Hayes Davidson 社 Ciro Cardoso 氏:イノベーション アーティストの一日

Hayes Davidson 社 Ciro Cardoso 氏:イノベーション アーティストの一日
画像提供:Ciro Cardoso 氏
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Hayes Davidson 社の上級イノベーション アーティストの仕事

Ciro Cardoso 氏は、若い頃からビジュアル アートに興味を持っていました。ペイントやイラストの技術に磨きをかけた後は、デジタル アートに取り組みました。建築分野の友人がきっかけで 3ds Max と Maya を使うようになり、建築ビジュアライゼーション分野でのキャリアが始まります。そして、世界的な設計事務所である Hayes Davidson 社のイノベーション アーティストを努めることになります。16 年以上独学でアートを学び、飽くなき探究心と情熱で仕事の手法や領域の限界を押し上げてきました。仕事内容や成功の秘訣について Cardoso 氏に語ってもらいました。

Q. オフィスでの日常について教えてください。

Hayes Davidson に来て 4 年になります。ロンドンを拠点にし、イラスト スタジオとして、世界の建築家、不動産開発会社、設計者に画期的な CG ビジュアライゼーションを浸透させ、建築業界の著名なリーダーたちと共に仕事に取り組んでいます。

画像提供:Hayes Davidson 社
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私は一日の大半を建築ビジュアライゼーションの制作に費やしていますが、研究開発の管理や新しいチーム メンバーの指導にも取り組んでいます。仕事の内容は、プロジェクト開発の段階によってさまざまです。たとえば、建物の承認を得る段階では、ビジュアライゼーションの微調整に取り組みながら、同時に新規プロジェクトの入札に向けたコンセプト デザインに取り組んでいることもあります。

仕事の大半は、プロジェクトの入札を勝ち取ってから始まります。クライアントとのコラボレーションはプロセスにおける重要な要素です。クライアントと緊密に連携して彼らのビジョンを理解する必要があります。クリエイティブ ブリーフィングに取り組む日もあれば、次の日にはマーケティングを意識した最適なカメラ ビューを決めるために、イメージ プランニングやスペースのレビューを行っていることもあります。たとえば、高層住宅に取り組んでいる場合、ある平面からのアングルを、近隣の公園、スカイライン、水景などを考慮して検証します。また別の日には、家具、マテリアル、植物などのアセットを切り取って、クライアントの設計チームから提供された資料と照らし合わせたりします。日々業務が異なるため注意が必要ですが、とても楽しい仕事です。

日々業務が異なるため注意が必要ですが、とても楽しい仕事です。

画像提供:Hayes Davidson 社
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Q. どのようなツールを使用していますか?その理由も教えてください。

アーティストとして、さまざまなツールを使いますが、3ds Max は、イメージ プランニングからライティング、それ以降の作業まで、ほぼすべての作業の基礎になります。マテリアルに関しては、Substance Designer と Substance Painter も使います。これらのツールがあれば、クライアント向けにどのようなマテリアルでも作成できます。植物の作成には Speedtree を使用します。高品質なツリーの作成だけでなく、風のアニメーションも簡単に作成できる手続き型のワークフローが用意されています。

また、Houdini の手続き型モデリングを使用して地形や雲などの要素を作成したり、手続き型スキャタリングを使用したりします。ポスト処理やグレーディングには Nuke、Photoshop、Black Magic Fusion を使用します。プロジェクトによって変わりますが、レンダリングには通常は Arnold、Corona、V-Ray を使用します。このように、私が映画、テレビ、アニメーションや VFX の現場でほぼ標準となっているツールを使用しているのは、それだけ近年のデザイン ビジュアライゼーションにおける品質標準が変化しているいうことです。

画像提供:Hayes Davidson 社
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昨年は 3ds Max にいくつかの素晴らしい進化が見られました。最も新しいのは、リトポロジ ツールセットです。非常に強力で、仕事が簡単になります。家具メーカーから提供される 3D モデルでジオメトリの問題を早期に特定して修正できます。3ds Max 2022 での新しいスライス モディファイヤの更新も有益でした。これらの新しいツールにより、3ds Max でのモデリングが一層簡単になり、3D モデルを準備するプロセスがスピードアップし、作業時間を大幅に節約できました。Arnold に関しては、Cryptomatte、Arnold レンダー ビュー、AOV Manager、TX、Uber Shaders などの製作ツールを使用しています。これらのツールの柔軟性は他のレンダリング ツールの追随を許しません。また、Arnold オペレータ ノードによりシーンの制御が向上します。ASS/USD ファイルのサポートは、個人的なワークフローと仕事のワークフローの両方で役立っています。シーン全体を Arnold シーン ソース ファイルとして保存して、マテリアル、ジオメトリ、ライト、カメラなど、すべての要素を書き出せます。本質的に、すべての情報を持つ 1 つのマスター シーンを管理しやすいファイル サイズで保存できます。シーンの変更が必要なときは、簡単にシーンを開いて保存できるので、修正が簡単です。以前は 2 日かかっていた作業も、今は Arnold で数時間で終えることができます。

Arnold は大量のデータを高速処理できる強力なレンダリング ツールです。4K、8K、16K のテクスチャ、大規模ジオメトリ、スキャンしたオブジェクトでも、気にせず作業できます。

Arnold はこれらをとてもスムーズに処理できるので、仕事の質を劇的に高めることができます。大規模なプロジェクトの仕事が増え、厳しいスケジュールで入念な作業が求められるため、今では欠かせない機能です。

アーティストとして、さまざまなツールを使いますが、3ds Max は、イメージ プランニングからライティング、それ以降の作業まで、ほぼすべての作業の基礎になります

画像提供:Ciro Cardoso 氏
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Q. 通常のプロジェクト ワークフローを教えてください。

プロジェクトによって変わりますが、通常は Revit または Rhino ファイル、参照マテリアル、提供されたその他の情報から作業を始めます。モデルをクリーンアップして 3ds Max に取り込み、各種ファイルをリンクまたは外部参照します。ここですべての要素を正しい位置に配置し、必要に応じて結合します。次に、ジオメトリをレイヤーに整理し、必要に応じて 3ds Max のリトポロジ ツールセットを使用してクリーンアップします。

それから、ルック デベロップメントに取り掛かります。Substance Designer と Substance Painter を使用してマテリアルを作成し、3ds Max で調整します。Arnold シェーダはプロセスの効率を高めます。特にファブリックに効果を発揮し、簡単な操作でリアルな外観を作成できます。他にも、Physical Materials と OSL(Open Shading Language)ノードを組み合わせることでもプロセスを効率化できます。

OSL は非常にパワフルなツールです。OSL を使用すると、複数の HDRI マップを読み込んで簡単に切り替えることができます。この機能により、さまざまなライティング シナリオでマテリアルの外観を確認できます。次にイメージ プランニングに取り組み、カメラ、合成、フレーミングと続きます。どれも不可欠の作業です。最終的なゴールは、写真のようにリアルなイメージを作成し、どのような空間でもまるでそこにいるかのように感じてもらうことです。

最終的なゴールは、写真のようにリアルなイメージを作成し、どのような空間でも、まるでそこにいるかのように感じてもらうことです。

画像提供:Ciro Cardoso 氏
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カメラとライティングが決まれば、実際の写真などの参照マテリアルを確認し、ルック デベロップメントに取り掛かります。チームと共に、クライアントから提供されたモデルと家具アセットからビジュアライゼーションを構築します。マテリアルが完成すると、プロジェクト全体で使用するマテリアル ライブラリを構築します。1 回の操作でチーム全員がプロジェクトの更新を共有できます。次に 3ds Max でシーンを操作し、モデルを結合します。Alembic ファイルを使うことでシーンの操作が簡単になります。次にライティング作業に入ります。Arnold レンダー ビューを使用することで、ライティング オプションにコメントを付けて簡単に保存できます。

ここからは、ビジュアライゼーションの反復が中心です。3ds Max と Nuke 間の作業を繰り返し、クライアントの要件を満たすまでチームで連携して仕上げます。より複雑なシーンでは、Arnold Denoiser を使用してクリーンなレンダリングを作成します。幸いにも、3ds Max、Arnold、Nuke 間のワークフローのおかげで、短い納期にも対応できています。

画像提供:Hayes Davidson 社
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Q. 最近取り組んだプロジェクトで特に印象に残っているプロジェクトは何ですか?

建築家 12 名によるエスカペイド シルバーストーンは、2022 年にオープンする予定です。私がスタジオ向けに構築した 3ds Max と Arnold のワークフローを用いて昨年取り組んだ大規模プロジェクトです。Hayes Davidson チームと共に、モータースポーツ ファン向け物件のマーケティング イメージ、CG アニメーションを組み合わせ、ショート フィルム も作成しました。住宅や

別荘で構成され、クラブハウスなどを見渡すことができます。イギリス グランプリが開催される伝統的なサーキットです。このプロジェクトでは、Rhino ファイルから作業が始まり、私にとって、3ds Max と Arnold のワークフローを実践した最初のプロジェクトとなりました。

カナダのバンクーバーの Westbank 開発プロジェクトも携わったときも、短い納期に対応するためにこのワークフローを再活用しました。このときは Revit ファイルから作業しました。納期当日の朝に最後の 3 つのイメージ ファイルのレンダリングを仕上げました。Arnold がなければ納期に間に合わなかったでしょう。このようなプロジェクトに取り組んでいると、ライティングやつや感が写真のようにリアルなため、使用しているレンダリング ツールのことを自分から言わなくても、どうしても他のアーティストから注目されました。

納期当日の朝に最後の 3 つのイメージ ファイルのレンダリングを仕上げました。Arnold がなければ納期に間に合わなかったでしょう。

画像提供:Hayes Davidson 社
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Q. パンデミックは仕事にどのように影響しましたか?

幸運なことに、Hayes Davidson は、さまざまな業界のグローバル プロジェクトに取り組む企業であり、建築設計と建設プロセスのさまざまな段階に関与しています。チームは世界中のアーティストで構成され、プロジェクトを進めるために、リモート コラボレーション パイプラインをすでに導入しています。これが機能して、プロジェクトの進行が止まることはありませんでした。実際に、デザイン ビジュアライゼーションへの需要は昨年も堅調でした。世界的なロックダウンで外出できない状況が続き、対話型や没入型エクスペリエンスへの需要が高まったのです。この点において、Arnold や Unreal Engine などのツールは、プロジェクトの納期短縮や大規模開発プロジェクトへの対応に役立ちました。これまでのレンダリング ツールのようにイメージのレンダリングに 15 時間もかかることはないので、より多くの時間をアートに費やすことができます。

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Cardoso 氏のワークフローを詳しく知りたいですか?
Cardoso 氏による Autodesk University プレゼンテーション をぜひご覧ください。

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