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第1回:ECCコンピュータ専門学校 ~仕上がりの良い学生を生み出す仕組みとは?~
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はじめに
本コラムでは、オートデスク製品を使用して活躍している学生や教育機関を紹介していきます。第1回目は、ECCコンピュータ専門学校から、学生、教員、学校の取組みです。
同校を取り上げる理由は、ここ数年の学生の「仕上がり」にあります(「作品の仕上がり」と「学生自身の成長」をまとめて「学生の仕上がり」と呼んでいます)。
特にゲーム分野の学生の仕上がりは企業も注目しており、筆者にも企業の採用担当者から「ECCコンピュータ専門学校って知っていますか?」と聞かれることが度々あり、3月に東京で開催された同校の作品発表会にも多くの企業が参加しており、企業が最も注目している専門学校だと言えるでしょう。
そこで、本コラムでは、このECCコンピュータ専門学校がいかにして仕上がりの良い学生を生み出しているのか、その秘訣を紹介したいと思います。
左から、渕脇あかねさん、福島千智先生、白石江里奈さん
今回のインタビューでは、「活躍している学生」ということで、ゲーム開発エキスパートコース・ゲームCG専攻(4年制学科)の現在4年生の白石江里奈さんと同じく4年生で絶賛就職活動中の渕脇あかねさんを紹介していただきました。白石さんと渕脇さんは、日本ゲーム大賞アマチュア部門2016で最終選考10作品に選ばれた「FLOWer」のCGデザインを担当した学生で、制作に対する強い情熱を感じさせる非常に魅力的な学生たちです。
ちなみに、白石さんと渕脇さんが主に使っている3DツールはSoftimageで、(現在、同校ではMayaに移行しています)、スカルプティングにはMudboxを使用しています。
また、今回のインタビューには、白石さんと渕脇さんの2年次の担任で、CGプロダクションでの制作業務を経て同校で教員になった福島千智先生にも参加いただきました。
白石さんと渕脇さんに福島先生の印象を聞いたところ「とにかく厳しい先生です(笑)」と即答で、ご本人も「学生たちには、これまでの経験から制作進行管理や期限について厳しく指導しています」とのことで、自他共に認める「厳しい先生」ということですが、取材時の印象では学生たちと親しい関係が築けているようで、制作業務の実績、教員としての魅力(厳しさと親しさ)を合わせ持った非常に優秀な先生だと感じました。
福島千智先生
渕脇あかねさん
白石江里奈さん
プロに徹底的に指摘してもらう「作品発表会」で仕上がりの良い学生を生み出す
ECCコンピュータ専門学校では、企業に作品を評価してもらう「作品発表会」を定期的(月1回程度)に開催しています。この作品発表会は、指導教員も緊張するほど評価が厳しいようで、学生と作品への期待から企業が本気になって取り組んでいるようです。
白石さんと渕脇さんは、ECCコンピュータ専門学校に入学するまでCGの経験はなく、「CG未経験者が、ここまで成長した秘訣は?」と聞くと「チームに貢献しようと思うモチベーションです」と答えてくれました。ECCコンピュータ専門学校ではチーム制作を推奨しており、また福島先生いわく「そもそもちゃんと作って選ばれないと作品発表会には出られないんです」とのことで、白石さんと渕脇さんはこの作品発表会に選ばれ、ライバルチームとの競争に勝つことがチームへの貢献であり、それぞれのモチベーションになっているようで、成長の秘訣になっているようです。
本気で取り組む
今回の取材で、ここ数年ECCコンピュータ専門学校の学生作品の仕上がりが良くなっているのは「作品発表会」が関係していると感じとることができました。
作品発表会や講評会は他の専門学校でも実施していますが、ECCコンピュータ専門学校のように定期的(継続的)に実施している専門学校は少ないと思います。
定期的に作品を審査・評価することで、企業は次回の作品発表会までに作品が改良されることを期待して改良提案(ダメ出し)を行うようになるでしょう。プロの視点で出される改良提案は量も増え具体性も増し、学生たちはその改良提案に必死で応え、その結果として作品の仕上がりが格段に良くなっていきます。
また、企業から出される改良提案は指導教員にも反映されるので、福島先生いわく「作品発表会に向けて、スケジュール管理だけではなく、作品の制作指導もしています」とのことで、指導教員による作品制作指導は、まさにプロの工程管理と同じで、作品の仕上がりにも大きく影響していると言えるでしょう。
学生たちは、作品発表会を通して、プロの制作現場がどういうものであるかを実践的に学ぶことができることで、ECCコンピュータ専門学校が仕上がりの良い学生を生む出すことができているようです。
白石さんと渕脇さんの作品をご紹介
「FLOWer」
白石さんと渕脇さんがCGデザインを担当した「FLOWer」は、キャラクターやステージが3Dで構成された2Dライクな横スクロールのアクションゲームで、日本ゲーム大賞アマチュア部門2016のテーマ「流れる」をプレイ内容とデザインコンセプトに活かしたゲームに仕上がっています。
この「FLOWer」の制作で、白石さんはキャラクターのモーションとUIを、渕脇さんはキャラクターのデザインとモデリングと背景の制作を担当しました。
白石さんが担当したキャラクターのモーションは量・質ともにしっかりと作り込まれていて、渕脇さんが担当したキャラクターは季節ごとの花をモチーフにしてデザインされていて多彩に作り込まれています。
その他にも、豊富なUIパーツ、淡い水彩調で統一された全体のデザイン、これを3ヶ月の短い期間で制作したことなど、この「FLOWer」から白石さんと渕脇さんのセンスと制作力を感じ取ることができます。
「すしいくさ」
「すしいくさ」は、寿司ネタをモチーフにしたキャラクターがお寿司屋さんのカウンターを舞台にして対戦する3D対戦型アクションゲームで、白石さんと渕脇さんがCGデザインを担当し、学内コンテストで数社の企業から賞を得た作品です。
白石さんがキャラクターのモーションとUI、渕脇さんがキャラクターデザイン、キャラクターモデリング、背景の制作を担当しました。
白石さんが担当したキャラクターのモーションでは、キャラクターごとに武器が異なるため、武器に合わせた攻撃パターンでモーションを作り込んでいます。
渕脇さんが担当したキャラクターのデザインでは、和テイストの衣装や寿司ネタをモチーフにした武器などが多彩にデザインされています。
その他、UI、オープニング画面、エンディング画面、必殺時のカットイン画像なども白石さんと渕脇さんによって作り込まれています。
ポートフォリオ
白石さんと渕脇さんのポートフォリオは、それぞれの希望職種が分かるように作品が掲載されています。
それぞれの希望職種は「FLOWer」の担当パートでも示されており、白石さんはモーションデザイナー、渕脇さんはキャラクターモデラーを希望しています。
白石さんのポートフォリオやデモリールは、モーションデザイナー希望であることから、キャラクターのポーズやアニメーションを多く掲載し、ボーンの作り込みをワイヤーフレームで見せる工夫がされており、制作力をしっかりとアピールできています。
渕脇さんのポートフォリオは、キャラクターモデラー希望であることから、リアル頭身やデフォルメされたキャラクターを多く掲載し、レンダリング画像だけではなくモデリング・スカルプティングされた状態をワイヤーフレームで見せることや、テクスチャーも展開画像で示し、制作力を示すことができています。
また、白石さんと渕脇さんのポートフォリオは、希望職種を示す作品だけではなく、希望職種以外の作業パート作品も掲載されており、多彩な表現力や制作力をアピールできています。
さらに、白石さんと渕脇さんのポートフォリオは、制作したCGをゲームやムービーに実装していることを掲載し、実践的・総合的な「制作経験」をアピールできています。
渕脇さんのポートフォリオ
白石さんのポートフォリオ
最後に
今回は、ECCコンピュータ専門学校から「活躍している学生の成果」と、仕上がりの良い学生を生み出す秘訣として「作品発表会を中心にした取組み」について紹介させていただきました。
また、同校への取材では、他にも成果的な取組みを実施しているお話しをうかがうことができ、特に「デッサン」については改めて取材させていただきたいと思えるような成果がでており、学校の取組みによって教育内容が良くなり、学生の仕上がりが良くなっていると実感することができました。
ECCコンピュータ専門学校は、CGプロダクションやゲーム企業が注目していますが、同校には企業だけでなく他の専門学校にも注目してほしいと思っていますし、同校の取組みは他の専門学校でも参考にされると良いのではないかと思っています。
最後になりますが、取材を受けていただいた、白石さん、渕脇さん、福島先生、ありがとうございました。
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