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第5回:REDカメラの階調再現

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最近デジタルシネマトグラフィが注目されているが、REDカメラほど話題になっているカメラはないだろう。しかし、このカメラとその関連ソフトウェアに関する資料がないため、ポストプロダクションでREDによる素材に携わる者は、ウェブ上のフォーラムに列挙された投稿をかき分けるようにして、試行錯誤することになる。そこで今回のThe Color Magazineでは、独自に行ったRED ONEカメラのテスト結果を報告する。
注:これはREDファームウェアのビルド16(この記事を書いている時点で最新のもの)を使っているので、他のファームウェアバージョンを使ってキャプチャした画像には当てはまらないかも知れない。

REDカメラについて最初に理解しなければならないことは、ビデオカメラと異なり、RAWイメージを記録する点である(デジタル一眼レフに似ている)。これらのイメージを映画やビデオのプロジェクトで使用するには、ウェーブレットによる解凍とベイヤー方式ピクセルモザイクのインターポレーション(補間)に加えて、適切なカラースペースへの変換が必要である。REDカメラにはカラーに関連する様々なメニュー設定(ホワイトバランス、ルック、カラー、ゲイン、トーン等)があるものの、これらの設定は記録されるものに影響しないようである。そのかわり、ポストプロダクションでファイルが変換される際に使用するメタデータとして保存される。これらの設定は、ロケでのモニタリング用のビデオモニターとファインダーの出力にも影響を与える。

RED社は、RedAlert、RedLine、RedCine等、圧縮RAWファイルを標準ファイルフォーマットに変換する様々なソフトウェア・アプリケーションを提供している。他にも、基本的にRedLineのフロントエンドであるCrimson等のサードパーティ社製ツールが存在している。これらアプリケーションはいずれも、中では同じ変換処理を行っているようで、オプションもよく似ている。これを使うと、キャプチャの際にカメラが記録したメタデータをチェックし、必要に応じて設定をオーバーライドすることができる。

RAW値を変換するカラースペースを最初に定義する変換オプションは、Gamma(ガンマ)設定とColor Space(カラースペース)設定の2つである。Gamma 設定では、結果として生じる画像のトーンスケールをコントロールする数種類の1D-LUTから選択し、Color Space設定では、レッド、グリーン、ブルーのプライマリーの配置をコントロールする数種の3x3 マトリクスオプションの中から選択する。Gamma にもColor Space にも、同じRedSpace、Rec709というオプションがあるが、これはGamma 設定で選択したか、Color Space 設定で選択したかによってエフェクトが異なることに注意しよう。また、この設定をシンクロナイゼーションでも選ぶ必要はない。例えば、Rec709の Color Space 設定を使うと、結果は常にサチュレートであった。従って、Rec709のGamma設定でも、RedSpaceまたはCameraRGBのColor Space設定を使うことになる。

REDシステムを理解する上で特に大切な側面として、シーンにおけるルミナンス(輝度)値と、その結果REDアプリケーションが作成する画像のピクセル値の関係がある。このトーンの関係はGamma設定でコントロールされる。以下にいくつかの図で例示した。続く結果は、カラースペースをCameraRGBに設定したものである。一般に、レッド、グリーン、ブルーの各チャンネルの結果は撮影したグレースケールの色度とケルビン設定の値によって異なるので、単純化のためにレッドチャンネルのみを表示している。



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図1は、GammaをLinearに設定した結果である。このグラフは、最小16-bitピクセル値がおよそ800(65535の内)であるため、暗電流がいくらか残余している。ブラック近辺の性質はブラックシェーディング操作に依存するが、これはカメラキャリブレーションの中で行われる。テストのこの部分を始める前に数時間ブラックシェーディングを行ったので、その間にカメラの暗電流が増加した可能性はある。

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レンズにキャップをした状態で撮影したショットから手動でピクセル値を差し引いたものが、図2である。シーンのルミナンスに関しては、実際にリニアに近い反応が出ている。カメラスペックによると12ビットA/Dコンバーターで、確かにブラックとクリッピングポイントの間にダイナミックレンジがほぼ12ストップある。ラボでの設定においては、適切なピクセルアベレージングを行い、この反応を測定可能だが、ダイナミックレンジの下から3、4ストップでは非常にノイズが多く、実際の画像キャプチャでは用途が限られるであろう。また次で分かるように、Gamma設定の大半は、トーンスケールのこの部分を大きく圧縮する。

注:これらの図中における露光の軸はゼロのラベルがついており、ISO320用に照射した時のミッドグレイオブジェクトのルミナンスを示している。フィルム感度と同様、デジタルカメラの感度については意見が分かれるところだ。「標準」露光のリファレンスは、カメラのデフォルト設定であるRedSpace Gammaオプションのシェープ、カメラのユーザーマニュアルにあるISO 320推奨露出、およびこの分野の技術標準に基づいている。フィルム撮影の場合、原則として予想されるライティングの状況に応じて「センサー」を選ぶ。REDの場合は、固定速度でのセンサーがあり、ポストプロダクションでノイズとのトレードオフを行うことになる。フィルムストックのプッシュと似たようなものである。このトレードオフは、ISOまたはExposure設定で行う。(REDカメラのISO設定を変更しても、ポストプロセスに影響するだけでキャプチャには影響しないと理解している。)

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図3はログ形式のGamma設定(PDLog985、PDLog685とRedLog)と、典型的なCineonスキャンのどこにネガフィルムが入るか(フィルム曲線の足部と肩部は除外)を示している。

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図4はGamma設定 PDLog985と、Exposure設定 0(デフォルト)および-2である。
Gamma設定PDLog985とExposure設定-2の組み合わせは、階調再現に関してロガリズミック型フィルムスキャンと最もよく似た結果が得られる。この場合、標準的に露光されたグレーカードは、10ビット値約470相当になる(仕様による)。

色再現においては、どのColor Space設定にも、ネガフィルムに近いものはない。その結果、通常のフィルムDIプロジェクトで行われるような一般的なプリントフィルムシミュレーション用の3D-LUTを使用することになり、おそらく適切な色再現ができず、かなりのグレーディング作業が必要になる。

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図5は、ビデオセントリックのGamma設定:Rec709 およびRedSpaceである。(図の比較を容易にするためにここでも Cineon のリファレンスを使っているが、これはビデオ型カーブにはあまり適切ではない。)

Rec709 Gamma設定が、あらゆるログ型オプションと同じ位、カメラによるハイライトヘッドルームのキャプチャを保持できることは非常に興味深い。スチル写真でのRAWキャプチャの経験や、あるいはRAWとログが最終形のJPEGやビデオよりもハイライト情報を多く再生することのできる、ネガフィルムのCineonログスキャンを扱った経験がある場合には、直観に反するように感じられることと思う。REDのフッテージでは、ISO 320による照明を前提とした場合、Rec709 Gamma 設定が暗く見えるので、グレーディングが必要になるが、カメラが記録したハイライト情報は保持されているようである。

これもおそらく予想に反して、RedSpaceのGamma設定では、Rec709よりもむしろ一般的なビデオカメラに類似した結果になる。適切に露光された画像があった場合、RedSpace は、追加のグレーディングなしで、ビデオモニターやグラフィックスモニター上で良好なコントラストと輝度を得られる唯一のGammaオプションである。しかし、過剰なハイライトロールオフやシャドーは、カラーコレクションにおける高い柔軟性をいくらか限定するであろう。

このレポートが、ポストプロダクションでRED素材を扱う必要のある方の役に立ったなら幸いである。また、オートデスクソフトウェアを用いたREDワークフローに関するガイドブックも用意しているので、合わせて参考にして欲しい。
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