IT資産管理の業務効率化とコスト削減を両立したその秘訣とは ~ ARアドバンストテクノロジ株式会社様 ShotGridユーザ事例~
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IT資産情報の適切な管理は、機材の効率的な稼働やセキュリティ対策の観点からも重要な業務である。昨今、情報システム管理者は、PCやスマートフォンなどのハードウェア資産、ライセンス情報といったソフトウェア資産など様々な資産や情報を正確に把握しておくことが求められている。
ARアドバンストテクノロジ株式会社の鈴木氏も社内でIT資産を管理する立場にあり、人員の増加とともに、増え続けるPCやスマートフォンの管理には頭を悩ませていたという。鈴木氏は従来の管理手法からどのようなアプローチで課題を解決されていったのか、類似ソリューションと比較して1/40に運用コストを削減できたShotGridとはどのような製品なのか、インタビューの場で詳しくお話を伺った。
ーー本日はよろしくお願いします。はじめに、ARアドバンストテクノロジ株式会社についてのご紹介をお願いします。
鈴木氏:こちらこそ、本日はよろしくお願いします。弊社は様々な業種のクライアント様に対して、DX化支援を目的とした先進のクラウド技術とデータ・AI活用ソリューションといった先進技術をワンストップで提供しています。コンサルティング、AI・クラウド技術、UI・UXデザインの三つの分野に精通しておりますので、単なるシステム導入に留まらない一気通貫したトータルソリューションを提供できることが弊社の強みです。
また、LOOGUE FAQ(AIチャットボット)、ZiDOMA data(ファイルサーバ可視化・分析)、Mieta(クラウドコンタクトセンター分析管理ツール)といった自社開発プロダクトのサービス展開も行っています。
社員数は427名です。全体で9割の社員が、システムエンジニア、コンサルタント、デザイナーといった技術職です。
ーー鈴木様の担当されている業務内容についてお聞かせください。
鈴木氏:私は本社部門の情報システムグループに所属しています。私を含めて4名のチームで、スタッフが利用する情報システムの導入選定や、ユーザが利用するPCのセットアップ作業やアカウントの発行対応を行っています。
今回のテーマでもあるIT資産の管理は、なかでも重要な業務のひとつです。社内には約1,000台のPC、約350台のポケットWiFiやスマートフォンなどのIT資産が存在します。これらの資産について、誰がいつまで利用しているのかといった情報を正しく把握するのが私達チームの役割でもあります。
ーーこれまで、IT資産はどういった手法で管理されていたのでしょうか?
鈴木氏:2019年より前はスプレッドシートを使って情報管理を行っていました。前任者から業務を引き継いだ際、シートの更新、維持にかなりのリソースを割かれそうだと感じたのを覚えています。
というのもPCの稼働状況(別の社員に割り当て直す)が変化する度に、同じPCでもどんどん行を追加して登録を行っていたため、1台のPCの情報でも割り当て直す度に、複数に行に分かれてしまっていました。もちろんそれだと見にくいので、赤くハイライトされた行が最新情報というルールはあるのですが、それでも一目で正しい状況を把握するのには苦労しました。また、更新漏れが出ないよう細心の注意も必要でした。
ーーそのような複雑なスプレッドシートの管理から脱却するために新たなソリューションに何を求められていましたか?
鈴木氏:弊社が実現したかったことは主に2つです。1つ目は、資産の台帳管理が行えて、棚卸し確認の作業にも利用できること。つまり、社内にどういった機材があるのかを記録して、それらの所在も管理したいということです。
2つ目は、機材の貸し出し状況の管理です。どのPCをいつ誰に貸して、いつ返却されるのかといった資産の状況を把握することです。
当初は、一般的に使われている資産管理専用ソリューションの導入を検討していました。しかし、調べていくと弊社の要件を満たすには追加でエンタープライズ向けのオプション契約が必要だということが分かりました。見積もりをとったところ、実に毎月80万円、年間では総額960万円ものコストが発生すると判明したのです。
また、月額で5万円ほどの安価なソリューションについても検討を行いましたが、安価なソリューションはデータベース構造になっていないものが多く、これではスプレッドシートやエクセル管理から状況は変わりません。あるいは、台帳管理は行えるが、棚卸し作業の機能はサポートされていないなど機能面で不足しているといった問題もありました。
そのような状況で、なかなかフィットしたソリューションが見つからなかったところ、前職でエンタテインメント業界に勤務していたスタッフから、ShotGridであれば今回の要件を満たせるのではという意見があがったのです。
ShotGridは、いわゆるIT資産管理の専用ソリューションではありません。主にはエンタテインメント業界向けで、コンテンツ制作のためのプロジェクト管理、タスク管理が行える製品だと聞いています。しかし、調べていくうちに優れたデータベース構造を持ち、クラウド上で様々な情報を一元管理できるプラットフォームだということが分かりました。
そこで、まずは体験サイトを登録して実際に検証を行ってみようという流れになりました。最初はShotGridサイト内にスプレッドシートの項目を再現するテンプレート作成を行いました。
出来上がったサイトに情報を入れ込むと、ShotGridは視認性が優れており、拡張性やカスタマイズの自由度も専用ソリューションより高い部分があると感じました。
そして、導入の圧倒的な決め手となったのは運用コストでした。前述の通り専用ソリューションの場合には、年間で約1,000万円近くのコストが発生します。ShotGridの場合、情報を登録する社員用に3アカウント、監査や監視を担当する社員用に3アカウントの合計6アカウントを購入しても年間約24万円の運用コストです。1/40という圧倒的なコストメリットで、機能面での要件も満たしているのです。もう導入決定に迷いはありませんでした。
ーースプレッドシートの情報をShotGridに移行する作業は苦労されましたか?
鈴木氏:テンプレート作成の作業は、ShotGridの販売代理店様から技術サポートを受けながら進めました。データ移行は、CSV形式で一括読み込みが行えたので特に難しいことはありませんでした。
2019年の7月に体験版サイトの登録を行い、導入を決定したのが9月です。通常業務の合間にゆっくりと作業を進めて、2ヶ月以内にはデータの移行と実際の業務運用が行えています。
ーーそれでは、実際どのようにShotGridで情報管理を行われているか詳しく解説をお願いします。
鈴木氏:現在、『PC管理』と『WiFi携帯管理』という2つのプロジェクトに分けてデータ登録を行っています。これは、情報を整理しやすくするためです。基本的に両方のプロジェクトとも同じような管理方法ですので、今回は『PC管理』のプロジェクトに絞ってご紹介していきます。
『PC管理』プロジェクト内に「管理台帳」というページを用意しました。このページでは機材に関する情報を登録しています。例えば、メーカー名や機種名、CPUやメモリ、ハードディスク容量といったハードウェアの基本情報などです。
そして、それぞれの機材の所在をステータスで分類しています。例えば、"チェック"と分類されたものは、倉庫から出荷された状態を指します。他には、"倉庫"にある状態、"破棄"されたもの、"メンテナンス中"などのテータスを設けて分類しています。
このように「管理台帳」のページでは、どういった社内資産があるかの登録を行い、それらがどういう状況にあるかをステータスで把握できるようになっています。
そして、こちらはPCの「申請管理」を行うためのページです。一番左のステータスは、PCの貸し出しに関するステータスを分類しています。"開始待ち"は、PCがセットアップ済みでユーザに貸し出すのを待っている状態、"進行中"はユーザに貸し出し中、"最終"はPCが返却された状態といった意味合いです。
申請管理作業の流れは次のとおりです。まず、利用申請があったPCを倉庫から移動します。次に、OSのイメージをインストールしたり、アカウントの設定を行いユーザがPCを利用できる状態にセットアップします。PCをユーザに引き渡したら"利用中"にステータスを変えるといった感じのフローです。
ShotGridのスマートなところは、「管理台帳」のページで登録したPCの機種名を「申請」のページで選択項目として利用できたり、「管理台帳」ページの機材ステータスを「申請」ページにも表示ができることです。もちろん、「管理台帳」と「申請」のどちらのページで機材ステータスを変更してもちゃんと連動するスマートな構造になっています。
このあたりがスプレッドシート管理とは異なるデータベース構造が持つ利点だと思います。別の管理項目の情報であっても、ページを切り替えずに1つのページで確認や変更を行えるので作業もスムーズに行えます。
ShotGridには条件ルール設定でセルの色を変えるといった機能もサポートされています。例えば、ステータスで"チェック"が選択されているとセルが緑色に変わるように設定しています。シンプルな機能ですが、どのPCが貸出中でどれが在庫に無いかを視覚的に素早く把握ができるので良いですね。
ーーなるほど、「管理台帳」と「申請」で情報を連動しながら管理ができるのは便利ですね。「申請」ページでは他にどういった情報を管理されていますか?
鈴木氏:PCの固有ID、貸出日や誰が貸出の対応を行ったか、どの会社のどの部署のスタッフが利用しているのかといった情報を確認できるようになっています。
実は、貸し出し申請処理や貸し出しを承認するワークフローについては、別の専用ソリューションを利用して行っています。別システムに登録されている情報をShotGridにも入れ込んで利用している形です。
一見するとデータの二重管理のように思われるかもしれません。しかし、利用申請・承認の専用システムは情報システムグループが台帳管理や貸し出し管理を行う作業には適していないのです。情報をShotGridに移行する手間を考えても圧倒的にShotGridを利用することで我々チームの作業負担は軽減しました。
欲を言うとAPIを活用して別ソリューションの申請番号から自動的に入力情報を同期させることも行いたいのですが、そこまでの対応はまだ実現していません。簡単にCSVフォーマットでデータの一括インポートが行えますし、数件の登録ですと手入力でもそれほど手間ではありませんので。
他には、貸し出したPCの付属品として、電源アダプター、マウスやPCバッグの有無もチェックボックスでトラッキングが可能です。受け取り希望日や返却予定日もShotGrid上で分かりやすく把握が出来るようになっています。
ーー付属物についてもトラッキングができるのは便利ですね。ガントチャートの機能は利用されていますか?
鈴木氏:タスクのページでは、どの利用者のPC返却日が近づいているかをガントチャートで分かりやすく把握ができるようになっています。フィルター機能を使うと、パートナー様の状況だけを表示するといった絞り込みも素早く行えます。
また、フィルター機能は人為的なミスの発見にも便利です。例えば、"貸し出し中"にも関わらず、「管理台帳」では"倉庫"のステータスになっているという矛盾を絞り込むプリセットのフィルターを用意しておけば、その機材はステータスの更新漏れであるということが直ぐに分かります。
ーー棚卸し確認作業についての解説をお願いできますでしょうか?
社員は、プロジェクトによっては、クライアント様の開発拠点やデータセンター等に出向くことがあったり、在宅勤務であったりと自社オフィス以外にも、様々な場所で働くことがあります。このため、PCの棚卸し確認作業で現地に出向いてPC自体を確認することは困難です。そこで、PCに貼られている固有IDラベルの写真を利用者から送ってもらうことで現物確認の証拠としています。
以前のスプレッドシート管理では、送られてくる証拠写真で現物の確認がとれたことは記録できていました。しかし、スプレッドシートの登録項目と写真データの紐付け管理に非常に時間がかかっていました。後になって証拠写真のデータを確認したり、年度毎に写真をあらためて確認するといった作業がスピーディーに行えない状況でした。
ShotGridを利用した現物確認フローは次のとおりです。メディアページにユーザから送ってもらった固有IDラベルの写真を一括でアップロードします。そして、棚卸しを実施した年月を一括エディットでタグ付けする。あとは画像データを確認しながら各PCの登録名にリンクしていくと棚卸し確認のための作業は完了です。もちろん、手動ではなくCSV読み込みで、全ての画像に一括でリンク設定を割り当てるといった処理も可能です。
コスト面でShotGridが優れている点がもう一つあります。それは、データ容量で追加費用が発生しない点です。たとえ何千枚の写真データをアップロードしても容量を特に気にしなくて良いのは助かります。
こういったシンプルな使い方ではあるのですが、ShotGridを利用するようになって、PC名と証拠写真を紐付けた管理がスピーディーに行えるようになりました。証拠写真を登録していく私もそうですが、監査でチェックする側の社員からもスプレッドシートよりも確認作業が行いやすいという意見をもらっています。
ShotGridには権限ロールの設定があるのですが、管理者、副管理者、監査用という3つの権限を用意して運用しています。監査担当の社員が誤って入力内容を更新してしまうことが無いように閲覧だけの権限に制限しています。資産管理の専用ソリューションでも、ここまで細かく権限を制御できるものは少ない気がします。こういった細やかな権限設定が行えるのも魅力ですね。
ーー最後に、この記事を読んでShotGridを用いたIT資産管理に興味を持った方にメッセージをお願いします。
お話したことを整理すると、ShotGridのアドバンテージには次のようなものがあげられると思います。
- データベース構造である(登録項目を連動した情報管理が行える)
- 様々な情報のステータス管理が行える(独自にカスタマイズ可能)
- 優れた運用コスト(専用ソリューションより安価、容量課金ではない)
- カスタマイズ性の高さ(作業に適した専用ページの作成が可能)
- 権限の制御(立場に応じて編集・作成の権限を細かく制御できる)
- 視覚的な分かりやすさ(ガントチャートで期日の確認、ハイライト機能で人為的ミスを防止)
- 情報に素早くたどり着ける(強力な条件フィルター、検索機能)
しっかりとした開発用のPython APIも用意されているので、弊社も将来的には別データベースとの自動連携やバーコードスキャンによる自動登録などの機能強化を実装することを考えて行きたいですね。
導入するにあたっては、ShotGrid独特の用語を学んだり、その構造を理解する必要があると思います。最初にテンプレートを構築し、運用方針をしっかりと決定する部分が肝になります。このあたりの作業に自信が無い方は、代理店様の技術サポートを上手く活用すると的確なアドバイスがもらえるはずです。
最初のハードルを乗り越えられると、作業の効率化と大きなコスト削減を確実に実感ができるソリューションだと断言ができます。スプレッドシート管理に負担を感じている人や、費用対効果に優れたソリューションへの乗り換えを検討している人は、ぜひチャレンジして欲しいと思います。
ーー鈴木様、本日は貴重なお話をありがとうございました!
ARアドバンストテクノロジ株式会社
https://ari-jp.com/
コーポレートユニット エンゲージメント推進部
情報システムグループ
鈴木 祐介 氏
*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。