「Autodesk 3December 2011」イベントリポート

Autodesk 3December 2011
日程:2011年12月 8日(木) 13:30-19:30
会場:ラフォーレミュージアム六本木
定員:500 名

今年も「3December」の季節がやってきました!2011年12月8日、ラフォーレミュージアム六本木(東京・六本木)で、オートデスク主催の3DCGユーザのためのグローバル・コミュニケーション・イベント「3December 2011」が開催されました。初開催は1999年のヨーロッパ。日本でも2000年に始まり、いまや3DCG分野の最も「旬」な情報、技術、クリエイターが大集合する3D CGのクリエイター&ファンの一大イベントとなっています。

特に今年は、ゲーム界から2011年屈指の話題作「エースコンバット アサルト・ホライゾン」のバンダイナムコゲームスの開発チームが参加。また映画界からフルCGアニメーション大作「friends もののけ島のナキ」の製作チームも登場し、さらにハリウッドからも特別ゲストとしてプレビズ専門プロダクションのザ・サードフロア社CEOクリス・エドワーズ氏が来日するなど、文字通り他では聴けない貴重なセッションが目白押しで、満員の会場は終始熱く盛り上がりました。 

3December会場受付
オープン当初は今年も行列ができました。

ご挨拶 / オートデスク株式会社 「Helping people imagine,design and create a better world」

オートデスク株式会社  メディア&エンターテインメント 本部長 吉崎哲郎
オートデスク株式会社
メディア&
エンターテインメント
本部長 吉崎哲郎

13時30分、静かに灯が落とされ、会場を埋め尽くした数百名の参加者の期待感に満ちたざわめきが徐々に静まると、司会者が「3December 2011」の開会を宣言しました。そして、まず主催者を代表して登壇したのは、オートデスク メディア&エンターテインメントの本部長を務める吉崎哲郎でした。吉崎は、オートデスクが提示する企業ビジョン「Helping people imagine, design and create a better world」を引きながら、客席を埋める参加者たちに歓迎のメッセージを贈りました。

「Helping people imagine, design and create a better world――この言葉にある"people"とは、今日お集まりの皆さんをはじめ、当社ユーザの幅広い業界のデザイナー、エンジニア、設計者などの方々です。そして、私たちは、そんな皆さんがより良い作品・より良い世界を創るためアイデア創出をデザインテクノロジーで支援したいと願っています。 最新の技術や情報、優れたクリエイターが多数集まるこの"3December"の1日が、皆さんにとって、より良いブレインストーミングの機会となることを願っています」

スポンサープレゼンテーション / エヌビディア「クリエイターの能力を最大限に引き出す制作環境」

NVIDIA Tesla Quadro事業部のエンジニア・澤井 理紀 氏とオートデスクのエンジニア・宋

続いては、グラフィックスプロセッサのワールドブランドNVIDIAのプレゼンテーションです。スピーカーのTesla Quadro事業部のエンジニア・澤井理紀氏がテーマに選んだのは、最新製品であるNVIDIA Maximus。1システム上でモデリング・レンダリングを同時進行可能なその圧倒的なパワーとグラフィックス性能の凄さは、オートデスクのエンジニア・宋による3ds Max 2012のirayを用いたNVIDIA Maximusワークステーションのデモでもはっきり示され、観衆の大きな注目を集めました。

「映画やテレビ番組などの製作現場においては、プロのクリエイターならではの高い品質が要求され、限られたスケジュールや高まる価格圧力なども厳しさを増す一方です。アーティストにはさらなるパワーが必要です。NVIDIA Maximus搭載ワークステーションは、Quadro GPUの業務用3Dグラフィックス性能とNVIDIA Tesla GPUの高性能演算力を結合させて、この困難な問題を解決し、皆さんの制作ワークフローを改革するでしょう」

ユーザセッション / 株式会社バンダイナムコゲームス「『エースコンバット アサルト・ホライゾン』における実在都市の再現方法」

株式会社バンダイナムコゲームス ビジュアルアートディビジョン チーフ シニアビジュアルアーティスト 千家 英嗣 氏 ビジュアルアーティスト 鈴木 摩耶 氏

次は本イベントのクライマックスの1つ、バンダイナムコの「エースコンバット アサルトホライゾン」制作チームによるセッションです。登壇したのは同作品で背景制作を担当した千家英嗣氏と鈴木摩耶氏のお2人です。「エースコンバット」シリーズと言えば、15年以上に渡り支持され続ける人気シリーズ。最新鋭のジェット戦闘機を駆って、大空を縦横に駆け巡るリアルかつ爽快なフライトシューティングゲームです。今回は最新作「エースコンバット アサルトホライゾン」の、特に背景づくりに関わる「実在都市の再現手法」がテーマに選ばれました。

「この新作は多彩な航空機を操縦して迫力ある戦闘を体験できる、超音速・大破壊シューティングです。"もがれる翼の断末魔"をコンセプトに、眼前で敵を木端微塵に破壊する爽快さをアピールポイントにしています。そんな本作は、シリーズとして初の現実世界を舞台としたリアルな戦争ドラマを描いており、実在する世界の有名都市が幾つも登場します。マイアミ、ドバイ、そしてモスクワ、ワシントンD・C、パリ、ハワイ・ホノルル......こうした実在の都市をリアルに再現することで、ユーザに現実の都市で戦っていると実感させたいと考えました」

「エースコンバット アサルトホライゾン」は、シリーズの中でも特に大きな進化を遂げた作品です。シリーズの「売り」である空中戦がかつてないほどの近接戦闘となり、低空でビル間近を飛ぶ等のシチュエーションも豊富に用意され、驚くべき迫力とリアリティを生み出しています。しかしこのことは結果として、背景制作に関してもこれまでにない困難な課題を生み出しました。すなわち、いかにして実在する各都市をモデルに、できるだけ多くの建物・情報量を表示し、低空飛行した時の密度を上げていくことができるか、という問題です。

「こうした課題をクリアすることにより、本作では建物は前作の倍以上の物量とテクスチャ解像度の表現が可能となり、表現力の幅を広げることができました。しかし、その制作自体は決して容易なものではありませんでした。私たちの前に、実在都市をゲームで再現する上でのやっかいなポイントとして、以下の3つの問題が立ちはだかったのです。1つ目は航空機が飛び回るだけに"再現すべき範囲が非常に広範囲に渡ってしまうこと"、2つ目は1つ目の結果として"配置する建物の量も非常に膨大になること"、そしてそれを処理するための"処理負荷やメモリの制約"です」

3つの「やっかいな問題」に関し、千家氏たちは本作中に登場する東京の街を例に解決策を語っていきました。まず「広さ」に関しては衛星写真を利用。また、建物の量の多さについては、道路や建物情報がデジタル化された地図データを転用し、自作の自動立体化ツールも活用して大幅な効率化を実現したといいます。そして3つ目の処理負荷・メモリの制約は、似た形状の建物を共通モデルで置き換えるインスタンス化で解決したのです。鮮やかな発想の転換で実現されたリアルな東京の街に、観客全員が盛んな拍手を贈ったのはいうまでもありません。

オートデスク メディア & エンターテインメント「ASK Autodesk」

質問に回答するオートデスクの吉崎・門口・西松

「エースコンバット」のセッションで熱く盛り上がった会場をクールダウンするため、ここで30分ほどの休憩が挟まれます。その後に始まったのは、3Decemberとしては始めての試みとなる、Q&Aセッション「ASK Autodesk」でした。これは今回のイベント参加者から事前に募集しておいた「オートデスクに対する質問」に、メディア&エンターテインメントの各担当者がダイレクトにお答えしようという新コーナー。もちろん会場での質問にも時間が許す限り応えようというもので、壇上には回答者としてオートデスクの吉崎・門口・西松の3人が上がりました。Q&Aのやり取りを、以下幾つか、一部をかいつまんでご紹介しましょう。

【Question1】毎年のソフトウェアバージョンアップは今後も継続して続けるのですか?

【Answer】基本、春先にメジャーバージョンアップを行い、サブスクリプション・アドバンテージ・パッケージを「秋口頃リリースするというパターンで、今後も年2回ずつ行っていきます。

【Question2】1ソフトの開発には何名くらいのエンジニアが?

【Answer】数は申しあげられませんが、メディア&エンターテインメント系のソフト開発はカナダが中心で、モントリオールやトロントに多くの開発者がいます。もちろん日本にもいますし、最近は中国にも開発リソースがあります。各製品の開発は個別に行われますが、最近はコミュニケーションを取る機会も増え、個々の利点を生かした開発を行っていますよ。

【Question3】サブスクリプションの価格が値上げされて困っています。

【Answer】価格について簡単にお答えするのは難しいです。全部門の価格を統括する部門や製品開発元、各国法人で相談して適切な価格を決めています。お客様の投資計画の立てやすさなど考慮し、なるべく価格の増減が無いよう考えています。サブスクについては技術サポート中心の価値に投資していましたが、お客様のご要望や機能拡張、バグフィックス等へ投資をしていただいていると捉えています。クラウドなど、よりサポートを充実していくことでサブスクリプションの価値を高めていきたいですね。

...... という流れで以下【Question11】までQ&Aが行われ、さらにその後は、会場から質問を受けてその場でオートデスクスタッフが回答する、というライブQ&Aも実現。これまた大いに盛りあがりました。

スポンサープレゼンテーション / ゼロシーセブン株式会社

実際に会場でモーションキャプチャーをする様子

2つ目のスポンサープレゼンテーションは、ユニークなモーションキャプチャー・テクノロジを扱うゼロシーセブンの登場です。Kinectによるローコストなシステムから、マーカーレスでスタジオレス、複数アクターのトラッキングが可能なハイエンドなシステム。さらにはカメラすら不要というシステムさえあり、その多彩な製品ラインナップは圧巻です。プレゼンテーション後半は、カメラ不要の「MVN」システムを使い、会場で実際にモーションキャプチャーするデモを展開。観衆の度肝を抜きました。

「いままでモーションキャプチャーといえば、立派なスタジオやカメラが必要で、時間もコストもかかるという概念が一般的でした。しかし私たちが提供する新しいモーションキャプチャーは、たとえば太陽の下で複数のアクターの演技を自由にキャプチャーできたり、水の中でキャプチャーできるモーキャプや、マーカーもカメラも不要で10分間でセッティングしトラッキングを開始できるものまで、非常に幅広く多彩な製品が揃っています。事務所には専用スタジオを併設しており、これらのモーションキャプチャー製品を体感いただけますので、ご興味のある方はぜひ一度おいで下さい」

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