ゲーム Game
Uncharted 4: A Thief's End, image courtesy of Naughty Dog
Uncharted 4: A Thief's End, image courtesy of Naughty Dog

ゲーム開発のパイプライン

text by 小野 憲史
Posted: 2017.04.21

ゲームのインタラクティブ性とインフォメーションフロー

ゲームには映画やアニメなどと同様にCGが使用されています。では両者の違いは何でしょうか?それは映画やアニメの映像が視聴者に対して一方的に再生されるのに対して、ゲームではプレイヤーが能動的に操作を行うことで、映像や音声がリアルタイムに変化していく点にあります。このようにユーザーがゲーム機やスマートフォンの画面を見ながら、対話をするような形式で操作を行う形態をインタラクティブと呼び、ゲームではこの状態が高度に活用されています。

では、この時にどのような情報の循環が行われているでしょうか。プレイヤーはゲームの画面を見て、瞬時に状況を判断し、コントローラを操作して入力を行います。この入力情報はゲーム機やPCに送られ、内部で計算処理が行われます。その結果はグラフィックやサウンドとなってモニターやスピーカーから出力され、再びプレイヤーに送られます。ゲームをプレイしている間中、このような情報の循環(インフォメーションフロー)が継続されます。

ゲームプレイにおけるインフォメーションフロー
ゲームプレイにおけるインフォメーションフロー

このインフォメーションフローはゲーム機やゲームの種類にかかわらず、共通して見られる構造です。そして、インフォメーションフローは一般的に1/30秒、または1/60秒の単位で高速に循環しています。もっともゲームの質が低いと処理落ちをしたり、プレイヤーが次に何をしたらいいかわからなくなって、インフォメーションフローの速度が低下したり、中断してしまったりします。優秀なゲームクリエイターはそうした事態に陥らないように、データやプログラムの構造を最適化したり、グラフィックやサウンドを工夫して遊びやすさを追求したりしているのです。

ゲーム制作の流れ

では、ゲームはどのように作られているのでしょうか。はじめにゲームの出力情報を分解してみましょう。すると大きく「グラフィック」「サウンド」に分けられることがわかります。これらのデータはコンピュータのプログラミング言語でプログラムされ、統合化されます。もちろん、どのようなゲームを作るか企画する必要もあります。つまりゲームとは「グラフィックデータとサウンドデータを事前に考えた企画内容にそってプログラムしたもの」と言い替えられます。

この「グラフィックとサウンドのデータ」を専門用語で「アセット」と呼びます。そしてアセットをプログラムして動作可能にすることを「実装」と呼びます。アセット制作や実装には、さまざまな専門ツールが使用されます。特に近年のゲーム開発では、この実装を「ゲームエンジン」と呼ばれるツールで行うやり方が主流になっています。ゲームエンジンで実装が終わると、実行ファイルとして出力され、ゲーム機やスマートフォンでプレイすることが可能になります。

ゲーム制作の流れ
ゲーム制作の流れ

ゲーム制作の進行工程

続いてゲームの具体的な作られ方について紹介します。ゲームは大きく「プリプロダクション」「プロダクション」「ポストプロダクション」という3つの段階を経て開発されます。

ゲーム制作の進行工程
ゲーム制作の進行工程

プリプロダクションでは企画とプロトタイプ制作が行われます。企画とは文字通り、どのようなゲームを作るかアイディアを出し、ゲームの形にまとめていく作業です。その後、こうしてまとめられた企画が本当におもしろいかどうか、少人数のチームで短期間に試験開発が行われ、実際に遊んでみて内容の妥当性が検討されます。こうして作られたプログラムを「プロトタイプ」と呼びます。

またゲーム開発にはさまざまなツールやミドルウェアが組み合わせて使用されます。そのため、これらの技術が問題なく活用できるか検証し、当初想定された表現が達成可能か確認するために、ゲームの一部を完成品と同じクオリティまで作成することもあります。こうして作られたプログラムを「バーティカルスライス」と呼びます。

プロトタイプやバーティカルスライスの検証がすむと、実際にゲーム作りを行うプロダクションに移行します。プロトタイプやバーティカルスライスで明らかになった内容を参考に、ゲームが制作されていきます。なお、ゲーム制作では一般的なプログラムと異なり、「α(アルファ)版」「β(ベータ)版」と呼ばれる、2つの過程を経ることが一般的です。この背景にはゲームプログラムの特殊性があります。

ゲームは単純なものから複雑なものまで、すべて繰り返し(ループ構造)で処理される特徴があります。ここでは例として「ログイン後、パーティを編成し、ダンジョンを選択。ザコ敵との戦闘を3回繰り返した後、ボスを倒してダンジョンを脱出。アイテムを入手してキャラクターを成長させ、ガチャをひいた後にログアウトする」という、典型的なモバイルゲームについて考えてみましょう。

この時、実際のプレイではパーティ編成からガチャまでの行程を何度も繰り返しながら遊ばれることに気がつくでしょう。それと同時に、ダンジョンだけを何度も繰り返すなど、大小のループ構造が入れ子構造のようになっていることもわかると思います。そのためゲーム開発では、まず「ゲームの開始から終了までの一連のループ構造」を最初に開発します。これがα版と呼ばれるものです。

α版の制作にはもう一つ、別の意味もあります。データの仕様策定です。ゲーム内に登場するキャラクターやアイテムといったアセットは、すべて一定のルール(ポリゴン数やテクスチャーの容量など)で制作されます。一般的にグラフィックに凝れば凝るほどゲームの実行速度が低下するため、開発を行うには両者のバランスをとる必要があります。これを決定するのもα版の重要な役割です。

一方で実際の商品にするためには、キャラクターやアイテム、モンスター、ダンジョンなど、すべてのデータを作る必要があります(最近はリリース後にダウンロードで追加配信が可能ですが、ある程度のボリュームは必要です)。これらをα版で策定された仕様にもとづいて量産していきます。これらがすべて実装された段階がβ版となります。

ポストプロダクションでは完成したβ版をテストプレイしながら、プレイヤーにゲームのおもしろさがきちんと伝わる内容になっているか。また、プログラムやデータに間違いがないか。時間をかけて検証していきます。前者をユーザーテスト、後者をQA(Quality Assurance=品質管理)、またはデバッグと呼びます。チェックが完了するとリリースや運用が開始されます。

小野 憲史

小野 憲史

ゲームジャーナリスト。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。「ゲーム批評」編集長などを経て現職。ウェブニュース媒体を中心に活動中で、E3・GDCなど海外取材も多数経験。教育機関などでの授業・講演もこなす。主な著書・編著に「ゲームクリエイターが知る97のこと(2)」(オライリージャパン)など。

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