トレンド&テクノロジー / PERCH長尾の知っ得!デザインビズ必読ポイント!
第18回:広告業界のクリエイターのクリエイティブ力の秘密<2>

更新日 2010.12.22

こんにちは、パーチ長尾です。

はじめて広告業界に入って仕事をしたとき、その制作期間の短さに驚きました。
まず、お客様から制作の依頼があり、それに対して提案をして、OKが出てからビジュアルの制作を行い、印刷やメディアへ出稿する。その全てが実に短い間隔で行われるので、いつも時間が無く苦労していました。

短期間でより良いものを作り続けるためには、作業の効率化、アイデアのストック、発想力を鍛える、といったことが非常に重要でした。今日はその中でも一番、物作りに影響を与える「アイデアのストック」についてお話ししようと思います。

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図1 「広告業界のクリエイティブ力 分解図」
代表的な6つのクリエイティブ力をブログの中で紹介。今回は「Library」


短い期間での提案書作り

広告制作は、お客様からの依頼内容を聞いてから仕事が始まります。そこからビジュアルアイデアを発想し、提案していきますが、初回の提案時間は短いもので2日、長いものでも2週間程度です。この短い期間でお客さんが喜ぶ、商品が売れるアイデアを思いついて、提案書にまとめなければいけません。

提案書といってもビジュアル制作に関する仕事では、もちろんビジュアルで提案します。 グラフィックデザインでは《デザインカンプ》、動画では《絵コンテ》になります。
制作現場でコンピューターが使われるようになってから、その品質は年々上がっています。
デザインカンプは写真/イラストなどの素材を簡易合成して、レイアウトソフトを使ってかなり細かなところまでデザインレイアウトされます。
絵コンテは初期段階では手書きですが、CM制作などでは写真や動画を素材にして、簡易的な動画を制作します。
どちらもアイデアや方向性の違うものを数パターン制作して提案します。
品質は、どちらもイメージがはっきり分かるほど良くできていいて、特にデザインカンプは静止画で作りやすいため、そのまま本番で利用しても問題ないほど高品質なものも多く見られます。笑い話ですが、カメラマンやレタッチャーの間では、「デザインカンプを上回るのが難しい、まずはそれが第1段階だ! 」なんて会話をよくしているんですよ。

アイデアを数種類、高品質な提案書を短期間で作っていくためにやっていること、普段から気をつけていることが優れたアイデアマンになるためのポイントかもしれません。

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図2 グラフィックデザインのアイデアは「デザインカンプ」と呼ばれる、本番に近い品質のサンプルを数点作り、プレゼンテーションされる。


グラフィックデザイナーの場合

意外かもしれませんが、「アイデアをゼロから考える」ということはほとんどありません。まずは、優れた広告、雑誌、Webなどから今回の仕事にピッタリな物を探し出します。たくさんストックしてある広告・雑誌などをバァーーっと見直して、付箋を貼って、大きなテーブルに並べて「このアイデア良いよね」「このコンセプトがおもしろいよね」「この表現は使えるんじゃない」「良い色合いだよね」といった検討をしています。
こうして、良いアイデア/良いコンセプト/良い表現を参考にして、自分たちのアイデアを核にして組み上げていくことで、短期間で優れた広告を作ることが可能になっているんです。
それに加えて、参考となるものがあることで、現代人の感覚/流行に沿った広告を作ることができます。

では、どんなものを参考にしているのか? このあたりが一番気になりますよね。
広告は、国内外のものを参考にしています。世界の広告を集めた雑誌などは多くの広告クリエイターが読んでいると思います。

広告関連以外の雑誌では、商品を買ってくれる消費者が好む文化を紹介している雑誌を読みます。 現代の感覚をつかむという意味では、現代的センスが感じられる雑誌、BRUTUS、Number などがよく読まれているようです。

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図3 グラフィックデザイナーがよく参考にする洋書。特にARCHIVEは読者が多く、投稿もされる。


カメラマンの場合

多くのカメラマンには得意分野があります。「私は自動車が得意」「私は化粧品が得意」といった感じで、各分野に特化したノウハウ・技術・センスを持っています。
日頃から自分が得意な分野の写真を集めるのはもちろん、分野に限らず広く写真を見るようにしています。広告写真だけでなく、アート作品もたくさん見ています。
このようにたくさんの写真を見ることで、頭の中にたくさんの表現手法、表現アイデア、アート性、現代性、をビジュアルで記憶していきます。
カメラマンは事前打ち合わせはもちろんですが、撮影現場で提案を求められたり、被写体にあわせて即時対応が求められるため、イメージを記憶しておくことで、すぐに提案する・表現することが可能になります。これは優れたカメラマンの大事な条件となります。

カメラマンの部屋にはたくさんの写真集があって、時間の空いたときにそれを開いている姿をよく見かけます。時代の古い物から新しい物まで、いろいろなジャンルの物を見ているようですが、ファッションと同様に広告や写真にも時代の流行があります。定期的に流行が入れ替わることがありますが、たとえば今は、70〜80年代のイメージが流行に近いかもしれませんね。

たくさんの引き出しを持つ!


広告業界のクリエイターのうち、2つの職種の場合を見てみましたが、どちらも「たくさんの物を見ている」というところは共通しています。「仕事の案件ごとに最適な引き出しを開けることが大事」ということを言っている方がいたんですが、まさに優れたクリエイターに求められることを指す良い言葉ですね。
ゼロから生み出す、天性の感覚、というのもあるかと思いますが、多くの場合はこれまで作られてきた広告などを参考にしながら、より良い物が作られています。
このポイントを自分の仕事に応用すれば、より良いクリエイティブ力を発揮する能力を身につけることができると思います。

でも、よく考えてみれば私たち人間の歴史はこうして作られているんですよね。私が数学を発明したわけでも、3DCGソフトを作ったわけでもなく、それらの使い方を学び自分なりの応用を加え、新しい物を作り上げているわけですから。
ポイントは、「豊富なアイデアの引き出し」ですね!

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図4 自分のアイデアを核にして、いろいろな引き出しから肉付けして、新しい物を生み出す。


次回は、この引き出しを活かすための考え方についてご紹介します。ご期待ください。

更新日 2010.12.22
著者プロフィール
長尾 健作
長尾 健作
株式会社パーチ
大手制作会社での、デジタル化の推進、ビジュアライゼーション事業の起ち上げを担当。ビジュアライゼーション事業の起ち上げでは、営業戦略立案、人材戦略立案/組織作り/人材教育、サービス開発、技術開発、設備計画の立案など事業起ち上げに必要な全て行程の責任者として参画。独立後はビジュアライゼーション事業を起ち上げる、または拡大をされる企業様のサポートを行うコンサルティングサービスを提供。また、これまで経験から問題が起りやすい点や必要となる教育内容を解決するセミナーや、ツールを開発しています。
HP:www.perch-up.jp/

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