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第16回:カラーマネジメントに関していただいた質問にお答えします

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こんにちは、パーチ長尾です。

前回は、「色に厳しいプロは、どのような基準でモニターを選んでいるのか」と題して、モニターの選び方についてお話ししましたが、いかがでしたか。
前回ご紹介した【プロのモニター評価方法】を使って、自分が使っているモニターを評価して、びっくりした方もいらしたのではないかと思います。「自分のモニターはひどい状態でした」とわざわざ感想を送ってくれた方もいました、ありがとうございます。まずは現状を確認することが改善の第一歩です! 私たちもカラマネ導入を支援していきますので、がんばってください!

このコラムでも数回にわたり、「カラーマネジメント」についてお話ししてきましたし、私たちのサイトやセミナー、導入サポートサービスで【カラーマネジメントの導入】を支援してきました。そして、この活動を通じてたくさんの方からカラーマネジメントの導入について質問をいただきました。この質問ですが、皆さん共通している点が多くて、同じような疑問や躓きを感じていることに気がつきました。

そこで今回は、このコラムでのカラーマネジメントのまとめとして、皆さんからの「共通した質問」に答える形で、カラーマネジメント導入に必要なことをお話ししていこうと思います。

「みんな同じなんだぁ」と安心いただくと同時に、誤解や躓きのポイントを知って、一歩先に進んでみてください。

よくいただく質問1「3DCGソフトの設定をどのようにすれば、カラーマネジメントできますか?」

Autodesk 3ds Maxと、Maya はそれぞれ違うカラーマネジメント機能を搭載しているので、違う考え方で設定を考えることになります。もちろんそれ以外のソフトでもカラーマネジメントの対応状況によって変わってきます。このサイトのコラム仲間の林田さんが書かれている「リニアワークフロー」は3ds Maxで有効な方法で、ガンマを管理する方法です。一方で Maya は「カラープロファイル」を管理する方法になります。

ガンマとカラープロファイル、その違いが気になりますよね。実は、カラープロファイルにはガンマ設定が含まれていて、より正確な色管理にはカラープロファイルの方が適しています。しかし、ガンマ機能しかない3ds Maxが劣っていると考えるのは早とちりです。ワークフロー全体の設定をきちんと行えば、ガンマしか管理できない 3ds Max もカラープロファイルを使った場合と全く同じ精度で色管理ができます! 

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図版1
上:3ds Max 2011 のガンマ設定
下:Maya 2011 のカラープロファイル設定

(詳しくはこちらで解説しています http://www.perch-up.jp/design-viz/color_dictionary.html )

つまり、「ソフトによって設定方法が変わる」というのが1つめの答えになります。
しかし、どのガンマ値にするのがいいのか? どのカラープロファイルを使うのがいいのか? については、皆さんの会社で決めたワークフローに準じてください。

例えば、ある会社さんでは「ガンマ1.8」を採用しています。これは前後のワークフローがすでに1.8で構築されていたため、それに合わせたものです。ガンマは2.2が基本ですが、全体のワークフローに合わせれば1.8でも問題ありません。

2つめの答えは、「自社のワークフローに合わせる」ということになります。スキャンや撮影、モニター、プリンター、他のソフトウェア等の設定をどうするかを、まずは決める!
これが「ワークフローを決める」ということなんです。そして、それに合わせて3DCGソフトを設定しましょう。

よくいただく質問2「どのモニターにすればいいですか? 」

前回、【優れたモニターの選び方】についてお話ししたとおり、モニターの色が狂っているということは「普通」の状態で、特別な管理を行わない限り色は合いません。
しかし、これは大きな問題です。先の質問であったように3DCGソフトで正しい設定を行ったとしても、モニターの色が狂っていれば、結局サングラスをかけて色を見ているような状態になってしまい、全く意味をなさないからです。

では、どんなモニターがいいのかの答えですが、「ハードウェアキャリブレーションモニター」と「測色機」を買って、定期的に管理をするということになります。

聞き慣れない名前が出てきました。「ハードウェアキャリブレーションモニター」というのは、測色機を使ってモニターの色のズレを図り、それを補正する回路がモニター本体に内蔵されている、色管理に優れたモニターのことを指します。その優れた色管理能力から「カラーマネジメントモニター」とも呼ばれます。

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図版2
代表的なハードウェアキャリブレーション
モニター:EIZO ColorEdge

(詳しくはこちらで解説されています http://www.eizo.co.jp/products/ce/management/monitor/index.html

モニターは2つの要素で色が狂ってしまいます。
1 : モニターそのものの特性が悪い(出荷の段階から狂っている)
2 : 経年変化(日が経つごとに発色特性が変わる、液晶は輝度が落ち、RGBそれぞれの要素が個別に劣化する)

そこで、まずはモニターの特性そのものが優れているものを購入すること。そして、定期的に測色機で測定して、ズレを補正すること。この2つが必要になります。

ハードウェアキャリブレーションモニターとして販売されているものは、モニターそのものの特性が高いので、1はクリアですし、経年変化の補正も専用回路で行うので非常に正確です。

また、ハードウェアキャリブレーションモニターでなくても、測色機を使って補正を行うことはできます。その場合は、補正は専用回路ではなく、OSとグラフィックボード上で行われます。そのため、補正能力が低く、狂いが完全に取れず、もともとのモニター特性が悪い場合は、補正しきれないことになります。
まずは、自分のモニターから始めてみたいという方は、測色機を購入して試してみてください。

よくいただく質問3「導入を検討していますが、何から手をつけたらいいでしょうか? 」

私も、カラーマネジメントは統合的なシステムなので、何から手をつけたらいいのか分かりづらい仕組みだと思います。

ワークフロー作りからはじめると、結果的には早く仕組みができあがります。
逆に、「まずは取り組みやすいモニターや3DCGソフトの設定から始める」と、後で決めたワークフローの設定と違ってしまい、全てやり直しということが多いです。

そのワークフロー作りですが、幅広いカラーマネジメントの知識が必要です。

・色、人間の目
・デジタルデータによるカラーの扱い
・モニター
・ソフトウェア
・OS, グラフィックボードの動作
・カラープロファイルによる管理方法
・測色、色の観測
を覚えてください。


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図版3
カラーマネジメントを導入するためにはたくさんの知識が必要となる


それぞれに専門図書等があるので、それらから学んだり、総合的に教えている書籍やセミナーを活用してください。しかし、これまで広告・印刷業界で導入されてきたカラーマネジメントの知識に加えて、3DCG特有の色管理についても理解する必要があります。

私たちの場合は、広告・印刷業界でのカラーマネジメント導入に関わっていた知識をベースに、3DCG特有の管理方法を考案、テストを繰り返して1年ほど掛けて仕組みを作り上げました。

これらをセミナーで公開しているので、まずはそこで基礎知識を得ると導入がスムーズになると思います。定期的に開催していますが、次回は10月を予定していますので、興味のある方は参加してみてください。
http://www.perch-up.jp/design-viz/seminar_colorMana2010.html

よくいただく質問4「カラーマネージメントに興味はあるのですが、よく分からない部分も多く、何を学んだらいいでしょうか? 」

私も、カラーマネジメントは統合的なシステムなので、よく分からない部分が多いというのはもっともなことだと思います。

特に分かりづらいのは、「設定をしてもそれが正しいのか分からない」という部分だと思います。例えばモニターだけ調整してみても、ソフトウェアの調整が正しくないとうまく動作しないので、確信が持てないんです。これが統合的なシステムのやっかいなところで全て正しい設定を行って、正しいテストを行わないと、正しいかどうか判断できないというわけです。

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図版4
カラーマネジメントセミナー【実践編】の風景。実機を使った設定方法を体感した受講者の方々。



そこでお勧めなのが、「百聞は一見にしかず」です。

先日開催したカラーマネジメントセミナーでも、第一部で基礎知識を座学で説明した後に、第二部で実機を使った設定を見てもらいました。そうしたところ、受講者の方から、「うーん、本当に色が合っている」という感嘆の声が上がってきました。やはり、見て実感することの効果は大きいと思います。

私もカラーマネジメントを学び始めたときは同じように、設定が正しいものになるたびに驚いていたのを思い出しました。周囲でカラーマネジメントを導入している方に見せてもらったり、このようなセミナーに参加してみてください。一度体感すると導入の基準が頭の中に刻み込まれます。


これまで5回にわたって、カラーマネジメントについてお話ししてきましたが、いかがでしたか。仕事の品質アップと効率アップに欠かせないカラーマネジメントは、3DCGの世界でもアメリカのプロダクションを皮切りに導入が始まりました。

私たちも導入して数年が経ちますが、この仕組みは導入してしまうと、まるで「空気のような存在」になり、制作の基盤中の基盤として欠かせないものになります。まるで空気のようにごく自然に仕事を支えてくれる、無くてはならない、そんな品質と効率をアップする仕組みです。

パーチでは引き続き、「セミナー」と「導入サポート」で、カラーマネジメント導入を支援していきます。セミナー開催日やサービスの詳細はホームページをご覧ください。
http://www.perch-up.jp/design-viz/colorManagement.html

次回は広告業界のクリエイティビティについて、3DCG業界でも役立つ部分をピックアップしてお話ししたいと思いますので、ご期待ください。

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