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第20回:広告業界のクリエイターのクリエイティブ力の秘密<4>

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こんにちは、パーチ長尾です。

初めて仕事を任せてもらったとき、お客様から何を聞いたらいいのか? 何か聞き漏らしはないか? などずいぶん緊張しました。ある程度慣れてきたらうまくいくようになったと言いたいところですが、その後もずいぶん苦労しました。お客様から依頼されたとおりの内容(100%)を作るのには、必要最低限の項目を聞くことでできるようになりましたが、お客様が喜んでくれる、私に頼んで良かったと満足してくれる、より高いレベル(120~150%)の出来を求め始めたら、とたんにこれまでのやり方ではダメになりました。では、何をしたらそれができるようになるのでしょうか?

今回は【ディレクション】という「お客様との仕事」と「制作者の管理」という2つの側面を持つ仕事で、広告業界のプロがどのように対処しているのかに触れていきます。

この内容は、自分の仕事に役立つほかに、広告関連の仕事をするときに一緒になるクリエイターさんの肩書きから、その人の役割や能力を判断するのにも役立つと思いますよ。

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図1 「広告業界のクリエイティブ力 分解図」
代表的な6つのクリエイティブ力をブログの中で紹介。今回は「Direction」

広告業界のディレクター

広告業界でディレクターと呼ばれる職種はいくつもありますが、特にビジュアル制作に関わる人たちを紹介しましょう。

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図2 「広告業界のディレクター」
ビジュアル制作に関わるディレクター職


クリエイティブディレクター
まずは、総監督です。広告業界の仕事は大きく2つに分かれています。CMと、新聞・雑誌 などの写真広告です。これら全ての制作を監督するのがクリエイティブディレクターです。

アートディレクター
アートディレクターは大きな仕事では、クリエイティブディレクターの元で働き、それ以外の仕事では責任者として制作を監督します。監督だけでなく、自らがデザインも行います。

動画制作のディレクター
CM等の制作は大がかりな仕事になります。そのためクリエイティブディレクターやアートディレクターとは別途に、制作全般を監督するのが動画制作のディレクターです。

写真制作のディレクター
動画制作ほどではありませんが、最近は写真制作でも撮影の他に、3DCG、デジタル画像処理などを組み合わせて仕事をするので、それらを効率よく制作することが求められるようになりました。これらを監督するのが写真制作のディレクターです。カメラマンやデジタルレタッチャーが兼任することが多く見られます。

ディレクターは2つの顔を持つ

ディレクターの仕事はまずお客様(広告主・発注者)との打合せで始まります。このとき、お客様から言われたことをメモし、必要最低限のことを聞いただけでは、最高でも100%の仕事しかできません。これでは次回以降も仕事を発注してもらえる可能性は低くなります。優れたディレクターの特徴は、お客様が伝えきれないことを探れることにあります。具体的には、

・お客様が本当に望んでいること
・隠れた要望

などを聞き出していきます。そしてこれらの情報を元にしてお客様が伝えようとしたことを上回る仕事をしていきます。「伝えた以上のことをやってくれた」「想像以上のもの作ってくれた」とお客様に思っていただくための情報を得ることが、打合せでは最も気をつけたいところですね。
このような「対お客様」という顔が1つめの顔です。

そしてもう一つの顔は、打合せを元に考えたアイデアや制作方法などを、それぞれの制作者(いろいろな仕事を専門的に行うプロ)に伝え、チェックや進行管理を行う《監督》です。

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図3 「2つの違った仕事をする」
お客様側と、制作者側に向けて違った能力が要求される


優れたディレクターの特徴は、

・お客様の要望を正しく解釈し、それをわかりやすく制作者に伝える
・制作者が作ったものに対するジャッジが、お客様の要望からぶれない

ということで、制作者も安心して自分の仕事に集中できます。
制作者の立場から見るとジャッジがぶれる(前回と言ったことが違う)、こだわりすぎて進行が遅い、と感じることがよくありますが、優れたディレクターの場合はゴールが明確なため、仕上がりを見て納得させられるということがよくあります。

優れたディレクターが持つ3つの能力

ディレクターは2つの顔をうまく使い分けて、それぞれに対して優れた仕事を要求されますが、そのためにはどのような能力が必要なんでしょうか? 優れたディレクターに特徴的な3つの能力を見ていきましょう。


アイデアマン
優れた品質、お客様の要望を上回る仕事、に絶対に必要なのは、「優れたアイデア」です。アイデアと言ってもなにが評価されるかは、仕事の内容や場合により変わってきます。
優れたデザイン、おもしろい表現、効率的な制作方法などは、お客様の要望を上回る、驚きや喜びを持ってもらうために考え出す力です。
日頃から、「考えること、引き出しを作ること」が能力を高める良い方法です。

制作管理
ディレクターの仕事と言えば、まず第一に品質管理ですよね。よりよい広告を作り上げるためにたくさんの制作者が迷わず仕事をできるように管理監督する能力です。皆さんが一番興味があるのはこのあたりだと思いますので、少し詳しく見ていきましょう。

1 イメージの統一
印象を明確にする。仕事全体でイメージを統一させる。
2 イメージの伝達
わかりやすく制作者に伝える。制作者全員にイメージを理解させる。
3 はっきりしたジャッジ
その場その場でジャッジをする。仕事の目的とイメージに沿ったジャッジをする。

収益管理
広告業は決められた予算とスケジュール内で、最も効果的な広告を作る仕事です。ディレクターはこの範囲を守りながら最高の仕事ができるように、管理を行います。また、仕事を依頼する制作者の能力や人数を見極め、バランスの良い収益を得るよう管理します。

今回は、広告業界のディレクターの仕事を、3DCG画像制作の際にも役立つポイントで紹介してみました。ぜひ自分の仕事と比較して、業務改善に役立つ考え方を見つけてみてください!

次回は、魅力的な画像をつくる《ビジュアル》制作について紹介しますので、ご期待ください。



・本連載(第12回~第16回)でもお話ししていた「3DCGのためのカラーマネジメント」について、専門的な情報を発信することになりました。具体的な設定方法等も分かりやすく解説していきますので、ご期待ください。

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