トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第34回:中国、東南アジアを見て思うこと(その1)
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ここ最近の気温の変動に体がついて行かず久しぶりに風邪を引きました。歳のせいかなかなか完治しないなと思ってるうちに暖冬と言われてたにも関わらずいきなり厳しい寒さに襲われ治るきっかけがないまま過ごしていると、プロジェクトで関わっている東南アジアの方は暖かいんだろうな〜と、暖かい国に出張して仕事したいなと思う今日この頃…。と、ぼやきを入れたところで今回のコラムはアジアが題材です。アジアと言っても広いですが、私が多少情報を持っている中国とプロジェクトの関係上国名は伏せますが東南アジアでのプロジェクトに関わって感じたことを久しぶりの海外事情としてお話しします。
それではまず中国から。
私が調べたところクリスタルは存続しているようですが、業務内容が結構変わっているようです。その変遷を非常にラフにお話しすると、経営難に陥り倒産しかけたところに外部から資本が入り、不採算部門を閉鎖して採算の取れる業務に移行したと言うことです。日本でも似たよう話はあるので、経緯自体は別段驚きはしないのですが、中国でも日本と同じような建築CGの状況になってきているのかという事には驚きました。不採算部門のトップに上がるのはどんな業務だと思いますか?
聞くと「そうだろうな」という重い現実が見えてきますが、答えはずばりパース部門です。実際結構前からクリスタルは外注(勿論外注先はクリスタルを辞めて独立している個人又は小規模プロダクション)していたようなので、実態としては変わらない話のようですが、国内より実入りの良い海外の仕事も多く受けているクリスタルでさえ採算が合わない状況という事が問題に思えました。勿論中国での人件費等の高騰も大きな要因だと思いますが、そもそもパースの単価が安い事が問題で有る事は想像に難くありません。これは日本にもそのまま当てはまる内容で、私の知っている限り日本でも規模の大きい建築CGプロダクションは長続きしていないという事実があります。日本でも経営の立て直しの際に真っ先にやり玉に挙がるのがパースです(この場合のパースはコンペや設計納品時に納めるパースなどを指します)。クリスタルに話を戻しますが、アニメーションも単独の制作としては止めているようです。アニメーションが全く採算に合わないという事は無いとは思いますが、パースに比べれば案件は少ないでしょうからこれも大きな組織にとっては問題です。現在は企画展示のような総合的な仕事、所謂広告代理店+制作も出来るといったスタンスの業態にスイッチしているとの事でした(コラムを読んで頂いている方でこの辺りの事情を詳しく知っている方もいるかとは思います。もし私の話に間違いがあるようでしたらメールなりでご指摘頂ければ幸いです)。
誤解の無いようお話ししておくと、この様な不採算なパース部門が採算部門として再生する道はあります。先に挙げたようなパースでは無く広告用途のパースにスイッチする事です。広告用途は下がりに下がってきている一般的なパースの単価よりも高く、一案件で纏まった量(10枚以上も珍しくない)の制作が出来るので採算ベースに乗せることが出来ます。勿論一頃に比べれば広告用CGの価格も下がってきていますが、ボリュームも含めて考えればペイ出来ます。この様な転換はある程度の人数を抱えていないと出来ないであろう事も付け加えておきます。(いくら制作期間が一般のパースに比べ長いとはいえ、広告クオリティの案件を10枚、20枚を一人二人でこなすの難儀ですから)
最後の最後に部分的には極論めいたものいいをしていますが、あくまで私見で有る事はここにお断りしておきます(人のとらえ方は様々なので)。
それではまず中国から。
え、本当ですかその話?
一昨年、設計事務所と共に設計者兼ビジュアライゼーションのデザイナーとして関わった案件のお話しを以前コラムで書きました。尖閣問題で中国進出の足がかりまでほんの少しという所で水泡に帰したプロジェクトです。その後機会は伺っていたもののこれと言って進展がないまま過ごしていました。そうこうするうち政治の問題もあり日本企業の撤退が相次ぐ中でいつしか思い出に変わりつつあった時、ある組織事務所の知り合いから新しいネタを耳にしました。「クリスタルが潰れたという噂だけど冨田さんはその辺り知ってますか?」と。クリスタルと言えば私がゼネコンにいる時代にパスを構築し、北京クリスタルには何度か足を運んだこともある思い出深い会社です。独立してからも様々な組織事務所・大手ゼネコンで名前を聞く、日本の建築CG関係者は皆名前ぐらいは必ず知っていると言っても過言では無かった中国最大手のCGプロダクションです。普段中国通を装っている私も寝耳に水で(それだけ中国から心が離れていた証になってしまいましたが)、知り合いには「ちょっと調べてみますね」としか答えられませんでした。私が調べたところクリスタルは存続しているようですが、業務内容が結構変わっているようです。その変遷を非常にラフにお話しすると、経営難に陥り倒産しかけたところに外部から資本が入り、不採算部門を閉鎖して採算の取れる業務に移行したと言うことです。日本でも似たよう話はあるので、経緯自体は別段驚きはしないのですが、中国でも日本と同じような建築CGの状況になってきているのかという事には驚きました。不採算部門のトップに上がるのはどんな業務だと思いますか?
聞くと「そうだろうな」という重い現実が見えてきますが、答えはずばりパース部門です。実際結構前からクリスタルは外注(勿論外注先はクリスタルを辞めて独立している個人又は小規模プロダクション)していたようなので、実態としては変わらない話のようですが、国内より実入りの良い海外の仕事も多く受けているクリスタルでさえ採算が合わない状況という事が問題に思えました。勿論中国での人件費等の高騰も大きな要因だと思いますが、そもそもパースの単価が安い事が問題で有る事は想像に難くありません。これは日本にもそのまま当てはまる内容で、私の知っている限り日本でも規模の大きい建築CGプロダクションは長続きしていないという事実があります。日本でも経営の立て直しの際に真っ先にやり玉に挙がるのがパースです(この場合のパースはコンペや設計納品時に納めるパースなどを指します)。クリスタルに話を戻しますが、アニメーションも単独の制作としては止めているようです。アニメーションが全く採算に合わないという事は無いとは思いますが、パースに比べれば案件は少ないでしょうからこれも大きな組織にとっては問題です。現在は企画展示のような総合的な仕事、所謂広告代理店+制作も出来るといったスタンスの業態にスイッチしているとの事でした(コラムを読んで頂いている方でこの辺りの事情を詳しく知っている方もいるかとは思います。もし私の話に間違いがあるようでしたらメールなりでご指摘頂ければ幸いです)。
誤解の無いようお話ししておくと、この様な不採算なパース部門が採算部門として再生する道はあります。先に挙げたようなパースでは無く広告用途のパースにスイッチする事です。広告用途は下がりに下がってきている一般的なパースの単価よりも高く、一案件で纏まった量(10枚以上も珍しくない)の制作が出来るので採算ベースに乗せることが出来ます。勿論一頃に比べれば広告用CGの価格も下がってきていますが、ボリュームも含めて考えればペイ出来ます。この様な転換はある程度の人数を抱えていないと出来ないであろう事も付け加えておきます。(いくら制作期間が一般のパースに比べ長いとはいえ、広告クオリティの案件を10枚、20枚を一人二人でこなすの難儀ですから)
対岸の火事では済まされない
クリスタルがおかれていた環境・実情は日本にそのまま当てはまります。クリスタルと同じ経緯を辿った会社もあります。何より問題なのはパースでは食っていけないという事実です。ビジネスは成長していかないと意味はありませんし、発展もありません。この業界がまともであれば、パースの仕事量が増える→増えた仕事に対応するため人を増やす→増えた人員に応じた営業で仕事量を増やすといった循環で会社が成長し、成長過程の利益を投資して営業拠点を増やし増員増益を達成する。一方ではパース以外の新しい仕事の獲得のために先行投資を行い新規の業務に取り組む体制を構築する。こういった循環で1つの産業となっていくのだと思いますが、ここで話している根幹の過程で仕事量が一番多いパースだけでは会社が傾いてしまうという事は、パース制作は個人事業主クラスの数多の人間の苦労の上に成り立っているだけで、真っ当なビジネスの1つにはなり得ないと考えるしかありません。当然単価が安い事が一番の原因ですし、その価格で受けてしまっている我々にも問題があります。なかなか変えることが難しい問題のように思えますが、何か変化を起こさないとパースだけで食べていくのはますます厳しくなるでしょう。歴史と現実の事象から見れば、先の例のように総合的な仕事を受注出来るようにしていくしか道は無いと思います。そのためには今よりももっと様々な知識・技術・経験、そして人脈が必要になります。手をこまねいていても何も変わりません。少しずつでも前に進める努力を今日からしてみませんか。再び中国の話
話を中国に戻します。私が半ば忘れかけていた中国を意外な形で再発見した先の話で、もう一つ日頃のメディアのニュースでは流れない話を聞きました。私はビジネスを考える上で政治の問題が大きく立ちはだかる中国は取りあえず止めて南に下ろうと思っていました。実際尖閣問題で痛い目に遭いましたし、この問題を私如きがどうすることも出来ない手の届かない問題でもあったためです。メディアでも日系企業の対中国への投資がかなり減っている話を良く耳にするので尚更です。しかし実際は私が知っている頃と余り変わっていないという事のようです(変わったのは人件費の高騰と為替の円安)。撤退や減資の話ばかりを耳にしている気がしますが、今も対中投資は結構行われていて、それに歩を合わせて建築や建築CGのビジネスも未だ健在だと。考えて見れば至極当たり前で、目の前に大きなマーケットがあるのに黙ってみている起業家はいません。失敗して手を引くこともあるでしょうが、勝機有りと見ればマーケットの成長に対して次々チャレンジャーが現れても不思議ではありません。おそらく中国のとらえ方が変わったのだと思います。これまでは発展途上の景気に乗って、安くつくる工場的なとらえ方だったものが、一般的なマーケットに変わっただけなんだと。だとすれば、日本の10倍の人工は看過出来ないビジネスの場であり、政情は別としてもこれからも魅力的なマーケットの国でありつづけるのではないでしょうか。今は、来年辺り久しぶりに中国に行って、知り合いにでも話を聞いてこようかと思っています。何か目新しいチャンスが転がってるかもしれませんし、そう思わせるものをやっぱり持っていますしね中国は。最後に
最後にも書きましたが、様々な問題を抱えているとは言え中国はマーケットから見たら普通の国のようです。ですから抱えている問題も同じ。と言うことは解決方法も案外同じ可能性が高いです。であれば勝機はありと思うのですが如何でしょうか。そういった繋がりで今回のパースは中国のパートナーのパースです。関係は続いてますが何せ仕事を此方からは出せていない情けない状況です。東南アジアのお話しは次回その2でお話ししようと思います。実際にトレンドの感があるのは東南アジアです。私も今関わっている案件、止まっている案件、上手くいかなかった案件と色々話がありますし、これから徐々に見えてくる感じです。10年前くらいから注目はしていましたが、自分から踏み込むには難しいと考えあぐねていました。ところが幸いにも仕事の方から舞い込んできてくれました。相手から勝手に訪ねてきてくれた事からも機は熟している気がします。勿論早熟ではありますがビジネスはそのくらいの時に動かないと旨みは無いですからね、今行動を起こすすべきは東南アジアかな。最後の最後に部分的には極論めいたものいいをしていますが、あくまで私見で有る事はここにお断りしておきます(人のとらえ方は様々なので)。