トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第11回:レンダリングスキルその2(ライティング)

更新日 2010.08.18

前回は「3ds Maxは難しいソフトなのか?」という問いに対して、建築パースの制作に必要な分だけ習得するのであれば難しくない事を、「カメラアングルの設定」というスキルにフォーカスを当ててお話ししました。
今回はその2として外観パースにおけるライティングの考え方(スキル)を簡単に紹介したいと思います。


建築パースの出来を決めるもの

前回に引き続いての話題ですが、建築パースで最も重要な事柄がカメラアングルとすれば、2番目又は同等の重要性を持っているのがライティングです。カメラアングルとライティングを上手く設定する事が出来れば、それだけでも魅力あるパースを描くことは十分可能です。

ライティングと一口にいいますが、皆さんはどういった事を思い浮かべますか?
またはライティングの際に留意している事、こだわっている事は何ですか?

ライティングというと太陽光(ライト)をどのように当てるかという事になりますが、私はどの様にライトを当てるかではなく、どの様な陰影(コントラストとシャドウ)を作るかという観点でライティングを行います。ここでは外観の昼光でアイレベルのカメラアングルを前提にお話ししますが、この条件の場合はある程度ライトの当て方は決まってしまいます。

一般的に2面見えているファサードにライトが当たるように設定し、メインとなるファサード側を明るくする事が多いかと思います。パース制作上のコンセプトとして2面とも重要な場合は私もそうしますが、メインのファサードを重視して絵を作る場合は、メインではない方を影面に設定します。設計者は嫌がる事もありますが、きちんと説明が出来れば採用される事も多いライティングです。これがポイント1です。

片側のファサードを影面でパースを描く事がある方は第一段階クリアです。読者の方でこれまで影面で描いた事が無い方は、是非一度試してみて下さい。片方を影面にする事でメインのファサードが際だち、また影面のファサードを利用して建物の立体感を演出する事が可能になります(勿論そのためにはカメラアングルの段階で建物の立体感を出す設定が出来ないといけませんが)。

次のポイントとして、この大まかな方針が決まった段階で、私は影の落ち方に最も気を遣ってライティング設定を行います。言葉で説明しても上手く伝わらないかも知れないので、事例を挙げて説明します。


影を意識したライティング

11tomitablog_11_01.jpg
《Fig.1》 設計:原博司+アトリエφ

Fig.1は前回sample01として載せたパースのセッティング画面です。ディレクションは画面上方が北です。パースのコンセプトからお話しすると長くなってしまうので、コンセプトを端折って実際にライティングを行った際に検討した事をお話しします。

昼光で今見えている面をメインファサードと考えているので、丁度カメラと近いアングルでライトを設置しています。その際に検討したのが以下の3つです。Fig.2~4にかけて時刻を進めています。建物全体の太陽光の辺り方はさほど変化が無いように見えます。

11tomitablog_11_02.jpg
12時30分 《Fig.2》
11tomitablog_11_03.jpg
13時00分 《Fig.3》

11tomitablog_11_04.jpg
13時30分 《Fig.4》

11tomitablog_11_05.jpg
《Fig.5》

どの設定が適切だと思いますか?
筆者の答えは《Fig.3》です。 表題の影の落ち方に注目すると違いが見えてくると思います。
説明図《Fig.5》を使って解説します。

この建物の特徴的な部分として、プールを囲む門型の柱・梁と、その天井部分になる金属の梁とルーバーが挙げられます。この特徴を影を使って更に印象づける事を考えて設定を行います。

大まかな太陽の方向としては、昼光をイメージしている事から順光が適切と判断できます。順光の中でも詳細な設定をどうするか考える際に注目するのが(1)~(4)の影です。

順光という事で最初に見なければ行けないのは(3)の影の伸び方です。この影はプールを囲む門型の柱・梁を印象づけるものです。
前出の《Fig.2》の影では建物に伸びのある立体感や空気感を演出するのには出方が短すぎます。《Fig.3~4》程度は欲しくなります。

(3)の影の方向性が見えてきたところで、この中で最も留意すべき(4) (ピンクのエリアで示した壁面) の影の落ち方を見てみます。この影は特に金属の梁とルーバーを印象づけるものです。

《Fig.2》は(4)の面全体に門型の梁の影が落ちていて暗い印象になります。フィンの影が奥の柱に落ちていますが影の間隔が大きくて間延びした印象です。

《Fig.4》は(4)の面の2階部分で門型の梁の影が止まっています。1階部分にも太陽光が当たり面の印象は良くなりましたが、ルーバーの細かい影が1階の壁面に落ちて非常にうるさい印象になっています。
《Fig.3》は(4)の面の1階部分途中まで影が落ちてきていますが、面の印象は立体感を伴う良好な影です(陰影のコントラストのバランスが取れている)。ルーバーの影もうるさくない程度に奥の柱や(4)の1階部分に落ちていてバランスが取れています。(1)(2)については触れませんでしたが、(3)(4)の影を調整すれば当然(1)(2)も変わってきます。

この建築の場合は(3)と(4)の影の出方で決めてしまえば、(1)(2)の影も良好な影になります。一般的な検討の際も留意すべき影を上手く処理できれば、他の影も同時に上手く設定出来ているものです。

太陽光による面のコントラストの演出もそうですが、影の落ち方に特に留意して太陽の位置決めを行えば、太陽光のライティングは上手くいきます。


纏め

今回は前回に引き続きライティングを題材に、CGパース制作のスキルについてお話ししました。影を意識したライティングを行う事で、これまでとは違う観点でパース制作を行う事が出来ると思います。文中でも出てきたように、ライティングはカメラアングルと密接に関係してくるので、欲を言えばカメラアングルを設定する際にライティングの事も念頭に置いておきたいところです(そうした意識を常に持って制作を行っていれば自ずと出来るようになります)。影に関してはMaxのビューポート上でリアルタイムに確認出来るので検討は容易です。これまで試した事が無い方は是非ビューポート上でのリアルタイムレンダリングを試して下さい。ライティングの設定が短時間で出来るようになります。


出版遅延のお詫びとAUJ

前回に引き続き今回のライティングの話も今度出版するMaxの書籍の抜粋です。前回出版予定日を7月末~8月上旬とお話ししましたが、出版社の都合で9月中旬~末に延びてしまいました。書店に並んでいない! と期待していただいていた方、申し訳ありません。その代わりと言っては何ですが、もう一つトピックがあります。

今週から「Autodesk University Japan 2010」というイベントがautodeskのHPで告知が開始されましたが、その中の「DesignVizハンズオントレーニング」で「建築CGパース レンダリングスキルアップクラス」と題してハンズオンのセミナーを行う事になりました。このセミナーは出版予定のMaxの書籍を使用して行うセミナーで、出版する書籍の内容を理解しやすいようピックアップして行うものです。パース制作の全てをハンズオンで体験して頂くには時間が短すぎるため、要点をピックアップした形式を取っていますが、これまでの本コラムで書いてきた事は勿論、コラムでも連呼している重要なポイントに的を絞ってセミナーを行いますので、今後の皆さんのパース制作に必ずお役に立てる内容と自負しています。興味とお時間があるようでしたら是非お申し込み下さい。
(宣伝ばかりですいません)


建築パースのコンテスト

最後に面白いコンペをご紹介します。

皆さんは「日本アーキテクチャラルレンダラーズ協会(通称 JARA)」をご存知ですか? 手書きパースの時代に設立された由緒ある建築パースの協会です(語弊があるとまずいので、詳しくはJARAのHPをご覧下さい)。今年の6月にArchitectural Visualizationの国際コンペティションとして「JARA大賞公募展」が開催されました。詳しくはHPを見て頂きたいのですが、簡単に言えば建築パース(手書き&CG)のコンペです。特筆すべきは著名建築家で審査員を構成している点です。このコンペの展覧会が9月~10月にかけて開かれます。腕に覚えのあるレンダラーが腕を競った建築パースが展覧会でお披露目されます。クオリティの高い他者のパースを見る事は非常に参考(勉強)になります。特に著名建築家が審査員なので、建築家が求める(認める)パースはどんなものかを見れる大変貴重なイベントです。

9月11日は東京でコンテスト受賞者や審査員が一同に会するオープニングイベントが開かれます。オープニングイベントは入場料がかかりますが、建築家や受賞レンダラーと話をするまたとない機会なので参加されてみてはと思います(私も当日は会場にいる予定ですので、気軽に声をかけて貰えればと思います)。オープニングイベント後も展覧会は開催されてますので、日頃のレンダリングの参考に、オープニングの日ではなくても一度足を運ばれてみてはと思います。本コラムで私が話している内容が実際どうなのかという実証実験の場としても面白いと思いますよ。

更新日 2010.08.18
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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