3DECEMBER 2010 Events Celebrate the Computer Graphics Community
2010年12月7日、東京・六本木のラフォーレミュージアム六本木で、オートデスク主催の「3DECEMBER 2010」が開催されました。この3Decemberは、3DCGユーザのためのグローバル・コミュニケーション・イベント。初開催は1999年のヨーロッパで、2000年以降12月に開かれ、日本では2008年の開催以来となります。
オープン当初は大行列
3Decemberのコンセプトは「交流」です。ユーザはもちろん、協力会社各社やこの分野の最先端を走るゲストも内外から集まり、ここでしか聞けない・観られない、とっておきの最新情報・最新技術・最新製品が結集します。特に今回はゲストとして、この冬一番の話題を呼んでいる日米の超大作映画のクリエーター......『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の監督・山崎貴氏と『トロン:レガシー』のVFXスタッフ・三橋忠央氏が参加。さらにAutodesk Mayaの主席開発者であるダンカン・ブリンズミードも来日するなど、まさに他では観られない豪華なセッションだけに、入口は開場前から長蛇の列となり、広い会場もたちまち熱心な参加者たちで埋めつくされました。
ご挨拶/オートデスク
メディア&
エンターテインメント
事業本部長 吉崎哲郎
広い会場いっぱいの参加者の熱いざわめきが徐々に静まり、開会の時刻となりました。最初に主催者を代表しオートデスク株式会社メディア& エンターテインメント事業本部長の吉崎哲郎が登壇。ご挨拶を行いました。吉崎は大ヒットとなった3D映画『アバター』を例に3D化による映画界の躍進を延べ、またリアルさを追求するゲーム分野の可能性を語り、さらにそれらの進化を支えるものとして、3D CGの多様なテクノロジーが果たす役割の重要性について指摘していきます。そして、その担い手であるオートデスクが目指すものについて、ビジョンを力強く語りました。
「今日さまざまなセッションを通じご紹介する、私たちの3ds MaxやMaya、Softimageといった製品は、いずれもゲームやアニメーション、映像等々の分野で幅広く使われているテクノロジーです。われわれはこれら全てのパフォーマンス向上や新機能の追加などと共に、これらさまざまな製品の機能を1つの統合的な環境でお使いいただけるような技術開発に注力しています。--本日は皆さんのために内外から特別なゲストをお招きしました。ぜひお楽しみいただいて、充実した半日をお過ごしください」
スポンサープレゼンテーション/日本ヒューレット・パッカード
日本ヒューレット・パッカード
ワークステーション
マーケティング部
課長 大橋秀樹氏(右)
トップを切ったのは、イベントスポンサーの1社である日本ヒューレット・パッカード社のワークステーション・マーケティング部の大橋秀樹氏でした。『HP Zシリーズ』はじめオートデスク製品に最適なワークステーションでユーザにもお馴染みのHP社ですが、今回は通常のプレゼンテーションと趣向を変え、ユーザとの対談スタイルによるプレゼンです。大橋氏と共に登壇したのは、株式会社白組のシステ厶部部長である鈴木勝氏。白組といえば『SPACE BATTLESHIPヤマト』の山崎監督が所属するCG製作会社。実は『ヤマト』製作に先立ち、同社CG制作環境がHPマシンに一新されたのでした。
「『ヤマト』という非常にボリュームのある仕事の制作環境を考えた時、通常CG側マシンを中心にパワーアップし、合成用は後回しにされます。しかし、今回トータルな制作パイプラインとして、できるだけシームレス/シンプルにしたかったのでZ800で全て統一しました。みんなが同じ環境で、しかも"ここまでできるんだ"と直感的に感じてもらいたかったんです!」(鈴木氏)
セッション 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』山崎貴監督自身のトークセッション
〜監督自らが語る制作秘話、デジタルだからこそ為しえた作品〜
本日のメインイベントの一つ、VXF超大作としてヒット中の映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の山崎貴監督によるトークセッションがいよいよ始まります。
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は、日本アニメ史上屈指の名作『宇宙戦艦ヤマト』の実写映画化というビッグプロジェクト。しかも『Always 三丁目の夕日』2作で日本の映画賞を総嘗めにした山崎貴監督は、元々SFXのスペシャリストであり"Maya使い"としても知られる方。CGクリエーターたちが注目するのは当然でしょう。やがて割れるような拍手と共に山崎監督が登場しました。今回はオートデスクの城戸孝夫がモデレータを務め、リラックスムードの進行となりました。元々SFXマンとしてこの世界に入った山崎監督。そのきっかけは『スター・ウォーズ』と『未知との遭遇』だったそうです。
「スター・ウォーズはまさに人生を変える出会いでした。特に大きかったのは、テレビで観た『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のメイキング。楽しそうに作業するSXFの制作現場が映されたんですが、そこにタミヤのプラモデルの箱があって、遠い憧れだったSFXの世界が急に身近になったんです。タミヤなら自分でもできるかもしれませんからね」(山崎監督 以下同)。
< br />その後ミニチュア製作者として白組に入社した山崎氏は、やがて映画監督として次々話題作を生み出していきますが、それでも『SPACE BATTLESHIP ヤマト』との出会いにはかつてない大きな感慨がありました。映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』予告編上映後、投げかけられた質問に監督はこう答えました。
「ヤマトのオファがあった時は、喜びと衝撃が同時にありましたね。憧れのヤマトが作れる!という喜びと、どうやったらできるんだ?という不安です。2分くらい硬直してたかな。頭の中をいろんな思いが飛び交ったんですが、そのうちとりあえずやっちゃえ、と。"だってヤマトじゃん!"と (笑)」。
ここからは監督提供の秘蔵映像を流しながら、制作の流れに沿って3D CGを中心とする裏話的メイキングストーリィが進められました。まず驚かされたのは、絵コンテとほぼ同タイミングで監督がMayaを使い始めていたこと。 Mayaで作った宇宙空間に戦艦や戦闘機のCGモデルを飛ばし、3次元的な動きやカメラワークを考え、言わば映像化に関わるアイディアを最初に検討する場所としてMayaの3D空間を使ったのです。このプリビズを検討した結果、CG化が必要なカットは総計500カットにも達しました。
その大半を占める450カット余が白組社内で制作されましたが、わずか15~16名のチームが8カ月で作ったとの言葉に、客席からは呆れたような声が上がります。さらに人気のロボットキャラクタ「アナライザ」の誕生秘話に、原作の2倍も大きい映画版ヤマト艦体の秘密。実写パート撮影における俳優たちの苦労......。次々明かされる興味深いエピソードの中でも特に印象的だったのが、監督自身思い入れの強い"ヤマト発進"シーンの制作にまつわるお話でした。Mayaオンリーで制作し続けてきた山崎監督のチームは、破壊エフェクトが大量に必要となるこのシーンで初めて3ds Maxを併用したのです。
「ヤマト浮上は大事なシーンなので、CG制作もエース級のスタッフに任せたんです。ところが待てど暮せど良い絵があがって来ません。調べると、どうも破壊等のエフェクトは3ds MaxとRayfireの組合せがいいらしいのです。ずっとMayaでやってきただけに悩みましたが、背に腹は代えられず3ds Maxを導入。3ds Max上でRayfireを走らせて浮上シーンを作りました。でも、私たちにとっては3ds MaxもMayaの高級プラグインのような感覚でしたね」。
迫力満点のヤマト浮上シーンが再度映写されると、初めてのツールで作られたシーンとは思えない完成度の高さと圧倒的な迫力に、あらためて観客席から驚きの声が上がりました。--このように大作映画のCG制作の舞台裏がどこまでも具体的に、しかも実際の映像と共に語られた山崎監督のセッションは、和やかな雰囲気ながらきわめて内容の濃いものとなりました。大満足の会場から万雷の拍手が送られたのはいうまでもないでしょう。
休憩
ブース。SPACE BATTLESHIP
ヤマト特集のCGWORLDを販売中。
こののComブース。
AutodeskでBL本を販売。
特別チラシは配布完了。
ここでいったん30分程の休憩が宣されます。熱く密度の高いセッションに圧倒された観客は、ひと息入れにロビーに出て行きます。ロビーには協賛スポンサー各社のブースが並び、それぞれに最新製品が展示されています。その多くが実際に触って動かすことができるとあって、どのブースにも参加者たちの大きな人だかりができていました。
スポンサープレゼンテーション/NVIDIA JAPAN
エンジニア 澤井理紀氏
グラフィックスプロセッサの世界的ブランド、NVIDIAのスポンサープレゼンテーションは、同社Tesla Quadro事業部のエンジニア・澤井理紀氏が担当しました。
澤井氏はまず、映像制作現場に絞りこみ、製品群を活用分野別に3つに分けてブランドを紹介していきました。すなわち、参加者の大半を占めるDesign & Visualization分野向けのQUADRO。そしてハイエンドのCLOUD &PARALLEL コンピューティング向けで、世界最高速のスーパーコンピュータにも使われるというTESLA。さらに個人ユース向けのGeForceやTEGRA等々、スポットライトが当てられたのはいずれも参加者の多くにとってなじみ深いブランドで、特に今回はGPUの世代交替により飛躍的な性能向上が図られたとの報告があり、参加者たちの大きな関心を集めました。
「グラフィックカードの中でGPUの世代交替が起こり、全てに渡って一段と高いパフォーマンスが発揮されています。ジオメトリ処理機能は5倍、シミュレーション性能は8倍となり、グラフィックはもちろんシミュレーションにも活用できる可能性が広がりました。ぜひあなた自身お眼でお確かめください!」