トレンド&テクノロジー / PERCH長尾の知っ得!デザインビズ必読ポイント!
第17回:広告業界のクリエイターのクリエイティブ力の秘密

更新日 2010.11.04

こんにちは、パーチ長尾です。

僕が広告業界に入ったのは、15年前です。グラフィックデザイン事務所に入ってすぐにコカ・コーラの仕事をさせてもらって、難しいことばかりでしたが、すごく楽しんでました。その後もたくさんの仕事に携わる機会を与えてもらい、クリエイティブのこと、広告のこと、業界のこと、制作技術のことなど、色々なことを学んできました。

仕事を始めたころは分からないことだらけで、先輩にあれこれ聞いたのを覚えています。

私「デザインの勉強法を教えてください」「色について知りたいんですが、良い本とかありますか?」
先輩「えー、私も知らない」「うーん、無いんじゃない」

今にして思えば、そんな簡単に学べるものではないんだから馬鹿な質問をしたもんだ、と思いますが、当時は「困ったなあ、自分で探すしかないのか」と思いました。
でもこのことがきっかけで、ずーっと「クリエイティブの学習法」を追求することになりました。

どうしたら良い仕事ができるのか? 良い仕事をするクリエイターの特徴はなにか?
より短期間で学ぶ方法は? 本質を理解するには?
といったことを考えては自分で試す、そんなことを15年繰り返しているんですが、いくつかは良い方法を理論化することができたので、スタッフ教育、セミナー、学校教育、などで活用しています。
スタッフ教育についてですが、社内ということもあって遠慮無く「詰め込む」ので、僕と一緒に働く人は相当苦労するみたいで、よく苦情が来ます。

今回から少しの間、このブログで「広告業界のクリエイティブ力強化方法」みたいなことをお話したいなあと思っています。広告業界では「クリエイティブ力が重要」と言われてますから、その点を内側から暴いていく、というのが狙いです。

クリエイティブ力アップの参考にしてもらえると嬉しいですね。

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図1 「広告業界のクリエイティブ力 分解図」
代表的な6つのクリエイティブ力をブログの中で紹介。今回は「Communication」


極度の専門性がクリエイティブ力を高める

広告業界に入った当初、私が一番はじめに驚いたのは、「細かな分業制」でした。
私たちがよく目にする広告、たとえば電車の中刷り広告などはたくさんの人が関わり合って制作されています。

非常にたくさんの方々が、それぞれの分野を担当する、「プロフェッショナル集団」といった印象ですよね。
これが1つ目のクリエイティブ力強化のポイントです。つまり、それぞれの専門分野に特化することで自分の領域を深く追求することができます。たとえばカメラマンの例で見ると、売ろうとしている商品が魅力的に見える「アングル」や、立体感や輝きを付加する「ライティング」を追求しています。そしておおかたのカメラマンがオールラウンダーではなく、車に特化している人、化粧品に特化している人、人物に特化している人、というように被写体も分かれています。普段から自分が得意としている分野やその周辺について、他のカメラマンの仕事やアート作品を見て研究にいそしんでいます。

このような特化は重要ですが、気をつけないとマイナスになる場合もあります。最近は特にそういったことが増えてきています。

よく起こる例で説明しますね。これだけ分業化されているととりまとめる人は大変です、そのため各工程間でのミスコミュニケーションがよく起こり、結果的には良い広告にならないことがあります。原因はそれぞれが特化しすぎて、全体の目的や各工程の業務が理解できなくなり、各プロフェッショナルが能力を生かし切れないためです。

それに最近は「複合的なメディア展開」が求められています。テレビ、雑誌、Web、iPhone等々、新しい形で総合的な広告コミュニケーションが必要になっています。

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図2 「中刷り広告の制作に関わるプロフェッショナルたち」
広告する製品(またはサービス)に基づいて、たくさんのプロフェッショナルが順を追って作業し、電車に掲示される。


ちょっと話がふくらんでしまったので、優秀な人材の特徴を見ながらまとめてみます。

業界で活躍している人の特徴のひとつは、「コミュニケーション力の高さ」です。
お客様の狙いを理解して、最適な提案、予想を上回る仕上がりを納品する、そんな特徴を持った人は高い評価を得ています。

上司部下の関係で見ても同じでしょう、指示を理解できずに間違った物を提出してくる部下は首絞めたくなりますよね(もちろんこれはパワハラです、注意する程度にしておきましょう(笑))。

そんな社会人としても死活問題なコミュニケーション力ですが、どうやって身につけるのか?

その方法のひとつは、全体工程の理解です。
とは言っても全てを理解するのは大変ですから、自分の前後の工程を理解することから始めるといいですよ。私はグラフィックデザイナーをしていたときに、前工程のアートディレクターの仕事と、後工程の製版印刷工程を学ぶことから始めたんですが、ある程度わかってくると仕事がスムーズになって、自分の仕事の質も高くなったのに驚きました。

専門特化と全体理解」 なんだか逆説的ですが、2つのバランスをとりながら強化していく、それがクリエイティブ力強化には不可欠なようです。

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図3 「専門特化しながら全体の流れを理解するクリエイター」
自分の仕事の質と能力を高めるために専門特化と全体理解をバランスよく進める優れたクリエイター


そういえば、サムスンさんとお仕事をしたときにおもしろい例を見ることができました。韓国に出張したときに、サムスンさんが取引されている複数の韓国の写真プロダクションさんを見学させてもらい、仕事の進め方を見せていただきました。

日本では、大手家電メーカーの商品撮影となるとアートディレクターがイメージを考えたり、撮影スタジオで指示を出したりします。しかし、韓国では写真スタジオの方がイメージを考え、企画を出し、プレゼンを行うんです。まさにアートディレクターの仕事をカメラマンが行っているようなものです。日本の分業化(各工程の特化)だけが全てではない、いろんな形があっていいんだ、そんな思いを持つことができた経験でした。

ちょっと長くなってしまったが、いかがでしたか?
普段の仕事を違った側面から見て、本質を探るのも楽しいですよね。

更新日 2010.11.04
著者プロフィール
長尾 健作
長尾 健作
株式会社パーチ
大手制作会社での、デジタル化の推進、ビジュアライゼーション事業の起ち上げを担当。ビジュアライゼーション事業の起ち上げでは、営業戦略立案、人材戦略立案/組織作り/人材教育、サービス開発、技術開発、設備計画の立案など事業起ち上げに必要な全て行程の責任者として参画。独立後はビジュアライゼーション事業を起ち上げる、または拡大をされる企業様のサポートを行うコンサルティングサービスを提供。また、これまで経験から問題が起りやすい点や必要となる教育内容を解決するセミナーや、ツールを開発しています。
HP:www.perch-up.jp/

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