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第53回:マテリアル制作の標準環境〜正しい色環境でマテリアルを作成して、共通で使用可能にする〜

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クリエイターごとに異なる環境で制作すると修正が必要になる

同僚や外部の協力会社が制作したデータや、過去に制作したデータを使用する際は、Materialを修正することが多いと思います。なぜこのような事が起こるのかというと、マテリアル制作時のライト/カメラ/レンダリングの設定がバラバラになっているからです。
これを統一したのが【標準環境】です。

3-1:3ds Maxで制作した標準環境シーンデータ
3-1:3ds Maxで制作した標準環境シーンデータ

物を観察しながらマテリアルを作る場合は、更に多くの要素が絡んできます。
物を照らす照明、PCモニター、ソフトのカラー管理設定です。
「物を照らす照明」についても考慮した標準環境を作成しておくと、現実世界とマッチしたマテリアル制作が可能になります。

標準環境は色々な要素が絡むため、改めてカラーマネジメントをわかりやすく考える要素について復習しておきましょう。

カラーマネジメントシステムを3つの要素に分けて考える

Color Managementという色管理システムは統合的な仕組みなので、全体像が分かりづらく、CAD/CGソフトの設定だけ行えば大丈夫だと勘違いされがちです。

第51回で説明した下の図に「標準環境で制作する(赤で塗りつぶした箇所)」を追加しました。
標準環境でマテリアルを作成するのは「正しいデジタル化」になります。

物を観察しながら作る場合は、「正しい観察」に必要な色評価用光源が必要になります。
この光源を標準環境のシーンデータにデジタルツイン化(照明のサイズや形状などを同じにする)しておきます。

それでは標準環境を作っていきましょう。物を観察しない方、する方、それぞれ解説していきます。

3-2:カラーマネジメントを理解しやすくする3つの要素に、標準環境で制作する手動マテリアル作成を追加
3-2:カラーマネジメントを理解しやすくする3つの要素に、標準環境で制作する手動マテリアル作成を追加

標準環境の作り方【物を観察しない方】

3ds Maxを使っていきますが、全てのCAD/CGで作れるように解説していくので安心してください。ご自分が使用しているソフトに置き換えて読んでください。

【構成要素】

シーンの構成要素は4つです。

3-3:標準環境シーンデータに含める4つの要素
3-3:標準環境シーンデータに含める4つの要素

【各種設定について】

自社基準/制作プロジェクトで、使用されている各種設定があるかと思います。その設定をカメラ/ライト/マテリアル/レンダリング設定に使用してください。状況に応じて変更すると思いますので、最も標準的に使用される設定がよいでしょう。

【オブジェクトの位置】

物の色を評価する際に推奨される「観察位置」があります。それをシーンデータにして側面から見たのが図3-4になります。

3-4:各要素の位置は物の色を正しく評価しやすい位置に配置する
3-4:各要素の位置は物の色を正しく評価しやすい位置に配置する

1;Object(観察する物)
観察する物は45°に傾けて配置します。評価しやすい形状のオブジェクトを作りマテリアルを貼りますが、その評価面が45°になるようにします。

2;Camera
カメラ位置は現実世界では観察者の位置となります。Objectとは直角の位置になります。

3;Light
ライトは真下を照らすように配置します。高さはオブジェクトから離して配置します。近すぎるとオブジェクトの上下で照度が大きく変わってしまうので注意してください。
「物を観察する方」は現実世界で配置する照明の高さに合わせます。

4;床面
図3-4のオブジェクトは床から浮いた位置にありますが、床面からの反射を観察したい場合はオブジェクトを床面に設置させてください。

【詳細】

1;Object(観察する物)
通常の業務でよく使用される形状に近い物にすると使いやすいと思います。
例えば、私は工業製品を多く取り扱うので、無機的な形状(直線、曲線)が含まれたオブジェクトにしています。
形状は自由ですが、1点だけポイントがあります。ライトから見て45°の面を持ったオブジェクトがあると、色や輝度を正しく評価しやすくなります。

3-5:工業製品に向いた形状のオブジェクト フラットで広い面/曲面/45°の面を持つ
3-5:工業製品に向いた形状のオブジェクト フラットで広い面/曲面/45°の面を持つ

2;Camera
通常の業務でよく使用されるカメラオブジェクトを使用します。露出等の設定も基準を設けるか、標準的な値としてルール化することを推奨します。

3;Light
通常の業務でよく使用されるライトオブジェクトを使用します。
照度を調整するために必要なマテリアルを作成します。
・ディフィーズカラー:白(R255, G255, B255)
・反射:完全なマット(反射率0)

そのマテリアルをObjectに割り当て、45°の面が白(R255, G255, B255)になる照度にします。これによりマテリアルで設定したRGB値と同じレンダリング結果が得られるようになります。白に設定したつもりがグレーになるといった問題は起きなくなります。

3-6:適正な照度に調整したライトでレンダリングした画像
3-6:適正な照度に調整したライトでレンダリングした画像

4;床面
平面オブジェクトを作成します。チェック模様のマップを貼り付けることがあるため、サイズは分かりやすいものにしてください。このマップを使用して反射率とボケを推測する方法は後ほど解説します。

標準環境の作り方【物を観察する方】

現実の物体(素材片や塗装サンプルなど)を観察する方は、現物を観察する環境をそっくりそのままシーンデータにすることで、現物と比較しながら正確なマテリアルを作成しやすくなります。

「正確な観察」には色評価用光源が必要です。用途に応じて複数の製品が販売されていますので、自分の目的に合わせて利用してください。

ここでは当社が開発/販売予定のデスクトップに置ける色評価用光源を題材に説明していきます。

3-7:左は現物を撮影、右は形状やライトの位置を正確にデジタル化したデータ
3-7:左は現物を撮影、右は形状やライトの位置を正確にデジタル化したデータ

基本的には全てを正確にデジタル化できるのがベストですが、照明ボックスの外観はデジタル化する必要はありません。
重要なのは以下の点です。
・照明の位置
・物を置く観察箇所の位置や角度
・反射が影響する内側壁面

3-8:3ds Maxでデジタルツイン化したデータ
3-8:3ds Maxでデジタルツイン化したデータ

活用【入力画像ーレンダリングウィンドウー書出画像の一致】

カラー管理機能を正しく設定することで、マップ画像を制作したソフトと、CAD/3DCGに入力した画像を一致させることが出来ます。それを正しく確認するために【標準環境】を活用します。
カラー管理機能の設定については、後日解説する予定です。

3-9:標準環境でマップを貼ったマテリアルを作成し、Photoshopと3DCGソフトの色が一致している事を確認したスクリーンショット
3-9:標準環境でマップを貼ったマテリアルを作成し、Photoshopと3DCGソフトの色が一致している事を確認したスクリーンショット

活用【光沢率を設定】

物を観察する際に、床面にチェック画像をプリントした紙を置き、その上に観察対象を置きます。
CAD/CGにも同じサイズのチェック画像を床面オブジェクトに設定してください。
現物とレンダリング画像を比較しながら、光沢率を変更すると正確なマテリアルを作成することが出来ます。

3-10:右に画像(光沢率80%)の垂直部分を観察すると、下から上へ徐々にボケが強くなっています。この度合いを現物を観察して合わせます。
3-10:右に画像(光沢率80%)の垂直部分を観察すると、下から上へ徐々にボケが強くなっています。この度合いを現物を観察して合わせます。

本コラムではカラーマネジメントに関する情報をお届けしていきます。
次世代カラーマネジメントの特徴、Autodeskソフトのカラー管理機能を紹介していく予定です。

カラーマネジメントの基礎知識や、導入事例などをまとめた情報サイトもありますので、合わせてご覧頂けると理解が深まるかと思います。
https://perch-colormanagement.jp/

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