チュートリアル / Road to Stingray
第6回:STINGRAYで使用するアセットを作る -キャラクター制作編-

2016.03.15

  • Stingray
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※ゲームエンジン Stingray は 3ds Max Interactive になり、3ds Max の機能の一部となりました。
ROAD TO STINGRAY

先日、このプロジェクトのイベントがオートデスク社主催で開催されました。本記事では、そのイベントでご紹介した内容も記載しております。また、下の方で大事なお知らせもございますので、最後までお付き合い頂けると幸いです。

Road to Stingray連載の第6回目は、野澤が執筆を担当させて頂きます。本企画も折り返し地点を迎え、いよいよ終盤に差し掛かってきました。 今回のプロジェクトのために、各分野のスペシャリストが名乗りを上げてくれましたので、その方々を紹介しつつ、どのようにしてアートやアセットを作り上げていったかレポートしたいと思います。

まず、今回のプロジェクトでアートディレクターを務める、さわえみかさんをご紹介します。彼女は女性だけのクリエイターユニット「つくる女(ジョ)」のリーダーであり、普段は売れっ子イラストレーターとして、ゲームのイラストや漫画の連載などマルチに活躍されています。

本プロジェクトでは、キャラクターデザイン、ゲームコンセプトデザインをはじめ、ゲームの見た目に関わる全てを統括してもらっています。

澤江 美香(さわえ みか)

澤江 美香(さわえ みか)
アートディレクター
ヘアメイクとして広告・誌面で活躍。幼い頃から絵を描くことが好きで、メイクの現場でCMの絵コンテを描いたことがきっかけでイラストレーター、アートディレクターの道へを決めたという異色の経歴の持ち主。女子クリエイター集団「つくる女(ジョ)」アートディレクター。TVCMやゲームショウ等の広告制作や、漫画雑誌の連載、メーカー製品のデザイン、コンシューマーゲームからスマホアプリの開発デザインなど幅広く担当中。得意技は似顔絵。

次に、キャラクターモデラーのしろまいさんをご紹介します。彼女も、さわえみかさんと同じく、つくる女の一員として多くの作品に携わっています。 今回のプロジェクトでは、主役のキャラクターモデルを制作して頂きました。

しろまい

しろまい
3DCGモデラー。
アニメ、ゲーム等のキャラクターやプロップスのモデリング、最近では3D原型も制作。使用ソフトはLight wave、Zbrush、Maya、3ds Max、Photoshop等。現在はフリーランスで活動中。クリエイターチームつくる女3DCG担当。代表作は、テレビアニメのジョジョの奇妙な冒険3部作のオープニング等。

つくる女(ジョ)

つくる女(ジョ)
つくる女とは女性のプロクリエイター集団である。
イラストレーター・脚本家・ファッションデザイナー・ヘアメイク・CGアーティストなど全員が専門職を持ち、独自コンテンツを開発制作しながらも、多数の大手企業から依頼を受け製品開発や、プロモーション企画制作等をこなしている実力派チーム。

次に、NYの制作スタジオFramestoreで活躍中のデジタルアーティスト、井上倫孝さんをご紹介します。今回のプロジェクトでは、キャラクターのTexturing / LookDev作業を担当してもらいました。井上さんからは、MayaとStingrayのShaderFXを使って質感を作っていく過程をお聞きすることが出来ました。

井上倫孝(イノウエミチタカ

井上 倫孝(イノウエミチタカ)
デジタルアーティスト。
北米の美術大学を卒業後、Framestore NYにモデラーとして入社。現在はコマーシャルを中心にモデル、テクスチャー、ルックデブ等のアセット制作全般、およびそのワークフローやツールの管理作成などを担当。北米のCM業界もUnreal EngineやVRの仕事が非常に増えてきているので、昨年以降リアルタイム系アセットを担当することが多い。

キャラクターコンセプトアート

CGでキャラクターを作る前に必ず必要になるのが、コンセプトアートです。モデラーさんがスムーズに作業に入れるように、アートディレクターの頭の中にあるイメージを具現化するとても大切なプロセスです。

今回のプロジェクトのアートディレクターであるさわえみかさんは、本職がイラストレーターということもあって、キャラクターのコンセプトもアートディレクター自ら手掛けることになりました。

今回のゲームには、「ぱぴこ」という女の子が登場します。このキャラクターは開発スタッフの間でミーティングを重ねている中で、生み出されました。キャラクターコンセプトが決まるまでに、みんなで意見を出し合いながら、さわえみかさんがその意見を元にイラストに落としこんでいきます。今回作るゲームはポップな雰囲気でカラフルなビジュアルを目指そうということになり、最終的には下図一番下のデザインに決まりました。

余談ですが、キャラクターの名前の由来は、しろまいさんがモデリングをする前に、このキャラの名前は何か?とさわえみかさんと話をしていた時に、なんとなくパ行の名前っぽいという理由からいつの間にか「ぱぴこ」と呼ばれることになったそうです。某人気アイスとは全く関係ありません(笑)。

紆余曲折を経て決定したぱぴこのデザイン

紆余曲折を経て決定したぱぴこのデザイン

性格付けを行うことでよりキャラクターが生き生きする

性格付けを行うことでよりキャラクターが生き生きする

キャラクターをモデリングする

コンセプトがまとまったら、次はモデラーさんの出番です。3DCGモデラーのしろまいさんの手にコンセプトアートが渡され、モデリングが始まりました。ぱぴこを制作したしろまいさんに、モデリング時に気を付けたことを聞いてみたところ、今回のキャラクターデザインの ”もこもこ” っとかわいい感じの雰囲気をなるべく残しつつ立体として作った時に、おかしな造形にならないように考えながら作ったそうです。

イラストの時点ではかわいく見えるパーツも、実際に3Dで作ってみたら野暮ったくなったり、辺にリアルになり過ぎたりすることがよくあるらしく、いろんな角度から造形を観察しながらかわいいフォルムを作っていったそうです。

ノーマルマップをベイクするためにディティールを追加する

次に、コンセプトアートでは描かれていない細かいディティールを追加します。この作業は物体の質感を際立たせたり、存在感を持たせるために非常に大事な工程になります。これらの作業を担当した井上さんに詳しくその辺りのお話を伺いました。

今回のキャラクターは衣服の柔らかさを表現しつつ、キャラクターの方向性は “ねんどろいど” の質感を参考にしたそうです。テクスチャを描く作業では、なるべく手戻りが少なく済み、アートディレクターのリクエストに柔軟に対応できる方法として、Substance Designerというソフトを使用したそうです。

このソフトの特徴は、役割の異なる様々なノードをプロシージャル(手続き型)に繋いでいくことで1枚のテクスチャを描くことが出来るところにあります。ぱぴこの髪の毛のテクスチャには、最初細かなディティールがありましたが、アートディレクターに見せたところ、もっとラフな雰囲気にして欲しいという指示がありました。その際にも、線の細さを決めるパラメーターを変えるだけで簡単に編集が出来たそうです。

ノーマルマップをベイクするために、まず近い素材感を持つモデルごとにUVレイアウトを分けて、それぞれを区別するためのマテリアルをアサインします。そして下図で紹介するように、それぞれのモデルが重なり合わないように分断させた後で、Substance Designerにモデルを読み込ませてからベイクをしたそうです。

余談ですが、このSubstance DesignerのシェーダーはまだStingrayで扱うことが出来ません。もしもこのSubstanceノードをStingrayの中で扱うことが出来るのであれば、さらに生産性を高めることになるでしょう。

左図がゲーム用のローポリゴンモデル、右図がノーマルマップベイク用のハイポリゴンモデル

左図がゲーム用のローポリゴンモデル、右図がノーマルマップベイク用のハイポリゴンモデル

部位ごとのUVレイアウト図

部位ごとのUVレイアウト図

左図の様にオブジェクト同士が重なり合わないように分断し、ハイポリゴンモデルとローポリゴンモデルの差異からノーマルマップをベイクする

左図の様にオブジェクト同士が重なり合わないように分断し、ハイポリゴンモデルとローポリゴンモデルの差異からノーマルマップをベイクする

左図がSubstance Designerの中でノードだけでテクスチャを作るためのネットワーク図

左図がSubstance Designerの中でノードだけでテクスチャを作るためのネットワーク図

STINGRAYの中でLOOKDEVする

テクスチャが描けたら次にいよいよStingrayに移りLookDevの作業に入ります。Stingrayでは、StingrayPBSという名前の物理ベースシェーダーが最初からビルトインされています。

Stingrayでマテリアル(Stingray上ではShaderをMaterialと呼ぶため、この呼び方に統一する)を作るには、AssetBrowserの中で右クリックし、Create > Material(Empty)かMaterial(Standard)を実行します。

マテリアルに付ける名前を聞かれるので好きな名前を入力しOKを押します。

新しいマテリアルを作成

新しいマテリアルを作成

マテリアルのネットワークを編集するには、マテリアルを選び、Property Editor内でMake Uniqueを押します。Window > Shader Graph Editorを選ぶと、ノードベースのエディタが開きます。テクスチャやユーティリティーノードを作り好きな質感を表現していきます。

このShader Graph Editorは、Mayaや3ds MaxのShaderFXエディタで同様に編集が可能です。DCCツールからモデルをStingrayにエクスポートする前に、ShaderFXでStingrayPBSを作り編集してからSendToを使ってStingrayに渡す方法も可能です。

DCCツールでは、Shaderfx Shader と StingrayPBS ShaderとでShaderFX Editor内で利用可能なノードが異なります。Stingrayで利用可能なものはStingrayPBS Shaderをマテリアルとして適用した際に表示されるノード群になり、Shaderfx Shaderを適用した際に表示されるノード群は互換性がないので注意が必要です。

つまりDCC側で自作したShaderFXネットワークがStingrayの中でサポートしていないノードを使っている場合は、Stingrayに持っていくことが出来ません。

洋服のマテリアルのネットワーク図

洋服のマテリアルのネットワーク図

ラフネスを調整するために新たにノードを追加し編集している

ラフネスを調整するために新たにノードを追加し編集している

こうして、全身のマテリアルにテクスチャを設定し、アートディレクターが求めている “ねんどろいど” のような質感を作っていったそうです。開発スタッフの中からも、ぱぴこの愛らしさは大人気で、一同大盛り上がりとなりました。

動き出したぱぴこ

ソースコードをGITHUBで公開中!

今回は、キャラクターのコンセプトアートからモデリング、StingrayでのLookDevまでをご紹介しました。アートディレクターの求めている“かわいくてフィギュアのような存在感のあるキャラクター”が無事誕生したと思います。

次回は、このキャラクターをStingrayの中で動かすためのリギング方法について紹介したいと思います。記事の最後におまけとして、現在開発できている所までのゲームプレイ動画を公開します。お尻をプリプリさせながら走るぱぴこの後ろ姿に癒されてください(笑)。

先日のイベントで公開しましたが、実はこのプロジェクトのソースコードやプロジェクトのデータは既にGitHubにて公開されています。ダウンロードして頂ければ、どなたでも試してみることが出来ます。

まず、下記のAutodesk社のURLから、Stingrayの30日体験版をダウンロードし、インストールします。

http://www.autodesk.com/products/stingray/free-trial

ダウンロードからテストプレイまでの流れ

GitHub URL

https://github.com/guncys/MeowedfulDays

まず、上記のURLからDownload ZIPを選択しダウンロードした後で、好きなフォルダに解凍します。 次に、Add Existingから既存のプロジェクトを追加出来ますので、先程ダウンロードしたフォルダの中にある、rtsを選択します

プロジェクトがロードされたら、 “rts” を選び、Openします。 初回ロード時のみ、数分のコンパイル処理が走ります。次に、下図の様にlevelsフォルダからtesmap1.levelを選択しダブルクリックします。

すると、上部ペインのLevel Viewportにマップが読み込まれます。 そこで、F8キーか、TestLevelボタンを押すとテスト版がビルドされます。

スペースキーを押すと、パピコが走り出します。走っている最中にスペースキーを押すとジャンプ、さらにスペースキーを押すと二段ジャンプをします。キャラクターが動きだしてくるとゲームを開発している感が非常に増しますね(笑)。
このプロジェクトで開発されたものは順次GitHubにアップされますのでご活用頂ければ幸いです。

それでは、次回もお楽しみに。

開発環境

PC G-Tune「NEXTGEAR-NOTE i5700 シリーズ」
プロセッサ Intel(R) Core(TM) i7-4720HQ CPU @ 2.60GHz 2.60GHz
RAM 8.0GB
OS Windows8.1 x64
グラフィックスカード NVIDIA GeForce GTX 970M
DCCソフト Maya 2016, 3ds Max 2016
Stingray 1.2.526.0

関連リンク集

Autodesk公式リリース
http://www.autodesk.co.jp/adsk/servlet/item?siteID=1169823&id=24547898

Autodesk STINGRAY Help
http://help.autodesk.com/view/Stingray/ENU/

Stingray Quick Start シリーズ(日本語版)
https://area.autodesk.jp/movie/stingray-quick-start/

Introducing the Autodesk Stingray 3D game engine

Autodesk Stingray offers stunning rendering and high-quality visuals

Autodesk Stingray: Revit + 3ds Max + Stingray

GUNCY’S 公式サイト
http://www.guncys.com/

M&E COLLECTION

*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。

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