Autodesk MasterClasses 2010 イベントレポート

MasterClass for 3ds Max 2010年11月27日(土) リアリティを追求するひと工夫

Industrial Light & Magic でシニアマットアーティストとして活躍をされている上杉裕世氏が3ds Max の MasterClassに登壇。本場ハリウッドの生の声を聞けるとあり会場は多くのクリエータの熱気で溢れかえった。上杉氏は、各チャプタで完成ショットのムービーをまず再生した後に、そのショットをどのようなアプローチで構築していったか解説を行うブレイクダウン形式で講義を行った。

スター・トレックのプロジェクトでは、オーディエンスの立場で画作りを行う重要性を説きながら各種レイヤを重ねリアリティを追求していく過程の紹介が行われた。実写素材をボリュームライト表現に流用したかという発想についても重要性が説かれた。トランスフォーマー:リベンジのプロジェクトでは、メカニカルと有機オブジェクトの混在というテーマが上杉氏をもってしても挑戦的であったとう。ここでは、つる状の有機的な物体の表現を成功に導いたプロセスについて講義が行われた。

アバターの作例では、大規模なジャングルのシーンにおけるシーンマネジメントやBrazilのキャッシュレンダーの有用性について丁寧な実演を交えた紹介が行われた。様々なバリエーションを作成するためのユニットを構築する概念やレンダリングプロセスの効率化など惜しげないノウハウの共有が行われた。また、3ds Maxのモディファイアをスマートに利用した擬似的な物理シミュレーション表現がプロジェクトのいたるショットで採用されていることに参加したクリエータの皆様も感心されている様子であった。

ラストエアーベンダーの作例では、崖の上からカメラが整列した軍隊にクローズアップするショットについて解説が行われた。World SpaceとObject Spaceのカメラマップの違い、Camera Map Per Pixelシェーダの特性についての講義が進められた。このショットでは、上杉氏自身がビデオカメラ撮影した実写素材を抽出して合成に利用したテクニックも披露された。

Q&Aセッションでは、マットペインターという職種の現在について、ILMのワークフロー、立体視を取り巻くハリウッドの状況とそれに対する上杉氏の見解など興味深い話題に関して大変熱心にお答えを頂いた。技術的なノウハウだけでなく、現状に甘んじるのでなく常に疑問を持ち、ワークフローの改善と共有リソースをどう最大限に生かすかといった上杉氏のクリエータとしての姿勢はMasterClassに参加されたクリエータの大きな刺激となったであろう。

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