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第16回:実体化と計測ベースのアプローチ

2013.02.15

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クラウドに関して

最近kindleで本を読んでいることが多くなってきました。手に入れたのは安価なPaperWhiteのWifi版ですので8000円弱で入手できます。kindle良いですね。何が良いかと言えば物理的な制約が無くなることです。私は自転車で通勤できることを目指している関係上、ある程度職場に近い都内に住むようにしてきました。ただ当然のように住居の広さと都心からの距離は反比例します。以前はそれこそ山の様な書籍やCD、DVD、ゲームソフトなどに囲まれて暮らしていました。所有するということは占有するということで、東京という場所では占有コストは購入コストを上回り、しかも所有する間は継続して課金されているということに気付きました。特に本の占有コストはその継続性も含め圧倒的ですね。

kindleではそのコストをクラウドに置くことでほぼ0にすることができます。kindle自体はただのグラフィックス端末なので機器としては非力ですが、回線さえ早ければ実態はクラウドなので何ら問題無いわけです。kindleの場合はこのクラウドをストレージとデータベースという形で使用しているわけですが、弊社の123D Catchもクラウドを使用しています。ユーザが使用しているのは123D Catchのエディターであり、実態はクラウド上に存在するPhotoflyエンジンです。このPhotoflyエンジンはクラウド上のCPUリソースとメモリーを消費するので、非力なモバイル端末でも動作するのです。

おっと、前回のレーザーカッターの続きを話していなかったですね。まずはその話題を終わらせた上で123D Catchを含めたリアリティキャプチャーの話に戻りましょう。

クラウドについて

前回の続き

と言うわけで我々はレーザーカットを行ってくれる業者を探したのですが、そこで協力していただいたのが、渋谷の道玄坂上にあるFabCafeさんでした。
http://www.fabcafe.com/

fabcage 外観

FabCafeにはレーザーカッターが設置してあり、時間貸しで使用することができます。基本的にはAdobeのEPSファイル形式をRGBベースでお渡しすれば、後は自動的にカットを行ってくれます。ただしデフォルトで123D Makeから出力されるファイルは配置が適切になっておらず無駄な空間が多い為、我々はAutoCADを使用してレイアウトを調整したものを持ち込みました。

実際にレーザーカットしている様子を撮影したものがありますので、ご覧ください。データとしてはロケットのものですが、素材としては段ボールではなく、アクリルを使ってみました。



実際にレーザーカットされたものがこちらです。

アクリル板

Cafeなのでビール飲みながら作業です。(勿論業務終了時間後ですよ)ちなみに道玄坂ということもありTokyu Handsでアクリル板は購入しました。

組み立てるとこんな感じです。
アクリル板とダンボール 二種類完成

アクリルのものと段ボールのものと二つ作ってみました。 と、このような形で3D上のモデルをレーザーカッターを使って現実のものに展開できるのです。この応用例が、前回紹介したSvenの頭部モデルです。 この場合、ある程度ディテールが欲しかったので、123D Make上で段ボールの厚さを5mmに設定し、積層型で切り出しました。かなりパーツ数が多いので、組み立てには都合1時間ほどかけています。

Svenの頭部モデル

ちなみに調子に乗った我々は、3Dプリンターも使用してみました。
3DプリンターへはSTLで出力します。123D Designから出力することもできるわけですが、ポージングや細かいモデリングの修正を行いたいためAutodesk Mayaから出力を行いました。

その際ですが注意が必要なのは、3点です。成形時にはポリゴンの密度が3Dプリンターの成形精度以下だとモデルが荒くなります。そのためCG上でデータをある程度細かくすることが必要です。今回の場合はサブディビジョンサーフェイスをかけて調整しています。2点目ですが、体から離れた部分が存在すると成形時に分離して形成されてしまいます。そこで各パーツが体に密着するように細かいモデリングの修正を行いました。最後に色の問題です。形状だけであれば、STLだけで構いませんが、色つきのものを生成するにはOBJ形式で出力することが必要です。元々このSvenのデータはコンシューマープラットフォーム用のゲームデータとして作成している関係上様々なリアルタイム用のシェーダーとテクスチャが設定されています。3D Printerではそのような情報を反映することはできません。

そのためMaya上でノードを組み直しシンプルなコンスタントシェードとアルベドのテクスチャそして一枚のUVでまとめました。

3Dプリンターへの出力


制作を請け負ってくれたInterCultureさんの方で制作過程を動画にしたものがありますのでご覧ください。



実際に仕上がったモデルがこちらです。

仕上がり


OBJで出力し、色つきにしたのがこちらです。

OBJで出力し色つけしたもの

どうでしょうか?
実体化されると感動してしまいますよね。。。
参考までにUnity使って私のiPhone上にリアルタイムコンテンツとして載せたものがこちらです。

iPhone上でのリアルコンテンツ

Unityとのやり取りに関して、色々と面白いことをやっているので、興味がある方はこちらをご覧ください。
MayaとUnityを使用して実際のゲームをリアルタイムで作っていく過程を紹介しています。

これからのモバイルゲームはこう創る!新次元ゲーム開発セミナー

ここまで弊社のコンシューマー向けモバイルアプリを紹介してきましたが、実は昨年末にこのモバイルアプリに特化したFaceBookページを開設しました。ご興味のある方は是非アクセスし「いいね」をお願いします。ファブリケ―ションについて熱く語るページです。
https://www.facebook.com/autodeskmobilejp


リアリティキャプチャーに関して

さて、時間をかけてFabrication(実体化)に関して話をしてきましたが、ここから計測の話に移っていきたいと思います。我々Media & Entertainment部門ではこの計測のことをリアリティキャプチャーと呼び、この数年、力を入れて開発を続けてきました。というのもデジタルエンターテイメントの世界でもデジタルの閉じた世界だけでなく、現実のアナログ世界と組み合わさってくることが増えてきたためです。
図式化するとこんな感じです。

リアルキャプチャー

つまり現実世界の振る舞いをできるだけ正確に取り込み、CG上で加工することでより面白いフィードバックを現実世界にもたらすことができるわけです。
面白いムービーがVimeoにアップされていたので紹介しておきます。



数年前の事になるのですが、MarcosというArnoldの開発者(社長でもあります)と一週間ほど日本のユーザさんを共に訪問したことがあります。Arnoldは現在Hollywoodや北米のCM制作会社でモダンレンダラ―として注目を浴びているレンダラ―ですが、その特徴はレイトレーサーによる正確なレンダリングと事前サンプリングを組み合わせた高速でノイズの少ないグローバルイルミネーションやサブサーフェイススキャッタリングにあります。
http://vimeo.com/groups/137833

当時彼とモダンレンダリングの話を色々と行っていたわけですが、その中でフォトリアリスティックの再現には数学モデルだけでは限界があり、複雑な世界の振る舞いを再現するには現実世界の計測をベースにしたレンダリングが必要と力説していました。実際Marcos自身Paul Debevecと共同で実施したパルテノン神殿の再現プロジェクトでは現地に赴き神殿跡の計測を行ったそうです。
http://gl.ict.usc.edu/Research/reflectance/

さて、こういった現実世界の計測に関してですが、上記のようなプロジェクトはプロフェッショナルのユーザの方々にとっても少々敷居が高いプロジェクトかと思います。そこで我々オートデスクでは123D Catchに代表されるフォトメトリックやKINECTの利用、Delightingなどユーザの皆様がアクセスしやすい現実的な手法でのアプローチを行っています。次回以降このリアリティキャプチャーに関して紹介していきたいと思っています。お楽しみに。


著者

門口 洋一郎

門口 洋一郎

オートデスク株式会社
技術営業本部
M&Eマネージャー

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