに携わってきました。 パーチはこんな経験やノウハウを1つの会社だけじゃなく、広告やデザインビズ業界に幅広く提供して、私たちにとまりに来てくれた方の翼を大きくするのが目的の会社です(パーチは「とまり木」という意味なんです)。

こんな形で撮影や画像合成の仕事にたくさん携わってきて、3DCGとは違いよりも共通 する部分が多いことに気づきました。 さっきの謎『広告写真は魅力的に見える』の答えもこのあたりにあるようです。


撮影スタジオのライティングは現実世界を再現しようとしている

真っ暗な撮影スタジオに置かれた商品に、ストロボをひとつずつ足していってライティングを作っていきます。 このときにカメラマンが気にするのは『現実世界の再現』『より自然に見えながらも商品の特徴や魅力を強調する』ということです。

『基本は1灯ライティング』。これは『太陽は1つだから』という現実世界に習っています。2つの方向から光を当てる時も不自然に感じてしまうのは人間として自然なことなんです。でも遠い遠い宇宙の彼方に太陽を2つ持つ惑星があったら、そこに住むカメラマンはきっと『基本は2灯ライティング』と言っているんでしょうね。 しかし1灯だけでは商品を魅力的に見せる『演出』ができない場合が多いので、1灯ライティングを基本にして、不自然に見えないようにストロボを追加していきます。

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3DCGで撮影スタジオのライティングを再現するのが答え

3DCGは撮影スタジオによく似ています。ライトを配置しないと真っ暗で、製品とカメラとライトを配置しないと映像が出来ないことなど、全く同じですね。

では、スタジオのライトの配置と同じように3DCGを作ったらどうなるのか?

実は全く同じようなビジュアルが出来上がります。
つまり謎の答えはここにあったんです。 『魅力的に見えないのはライティングという演出力/ノウハウが欠けていた』ということです。カメラマンが持つ演出力/ノウハウを3DCGに取り込めば広告写真のような魅力的なビジュアルが作れるということです。

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この写真は左が撮影スタジオで実際に撮影した物、右がその時のストロボの配置を参考に 3ds Max Design で制作した物です。最新の3DCGソフトは『現実世界と同じ質感』を表現する機能を備えています、なので後はそれを使って魅力的に見せるノウハウ(人間の感性を活かした制作力)を3DCGに取り込んでいけば良いんですね。

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この図はこのときの撮影スタジオの照明配置です。広告業界の第一線で活躍するカメラマンさんに依頼して撮影してもらいました。たくさんの照明を使っていますが、自然に見えるために『1灯ライティング』をしたときと同じような結果が出るように配置されている のと、『製品を魅力的に見せるための演出』をするライトを効果的に追加していました。

カメラマンのノウハウを取り入れると広告として使えるようになる

すでにデザインビズ業界ではいくつもの制作プロダクションやクリエイターさんが活躍しています。その中で『広告販促用ビジュアル』を制作して活躍している方々に共通している点は、『従来の撮影と同じクオリティを出すこと』です。

彼らはそのために2つの方法を採用しています。
1:共同作業型:カメラマン指導のもと3DCGクリエイターさんが制作を行う
2:成長型:カメラマンのノウハウを持っている方が3DCGを覚える、または3DCGクリエイターさんがカメラマンのノウハウを吸収するこうすることで従来の撮影と同じクオリティを実現しています。

たしかにそうですよね、広告を打つ企業の立場に立って考えてみると従来よりもビジュアル品質が落ちて売上が減ったりしたら大変です。冒頭の話じゃないですが電車に乗ってる途中で買いに行きたくなる人が多いほうが良いですものね。

しかしこのようなワークスタイルを実現するには苦労や問題が多いのも事実です。
『共同作業型』はこれまで一緒に仕事をしたことのない人たちが一緒に仕事をするわけですから話が通じない、専門用語が理解できない、感覚が違う、などコミュニケーションがうまく取れないようです。ですのでお互いにそれぞれの仕事をある程度理解する必要があります。それとカメラマンが3DCG制作の間中ずっと一緒に仕事をするわけにはいかないのでチェックの時だけきてほしいですが、うまく時間が合わないので非効率になる。 また、二人の専門職が絡めるだけの高収入な仕事ばかりではないので低収入な仕事ではコストが高くなる、といった問題があります。

『成長型』はデザインビズのための学校や教育ツールがないので、カメラマンのノウハウを持っている方は3DCGを学ぶのにムービーも含めて3DCGを学ばないといけない。しかも静止画を学ぶ良い教科書がないので最後は手探りになります。 一方で3DCGクリエイターが撮影スタジオのノウハウを学ぼうにもスタジオに行くチャンスを作るのは非常に難しいようです。

謎の答えは見つかりましたが、それを実現するツールが少ないという新たな問題が出てきましたね。 現在活躍している制作プロダクションやクリエイターの方々は大変な苦労と時間をかけてこの問題に取り組んでいるというのが現状で、そのノウハウは社内でのみ利用されています。

パーチの目的は業界に広くノウハウを提供していくことですので、この問題を解消するトレーニングツールを制作しています。
第1段はすでに発売中の『3DCG広告写真制作トレーニングツール』です。詳細はサイトをチェックしてください。
http://www.perch-up.jp/design-viz/training.html

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今後もデザインビズ教育を充実していくために専門学校などの教育機関への働きかけや、充実したトレーニングツールやカリキュラム作り準備していますので、便利に使ってみてください。

それとコマーシャルフォトという広告写真業界向け雑誌を発刊している玄光社からはスタジオライティングを開設した良い書籍がいくつも発刊されています。現在デザインビズで活躍しているクリエイターさんに聞くと、かなりの人が読んでるお薦めの本です。
http://www.genkosha.com/mk/cat178/cat24/

私たちがトレーニングツールを作る時もそうでしたが、カメラマンさんに撮影スタジオで商品を撮ってもらう、しかもその時のライティング配置図を掲載させてもらうというのは時間もお金もずいぶんかかってしまうので一般には手に入れづらいノウハウです。独自にこの教育法を導入している制作プロダクションさんも実感を込めて「大変ですよねえ」ともらしてました。

今回のコラムでは『魅力的な広告写真を3DCGで作る』という謎を解明しました。撮影ノウハウを手に入れるためには『撮影スタジオのライティングを3DCGで、数多く模倣する』ことが最も優れたトレーニング法でした。 次回以降のコラムでも、広告業界とデザインビズ業界のこと、仕事をより良くするための情報などをご紹介していこうと思いますので、仕事にお役立てください。

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