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第4回:異なるカラースペースファミリー間での変換

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これまでのThe Color Magazineで、カラースペース(イメージステート)の3つのファミリー、すなわちoutput-referred (例:ビデオ)、 scene-referred (例:OpenEXR)、 intermediate-referred (例:DPX) について紹介してきた。また前号でscene-referred と intermediate-referredファミリーはoutput-referredファミリーと比べて、表示デバイスにカラーをフィットさせる唯一のエンコードである、 (現実のシーンの) ルミナンスレンジのエンコードの要素が強いことを学んだ。ポストプロダクションにおける作業の最終結果は、当然のことながら「人が見る」ためのものであり、従ってoutput-referredエンコーディングに属するものである。しかしながら、scene-referred または intermediate-referredエンコ―ディングでキャプチャし、最終のカラーグレーディングまでそれを保持することで、カラーコレクションソフトウェアのフルパワーを活用することが可能になる。このダイナミックレンジを維持することは、例えばビジュアルエフェクトのショットの場合であれば、より良いコンポジティング結果につながる。

つまり、選択は2つあるようだ

1 ビデオグラファーにライティングとカメラのトーンのレスポンスを調整してもらい、ブロードキャストモニター上でのイメージが最終結果で意図しているものと全く同じになるようにする。これにより、後の工程でビデオグラファーの意図は何だったのかという不確実性がなくなるが、カラーコレクションの過程で変更を加えられる余地は比較的小さくなる。

2 ビデオグラファーにカメラのトーンのレスポンスをフラットか疑似ログに調整してもらい、エクストラな色調レンジを維持するようにする。これはカラーコレクションの際により高い柔軟性を持つことを意味するが、ブロードキャストモニター上でそのまま見ようとすると正確なイメージにはならないため、ポストプロダクションにおいて不確実性が生じる可能性がある。

イメージステートの用語に置き換えると、上記1ではoutput-referredイメージが記録されており、上記2ではintermediate-referredイメージが記録されていると考えることができる。以前学んだように、intermediate-referredエンコーディングは (scene-referredのように) ダイレクトに見ることができない。このラインで考え方を進めていくと、上記2つのオプションの利点を合わせ持つ3つめのオプションが見えてくる:

3 ビデオグラファーにカメラのトーンのレスポンスを疑似ログに調整してもらい、エクストラな色調レンジを維持するようにする。さらに (ハードウェアまたはソフトウェア上の) 表示経路に色変換を挿入し、モニターに情報が送られた時に意図したようにイメージが見えるようにする。記録される信号は、カメラからの出力であり、ディスプレイに送られる信号ではないことに注意して欲しい。



この3つめのアプローチはフィルムベースのデジタルインターメディエイトワークフローのための方法であったが、ここ最近ビデオワークフロー (だいたいはシネマ向けではあるが) でも一般的になってきた。Autodesk Lustreのようなカラーコレクションソフトウェアは、必要な色変換 (例えば3D LUT) をリアルタイムに適用し、このスタイルによる作業を容易にしている。Lustreはintermediate-referredカラースペースにおけるカラーコレクションに実に適切で、その目的に特化したツールを提供する。また撮影現場における使用では、今やビデオカメラからの疑似ログイメージを3D LUTを通してモニタリングするためのハードウェアボックスが多く存在しているが、この機能はディスプレイ自体にビルトインされることが多くなってきている。

この3つめのアプローチを行うためには、ディスプレイに対する色変換を、キャプチャデバイスを使用して色調レスポンスと同期させなければならない点に注意して欲しい。フィルムベースのワークフローでは、低いコントラストのデジタイズされたソースイメージ (つまりログCineonスキャン) は広く知られているカラーネガフィルムのレスポンスにあたるものであり、ディスプレイのための変換はプリントフィルムのレスポンスを含むので、マッチドペア (matched pair) である。ビデオの世界では、多くの様々な疑似ログカメラカーブが存在するため、ディスプレイのための適正な変換が慎重に選択される必要がある。

「マッチド」として変換のペアを記述したが、これらは反比例の性質を持つわけではないことに着眼しなければならない (ペアはxとxの平方根のようなものではない)。カメラの変換は量子化を改善するためにノンリニア性を適用する必要があり、またカラーのマトリクス化も通常必要になるが、センサーが認識できる全てのダイナミックレンジを維持する必要がある。これは緩やかではあるが美的部分の増大に繋がる。私たちが議題にしてきたイメージステートのアイデアにおいては、これはscene-referredからintermediate-referredイメージステートへの変換である。ハイライトやシャドウの情報が現実のシーンと比較して一部失われる可能性はあるが、これはセンサー (またはフィルム) の制限によるものである。デジタルの領域になれば、scene-referredエンコーディングと intermediate-referredエンコーディング間の変換はほとんどロスレスで行うことが可能なのである。 (さらに、これら2つのステートの違いは、カメラロウ (camera-raw) エンコーディングのように、しばしば不明確である)。



ディスプレイ変換はカメラ変換よりもさらに複雑である。イメージステートの用語で説明すると、intermediate-referred (記録されたもの) からoutput-referred (表示されるもの) に変換されなくてはならない。The Color Magazine 6月号で学んだように、これら2つのステートは次の3つの大きな理由によって異質なものとなっている:屋外でビューする場合と、映画やビデオを見る場合の視聴環境の違いが非常に大きいこと;実際の表示技術が持つ、ダイナミックレンジとカラーガマット (色再現領域) の制限;私たちは嗜好により事実とは違ったシーンを表示することを望む場合があること。 そしてさらに、必要な比色分析を計算したら、その比色分析を生成するために、ピクセルバリューを計算し表示デバイスに送る必要がある。その後これらは1つの3D LUTにまとめられる。この計算は人間の視覚の数学的なモデルをベースに、キャプチャデバイス、表示デバイスを関与させながら行われる。 (Autodesk Lustreは様々なフィルムストックと表示デバイスに対応した3D LUTを持っており、サードパーティの3D LUTにも対応している。)

scene-referredからoutput-referredへの変換はintermediate-referredからoutput-referredへの変換プロセスに似ている。これらは情報のロスが常に伴うことを覚えておいて欲しい (特にハイライトの情報、一般的にカラーガマットの情報も失われる)。例えば、ハイライトとシャドウの情報を持ったプリントフィルムのSシェープカーブを想像してみよう。通常output-referredファミリーからロスレスでscene-referredまたは intermediate-referredへ変換することは不可能である。これは最初に述べたビデオワークフローが、最良の撮影方法ではない理由の核心部分である。後に役立つであろう情報を捨ててしまうことになるのである。

今回のThe Color Magazineでは、いくつかのビデオワークフローを分析し、3つのイメージステート間での変換についてより知ることで、カラースペースファミリーの概念についてさらに考察を深めた。疑似ログ (すなわちintermediate-referred) イメージの記録と、適正な色変換を通した表示が、いかにビデオ撮影に有利な方法を提供できるかを学んだ。
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