トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第25回:BIMと地方の関係

2013.04.04

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皆様、約2回分の執筆期間を経過してしまいましたが、お仕事の方は順調でしょうか? 私がコラムをサボっている間に経済は大きく動き出し、アベノミクス効果で株価の上昇と円安が進みました。これを受けて経済が持ち直し、今年が良い年になることを期待してコラムを始めたいと思います。

前回は、当時私が取り組んでいたプロジェクトのお話しを次に書くような事をお話ししていましたが、政治情勢によりプロジェクトが前に進むどころか1歩後退してしまったので今回は取り上げません。今夏には何らかのリアクションを取る予定なので、その近辺でお話し出来ればと思います。

という訳で今回は「BIMと地方の関係」についてお話しします。「BIMと地方の関係」というタイトルで何かピンと来る方がどの位いるでしょうか。我々CG制作者もBIMを導入しましょう、そしてBIMのオペレーターとして新しい稼ぎ口を探しましょう......と、いった話では勿論ありません。「BIM」は言わずと知れたBilding Information Modelの事です。昨今ようやく市民権を得てきた言葉ですね。もう一方の「地方」とは地方都市の事を指します。さてこの2つの言葉にどういった関係があるのでしょうか。

BIMと建築ビジュアライゼーションの今

設計手法であり設計ツールとなるBIMと一見関係が希薄に思える建築ビジュアライゼーションの関係については過去のコラムでも書きました。その時は3D設計による恩恵としてCG制作側から見ればモデリングの手間が省け、余計な修正が発生しないなどの負担の軽減の話と、3Dモデルが設計段階で構築される事で、CG発注のハードルが下がり発注が増えるのではないかといったメリットを挙げました。私がコラムに書いて3年ぐらいが経過していますが、BIMとCG制作の関係性に対する皆さんの実感はどうでしょうか? 

自分でコラムを書いていながら恐縮なんですが、私自身は半々と言ったところです。実際に図面の代わりに3Dデータを頂いて制作を行う事は多くなりましたが、それによって制作初期での負担こそ減りましたが、自らが手がけたデータでは無い事に起因する修正の難しさや手間なども発生しています。制作の負担が大きく軽減されるプロジェクトもあれば修正などの手間で負担が増える場合もあります。プロジェクト全体を見れば若干プラスと言ったところです。BIMの普及により発注が増えるのではという話は、パースやアニメーションの制作ではあまり実感がありません。逆に簡単なパースの制作などは減少する話をしましたが、此方は減っているのでしょうが実感としては大きな発注の減少にはなっていないようです。結論めいた事を言えば「現状ではBIMはCG制作に追い風になっていない」と言っても良いような状況に思えます。

それではプラス項目は殆ど無いのかというとそうでもありません。先ほど「パースやアニメーション制作では」と理を入れているのは、それ以外ではプラスになるような制作業務が発生しているからです。例えばBIMデータの「見える化」の手法としてビジュアライゼーションが必要になり、「見える化」のシステム(ソフトウェア)にBIMデータを持って行くためのビジュアライゼーション的なデータコンバートの制作があったり、従来手書きが多数を占めていた営業・企画・提案段階のビジュアライゼーションを、設計の早期からあるBIMもどきのラフなデータを利用してパースやアニメーション制作してプレゼンテーションを行ったりとプラス要因が現れ出しています。

この様な制作も従来の予測の範疇に入りますし、ますます拡大していくものと思いますが、過去のコラムで書いたような、真っ先にCG制作側に影響しそうな事はまだまだ起こっているとは言い難い状況です。これは私の読みが甘かった(間違っていた)せいでしょうか。読みが甘かったのは間違いないのですが、読み間違ったのはBIM化の過程での設計の関わり方でした。確かにBIMは普及しだしていますが、各社様々な対応をしていて、それぞれの会社での都合が優先されたBIMになってしまっています。特に設計段階でのBIMが、此方が想定した(そうあるべき)状態になっていないのが原因で、BIM化によって想像されるCG制作の流れになっていません。簡単に言えば一部の会社や特殊なプロジェクトを除いては、まだまだBIMが設計者に普及しているとは言えない状況で、BIM化によって本来ビジュアライゼーションが加速していく(発注業務が増える)べきところが、その段階に移行出来ないのが実情です。

あ~、BIM化の流れでCG制作の仕事が増えるのかと期待したのにまだまだ先か.......と、愚痴が入りそうですが、実は私達にとってメリットがもたらされています。そのメリットに関するキーワードの1つが「地方」です。

「地方都市」での建築ビジュアライゼーション

CG制作者にメリットを生み出すまでに至っていないBIMですが、1つ確実に変わりつつある事があります。それは設計段階で3Dデータが活用されだしている事で、設計の形状検討などをようやく3DCGで行うようになってきました。現状ではこの事もメリット・デメリットが共存してしまっているのですが、3Dデータがワークフローの中で流通しだしている事は歓迎すべき事で、このBIMの一面が「地方都市」に繋がっているのです。


設計:OOSP Atelier CG制作:Next Picture

私が実際に経験してた制作業務から情報を整理すると、地方でもBIMでの設計を求められるケースが増えてきているようです。外資系企業でBIMでの設計がコンペ要綱に入っているのは良く聞かれる話ですが、大都市圏を飛び越えて地方でこのような潮流が出てきている事は面白い現象です。本当に? と思われる方もいると思いますが、これにはちょっとした事情があって、BIMとは言っていますが、要はCG(3D)によるビジュアルな提案が求められているという現象です。3Dデータの流通でCGが一般的になり、またBIMの見えやすい側面としてのビジュアライゼーションがクライアント側を刺激した結果だと思います。私が知っている地方都市で活躍している設計事務所に話を聞くと、住宅の提案からリノベーションにいたるまでCGで提案しているケースがかなりの件数を占めているとの事です。また、その地方都市で設計から提案まで全てをデジタル(CG)で行っているハウスメーカーが盛況だとも話していました。

実際には本来のBIMでの設計を求められるケースもあるとは思いますが、CGによるビジュアルな提案が非常に多いのは事実です。と言うことは地方都市ではCG制作業務のニーズが増大していると言えます。ようやく話が見えてきましたが、BIMという名前が広まる事でCGによるビジュアルな提案が広まり、しかも地方都市で現実になってきていると言うことです。そしてそこにはCG制作のニーズがあると言うことです。

地方都市のCG制作を行う

今回のコラムの回答は「地方都市のCG制作を行う」です。これを聞いて、「どうやって地方の仕事を取るの?」「都心でやったらコストがペイ出来ないでしょ!」と思われる方が多数いるかもしれませんが案外そうでもありません。仕事の獲得には現地の協力が不可欠です。これには人脈が必要となりますが、私の場合は大学の同級生、後輩、友人など設計事務所を営んでいる知り合いが協力してくれそうです。なにしろクライアントがCGを求めていますし、競争と言った意味でもコストさえ合えば喜んで協力してくれるでしょう。

フィーの問題ですが、確かに都心と比較すると1/3前後といったかなり安い価格になっています。しかし、この1/3程度という価格はネックになるのでしょうか? 良く考えて見ましょう。例えば都心でパース1枚が15万だとします。そうすると地方では5万程度になります。確かに同じ作業量であれば話にならないフィーになってしまいますが、実は作業量が明確に違います。私自身の経験をもとにお話ししますが、15万のパースを都心で描いていると実作業時間は4~5日取られてしまいます。多くは修正・変更対応で、下手をすると最後の2日間は徹夜なんて事はざらです。一方地方では1日弱、かかっても丸2日は取りません。全てとは言いませんが多くは短時間で制作は終わります。1番の理由は修正や変更があまりないからです。場合によっては背景さえ適当(無し)で良いものもあります。 仕事の内容が違うのか設計者、はたまた施主の質が違うのか、ここでは明言を避けますが、事実として短時間で制作が完了します。1日の単価に直してみれば都心では3万位ですが、地方でも同じような単価になります。

なんと、地方と都心でフィーは変わらないのです。時間単価に置き直せば更に地方のメリットが出ます。徹夜を強いられてもさしてフィーが上がらない都心か、まっとうな時間で終わらせることが出来る地方の仕事か答えはハッキリしています。業務内容にもよりますので全てとは言いません、日単価、時間単価に直せば地方の方がフィーが良いケースが大部分といっても過言ではありません。後は仕事量だけの問題です。数をこなせば地方の仕事の方があらゆる面で都心を逆転してしまいます。しかも仕事量はあるのです。


設計:OOSP Atelier CG制作:Next Picture

最後に

ここで挙げた地方都市と言う言葉は日本の全ての地方都市を指している訳ではありません。私が関わって実際に経験した1~2の都市です。ですので今回のコラムは日本の地方都市の全てにおいて実情かは明確にお答え出来ません。ただ間違いないのは、ここに挙げたような地方都市は存在していると言う事です。これを黙って見過ごす手は無いと思うのですが皆さんはどう考えますか?
(このコラムを読んで下さっている地方都市在住の方が入らしたら、現状を一報頂けませんか? 何らかの形でお礼はさせて頂こうと思いますが。)

その他にも実は色々と起こっているのですが、今回はこのお話しだけにして、またの機会に別の現象をお話ししたいと思います。今回掲載したCGは地方での住宅のパースです。モデルは設計者自身が作成しています。そのデータを元に修正を加えながら描いた2枚ですが、制作時間は4~5時間程度です。背景は空だけ、添景は車だけといったものですが、使用目的に合致しているので問題無いパースです。先ほどの話でこれが5万の仕事だとすれば、一枚の単価が2.5万の激安パースと言うことになりますが、5時間程度の作業で5万の仕事と考えればどうでしょう。如何ですか? 少し興味が湧いてきましたか?

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