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第54回:3ds Maxのカラー管理設定〜正しいカラー管理設定で他のソフトウェアと色を統一する〜

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2025のデフォルト設定

2025のデフォルト設定は、カラー管理設定が「OpenColorIO」、レンダラーが「Arnold」となっています。OpenColorIOは複数のソフトウェアでカラー管理を統一させるのに優れていると言われています。その分だけ仕組みは複雑で設定項目も数多くあり、各ソフトやレンダラーの対応状況と設定方法(およびUser Interface)もまちまちと言った状況です。

そのため、パイプライン全てで使用するソフトウェアと、工程間でやり取りするデータの色をどのように管理するかを定めた「カラーフロー」を定める必要があります。

そこで今回は3ds Maxのデフォルト環境での、正しくカラーを運用する設定について解説していきたいと思います。
具体的な解説例は、代表的な色空間「sRGB」「AdobeRGB」を用いて行っていきます。

3ds Max内と前後でカラーがどう扱われるか?

図4-1はよく利用される流れを想定したカラーフローです。
この流れを理解して本コラムの設定を読み進めていただくと、理解が深まると思います。

テクスチャ画像が3ds Maxにimportされた時にカラー変換が行われます。

レンダリングは特定の色空間を設定して行われます。ACESのようなとても広い色領域だったり、sRGBのように狭い空間だったり、目的に応じて決定します。
3ds MaxのデフォルトはACESとなっていますが、import / export より広い空間であれば前後の色変換により正しく運用できます。

この後の工程は分かりづらいので慎重に読み込んでください。

rendering view(Arnoldを使用してれば、Arnold Render Viewを指します)は、3ds Maxでレンダリングをした画像が表示されるウィンドウです。ACES空間でレンダリングされた画像は表示するために制作色基準としている色空間にする必要があります。例えばsRGBを制作基準としている場合はsRGBにします。
この設定によりACES空間から、sRGB空間にカラー変換されます。

export により画像を書き出す際は注意が必要です。これまでは rendering view で表示された画像が書き出されたと思いますが、export 時にACESから特定の色空間へカラー変換が行われるため、正しく設定しておく必要があります。

最後に export された画像を他のソフトで開きます。
この時に制作色基準の色空間で開くことで、rendering view と同じ表示となります。

4-1:カラーフロー 3ds Maxカラー管理の流れ
4-1:カラーフロー 3ds Maxカラー管理の流れ

他のソフトと統一された状態をゴールとする

他のソフトウェアと色が統一されると、どのソフトで開いても同じ色で表示されるようになり、色修正やマテリアル/ライトの修正が不要になり、作業効率の向上とストレスを低下させます。

産業用途のシミュレーションの場合は、
・素材を正しくデジタル化できているか?
・正しい色で表示して意思決定できるか?
という致命的な問題もクリアします。

図4-2の上は、テクスチャ画像をPhotoshopで開いたウィンドウと、3ds Maxの rendering view を左右に開いたスクリーンショットです。
下は、Photoshopでテクスチャ画像とレンダリング画像を左右に開いたものです。
いずれも一致しています。このような状態をゴールにして設定していきます。

4-2:importするテクスチャ画像と、3ds Maxでのレンダリング画像が一致する
4-2:importするテクスチャ画像と、3ds Maxでのレンダリング画像が一致する

3ds Maxカラー管理設定

図4-3は3ds Max2025のカラー管理画面です。何も設定してなければこれがデフォルトになっています。

4-3:3ds Max2025 カラー管理設定;デフォルト設定
4-3:3ds Max2025 カラー管理設定;デフォルト設定

【従来方式に戻す場合】

従来方式(ガンマのみを管理する方式)に戻す場合は、図4-4を参照してください。

4-4:3ds Max従来設定への変更
4-4:3ds Max従来設定への変更

【OpenColorIO と従来方式の違い】

OpenColorIO のほうが簡単に複数の色空間を試すことができ、書出時の色変換も柔軟です。
他のソフトウェアと色を統一するのはどちらもできるので、その点の差はありません。

どちらも共通しているのは、カラーマネジメントの知識が必要で、3DCGソフトだけでなく、他のソフト、カメラ、モニター等の設定にも長けている必要もあります。
こう書くとハードルが上がってしまいますが、間違った設定による事故(過去データの流用が出来なくなる、間違った色で意思決定する等)が日常的に起こっているので、正しい理解をして、正しい運用をしていただきたいので、ご理解ください。

テクスチャ画像を準備する/確認する

テクスチャを制作する(撮影する)際は色空間を定めましょう。例えば制作色基準をsRGBにしている場合は、sRGBの色空間で制作します。

制作済みの画像を確認するには、図4-5のようにPhotoshopの「プロファイルの指定」機能を使用して確認してください。

4-5:テクスチャ画像の色空間を確認する
4-5:テクスチャ画像の色空間を確認する

3ds Maxシーンデータを開く

3ds Maxのシーンデータを開き、カラー管理設定はデフォルトを使用します。このコラムでは前回のコラムで解説したマテリアルを正しく作成できる【標準環境】シーンデータを用いて解説していきます。
その理由ですが、カラー管理機能を正しく設定しても、ライトの照度、カメラの設定が正しくなければ、色が正しく再現されないからです。

4-6:前回のコラムで解説した【標準環境】シーンデータを使用
4-6:前回のコラムで解説した【標準環境】シーンデータを使用

テクスチャ画像をimportする

テクスチャをmap(bitmap)でimportします。デフォルトではテクスチャ画像がsRGBで制作されたことを前提として、import時に自動でカラー変換が行われます。

sRGB → ACES

mapをマテリアルのベースカラーマップ(ディフューズ、アルベドなど)へ接続してください。使用するマテリアルは各レンダラーに最適な物を使用してください。このコラムではフィジカルマテリアルを使用します。

4-7:Photoshopで作成したテクスチャを使用してマテリアルを作成する
4-7:Photoshopで作成したテクスチャを使用してマテリアルを作成する

Arnold Render View の表示色変換機能を変更する

レンダリングを実行すると、Arnold Render View が開きます。
ACES空間でレンダリングされた結果を表示しますが、このウィンドウには特定の色空間へカラー変換する機能が搭載されています。このコラムではこの機能を「表示色変換機能」と呼んで解説していきます。

sRGBの場合は、図4-8のように「Un-tone-mapped (sRGB)」を選択します。

4-8:sRGBになるようにレンダリング表示を変更する
4-8:sRGBになるようにレンダリング表示を変更する

Photoshopのウィンドウと、Arnold Render Viewを開いて比較して、図4-9のように一致すれば設定が正しい状態になります。

※後ほど解説しますが、使用しているモニターの色設定がsRGBになっている必要があります。

4-9:Photoshopでテクスチャを開き、レンダリング画像と比較
4-9:Photoshopでテクスチャを開き、レンダリング画像と比較

AdobeRGBに対応させる

ここまでの解説では「sRGB」へ対応させる設定でしたが、制作色基準がsRGB以外の会社さんやプロジェクトがあると思います。そこで他の色基準に変更する例として広く使用されている「AdobeRGB」に変更する方法を解説していきます。
注意点として3ds Maxだけを変更すると、他のソフトウェアとの統一が出来なくなります。あくまでもパイプライン全てで制作色基準を設け、カラーフローを整えていく際に参考としてください。

まずは3ds Maxのカラー管理機能を変更します。
変更箇所は図4-10のとおりです。

1つめは「表示とビュー」にある「グローバルな設定値」をAdobeRGBに変更します。これにより全ての表示がAdobeRGBに変更させます。

2つ目は「入力イメージファイル」です。これはテクスチャ画像をimportした際に、AdobeRGB → ACES(レンダリング カラースペース)へ変換する設定です。

3つ目は「レンダリング出力の規定値」です。レンダリング画像を保存する際に、ACES → AdobeRGBへ変換する設定です。

4-10:3ds Maxのカラー管理設定をAdobeRGBに対応するように変更する
4-10:3ds Maxのカラー管理設定をAdobeRGBに対応するように変更する

テクスチャ画像を変更する

マテリアルに接続していたマップ画像をAdobeRGBに変更します。

Photoshopでテクスチャ画像を開き、「プロファイルの指定」でAdobeRGBを選択します。もちろんAdobeRGBで制作された画像であることが前提です。

次にその画像をmap(bitmap)でimportします。
すでにカラー管理設定でAdobeRGBに変更しているので、「自動(推奨)」のままでも問題ありませんが、「カラースペース」を選択することで、カラー管理機能の設定とは異なる色基準で制作された画像を使用することが出来ます。(図4-11ではカラースペースからAdobeRGBを選択しています)

AdobeRGB → ACES

mapをマテリアルのベースカラーマップ(ディフューズ、アルベドなど)へ接続してください。

4-11:AdobeRGBのテクスチャに変更する
4-11:AdobeRGBのテクスチャに変更する

Arnold Render View の表示色変換機能をAdobeRGBに変更する

レンダリングを実行すると、Arnold Render View が開きます。
「表示色変換機能」を図4-12のように「Un-tone-mapped (AdobeRGB)」を選択します。

4-12:AdobeRGBになるようにレンダリング表示を変更する
4-12:AdobeRGBになるようにレンダリング表示を変更する

Photoshopのウィンドウと、Arnold Render Viewを開いて比較して、図4-13のように一致すれば設定が正しい状態になります。

※使用しているモニターの色設定がAdobeRGBになっている必要があります。

4-13:Photoshopでテクスチャを開き、レンダリング画像と比較
4-13:Photoshopでテクスチャを開き、レンダリング画像と比較

カラーキャリブレーションモニターの設定

カラーマネジメントではPCモニターを制作色基準にしなければいけません。色々なソフトウェアのカラー管理機能を正しく設定しても、最終的に表示されるモニターが異なる色基準なら、【異なった色で意思決定する】ことになるからです。
現物を正しくデジタル化してもモニター表示と異なるし、Photoshopも3ds Maxも異なってしまいます。

そのため、制作色基準に合わせてモニターを調整する必要があります。
もしプロジェクトごとに色基準が異なる場合は、sRGBならsRGB、AdobeRGBならAdobeRGBへ変更します。

通常のPCモニターやノートパソコンのモニターには、特定の色基準に変更する機能がありません。変更する機能を持つモニターを「カラーキャリブレーションモニター」と呼びます。
カラーマネジメントシステムで広く使用されているのは「EIZO ColorEdgeシリーズ」です。この製品は長年カラーマネジメントに対応していて、他社製品と異なり販売し続けてきたので、性能も管理性も最も信頼が置ける製品といえます。
図4-14は付属の色管理ソフト「Color Navigator 7」です。

4-14:カラーキャリブレーションモニターの表示を色基準に設定する
4-14:カラーキャリブレーションモニターの表示を色基準に設定する

3ds Maxはモニターに影響されない

ここからはとても分かりづらい内容なので、理解できなくても大丈夫です。
Photoshopと3ds Maxの比較を行って、他のソフトウェアと統一できているか確認を行ってきましたが、ソフトウェアによってカラー管理機能は裏で行っていることが異なるため、設定を統一しても上手く動作しないことがあります。

図4-15は条件を変更して比較したものです。
上と中は一致していますが、下は不一致です。
これはPhotoshopがモニターの色基準に合わせて表示を変更するカラーマネジメント機能を有しているのに対して、3ds Maxがモニターの影響を受けないためです。

一見問題のように感じますが、1つ前の段落で解説したように、カラーマネジメントはカラーキャリブレーションモニターを使用することが必須なので、正しくモニターの色基準を設定しておけば起こらない問題なので安心してください。

4-15:設定が異なると不適切な表示となる
4-15:設定が異なると不適切な表示となる

今回は3ds Max 2025のカラー管理機能を解説しましたが、OpenColorIOの複雑さ、カラー管理機能を設定する箇所の多さ、前後のソフトウェアの設定など、理解が難しい内容だった思います。もし理解が難しかった方は、これまでの連載やカラーマネジメントの基礎知識をPERCHのサイトに掲載しているので、読みながら理解を深めていただけたら幸いです。

本コラムではカラーマネジメントに関する情報をお届けしていきます。
次世代カラーマネジメントの特徴、Autodeskソフトのカラー管理機能を紹介していく予定です。

カラーマネジメントの基礎知識や、導入事例などをまとめた情報サイトもありますので、合わせてご覧頂けると理解が深まるかと思います。
https://perch-colormanagement.jp/

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