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第48回:素材撮りに適したカメラ選び4

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こんにちは、パーチの長尾です。

前回に引き続き《カメラ》の話です。
3DCG制作で利用する、制作資料のロケ撮影、またマテリアルや背景制作の素材撮影などに最適なカメラ選びのポイントを紹介していきます。

ここ数回に分けて、カメラ本体を選ぶのに必要な基礎知識とポイントを解説しました。
今回は、《レンズ》について解説していこうと思います。

レンズは、フィルムからCCDに変わっても基本的な部分が変わらず、また動画カメラでも静止画カメラでも、基本的には同じ構造のレンズが利用されています。
そんなレンズですが、カメラの「おまけ」程度に考えられていることが多いように思います。しかし、本当はカメラ本体以上に画質に影響を与える物なんです。

そんなレンズの不思議や、選ぶ際のポイントについて、プロカメラマンの選択基準と3DCG素材撮影の便利さを意識しながら説明していきたいと思います。


性能と美しさ

同じカメラ本体でもレンズを変えるだけで大幅に映像の質が変わります。そのため、レンズ選びは非常に重要です。
例えば、空気感を写すレンズもあれば、コントラストが強いレンズもあるなど、レンズにはそれぞれの特性があります。撮影者はそれらを目的に応じて選んでいきますが、一般的には「情報量」が多いレンズが、高性能で美しいとされています。

動画にしろ静止画にしろ、後処理をすると思います。後処理でコントラストを高くすることも、ディテールをぼかすこともできますが、はじめから情報が含まれていなければ、どうしようもありません。

「情報量」とは、解像度が高くディテールが写っている、ハイライトとシャドウのディテールが写っている、レンズの歪みが少ない等のものです。
仕上がった映像を見て、レンズの善し悪しを判断するときのポイントを紹介します。
・空気感まで写っている
・微細な点までハッキリしているのに、 柔らかい雰囲気を感じる
これが感じ取れれば、良いレンズということになります。

そして、レンズ選びの最大のポイントは、「値段が高いと優秀」ということです。
ワインと一緒で、高い物が優れているので、お金はかかりますが選びやすいとも言えます。
優秀なレンズが欲しいときは懐が許す限り高い物を選んでみてください。
映画制作等では、1本、数百万円から1千万円を超える物が使われています。
一眼レフカメラ用のレンズでは、1本、10万円以上のレンズが1つの目安になると思います。

レンズの主要な性能については、本コラム45回の《1:レンズ》を参照してください。


機能で選ぶ

素材撮影に向いたレンズ、風景や人物撮影に向いたレンズなど、用途に応じてレンズにも向き不向きがあります。図1に、用途ごとに求められるレンズの特徴をシンプルにまとめましたので、レンズ選びの参考にしてみてください。

画質はどんな用途でも良い方がいいと思いますが、表現目的によっては雰囲気を出すために、あえて画質の悪いレンズ(画質に特徴のある古いレンズなど)を利用したほうがいいこともあります。

その他に示したポイントは、レンズ選びの際に重要な点ですので、選ぶ際には気にしてみてください。


図1「用途ごとに求められるレンズの特徴」


機能で選ぶ1「接写機能」

素材撮りで最も欲しい機能は、「接写機能(マクロ機能とも呼ばれています)」です。
接写機能とは、通常のレンズに比べ、より近い距離でピントをあわせることができる機能です。
マテリアル制作で使うテクスチャ素材を撮るときなど、小さな面積を拡大したり、素材が小さいときなどがあると思います。そんな時、通常のレンズでは撮影することができないため、接写機能付きのレンズが必要になります。

レンズの名称に「マクロ」とついているのがそれです。
しかし、この機能について、よくある誤解があるので2つあげておきます。

1:通常の撮影ができない
と誤解されることがありますが、近い距離から無限遠までピントをあわせることができるので、通常撮影に利用できます。
画質が悪いということもないので、安心して利用してください。

2:ズームレンズのことをマクロレンズと呼ぶの?
ズームレンズは構造上、近い距離までピントを合わせやすくなっています。そのため、接写機能付きズームレンズいうものが多く発売されているため、このような誤解をしがちです。しかし、ズームレンズは広角にしたときに接写ができる機種が多く、歪んだ画像になったり、思ったほど近づけないことがあるので、素材撮りには、専用のマクロレンズをお勧めします。


図2「マクロレンズの拡大能力」
【撮影倍率】という表記で、どこまで近づいて撮影できるかがスペック表で示されます。
倍率が大きいほど、近づけて、大きく写すことができます。


機能で選ぶ2「オートフォーカスとマニュアルフォーカス」

撮影の際にはピント合わせが必要になります。僕のようにオートフォーカスレンズが無かった時代から写真を撮っていた人ならともかく、iPhone で写真を撮っている人には「ピント合わせ」という行為がピンとこないかもしれませんね。

最近のレンズはほとんどがオートフォーカスですので、逆にマニュアルフォーカスを買うことが難しいかと思います。そのためあえてマニュアルフォーカスを買う必要はありませんが、素材撮りではマニュアルの方が便利なことが多いので、気に入ったレンズがあるならマニュアルでもかまいません。

また、一眼レフカメラの場合、オートフォーカスでもマニュアルでピント合わせができるので、その方法を覚えておいてください。


図3「マニュアルフォーカスタイプのマクロレンズ」

例えば、三脚にカメラを据えて撮影する場合、被写体の距離は変わらないことが多いので、ピントを固定してしまった方が、不用意に自動でピントが動いてしまうことが無く便利です。


機能で選ぶ3「固定焦点とズーム」

レンズには、焦点距離が固定されているレンズと、焦点距離を変更できるズームレンズがあります。

固定焦点の方が設計に無理が無いため、画質が優れています。
ただし、最新で高額なズームレンズの中には、固定焦点と変わらない品質を誇る物が出てきているので一概には言えません。

素材撮影でズーム機能を使うことはあまりありませんので、より品質の高い固定焦点をお勧めします。歪みを好みませんので、画角は標準か中望遠(本コラム第31回を参照ください)で、マクロ機能付きレンズがベストです。
ただしロケ撮影などの際には、屋内など撮影場所が限られていて広角レンズで無いと写せない場合があります。その際には広角レンズに交換する必要がありますが、ズームレンズなら手間がかからないので便利です。
この辺は一長一短なので、自分が使う用途に向いた物を選択してみてください。


純正品と、レンズ専門メーカー製

ほとんどの一眼レフカメラメーカーは、そのカメラで使用できるレンズを販売しています。一部のメーカーでは、本体だけを生産して、レンズは専門メーカーの製品を利用してもらうという分業もあります。

そのレンズ専門メーカーですが、ZEISS のような高級メーカーをはじめ、多くのメーカーが存在しています。そして、多くのカメラで使ってもらうため、1つのレンズに対して、各メーカーに対応した複数のバリエーションを作っていたりします。

いずれの性能が良いのか? は一概には言えません。メーカーによって特徴があるのは事実ですが、それ以上に製品ごとの性能差が大きいと思います。
そのため、純正品でも専門メーカー製という選び方では無く、製品ごとに偏見無く比較してみることが大事です。

1つだけ純正品の良い点があります。最新のレンズにはコンピューターが内蔵されていて、カメラと通信する機能が内蔵されています。
その機能が品質や使いやすさを上げてくれるかどうかは、用途によるので、自分の用途に合った機能があるかどうかを検討してみてください。
ただし、素材撮りの場合はそれほど機能が必要ないので、このような機能は不要です。


今回は、レンズ選びのポイントについて紹介してみました。商売として品質にこだわるプロカメラマンが選ぶポイントもさることながら、素材撮影の品質を上げるポイントを紹介しましたので、機材選びに役立ててみてください。

次回は、三脚などの周辺機器について紹介していきたいと思います。


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