トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第17回:制作費用について考える その3

2011.09.14

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前回、前々回に引き続き制作費について考えて見たいと思います。

前回は「真っ向勝負でのアプローチ」についてお話ししました。因みに真っ向勝負とは、成果品のクオリティを上げ、クライアントにクオリティで認められるようになり、その事を元にフィー向上の交渉材料にするといった感じの話でした。(詳細はVol.16を参照下さい)

今回は前回予告したように別のアプローチで攻める方法を考えて見たいと思います。これまでの本コラムに出てきている内容のお復習いに近いので新鮮さは少ないかも知れませんが、フィーという切り口で考えると少し違った見方が出来ると思います。また、前回に比べれば今回の方がフィー向上(正確にはトータルの制作費の向上)の近道だと思います。

制作範囲を広げ、別のフィーを組み込む

制作範囲を広げるとは、これまでもコラムでお話しした内容と同じになりますが、制作出来るコンテンツを増やすという事です。例えば現在CGパースのみを請け負っているとします。パース制作の業務を行う際に時々クライアントの口からでるのが、「お宅はアニメーションも出来ますか?」というものです。CGパースのみしか請け負えなければ、このアニメーションの仕事を失注する事になります。

わざわざクライアントから新規の仕事を打診して来ているのに受けることが出来ない!もったいない話だと思いませんか。この様な時に「アニメーションも大丈夫です。うちにやらせて下さい!」と答えるために是非制作出来るコンテンツを増やすよう心がけて下さい。制作出来るコンテンツが多くなると、単純に受注の間口が広がるだけでなく、前述の様に1つの仕事から複数の仕事へ繋げることが可能になります。1つの業務を複数の仕事へ繋げることで、最初の業務単体のフィーは同じでも、その仕事を元に別の仕事のフィーを受け取ることが出来るので、結果として業務のトータルフィーを上げることが出来るようになります。

重要な点は、最初の業務でベースのデータは制作している訳ですから、それに続く制作は経費を安く抑えることが出来き、単体の受注よりも利益率が向上します。つまり利益が上がることで、これまでと同じフィーでも実質フィーが上がったことになります。また、受注の間口が広がることは、単体の仕事のフィーが向上する話とは直接関係がないような気もしますが、これは営業なしで仕事を受注したことになるので、営業経費を削減したことになります。そうです、ここでも前述同様で額面ではわからないフィーの向上があるのです。更には、クライアントからワンストップで仕事を任せて貰える可能性が出てきますので、上手くいけば1つの仕事のフィーが大きくなる(1つの依頼が複数の制作内容を含んでいる)メリットがあります。

建築CGをベースとした制作業務の種類を例として挙げておきます。また1つの仕事が別の仕事に繋がる例を私の経験をもとに挙げておきます。

【制作業務】

CGパース アニメーション 映像編集
WEB制作 Flashコンテンツ(action scriptを含む) Directorコンテンツ(lingoを含む)
Realtime Renderingコンテンツ(Showcase等RR系ソフト、Quicktime) VR・AR関係
パワーポイント(Keynote) DTP(Illustrator、Indesign)関係
プログラミング全般

【業務上の制作コンテンツの繋がり 】

CGパース → アニメーション → 映像編集
CGパース → Realtime Renderingコンテンツ、VR・AR
WEB制作 → CGパース、アニメーション、映像編集
WEB制作 → Flashコンテンツ、Directorコンテンツ
パワーポイント → CGパース、アニメーション、映像編集
DTP制作 → CGパース
DTP制作 → パワーポイント
Realtime Renderingコンテンツ → CGパース、アニメーション

設計/Visualization:Next Picture 株式会社

ここまで読んで、「言いたいことはわかる。しかし現業でも忙しいのに、そう簡単に色々な業務を出来るようになるのは難しいよ。ソフトの購入だって投資額としては結構な額になるし。」と思われた方は多いのではないかと思います。私はたまたまサラリーマン時代に色々な物に手を出せる恵まれた環境にいたから色々引き出しを増やして来れたのであって、そう言う環境にいない方からすればもっともなご意見です。

では、どうすればいいのか?答えは外注する事です。この事も以前のコラムで書いたと思いますが、協力してくれる仲間(業者)と業務のネットワークを作って対応するのです。これだったらそんなに難しくなく仕事の幅を増やせることにはならないでしょうか。

勿論、外注に投げる分経費は嵩みます。しかし、幾ばくかなりディレクター料又はマネージメント料という中間マージンは取れますので、1つの仕事でトータルのフィーを増やすことが出来ます。

もっと重要な事は先にも書いたように、現状以外の仕事が出来ることでクライアントを逃がさずに済むという事です。仕事によってはディレクションやマネージメントが大変で、中間マージンではペイ出来ない事があっても、クライアントをしっかり掴むことができれば、来なかったはずの次の仕事が期待できます。当然、次の仕事があれば前回のマネージメントの赤は帳消しに出来ます。

外注というと、大きな会社(儲かっている会社)が下請けに出すようなイメージがあるかもしれませんが、別にそんな図式は必要ありません。さして儲かってない(貧乏暇無しですしね)会社が、羽振りの良い会社や大きな会社に話の持って行き方しだいで外注する事は出来ます。

私が考える外注とはそういう関係云々ではなくコラボレーションです。相手の地位、権力、組織の大小ではなく、パートナーとして共同して事に当たってくれる会社の事です。私の目から見て、建築CGの業界はコラボレーションが少なすぎるように思います。自分が持ってない技術を、持っている他の人間と協調して事にあたる事で、これまでこなせ無かった仕事が出来るようになり、外注した自身の有意義な実践での勉強になるような業務の関係。建築ビジュアライゼーション業界でももっともっとそういう関係が広がることが、業界の発展に繋がると思っています。

みなさんは目先の利益よりも中長期の利益を考えて何か行動を取られていますか?外注している会社の方は、その外注先をパートナーと呼べる関係で仕事をされていますか?これまでのコラムの内容を踏まえて、ちょっと考えてみて貰えれば幸いです。

海外で勝負する

海外でというと何か大変な事をするような響きがありますが、単純にクライアントの幅を広げる程度の意味です。海外の場合は、CGパースの単価が日本とは違います。クオリティに左右されるとは思いますが、日本の2~3倍程度じゃないでしょうか。クオリティといっても何か特別凄い絵というわけでもありません。通常日本でも散見できるレベルです。私が知っている範囲なので全てがそうかと言われると「あくまで私が知っている範囲」という但し書きがついてしまいますが、そういう世界が有る事は純然たる事実です。もし、私が話している様なフィーのパイが海外に眠っているのなら、指をくわえて見ている場合ではありません。どんどん出て行くべきです。

ただ、日本で営業するようには行きません。それはそうです。物理的な距離がありますから。そのため一番の問題は「どの様に営業するか(クライアントを獲得するか)」という点です。「私は英語(一般的には英語ですね)苦手だから無理」というもう一つの問題点とおぼしき事を言う方もいると思いますが、言葉が堪能な人は世の中に沢山います。前述の話と同様、パートナーを得られれば言葉の問題は解決出来ます。新規にスタッフを雇う際に英語が出来る人を採用するのも手かと思います。今のCG制作の単価が2~3倍になるのだったら、ペイ出来る内容だとは思いませんか?

という訳で言葉の問題は解決したとして、どう営業しましょうか。私も幾つか頭に思い浮かぶことはありますが、模索中というのが正直なところです。何せ、未だ海外からの受注実績がない訳ですから偉そうな事は言えません。海外からの受注は私のここ1~2年の課題です。今まさにトライしている最中(ちょっとサボり気味ですが)でもあります。幾つか考えつくことを書こうと思いましたが、紙面も尽きてきましたので、この件と、次にお話ししようと思っていた前回の課題「異業種のCGビジュアライゼーションに参入する」は次回に回したいと思います。ちょっと引っ張り気味ですが、ちゃんと書きたいのでご容赦下さい。

最後に

本コラムに関わる内容半分、宣伝半分のお話で申し訳ありませんが、9月17日~10月2日にわたってVisualizing Architectural Design Exhibition(VAD展)が東京で開かれます。日本は勿論、アメリカ、イギリスをはじめを8カ国のレンダラーがパースを出展しているこれまでにない建築パース展です。中国の有名なクリスタルCGの講演などもあります。今回の答えのヒントが垣間見れる展示会だとも思いますので、お時間のある方は足を運んでみて下さい。東京以外でもあります。興味のある方は文末のURLにアクセスしてみて下さい。

今回掲載しているイメージは、VADに私が出展している2枚のパースの内の一枚です。設計からオリジナルで起こしているパースではありますが、いつもの如く制作期間が3日程度と通常の仕事と同じ手順しか踏んでいません。もう一枚はイメージ先行の雰囲気を重視したパースです。その他の様々なパースを見てみたい方はVAD展へどうぞ。

VADに関して
http://vad.jara-net.com/index.html



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