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第45回:素材撮りに適したカメラ選び1

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こんにちは、パーチ長尾です。

今回は《カメラ》の話です。
3DCG制作では、制作資料としてロケ撮影を行ったり、マテリアルや背景制作の素材を撮影したり、簡単な記録から高品質な画像まで様々な写真が利用されています。
最近はカメラ品質の著しい向上で、誰でも簡単に撮影できるようになりましたが、一方で「どういうカメラを選べばいいのか分からない」「撮り方が分からない」という声もお聞きします。そして、やはり良い物を作りたくて、「より高品質な写真を撮れるカメラはどれか?」とか「うまく撮影するにはどう使ったら良いんだろう?」と思うことがあるようですね。

そこで、今回から数回に分けて「高品質な撮影に適したカメラ」について話していこうと思います。仕事で使う素材撮影用カメラ選びに悩んでいる、プライベートでステキな写真を撮りたい、どちらかに興味がある方の参考になればうれしいです。


画質を決める4つの要素

デジタルカメラの画質を決める大きな要素は4つあります。
この4つの要素が優れていると、画質がよくなる、ということになります。素材撮影では特に解像度や正確な色再現などが求められますので、画質がよくなるというのは非常に重要です。
では、被写体から入ってくる光がどう処理されるか、という流れに沿って、4つの要素を見ていきましょう。


図1「画質を決める4つの要素」


レンズ

どの要素も最終画質に大きな影響を与えますが、その中でもレンズは最も深刻な影響をあたえます。光の入り口なだけにこの段階で失われた情報は、後の工程で取り戻すことができません。
レンズは製品/個体により以下の点が変わるので、それぞれのポイントごとに評価して、より良い製品を選びましょう。主なポイントを、写真を加工してわかりやすく再現してみましたので、参考にしてみてください。

コントラスト:ハイライトが飛び、シャドウ部分がつぶれ、ディテールが失われてしまう可能性がある


図2「レンズ比較:コントラスト」

解像度:ディテールがぼけてしまう


図3「レンズ比較:解像度」

歪み:画像全体、特に画面の周辺が丸くゆがむなどが見られる


図4「レンズ比較:歪み」

色収差:特に画面の周辺に色のずれが生じる


図5「レンズ比較:色収差」

色:全体の色が微妙に違う


図6「レンズ比較:色の違い」


CCD

カメラ本体の光をとらえる重要な部分です。よく広告やカタログで「1600万画素」というような数字を見かけることがありますよね。この数値が大きいほど光を電気信号に変換する素子が多いことを示しています。
この数値が高いと解像度が高い、と覚えてもいいですが、実際には数値通りに解像度が上がった画像ができるわけではないので注意しましょう。この原因は、CCD素子自体の優劣にあります。見分けるのは難しいので、実際に撮影を行って判断するしかないように思いますが、撮影する時はCCD以外の要素も関係してしまうので、判断が難しくなります。
判断材料の一つとして「大きいCCDのほうが優れている」と言えると思います。参考にしてみてください。同じ画素数でもサイズが大きい方が解像度が高いという意味です。


図7「CCDサイズと画素の大きさ」

それと、CCDサイズが変わるとレンズの焦点距離が変わります。
プロのレンズ選びは、焦点距離ではなく画角で選びます(本コラム30, 31を参照)。
図8のように、画角が同じ場合、CCDのサイズが異なると焦点距離が変わっています。レンズ選びの時と、撮影時のレンズ選びの時に気をつけてみてください。図8はフルサイズを1としたときの比率が書いてあるので、まず必要な画角を決めてから、比率をかけて自分の持っているカメラのCCDサイズにあった焦点距離を計算してみてください。



図8「CCDサイズにより変化する画角
同じ画角の場合、フルサイズの焦点距離を1としたとき、APS-C、フォーサーズは短くなる。比率の下の数値は、標準レンズの焦点距離。




カメラ内部のデジタル処理

CCDで電気信号に変換された後は、カメラ内部のコンピューターで処理されます。この処理方法はカメラメーカーや、その各製品ごとに異なります。
「単純に画像化しているんだろう」と私は思っていましたが、よく考えてみればそんなわけも無く、CCDの反応の違いは採用される部品ごとに違うでしょうし、明るいところと暗いところの反応が直線的でもないと思います。それらを補正し、その上で人が感じる印象に近づけるという、非常に感覚的な作業が必要になるため、メーカーの考え方や製品ごとの個性が出ているのだと思います。
その違いですが、例えば、人肌が健康的に見えるカメラや、色を忠実に再現するカメラなど、微妙ではありますが違いがあります。


PCで行うデジタル現像処理

カメラの記録方式をJPEGやTIFFにしている場合は、「3:カメラ内部の処理」で終了です。しかし、RAW形式で保存した場合は、PCにデータをコピーして、さらに調整が可能です。この工程を【デジタル現像処理】といい、これを行うためには専門のソフトウェアが必要です。
RAW形式は、露出や色温度などの大まかな調整から、レンズやカメラの悪いところを補正する緻密な調整まで、カメラ内部で行っていた調整を自分の目的に沿って変更することができます。
また、利用するソフトウェアによって、若干品質が変わります。
ソフト選びの基本は、機能やユーザーインターフェイスなどの使い勝手です。
ディテールの品質にこだわる場合は、現像処理後のデータを確認して選びます。


図9「撮影直後のデータ」
ソフトウェア:Apple Aperture 街路で見つけた、花開く時を待っている植物を真上から撮影しました。




図10「調整後のデータ」
自分の感じたイメージ「凜とした美しさと力強さ」を表現するために、色彩を変え、あえてハイライトを少しだけ飛ばして、命の光を感じさせました。



今回は、カメラの能力を決める4つの要素について、品質を見極めるポイントを見てみました。
これからカメラを選ぶ場合には、カタログスペックを参考にしながら、これらの要素を確認すれば、自分がもとめる写真品質をクリアできると思います。
また、撮影技術を向上させたい場合は、4つの要素で撮影した写真の品質評価をしてみてください。どこが問題なのか、レンズ・カメラ・ソフトの問題なのか、それ以外の問題なのかがはっきりすると思います。

次回もカメラ選びのポイントについて話していきたいと思います。お楽しみに!


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