• Home
  • >
  • ユーザー事例
  • >
  • ゲーム
  • >
  • モバイルゲームに押し寄せる"3D化"の波 2D/3Dハイブリッドで表現力と生産性を高めたDeNA「戦魂」の制作事例

モバイルゲームに押し寄せる"3D化"の波 2D/3Dハイブリッドで表現力と生産性を高めたDeNA「戦魂」の制作事例

モバイルゲームに押し寄せる

2015.06.08

  • 3ds Max
  • Maya
  • ゲーム

スマートフォンやタブレット端末をメインターゲットとするモバイルゲーム市場で、Autodeskのハイエンド3DグラフィックスツールであるMayaや3ds Maxなどの活用機会がますます増えてきている。現在では対象端末を絞った上でゲーム専用機並のフル3Dを用いた作品も珍しくなくなっているが、その市場はまだ小さい。ユーザー層を最大限に広げるためには、3D表現のメリットを生かしつつもある程度古めの端末でも充分に動作できるように調整するといった、"さじ加減"を考えることが非常に重要だ。

その点、国内数千万人というスマートフォンユーザー全体を対象にゲームビジネスを展開している株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の取り組みは、ゲームへの3D表現の導入を通じて分厚いマスを捉えることを意識した事例として非常に興味深い。去る5月7日にiOS/Androidでサービスを開始したタイトル「戦魂」のケースをもとに、今日的なモバイルゲーム開発の実際、ならびにAutodesk Mayaをはじめとした3DCGツール活用の利点を見てみよう。

戦国シミュレーションRPG「戦魂」

iOS/Android向けに5月6日より配信がスタートした戦国シミュレーションRPG「戦魂」。王道的なモバイルゲームのフォーマットを踏襲しつつ、要所に3Dグラフィックスを持ち込むことで本格ゲームのテイストを備えることになった
https://sen-tama.jp/

3D表現で高められたゲームの表現力

「戦魂」は、戦国時代の内政と合戦をモチーフとした戦国シミュレーションRPGだ。基本プレイ無料+アイテム課金制というごく王道的なサービスモデルを基礎に、フル3Dで描かれる迫力の合戦シーンと軽快なゲーム性を実現。DeNAが従来より培ってきたモバイルゲームとしての遊びやすさに、最新ゲームとしてのビジュアルの面白さを持ち込むという試みをうまく成功させている。

ゲームの構造そのものはシンプルだ。内政パートで城下町の建設、改良を行いつつ、武将を強化。戦略マップ上で合戦場を選び、合戦シーンでは最大5人の武将を組み合わせた"デッキ"を駆使して、ターンベースのバトルで勝利を目指す。そして合戦その他の達成で得られるリワードなど使って"ガチャ"を回し、新たな武将や強化アイテムを手に入れていく、というのが全体的なゲームの流れとなる。

城下町を育て、軍団を強化していく。王道のゲームシステムが骨格にあるこのような非常に"枯れた"ゲーム構造に、最新タイトルならではの面白さをもたらしているのは間違いなく、各所で活用されている3Dグラフィックスの存在だ。

リアルタイム3Dで表現された合戦シーンでは、戦場を俯瞰するようなカメラ演出で戦いのスケールを表現。演出からゲームプレイには完全シームレスに移行し、たくさんの兵士がぶつかり合う戦いの模様を、活き活きとした3Dアニメーションで描写する。高い密度感のある戦場画面、派手なエフェクト、ダメージ演出もリアルタイム3Dならではの迫力で、なおかつゲームプレイ上の情報を非常に見やすくプレーヤーに伝えてくれる。

戦略シーンで軍団を進め、合戦シーンへ。リアルタイム3Dで表現される合戦シーンは、映像的なリッチさとゲーム上の視認性をうまく兼ね備えたデザインとなっている

適材適所の2D/3D表現。ハイブリッドスタイルを導入した理由

「これだけの密度の絵を手書きで作り出すのはとても可能とは思えなかった」と語るのは、本作のアートディレクションを担当したDeNA デザイン戦略室 アートグループの中津基貴氏だ。

DeNAでは国産のフィーチャーフォンが主要市場であった時代からモバイル・ソーシャルゲーム開発の長い蓄積があり、そこでアートを担当してきた中津氏としても、ゲームでまず重要なのはユーザーに届ける体験そのものであり、2Dか3Dかはゲームの内容に適しているかどうかで選択するというのが基本的な哲学だとしている。

3Dを使うことそのものにこだわりがあるわけではない。このため、「戦魂」ではまさに適材適所という形で3D表現が用いられており、言わば2D/3Dハイブリッドタイプのゲームとなっている。

例えば、数百種類にものぼる武将のイメージは手描きのイラストレーションであるし、城下町をマネジメントする内政シーン、戦場を選ぶ戦略シーンなどの背景にはプリレンダー3Dを用いた止め絵を使用している。また、ゲーム全体を通じてユーザーインターフェイス要素は2Dタイプの表現手法をとっている。

3Dで作られた内政画面のコンセプト・アート

内政画面のコンセプト・アート。ゲーム内では2Dの素材だが、手書きではなく、3Dで作られている

一方、合戦シーンで採用されたリアルタイム3D表現は、1つの画面の中で敵・見方の被害状況を見やすく表現する上で重要な役割を果たしている。各武将が繰り出す技や計略に付随する派手な演出も、「プレーヤーが頭の中で補完しないといけない要素を減らす」(中津氏)ことを意識してデザインされている。ビジュアルの面白さを高めることと同じくらいに、ゲームを面白くするために3Dを選択したというわけだ。

合戦プレイ中の画面。実際のゲーム中は視認性を重視し、完全見下ろし型の視点を採用している。1画面に最大60体あまりのキャラクターを描写したうえで、iPhone 5にて30fps以上の描画パフォーマンスを確保しつつ開発が進められた。

3D化で向上した作品のクオリティ、密度感。ワークフローの安定化という効果も

上述のような2D/3Dのハイブリッド表現を満たすため、本作はゲームエンジンにUnity 4.6を使用して開発が進められた。

合戦シーンのアセットをUnity上で配置している様子

合戦シーンのアセットをUnity上で配置している様子

リアルタイム3D用のアセット制作にはMaya 2015、プリレンダー映像の制作には3ds Max 2014(現在は2015版も併用)と、レンダラープラグインのV-Rayを使用している。プリレンダー映像の制作に3ds Maxを利用したのは、「絵をなるべく早く形にしたいときに有利」という判断からだ。そこで作られたプリレンダー素材は、城下町や戦略シーンの背景アートとして使われている

リアルタイム3D用のアセットはMaya 2015上で制作

リアルタイム3D用のアセットはMaya 2015上で制作

プリレンダーとはいえ、背景アートを3Dで制作したことには「密度感の高い絵を作る」という主要目的のほかに、いくつかの制作プロセス上のメリットもあった。

例えば、城下町の背景アートはノーマルマップとともに出力されている。これにより、1枚の止め絵でありながら3D空間上の光源をリアルタイムに反映することが可能となっており、自然物や、建物の陰影に深みを出すことができた。光源の位置や色・照度を調整することで、時間経過の表現なども可能になるなど、1つの素材を柔軟に活用しつつ、映像の説得力を高めることができる。

【左】:3ds Max上で制作される城下町の背景。レンダリング結果はV-Rayで描画し、その際、ノーマルマップも出力する
【右】:出力された城下町の背景映像

背景上に配置される建築物のアセット

背景上に配置される建築物のアセット。こちらも2D映像として使用されるが、ノーマルマップも出力することで合成時に背景のライティング環境になじませることができる

戦略シーンの背景アートの制作には、3D自然景観のプロシージャル生成ツールであるVue 11 Infiniteを利用。手書きでは不可能な密度感を持つ背景を安定的に制作することができるようになったほか、天候、季節、時間といった調整可能なパラメーターを変更することで、簡単にバリエーション化もできる。2Dシーンにも3D制作の手法を取り入れたことで、このようにクオリティと生産性の向上を実現することができた。

3D化にともなうもうひとつのメリットは、「ワークフローの安定化が図れた」ということだ。スキルセットやワークフローのありかたが属人的になりがちな2Dアートの制作とは対照的に、Mayaあるいは3ds Maxといった共通のツールセットを用いた3Dアセットの制作では、あらかじめ必要な仕様と手続きをしっかりと設計することで共通化が図れる。本作のアセット制作にあたっては内部で4人の担当スタッフが主導する形をとり、リアルタイム3D向けアセットの量産を国内の企業、プリレンダー素材の量産をフィリピンの企業にアウトソース。複数社に外注しつつも期待通りのものが出てくる安定感は、Maya、3ds Maxといったグローバル基準のツールで作業内容が共通化できるからこその強みだ。

また、いわゆるサービスとしてのゲームを標榜するモバイルゲームは、ヒット作となればリリース後のほうが開発期間が長くなる運命にある。イベントや定期アップデートを通じたコンテンツの追加、更新などがそれだが、制作プロセスの3D化によりワークフローの属人的な部分が減らせたことによって、担当スタッフを適宜入れ替えていくことも容易になり、既存作のメンテナンスと新作の開発に適材適所のマネジメントを行いやすくなる。これも意外なメリットのひとつだ。

合戦シーン用の背景。制作に3Dを採用することで、品質を高めつつ天候や季節・時間帯といったバリエーションを容易に作り出せる

プロジェクトの規模は増加するも、作品は高品質化。可能性はさらに広がる

【左】:中津基貴氏(DeNA デザイン戦略室 アートグループ)【右】:武安利幸氏(DeNA Japan リージョンゲーム事業本部 デザイン部 第三グループ グループマネジャー)

【左】:中津基貴氏(DeNA デザイン戦略室 アートグループ)
【右】:武安利幸氏(DeNA Japan リージョンゲーム事業本部 デザイン部 第三グループ グループマネジャー)

本作の開発マネジメントを担当するJapan リージョンゲーム事業本部 デザイン部の武安利幸氏によれば、2D一辺倒のコンテンツを開発してきた従来のケースに比べれば、プロジェクトの規模感は確かに大きくなってきたという。開発期間はそう変わらないが、関わる人数は2~3倍。3Dを導入することはプロジェクトそのもののコスト削減にはつながらないものの、「結果としてアウトプットされてくる作品のクオリティ、密度が上がった。同じことを2Dでやるならば、さらに人数が必要だろう」という。巡り巡って、最終的にユーザーのもとへよりリッチなコンテンツを届けることができるという点に、確実な手応えを感じているようだ。

このような「戦魂」の開発経験を踏まえ、今後、3Dの使用は前提になっていきそうだと、中津氏と武安氏はいう。

DeNAの社内では3Dへの関心、Unityを用いたゲーム開発への意欲が増してきており、小規模なプロジェクトでは低コストで導入できるMaya LTを利用するケースも増えているのだそう。Maya LTは3Dを習得したいスタッフがジョブトレーニングがてらに使用する形も多くなっているというが、外部とのやりとりや大きな物量を扱う大規模プロジェクトでは通常のMayaを使用することが標準になっているようだ。

今後は、物理ベースレンダリングも活用していきたいという中津氏。新しい表現は新作でチャレンジしていきたいとのことだが、近年は非常にハイペースで端末の性能が向上していることもあり、プロジェクトを経るごとに可能な表現が爆発的に広がっていくことは間違いない。モバイルゲーム業界のMayaの活用はさらなるペースで拡大しそうだ。

中津基貴/Mototaka Nakatsu : 武安利幸/Toshiyuki Takeyasu

【左】:中津基貴氏(DeNA デザイン戦略室 アートグループ)
【右】:武安利幸氏(DeNA Japan リージョンゲーム事業本部 デザイン部 第三グループ グループマネジャー)

株式会社DeNA

株式会社DeNA
http://dena.com/jp/

導入製品/ソリューション Autodesk Maya
Autodesk 3ds Max

TEXT_佐藤カフジ

製品購入に関するお問い合わせ
オートデスク メディア&エンターテインメント 製品のご購入に関してご連絡を希望される場合は、こちらからお問い合わせください。