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「プロの映像クリエイターがツールを選ぶ基準は?」"設計思想"が優れた「Media & Entertainment Collection」―CGCGスタジオ沖縄本社における活用事例

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Mayaや3ds Max、MotionBuilderさらに最近追加されたArnold5本パックなど、8種類にも及ぶクリエイティブツールがバンドルされている『Media & Entertainment Collection』。CGCGスタジオは、アジア屈指の大規模モーションキャプチャースタジオを有し、ゲームのプリレンダ―を中心に幅広い分野で3DCG開発を手掛けている。CGCGスタジオにおけるMedia & Entertainment Collection の活用事例を、取締役 山添 武氏、テクニカルディレクター 清水 裕道氏、制作部ディレクター 渡久地 憲一氏、リードアニメーター 田村 春樹氏の4名にお訊きしました。

左から田村氏、渡久地氏、山添氏、清水氏
左から田村氏、渡久地氏、山添氏、清水氏

――まずは自己紹介をお願いいたします。

山添:CGCGスタジオ取締役およびモーションキャプチャの事業部長をやっています、山添です。モーションキャプチャの撮影監督という珍しい役柄を年間30本ほどやっています。最近ではVR ZONE で開催中の「CG STAR LIVE」の舞台監督も務めています。いちエンジニアではなく、アクターと直接対話をする助監督や音響監督的な関わり方でモーションキャプチャを行っています。

清水:モーションキャプチャ部のTDをやっております。主な仕事は撮影を行うための技術的なサポートで、キャプチャデータとしての納品までを見ている立場です。データを最初に整える部分も担当しています。

渡久地:制作部でディレクターをしています。最近は進行管理や品質チェックなどが中心で手を動かす作業は少ないのですが、もともとはアニメーターとしてキャリアをスタートしています。今はアニメーション作品やインゲームのムービーなどのディレクションが中心です。

田村:CG部でリードアニメーターをやっています。5,6年ほど前にアニメーターとして入社した後、現職となりました。普段からMotionBuilderやMayaを用いてキャラクターの動きを作っています。

――CGCGスタジオについて教えて下さい。

山添:弊社は沖縄県沖縄市に本社を置く3DCG制作会社です。ゲームや遊技機などのCG制作を主としています。他にも東京と台北にスタジオがあり、CGCGスタジオ全体としての仕事を得意分野に応じて担当しています。弊社の特徴は何と言っても横10m×縦11m×高さ4mの巨大なモーションキャプチャスタジオを有している点で、これは容積で見ればアジア最大規模です。必然的に、モーションキャプチャを用いた案件が多いですね。

モーションキャプチャスタジオ
モーションキャプチャスタジオ

――CG部には現在何名ほどが在籍していますか?

渡久地:沖縄のCG部だけでいうと40名ほどで、アニメーションやリガー、コンポジターやエフェクトなど様々な職種が10名前後ずついるイメージです。ジェネラリストというよりはスペシャリストが多いですね。東京支社は100名前後で、海外テイストのアニメーションを作ってきた沖縄と異なりTVアニメを作っていた層が集まっていることもあって、自然と役割分担が出来ています。

沖縄本社の様子
沖縄本社の様子

――台北についてはいかがですか?

渡久地:台北にはCGCG Inc.の一角をお借りして、専属のアニメーターが8名おります。モデラーは4名ほどでしょうか。日本のアニメなどに興味のある現地の方が勤めていて、窓口となっているのは沖縄本社に在籍していたこともある台北出身のディレクターです。「台北スタジオを作るぞ!」という強引な感じではなく、ご縁のある所とご縁のある方がいたからこそ、出来ているという感覚です。

取材に応じてくれたCGCGスタジオ沖縄本社のみなさま

――ちなみに皆さんは沖縄の方が多いのですか?

渡久地:CG部は半分半分くらいです。今ここにいる4人も、沖縄出身なのは私だけです。

山添:面白いのが、沖縄県外からのスタッフの8割くらいが新卒採用なんですよ。県外の専門学校や大学を出て、最初の就職先に沖縄を選んで頂いているのは嬉しいですね。都市部でなくともゲームやCGに関わることが出来るという魅力があるのかも知れません。

清水:モーションキャプチャスタジオが設備としては大きいですね。これもひとつの特徴かとは思います。

山添:僕は、沖縄で働く意味は「自然」というキーワードで表せると思っていて。クリエイターは、今後3DCG業界でずっとものづくりを続けていくだけの引き出しを作れるかどうかがもっとも重要です。"多くの人から生まれる刺激"が欲しい人は東京で仕事をしてもいいと思います。ただ、それは多くの人からくるストレスと表裏一体です。対して、豊かな自然や海外との距離的・文化的な近さなどから刺激を得て引き出しを増やせるタイプの人もいて、そういう人はここ(沖縄)が向いています。CGプロダクションは、30年勤め上げるのが普通であるという一般企業と比べ歴史が浅く、"ずっと作り続ける"メソッドは生まれていません。働き方の解がない以上、いろいろな選択肢があって良いと思いますね。

モーションキャプチャスタジオから徒歩15秒で海
モーションキャプチャスタジオから徒歩15秒で海

――ここからは具体的なワークフローについてお伺いします。CGCGスタジオは「Media & Entertainment Collection」ライセンスを100本以上導入していますが、その理由を教えて下さい。

山添:ゲーム向けムービー制作などのプリレンダ―が中心の弊社は、揺らぎがない形で映像を提供したいということを第一に考えています。その中でモーションキャプチャを軸とした「3DCG制作を中心としたコンテンツ開発会社」というのが我々の立ち位置だと思っています。当然ですが、そこの核にはまずMotionBuilderが必要になります。また、仕事内容が多岐に渡りがちな3DCG制作会社だからこそ、MotionBuilderをベースとしMayaや3ds Maxどちらの仕事が来ても対応できる「Media & Entertainment Collection」のようなバンドルパッケージはべストの選択肢でした。

取材に応じてくれたCGCGスタジオ沖縄本社のみなさま

山添:もうひとつは「効率化」です。アニメーターは、Mayaだけを使えばいいという"特定のツールだけが得意という状態"ではなく、複数のツールを使い分けることが効率化に繋がります。アニメーションに限っては、弊社の場合クライアントが拒否しない限りモーションキャプチャを元に行っています。そうなった時、ツールは必ずMotionBuilderという判断になります。

――スタジオを自社で持っているという理由からモーションキャプチャを用いるのは分かりますが、ほぼ全ての案件で使っているのですか?効率化という意味では、Mayaで手付けの方がスピード感のある案件などもありそうですが。

山添:そこはクオリティ面の理由が大きいです。モーションキャプチャで収録しているのは「呼吸」です。手を挙げる、首を振り向かせるなどは手付けでも出来ますが、呼吸感や息はアクターがいないと成り立ちません。"感情を持って振り向く"というような表現をスピード感をもって作るのは役者さんと協力しないと出来にくいので。あとはダンスなどの長尺の案件も増えてきたので、その関係でモーションキャプチャの稼働率は上がっていますね。人の動作に関わるモーションはすべてMotionBuilderで作成し、その後、揺れものなどはMaya内で処理を行います。あるいは、ゲームエンジンにインポートといった工程でも、簡易的なリターゲットとアニメーションはMotionBuilder内で行います。ワークフローが多岐にわたる現代では複数のツールを使える方がメリットが大きいということです。

渡久地:そういう意味では、台北にはモーションキャプチャスタジオがありませんが、MotionBuilderは使ってもらっています。アニメーションを作るだけで言えば、Maya上の手付けでFBXデータ出力という形でも良かったのですが、データのやり取りの関係でそのようにしています。

――モーションキャプチャスタジオのない台北でMotionBuilderを使うメリットはどういったものがあるのでしょうか。

渡久地:データの受け渡し以外だと、一定の評価軸を持てることですね。沖縄本社には台北からも東京からもアニメーションデータが届きます。しかし、Mayaと3ds Max でそれぞれのアニメーターが作成したものは、ツールによって微妙にカーブが違ったり、独特の方言があったりして正当な評価が非常に難しいんですよね。全員が同じツールを使うことで、一定の評価軸を持つことができるというのは会社にとって大きなメリットです。

田村:実作業で言えば、スピード感が段違いですね。Mayaでもアニメーションの修正は可能ですが、長尺になるとリアルタイムのプレビューがそもそも厳しい状態になります。さすがに連番で書き出してチェックなどをしている時間はないので、動作が軽快かつ即時的なプレビューも可能なMotionBuilderでアニメーションを修正しています。ただ、揺れものなどはMayaでも作業を行いますから、使い分けという形になります。

取材に応じてくれたCGCGスタジオ沖縄本社のみなさま

清水:MotionBuilderはFilmBox時代から根幹となるリグの設計思想が変わっていません。別のプロジェクトになっても同じコンセプト、同じリグを使って作業が出来るのは良いですね。「使いやすさで言ったらMotionBuilderだね、あのHumanIKだね」となるんです。IK部分の思想が本当に良いですね。

山添:そこなんですよ!いま清水が言ったところは本当にその通りで、昔の資産を思想含めて使い回せているというのはメリットのひとつです。 ビジネスでツールを使う時、もちろん「便利になって欲しい」という願いもありますが、ワークフローの根っこの部分の思想は変わって欲しくないものです。服が小さくなったから自分がダイエットしよう、という発想ではなく最初から着やすい構成になっているのがベストです。MotionBuilderは他のツールと比べて一番思想的にブレが少ない、だからCGCGスタジオのアニメーションの根幹に置いています。

MotionBuilder
MotionBuilder

――収録から納品までの具体的なワークフローを教えて下さい。

山添:VICONとBLADEを用いて収録と処理を行い、簡易的なリターゲットをMotionBuilderで行います。その後はMotionBuilderとMayaでアニメーションを整え、エフェクトは3ds Maxなどを用います。最終的にNUKEやAfter Effectでコンポジットを行うという、比較的一般的な流れかと思っています。

清水:モーションキャプチャで収録したものは骨だけ(FK/ボーン状態でFBX出力)で渡しています。ただ、会社によっては骨だけで欲しいのか、モデルも一緒なのかが異なりますので、そこはワンオフでパイプラインツールを作ることもあります。収録サイドから見れば、社内のCGチームもお客さんの1社として見ていますね。

取材に応じてくれたCGCGスタジオ沖縄本社のみなさま

田村:現場サイドでは、MotionBuilderから出力されたFBXデータをキャラクターに入れてモデル割り当てを行います。そして、最初の簡易的なリターゲットとは別にキャラクターとアクターのボディバランスを整えます。フェイシャルやシミュレーション系は、後にMayaにデータを持っていった際に行います。ここもそれほど特殊ではないと思いますが、こうしたデータの流れが堅実にできている点も評価しています。

MotionBuilder
MotionBuilder

――CGCGスタジオの将来的な展望について教えて下さい。

山添:我々は"今は"プリレンダ―で力を発揮できる会社ですが、同時にゲームエンジンを用いたリアルタイム案件などもマルチに行っています。この比重は、うまくバランスを取って行きたいと思っています。というのもビジネスとしてリアルタイム制作を行うためのゲームエンジンのデファクトスタンダードが将来的にどうなるかはまだ分かりません。ただ、我々としては使いやすい「ワンソース・マルチユース」なツールが一番です。1つのアセットやアニメーションデータを、多くのコンテンツで使えるような形を理想とした時、実はその根幹の思想というのはMotionBuilderのデータ構造とすごく似ているんです。だから今、現状のDCCツールとしては「Media & Entertainment Collection」がベターであろうと確信しています。映像である以上は何かしらのメッセージを伝えることであり、そこにあるのは人間の芝居、キャラクターのアニメーションだと思っています。VRなどを始めとする技術の進歩によって3DCGが体験を作れるようになってきた今だからこそ、伝わるアニメーションを作って行けたらと思いますね。

――最後に、これから「Media & Entertainment Collection」の導入を検討している方に向けて、メッセージをお願いいたします。

山添:「Media & Entertainment Collection」を導入してから、アニメーションの作業を効率的に進められています。幅広いゴール(案件)に対しての柔軟なワークフローを対応したい方にお勧めです。

――ありがとうございました。

CGCGスタジオは本記事でご紹介した沖縄だけでなく、東京でも人材を積極的に募集しています。CGクリエイターはもちろん、制作進行やゲーム開発、遊技機開発など多岐にわたる人材とのご縁を希望していますので、ご興味持たれた方は以下のサイトよりご応募ください。

http://www.cgcgstudio.co.jp

本記事は、「GameBusiness.jp」からの転載となります。

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