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スターバックス コーヒー ジャパン
魅力ある店舗設計の秘密 〜BIM と VR で追求する新たな体験

スターバックス コーヒー ジャパン 魅力ある店舗設計の秘密 〜BIM と VR で追求する新たな体験

2017.03.15

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シアトル生まれのコーヒーショップ、スターバックス。 多くの人々に親しまれ、アメリカを中心に全世界で2万を超えるショップを展開するグローバルブランドだ。 日本国内では、現在、1245店舗(2016年12月31日時点)を展開している。自宅と職場、学校の間に存在するサードプレイスの先駆者的存在として、心地よい体験を提供し続けている。

私たちが日頃親しんでいるチェーン展開のショップにはさまざまな形態があるが、スターバックスの大きな特徴のひとつが、店舗のほとんどが「直営店」であり、社内のデザイナーが店舗設計を直接手がけていることだ。定型化されたひとつのデザインを各店舗に落とし込む通常のチェーンストアのやり方ではなく、出店する地域の歴史的文脈やそこに住む人々のライフスタイルを考慮しながら、各店舗の設計にインハウスデザイナーが工夫を凝らして取り組んでいる。しかし、最初からそうだったわけではない。

1996年、初出店となった銀座松屋通り店の広々とした店舗は、「北米以外で初のスターバックス」としてニュースで大きく取り上げられた。当初、店舗はシアトル本社から渡される定型化されたデザインをもとに、日本の法規や空間特性に準ずる形で設計されていたという。その後、世界各国に進出していく中で、本社からの指示はよりコンセプチュアルなものに変わり、各地域での創意工夫が試されるようになっていった。

スターバックスコーヒージャパンの店舗設計部は、世界に18あるスターバックスのデザインスタジオのひとつに位置付けられ、別名"ジャパンデザインスタジオ"と呼ばれている。在籍する約30名のスタッフのほぼ8割がインテリアデザイナー、もしくは建築士の資格を持つスペシャリストで、実に年間100店舗以上の新規出店に伴う設計を行なう。さらには、最大で年間150店舗に及ぶ既存店のリモデルも手がけている。

インハウスデザイナーはグローバルブランドとしてデザインの一貫性を保つことが求められる一方で、日本文化を理解し、その地域の客層が求める魅力的な店舗設計のスピーディーな提供を求められる環境にいるのだ。

何度かのリモデルを経て、現在も多くの人に愛されるスターバックス銀座松屋通り店。

何度かのリモデルを経て、現在も多くの人に愛されるスターバックス銀座松屋通り店。
[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

1996 年 8 月にオープンしたスターバックス銀座松屋通り店の当時の様子。[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

インハウスデザイナーが手がけるスターバックスの店舗設計

2009年、スターバックスコーヒージャパンの店舗設計部は従来の2D CAD を置き換える形で、既にシアトル本社で運用されていたBIMツールの Autodesk Revit を導入。同部部長の髙島真由氏は、その当時の状況を「トレーニングする準備もなく、システムを整備する担当者も不在のまま手探り状態でトライしたため、デザイナーそれぞれが違う描き方で始めてしまったんです」と振り返る。

髙島氏は「Revit では、どんなやり方を使っても、作業はできてしまうんですね」と笑う。「極端な例でいえば、発注相手の情報が各ファミリ(3Dモデリング用の部品)に紐付いているにもかかわらず、それが情報として取り出せなくて別のデータに手入力するなど、BIM の属性情報を有効活用できない、混沌とした状態になっていました」。

この状況から脱却するため、作業工程の抜本的な見直しを実行した。「各デザイナーにヒアリングしながら、まずは使用する機能を、店舗の設計図を仕上げるために最低限必要なものへ徹底的に絞り込みました。全員の情報を集めて"歯列矯正"のように、まずは皆が同じレベルで作業できるものにしたんです」と、設計企画チームの高尾江里氏は振り返る。その作業が功を奏し、現在では全ての店舗設計にRevitを使ってスムーズな作業が行われている。

また、その整備の過程でトレーニングプログラムも作ることができた。これはRevitを使用したことのない外部パートナーやCADオペレーターが効率よく習得できるプログラムとして、現在でも有効に活用されている。

「今は迷いなく『この図面はこう描く』ということが全員できるようになっています。そのぶん、デザインについて悩む、創造的な時間を生み出すことができました」(髙島さん)

毎年、店舗設計部では、既存の店舗のリモデルを多数行っているが、既存店は当時の CAD ソフトで設計されているため、2Dの図面しか残っていない。そこで、まずは当初の設計で使われた2Dの図面から 3D の Revit モデルを起こし、そこへ新たなデザインをしていく。そのデータを見せることで、運営サイドの営業部長やディストリクトマネージャーなども、各空間がどう変化するかという説明が格段にしやすくなるという。

「デザイナーは頭の中でつねに3Dで考えていますが、普通の方はそうではないですよね。2Dの図面では把握しにくかった部分が、3DのRevitモデルを見せることで非常にコミュニケーションしやすくなるんです」(髙島さん)

「デザイナーとしても、借りているビルの"ここの梁が出てきちゃうよね"といった部分は、やっぱりRevitモデルで見た方がリアルなんです。そういう意味では、デザイナーとしても助かるツールです」(高尾さん)

ビルオーナーへの説明の際も、プレゼン用パースを外部に発注するのでなくRevit内でレンダリングできるため外注コストも不要となる。すぐにオーナーのところに説明に行って決断をいただけるため、作業のスピード感も大幅にアップできた。

アークヒルズ店の実写(右側)と設計時に作成した Autodesk Stingray のレンダリング。
[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

既存のBIMデータを使ってVRコンテンツへと変換

さらに2016年の夏からは 3D ゲーム エンジンのAutodesk Stingray をベースとするクラウドソリューションAutodesk Live サービスを利用して、店舗のBIMデータからVRコンテンツを作成することにも着手しはじめた。Autodesk Live ではRevit ファイルを、複雑な変換作業なしにワンクリックでVRコンテンツへ変換でき、それをプレゼンや情報共有に活用している。

導入検討の際には社内のさまざまな部署に呼びかけ、リモデルしたばかりの「アークヒルズ店」を、HTC Vive のヘッドマウントディスプレイで体験してもらった。

そのVR体験は、実際の店舗で働くパートナーも違和感を感じないレベルだったという。「実はその体験日の前日、アークヒルズ店で働いているバリスタが偶然スターバックスジャパンの本社オフィスに来ていたので、こっそり先にVRを試してもらったんです」と、高尾氏。

「実際の建築に使ったBIMデータを使っているので当然なんですけど、"毎日、ここでサイフォンを触ってます。幅も高さもそのままで、お客さまが座ったときも、この角度です!"と言ってくれました。それで当日は自信を持って他の部署の方にトライしてもらうことができました」

実際の店舗で働くスタッフも違和感を感じないVRコンテンツ。体験日当日はさまざまな部門から来た60名にも及ぶスタッフがトライした。リモデルを担当したスタッフもそうでないスタッフも、それぞれの観点からVRコンテンツに夢中になったという。

「みんな、さまざまな反応で、面白かったですね。設備設計チームの人たちは、"ここの下が気になってたんだよ"と細かい部分を見たり。バーチャルにカップを持って、お客様に出すところまで再現すれば、オペレーションデザインにも活用できると思います。そういう可能性を発見しました」(高尾さん)

「店舗で使う備品などは原寸のモックアップ作って確認する場合もあるのですが、それを省くことができるかもしれないと思いました。スタッフと実際の機器の配置などは、何度も打ち合わせをして決めていくのですが、その打ち合わせも VRコンテンツで確認しながらできそうですね。クイックに3Dの体験をすることが、今後はいろいろと役立ちそうだと感じます」(髙島さん)

Autodesk Live を使うことでRevitモデルが短時間でリアルタイム表示用に加工編集され、インタラクティブなモデルが数分で利用できる。Editorツールを使うことで視点位置やライティングの調整も可能。プロジェクトの関係者は、無償提供されるLiveViewerを使用して、インタラクティブなビジュアライゼーションの閲覧、体験が可能だ。

「建設部やオペレーション担当などデザインの理解が必要な部署には、これまでは仕上がりを想像してもらいながら説得していた部分がありました」と、髙島氏は語る。「今後はVRを使うことで、リアルなイメージを共有しながら合意形成ができるのではないかと期待しています」。

Autodesk Live により提供されるVR体験は、社内での確認作業には十分なクオリティを提供するが、Autodesk Stingrayを使用すればさらに細密なビジュアルを実現して、非常にリアルなVR体験を得ることも可能となっている。

(左側)Autodesk Live の画面。ヘッドマウントディスプレイに投影すると、3D 空間内を自由に移動して デザインを確認できる。(右側)Autodesk Stingray の画面。より細かな美しいビジュアルとなる。[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

Autodesk Revit でデザインされたアークヒルズ店のカウンター。

Autodesk Revit でデザインされたアークヒルズ店のカウンター。[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

ものづくりの面白さを体験できる支援

スターバックスは、震災復興支援をはじめ、 地域のコミュニティにも働きかける、さまざまな社会貢献活動を行なっている。2016年、店舗設計部は、北海道旭川市の助成金事業に参加し、テレワーカーを育成する取り組みを実施した。これは自治体が過疎化対策として行なう雇用促進の一環であり、介護やハンディキャップなどの理由により働く意欲があっても家から出ることができない人を対象に、AutodeskRevitの操作を習得して戦力になってもらおうという試みだ。

髙島氏は、「スターバックスは企業理念として、 『より良い社会をつくるために貢献していきたい』という想いを常に持っています」と語る。「この取り組みはその理念にも合致していると感じたので、店舗設計部として初めてテレワーカーさんとの協業にトライしました」。

Revitのオペレーターが市場で強く求められている現在、その技能を習得することが経済的な自立につながるのではないか、と髙島氏は語る。

「みなさんRevitを初めて触る方々ですが非常に積極的で、操作が面白いと口々におっしゃいます。たとえば、Revitでは家具を描いたりする必要があるのですが、それが組み上がっていく過程が面白かったり、単純にデザインするということがどういうことなのかを、一緒にやることでわかってくるのではないでしょうか。2DCADとは違って、デザインを形にしていくことがリアルに実感でき、デザイナーと一緒にものづくりの面白さを体感していただけるようです」。

テクノロジーの進歩とともにさまざまな働き方や生産工程の見直しが模索される今、スターバックスコーヒージャパンのこうした取り組みは、今後もさらに広がりを見せていくに違いない。

2016 年 9 月にリモデルしたスターバックス京都三条烏丸ビル店。最先端のコーヒー表現と
茶人・小堀遠州が作り上げた美的概念を示す「綺麗さび」という考え方をデザインに取り入れた。

2016 年 9 月にリモデルしたスターバックス京都三条烏丸ビル店。最先端のコーヒー表現と 茶人・小堀遠州が作り上げた美的概念を示す「綺麗さび」という考え方をデザインに取り入れた。[提供 : スターバックス コーヒー ジャパン]

左から)店舗設計部 設計企画チームの高尾江里氏、店舗設計部 部長の髙島真由氏、オートデスク テクニカル コンサルタントの横田篤典。

左から)店舗設計部 設計企画チームの高尾江里氏、店舗設計部 部長の髙島真由氏、オートデスク テクニカル コンサルタントの横田篤典。店舗設計部にはオートデスクのコンサルタントのためのデスクがあり、店舗設計の基盤となる BIM データの構築や、新しいテクノロジーの活用など技術的な要望に対し、柔軟かつ迅速に対応できる体制をとっている。[撮影 : 井上直哉]

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

1995 年創立。従業員数 3,440 名。コーヒーストアの経営、コーヒー及び関連商品の販売を行うスターバックスの日本法人。 1996 年 8 月に東京・銀座に日本1号店をオープン。 現在では国内 1,200 店を超える店舗数に達している。スターバックスのミッションは「人々の心を豊かで活力あるものにするために - ひとりの お客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。各地域に根ざしたそれぞれの店舗で、一杯のコーヒーを通じた小さなつながりの 積み重ねを大切にしている。

導入製品/ソリューション

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