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第24回:カメラマンのプレゼン手法を参考にすると

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こんにちは、パーチ長尾です。

前回に引き続き「プレゼン」について話そうと思います。不景気になると営業に力が入るのは世の常ですが、制作関連業界もそれは同じです。

制作業における優れた営業手法とは何か? どうしたら効果が上がるのか? を知って生かすことができたら、仕事が増えるのは当然です。広告業界のカメラマンも仕事獲得のためにプレゼンを行いますが、その手法にはいくつかのセオリーがあって、クリエイターや制作会社の営業マンが参考にできる点があります。

今日はそんな手法についてご紹介していこうと思います。


クリエイターはプレゼンとともに

私が広告業界に入ったのは15年も前になりますが、当面の間はアシスタントとしての仕事に汗を流していました。その当時は人前で喋ることもなく、ましてやプレゼンをするなんて全く考えてもいませんでした。それがアシスタントも2年を経たあたりだったと思います、CDジャケットの仕事を任されて、打ち合わせに臨むことになりました。プレゼンではありませんでしたが、お客さんの要望を聞き出し、それに対して自分の考えた表現をお伝えして、「人に何かを伝える、ビジュアルの説明をするというのは難しい」と強く思ったのを思い出します。
おそらくこのコラムを読んでくれているあなたも、プレゼンなんて関係ないと思っているか、思っていた時期があるんじゃないでしょうか。

クリエイターにとってプレゼンはついて回るもので、切っても切り離せない、物作りと同じくらい重要なものなんですね。

売り込みはもちろん、打ち合わせ時の提案、社内プレゼン、就職・転職時の面接、人によってはセミナーの講師など、いろいろなシーンでプレゼンがついてまわります。これらを成功させる、成功させ続けると「よい仕事」「自分の望む仕事」が手に入るのは容易に想像がつきます。一方で、売り込みの失敗は売り上げを失い、社内プレゼンの失敗は望むポストを失いますから、よい仕事も自分の望む仕事も得られません。

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図1 「クリエイターが直面するプレゼンシーン」


これほどに重要なプレゼンですから、どんなに制作力に優れていても、同時にプレゼン力がなければ、仕事を進めていくのが難しくなることがわかります。

これまでもたくさんのクリエイターを見てきましたが、制作力に加えて、プレゼン力が優れているのが、良いクリエイターの特徴だったように思います。


広告業界のカメラマンは専門特化している

広告業界のカメラマンは就業形態から2つに分類されます。フリーカメラマンと写真プロダクションに属するカメラマンです。

雇用形態とは別に、得意とする分野によっても分かれます。例えば、住宅、自動車、家電、化粧品、宝飾品、食品、人物、風景、は代表的な分野です。実はこの並びは3DCG写真(3ds Max、Mayaなどで写真を作るデザインビズ)に切り替わっている度合いの強さでもあります。すでに住宅、自動車専門のカメラマンの多くは分野を切り替えるか、業務変更、もしくは3DCGを活用して 3DCG Photographer を目指しています。

仕事の依頼形態ですが、まずは得意分野のカメラマンを探します、そしてその中から品質のレベルと、自分たちが表現したい感性に近いカメラマンを選びます。
そのため、特に東京を中心に活躍する広告カメラマンは、その専門分野をより伸ばそうと強く特化しています。

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図2 「カメラマン選別の流れ」
高級感を売り物にしたい自動車の広告を制作する場合。依頼主はたくさんのカメラマンの中から、この順序と選考基準で選別していく。


現在、広告用の写真が3DCGに切り替わりつつありますが、制作者の多くは広告業界の経験を持たない3DCGクリエイターです。まだまだ 3DCG Photographer と呼べるほど専門特化した人材は出てきていません。

そのため、広告主の要望として出始めたのが、「より魅力的な表現を」という言葉です。広告業界に限らず、どの分野でも最終的には個人の感性と制作力によるところが大きいと思います。今後は広告業界の3DCGクリエイターには、従来のカメラマン同様の感性と制作力が要求され、より専門特化していくことが望まれています。


ポートフォリオこそがすべて!

そんな感性と技術を生かした「特徴的な表現力」を伝えるのがプレゼンです。ではカメラマンが行っているプレゼンとはどのようなものかというと、非常にシンプルです。しかし、それだけに感覚的な工夫も欠かせません。

カメラマンのプレゼンとは、
お客様のところへ出向き、自分の作品をまとめたポートフォリオを見せる。
ただこれだけです。
一見、カメラマンの感性を伝えるために優れた手法に思います、しかし大きな問題もはらんでいます。ここからはその問題と優れたプレゼン手法を見ていきましょう!


問題1 「当たり外れが大きい」

カメラマンの作品は一目瞭然、その人の仕事内容と感性が伝わってきます。それだけにお客さんが求めているものと違えば、即終了です。
本当に即終了なんですよ。パッと数枚の写真を見て(この間10秒~1分)、すぐにテーブルの脇に置く、そして次のカメラマンのポートフォリオを見る。厳しいですねえ。

優れたプレゼン手法を行っている人の特徴は、事前にお客さんの要望をしっかりと把握しています。そして、その要望にあわせてポートフォリオの構成を変更します。これについては次回のコラムで紹介しますので楽しみにしていてください。


問題2 「感性は漠然とした指標なので伝わりづらい」

感性と技術力が一目瞭然とは言いましたが、より深く見ていくと、「感性」という漠然としたものを評価するのは難しいものです。そのため複数のカメラマンから一人に決め込む時に悩みます。

優れたプレゼン手法として、「仕事の作品」+「自分の作品」というポートフォリオの2部構成があります。自分の作品では、仕事外で撮影した、自分の感性や思いを強調した、テーマ性のある写真集のように仕上げます。これによりカメラマンの個性を特徴付けます。

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図3 「自分の作品で感性を伝える」
仕事を離れて制作した作品をまとめたポートフォリオ。仕事とは違う分野で作るカメラマンが多い。


問題3 「他のカメラマンとの差がつかない」

もともとある程度のレベルのカメラマンをそろえて比較検討するため、それほど明確な差がつきづらいことが多くあります。

そこで、優れたプレゼン手法を2つ紹介します。

1つめは、写真を入れるケースや、そのケースを入れるバッグをオリジナルで制作して、高級感を演出します。
金額は様々ですが、数十万円かけるカメラマンもいます。

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図4 「本皮プレゼンテーション用ブック」
皮の質感で高級感を演出。内部のプリントを挟むフィルムがクリアで作品が見栄えする
http://www.panodia.eu/en/professional-range/books-de-presentation/ialta.html


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図5 「高級本皮 ケース兼プレゼンテーション用ブック」
おしゃれで目を引く効果を狙う
http://www.panodia.eu/en/professional-range/books-de-presentation/elegance.html


2つめは、ポートフォリオを説明するときのトークです。自分の作品をより魅力的に、相手を説得する、そんな魅力的なプレゼンを行います。

プレゼンの重要性と、カメラマンの手法を紹介しましたが、同じ制作業として参考になるポイントを生かしてみてください。

次回は、ポートフォリオの作り方についてお話ししていこうと思います。

・本連載(第12回∼第16回)でもお話ししていた「3DCGのためのカラーマネジメント」について、専門的な情報を発信することになりました。具体的な設定方法等も分かりやすく解説していきますので、ご期待ください。

CGWORLD.JP「CG de カラマネ!」 http://cgworld.jp/regular/cg-cms/

・「パーチ長尾のブログ」とfacebookを始めました。クリエイティブやビジネスの抽斗になりそうな情報について、自由に書いていきます。

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