トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第24回:建築CG今昔物語 その2

2012.10.15

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  • 学生・初心者
  • 建築・製造・広告

前回はSiliconGraphicsに代表されるワークステーション時代の終わりまでを綴りました。今回はワークステーションに取って代わったPCの時代の幕開けから現在に至るまでをお話しします。現在も使用しているPCベースの話になるので、前回ほどのインパクト(懐かしさ)はありませんが、最後までお付き合い下さい。

PCが制作の主役に

SiliconGraphicsからPCへ移行し始めたのは2000年前後だったと記憶しています。WindowsNTが使えるようになってきて、高性能なPC用のグラフィックボードが世に現れ始めた頃でした。また、グラボの登場に併せてPC用のCGソフトが拡充し始めた時期でもありました。ハードの選択はグラフィックボードの性能が第1で、当時候補に挙げていたのはNEC、Compac、Intergraph等のメーカー製のPCでした。何れも実際にプロジェクトで使用したデータを持ち込んでのデモを行って比較していました。候補に挙げたメーカーではIntergraphが老舗で実績もあったのですが、私の天の邪鬼な性格が頭をもたげて来て、結果としてCompac+FireGLの組み合わせを選びました。価格は100万超えです。それでも今と比較すると恐ろしく性能は低いのですが、PCでここまで出来るようになったのかと当時感嘆したのを覚えています。

ソフトは当時主流だったLightWAVE3Dと3ds Max をテストしました。ようやくここで3ds Maxの登場ですが、私はLightWAVEのテストを担当し、他の者に3ds Maxのテストをさせました。私はテストだけというのは出来ない性分なので、いきなりアニメーション制作の実プロジェクトに投入してテストかたがた制作を行いました。当時のLightWAVEの最大の難点はUVが無かったことです。現在のプロジェクションマップのような形でマッピングするしかありません。これには閉口しましたがそれ以外は案外スムーズに制作は出来ました。

アニメーションでの最大の利点はネットワークレンダリングが無償で使えたことです。今でこそネットワークレンダリングは無償が当たり前ですが、当時は分散させたい数だけ本体ソフト(又はネットワークモジュール)が必要で、10台ぐらい繋ごうと思うと数百万以上かかった時代です。この恩恵は制作コスト削減に大きく貢献したのは言うまでもありません。本来はハードの費用もここに加算されるところですが、そこは大成建設。計算させるだけのハードは幾らでもありましたから最適な環境です。

3ds Maxも同様で、当時のPC用CGソフトの最大の魅力だったと言えます。3ds Maxのテストは静止画で行いましたが、十分な絵が描けていたように記憶しています。前述のUVの問題やプラグインソフトの充実度等から結果的には3ds Maxを導入することに決めたのですが、私は使いませんでした。アニメーションの制作では既にワークステーションのアップグレードを断念している時期でもあったので、ネットワークレンダリングの都合で使用しましたが、静止画では使用しませんでした。PCの性能が上がったからといって、まだワークステーションを凌駕していたわけでは無かったので平行してワークステーションも使っていた関係でPCでの制作を無理に行う必要が無かった事も理由の1つですが、最大の理由は質感に満足できなかったからです。3ds Maxの性能が低いのか、私の性能が低いのか定かではありませんが(多分後者だと思いますが)、慣れ親しんだワークステーションソフトほどの質感を出せませんでした。

だからといってこのままずっとワークステーションを使い続ける訳にもいかず閉口していた頃に出会ったのがLightscapeです。ワークステーションでもラジオシティレンダラーは試したことはあったんですが、まだ実用一歩手前といった印象が拭えていないといった時期です。しかしこのLightscapeは質感が非常に高く一発で気に入りました。問題点が無かった訳ではありませんが質感と設定のやりやすさが決め手で、私のPCでのCG制作の相棒はLightscapeに決まりました。Lightscapeで最も良かった点は、実はマニュアルです。ラジオシティの原理から事細かな記述があり、読めば誰でもラジオシティ(Lightscape)を理解出来る内容でした。私のGIの基礎を固めてくれたといっても過言ではありません。

しかし私とLightscapeの密実な関係はそう長く続きませんでした。Lightscapeのバージョンアップのアナウンスが滞り、同時に3ds Max VIZにそのエンジンが搭載されたからです。今は消滅してしまったVIZというバージョンですが、当時は3ds Maxの建築向けバージョンという位置づけで、機能も3ds Maxより若干絞ってあったため価格も安く、魅力的なソフトに仕上がっていました。このソフトから建築CGの世界に入った人も多いのではないかと思います。今でもこの様なバージョンがあると魅力的だとは思いますが、復活は無理なんでしょうね~。愚痴はさておき、早速VIZを購入して制作の主流ソフトとして使い始めました。この頃から殆どワークステーションを使用しなくなりました。そのVIZのラジオシティエンジンも3ds Maxに移植統合されVIZの役割は3ds Maxに移行し、本格的に3ds Maxを使用した現在に至るCG制作がスタートします。ほんの数年でめまぐるしくハード、ソフトが移り変わっていった時代です。

CGの表現力

ここまでハード・ソフトを軸に変遷をお話ししてきましたが、CGの表現力についてもちょっとお話ししたいと思います。ワークステーション時代からPCに移行するまでの期間は表現力=リアルな表現だったと言えます。というのも当時はリアリティのある表現をするにはハード・ソフトが追従できず(特にハードの足枷が強く)、現在のGIレンダリングとはほど遠い表現力でした。プアな表現を改善するためにハード・ソフトのバージョンアップには絶えず追従する姿勢が必要不可欠で、そのコストも馬鹿にならない状況でした。それが近年はハード・ソフトの進歩によって誰でもある程度のリアルな絵が描けるようになってきました。ある程度といいましたが、過去にリアルな表現に対して四苦八苦していた時代よりもクオリティは格段に高いものです。しかも価格がこなれてきたため多くの人がCG制作を行う事が可能になり、才能ある人達がこぞってリアリティのある表現を追求していった結果、表現力は格段に進歩していきました。今では一般の人から見て十分リアルな絵は誰しも描けるようになっているので、別の観点からの表現力が問われる時代になっていると言えます。


設計:Next One Atelier CG制作:Next One Atelier

私とGI表現

ハードの高性能化は当然として、リアルな表現の立役者とも言えるのがGIレンダリングエンジン(mental ray、V-Ray等)なのですが、私は2007年まではラジオシティで通してきました。私が歳を取って頭が固くなってきて新しいことを覚える気力が萎えてきていたのも裏事情としてはありますが、1番の理由は、コンペ等でリアルな表現よりもコンセプチャルな表現を求められることが多かったからです。色々な意味でラジオシティレンダラーは立体を認識させるリアリティと、コンセプチャルな表現を可能にする柔軟なソフトで非常に重宝しました。大成建設を辞めるまでの間、私には他のレンダラーは必要なかったのです。また、この頃からレタッチも多用するようになりました。これまでは添景以外はレンダリング一発で仕上げることが多かったのですが(今思うと良くやっていたな~と自分を褒めてやりたい感じですが(笑))、コンセプチャルな表現の要望に答えるためにはレタッチは必要不可欠でした。

独立後に様々な要求に応えるべく mental ray、V-Rayを使い始めたので、私は今風のGIレンダリングをやるようになってからたかだか5年程度の若輩者です。私が拙書で「GIレンダリングは易しい」と訴える根拠もここにあるのですが、短期間でソフトを使えるようになっているのは大成時代にコンセプチャルな表現に取り組んだことが最大の理由だと思っています。使えるといっても一流のGIレンダラーの方々と比べれば低レベルな次元だとは思いますが、現在の建築CG表現においては空間を如何に伝えるかが重要であり、そのためにはある程度のリアリティは必要であっても、ソフトの習熟度は必要な分だけで良いというのが私の持論です。特にこれからはGIレンダラーの習得はそこそこにしておいて、Realtime Rendererを使った表現手法や携帯端末などを使った表現手段に重きを置く事が重要な時代に入ったと言えるでしょう。

最後に

駆け足で25年を纏めてみました。こうして文章にすると、今の私を支えているのはここに綴った経験なんだなと感慨もひとしおです。ただ歳を取るというのは悲しいもので、昔の事は事細かに覚えているんですが、最近になればなるほど記憶が不鮮明になっています。お話しした内容で年代と事柄がずれている箇所もあるかとは思いますが昔話と笑って許して下さい。 最後まで読んで頂いた方々にどの程度有益だったかは怪しい内容ですが、ここに書いた建築CGの変遷が、これからの建築CGを予見するにたる内容になっていれば幸いです。

今回掲載したCGは本文と関係の無いパースです。実は今取り組みつつある海外プロジェクトのパースです。2アングルを2日強で制作したものですが、これまでのCGレンダラーとしての立場では無く、別の意味合いで参画しているプロジェクトです。現段階で受注が確定している訳ではないのですが、この辺りの話を次回にでも出来たらと思っています。受注する事を祈っているんですがね~、こればっかりは何とも(涙)。

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