トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第1回:建築ビジュアライゼーションにおける恒常的な問題点とは?

更新日 2009.01.21

1_problem_01.jpg建築ビジュアライゼーションを生業としている私にとって常に頭を悩ませる問題が1つある。それは、企画・設計に始まり施工を経て建物が竣工するまでの建築ワークフローに於いて、建築ビジュアライゼーションの重要性は建築関係者にどの程度認知されているかという点だ。

ビジュアライゼーション=可視化という切り口で業務を捕らえるとCGパースやアニメーションだけではなくシミュレーションやDTPなども含め広範囲にわたり、各々の場面での使用状況を鑑みると認知度は高そうに見える。私の経験からすればプレゼンテーションの場では建築パースやアニメーションは必須だった。

これらの点から考えれば重要度、認知度共に高そうに見えるが、私が問題と感じているのは、ビジュアライゼーションの成果品に対しての価格の設定が品質や表現力、表現手法などにあまりリンクせずに、例えばパース1枚○○円などの一律でどちらかといえば時間単価に近い設定をしている点だ。ビジュアライゼーションというからには、その表現力や表現手法に重きが置かれて然るべきであって、標準単価や時間単価的なものと比べて高い安いを議論するのは違うのではないかと思う。勿論この御時世においてコスト管理にシビアになるのは当然ではあるが、表現力が優れているものに対しても標準単価的な発想で査定されるのはおかしいのではないだろうか。

ここで冒頭の建築ビジュアライゼーションの重要性の認知度の話に戻るが、このような建築ビジュアライゼーションの状況だとビジュアライゼーションを使用するという意味では必須であっても、本来のビジュアライゼーションの目的である「分かりやすく、より良く物事を伝える事によって差別化を図る」という観点からは、コストベースで成果品を判断している事からも明らかなように重要度が高いとはあまり感じられない。勿論ビジュアライゼーションの重要性を十分認識している設計者(クライアント)は存在するが、その絶対数は多くない。何故今この話をしているかというと、昨年末からの経済危機に直面している最中で企業がもっともコストを圧縮しようとするのが、重要性があまり高くないと判断される業務であり、そういった意味で建築ビジュアライゼーション業務は経済危機と同様に危機に直面していると思っているからだ。

今は建築ビズの重要性を再認識させるチャンス・未来は明るい

新年を迎えたばかりというのにネガティブな話からスタートしてしまったが、私自身は現在の経済状況を建築ビジュアライゼーションの重要性を再認識させるチャンスと捕らえている。不景気になってくると自ずと営業活動が増え、プロポーザル案件が増加し、設計や施工のコンペの競争の激化が予想される。受注競争の中では設計側の意図を施主に明確に伝えるツールとしてイメージによる伝達・共有=ビジュアライゼーションによるイメージの表現がこれまで以上に重要になってくる。更には他社との差別化を図る事が重要になり、この点でもビジュアルによるイメージの伝達は非常に有効な手段となる。

実際これらの事は以前から言われ続けてきた事であり本当にそうなるのか?という疑問は私自身にもあったが、この事に確信を持てたのは最近訪れた某大手設計事務所での会話からだった。不景気でもあり設計業務も減っているであろう事は大手設計事務所とはいえ避けられない現実だろうと思っていたのでCG制作の外注が多くあるのか疑問を抱きながら話を聞きに行ったのだが、先方の話だとCG制作の業務量が多いため内制だけでは手が回らず外注しているという事だった。

なるほど、さすが大手は実績と営業力でこの不景気の中でも仕事は余るほどあるのだと一人で納得していたが、設計業務は他聞に漏れず減少傾向にあるという。では何故CG制作が多いのかという私の問いに対する先方の答えは「だって今時図面だけでクライアントに説明することなんて無いでしょう。図面よりも絵で見せたほうが話が早いし」というものだった。更には受注活動のためにプロポーザル・コンペ等でCGパース・アニメーションの引き合いが多いとの事だった。CG制作現場の生の声が私の考えを肯定してくれたお陰で建築ビジュアライゼーションの前途は明るいと考えるに至った訳だ。

これからのトレンド、建築リアルタイムレンダリング

1_problem_02.jpgこれからの建築ビジュアライゼーションは明るい!と考えているが、CG制作者側もこれまでと同じではジリ貧で、これまで以上に表現力や表現手法などに特徴を持たせて制作を行わなければならないとも思っている。

特に表現手法についてはこれまでパースやアニメーションが定番のスタイルであったものを、それにプラスしてリアルタイムレンダリングを取り入れる時期が来ていると思う。アニメーションでは出来ない自由な視点と、模型を見るがごとく自由に3DCGを操れる事が如何に設計の現場やプレゼンテーションで効果を発揮するかは、実際に製造業の現場においてリアルタイムレンダリングが当たり前になっている事からも明白だ。

建設業の扱う建物という物が、一般の製造業とは様々な面で異なる事からリアルタイムレンダリングに関しては建築だけが非常に遅れを取っていたのだが、昨年末に参加した米国ラスベガスで開催されたAutodesk Universityのセミナーの内容が、この分野でもようやく一歩先へ踏み出せる時期が来たんだなと感じさせるものであった。様々な建築分野で多くのセミナーが開催され、受講した1つ1つが刺激を受けるものだったが、中でも開発中の建築用リアルタイムレンダリングソフトとして紹介された「Newport」のセミナーは、ようやく建築でもまともなリアルタイムレンダリングの業務適用が出来るのではと期待させられた。レンダリング品質が著しく高いわけではなかったが、その描画性能や画面のカスタマイズ機能など期待させられる項目が多かった。なにより良かったのは設計業務の中での活用が見込まれる点だ。設計業務の中でCGを使用する際にこれまでのパースやアニメーションが指摘されていた設計業務に即応しない点を解決している事が素晴らしかった。アメリカの大手事務所などがアドバイザーやテスターを勤めている事が開発を良い方向に導いたのだろう。

リアルタイムレンダリングが設計業務の中に組み込まれてくるという事は3Dが設計の中で活発に使われことを意味し、それは建築ビジュアライゼーションが活発になる事と同じ事を意味する。これは今盛り上がりを見せているBIMにも言える事だが、そういった意味でも「Newport」のようなリアルタイムレンダラーが普及していく事は建築ビジュアライゼーションにとって重要であるし、それが目前に迫っているように感じたのは受講者の中で私だけではなかったはずだ。

昨年からのBIMの盛り上がりに加えて今年はリアルタイムレンダリングが盛り上がってくるとますます3DCGの重要性が増し建築ビジュアライゼーションが活発化していくだろう。この波に乗り遅れないように情報収集と表現力・表現手法を磨き備えることで、建築ビジュアライゼーション業務が活性化していき、忙しい2009年を過ごす事になるのだろうと思う。

更新日 2009.01.21
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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