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第14回:3DCG制作の業務効率を上げる!カラーマネジメント

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こんにちは、パーチ長尾です。

先日、「3DCGのためのカラーマネジメントセミナー」を開催しました。
「カラーマネジメント」は業務効率を上げる色管理システムですが、最近ではCG業界でも導入の必要性を感じる方が増えていて、その期待が高まっています。

今回のセミナーには、デザインビズ(建築系CG制作やプロダクトCG制作)をされている方、そしてゲームや映画などの3DCG制作をされている方などにご参加いただきました。 導入を始めている方もこれから導入したいという方もいらっしゃいましたが、皆さん随所で「なるほど!」と頷かれていました。「本で読んでも分からなかったところがバチッと理解できました」という感想をいただきましたが、今までカラーマネジメントをしていてもうまくいかなかった「根本的な理由」を理解できたようです。

「カラーマネジメントは3DCGソフトのカラー管理設定だけ合わせればいい」と思っている方が多いようですが、実はそれは必要な作業のうちの4分の1くらいのことなんです。実際には書籍の通りにはいきませんので、 セミナーでは実機を使ってお話しします。参加された皆さんは、目の前のモニターを見ながら「できるんだ」という実感を持たれたようです。

複雑な仕組みですが導入すれば大きなメリットがありますので、私たちも強くサポートしていきたいと思っています。今後もセミナーは定期的にしていきたいと思っています。
このセミナーの詳細とリポートは、私たちのHPにアップしてありますので、そこからもカラーマネジメントの導入効果を確認してみてください。
>>詳細はこちら

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セミナー風景、実機を使ってカラーマネジメントしているところ


カラーマネジメントが注目される理由

カラーマネジメントは3DCG業界で注目され始めましたが、その理由は【グループワークの効率化】にあるんだと思います。次の例を見るとわかりやすいかもしれません。

あるディレクター(制作指揮者)がCG制作の現場に来て、モニターを見ながら確認して指示を出しました。翌日編集の現場に来てモニターを見たら色が違うので、困惑。仕方ないので再度編集スタッフに指示を出し直す、もしくはCG制作に戻って修正する。

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色による修正で前工程に戻ることが無くなり、業務効率が向上する

こんなぴったりなシーンはなかったとしても、制作工程が変わった時、別の制作者に引き継いだ時、外部制作会社へ引き継いだ時に【色が変わる】といったことが原因で修正作業が発生する例はよく起こっていますよね。試しにこの修正時間を計算して、その時間に人件費をかけてみてください。すごい損失が出ているのが分かって、ぞっとすると思います。だってこの時間があれば別の仕事ができるし、品質を高めるのにも使えるんですから、本当に恐ろしいことですよね。

カラーマネジメントができれば、各制作者が見る色や、各工程間の色を統一することができるので、この損失を無くすことができます。

その結果は、
1:業務量が増えるので、利益率が上がる
2:色が合わないという不安が無くなって、ストレスが減る
3:安心して制作に集中できるので、品質が上がる(本来の仕事に集中できる)

他にもカラーマネジメントのメリットはあります。
詳しくは、前回前々回のコラムや私たちのサイトにある「カラマネのメリット」ページをご覧ください。導入後のメリットが理解できると思います。

そういえば前回紹介した【印刷/写真業界】では、あらゆる国でカラーマネジメントを導入しているようです。このことからもカラーマネジメントのメリットが大きいことがわかりますよね。

3DCG業界ではこれから導入が始まりますが、先の印刷/写真業界の導入初期から後期に掛けて起こった現象は参考になります。導入当初は当然のことながら、この仕組みを導入した企業も少ないので、「うちは色がしっかり管理できるので品質も良いし、制作時間も早いですよ」という売り込みが成功しました。導入中期は導入企業も増えたことからこのような差別化はできなくなりました。そして導入後期は、「カラーマネジメントができない会社には仕事は出せない」ということになりました。

おそらく3DCG業界でも同じことが起こると思います。それほどに、「あって当たり前」な機能ですし、なにより色が合っている環境というのは快適です。


3DCGにカラーマネジメントを導入する時に起こりがちな誤解

3DCG制作でカラーマネジメントの必要性が高まっているのは、Maya ではプロファイルによる管理機能が、3ds Max ではガンマによる管理機能が搭載されていることや、先進的なプロダクションでの導入が盛んなことから目立つようになってきました。
そんなこともあってでしょうか、私たちはカラーマネジメントについて聞かれることも多いんですが、導入の失敗につながる誤解も多いのに気づきました。ここではそんな誤解について触れて、カラーマネジメントの導入に失敗しないように注意してもらえたらと思います。

「ガンマ設定はいくつにしたらうまくいきますか?」「プロファイル設定はなにが正しいんでしょうか?」といったことをよく聞かれますが、この質問に対する正しい答えは、「使用している入出力機器や、ワークフローで決めた設定に合わせてください」となります。前々回のコラムにも書きましたが、カラーマネジメントは3DCGソフトの設定を変えただけではダメで、制作の流れ全部を統一して初めて機能する【システム】なんです。
3DCGソフトの設定を正しく行っても、モニターの色管理ができていないと間違った色を見ることになります。これは、色がついたサングラスをして色を判断しているのに似ていますが、これでは正しい色の判断はできないばかりか、「正しい設定をしている」と思い込んでいるためにかえってミスを誘発しやすくなります(実際にそういうことは多くあります)。

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全ての設備を調整し、ワークフローを全て統一すると、カラーマネジメントは機能する

「3DCGソフトの設定をするだけでカラーマネジメントできる」という誤解は取り払い、正しい知識を得ることと、適切な機材の導入と管理を行うことで、カラーマネジメントができるようになります。

今回の2011へのバージョンアップで、Mayaにプロファイルを使用したカラーマネジメント機能が搭載されました。そして、3ds Max は以前からガンマによるカラーマネジメント機能がありました。この違いも気になりますし、カラーマネジメントを理解する上で重要な知識の1つでもあります。

【ガンマとプロファイルの違い】については、私たちのサイトにある「カラーマネジメントの用語説明」に解説があるので、正しい知識を得ることができると思います。

では、前回に引き続き、すでにカラーマネジメントを導入している業界ごとのメリットを紹介していこうと思います。

4. 【3DCGを使った製品写真業界】のメリット

CADデータから3DCGソフトにデータを取り込み、広告販促用の製品写真やムービーを制作するこの業界では、【正確な色表現】が特に重要視されています。広告を見た消費者の方が商品を購入したときに色が違ったりすると、クレームに繋がる危険性があるからです。

【理由1】実際に販売される製品の色と一致させる必要がある
【理由2】制作時の色と、画像が利用される印刷/Web等の色の一致が必要とされる

そのため、この業界で仕事をするにはカラーマネジメントの導入は必須となります。この業界では従来も、写真撮影時に色を一致させるように仕組みを作ったり、撮影後のデータをPhotoshopなどを使ってさらに色修正して現物に近づけることを行っていました。
では、すでに導入しているところではどのようなメリットを得ているかというと、

【メリット1】素材に忠実な色のマテリアルが作れる
【メリット2】マテリアルをデータベースとして利用できる
【メリット3】画像処理での色が一致しているので、大きな色修正はいらない
【メリット4】カタログ等の印刷でも、大きな色修正はいらない

忠実な色再現が必要なために導入されたカラーマネジメントですが、結果的には業務効率を高め、利益率の向上とコスト削減に繋がっているのが大きな特徴です。

5. 【建築CG業界】のメリット

住宅、マンション、公共施設などの建築物をCGで制作する際には、建築施工時に利用される素材(床材、壁面材など)を撮影やスキャンで取り込んでマテリアルを制作していきます。また最近では、時間による屋外光の変化や、照明の色温度を正確に再現したいといったニーズも出てきています。

従来は、素材を取り込んだ後に色が狂っているモニターで確認しながら色修正したり、レンダリング画像を感覚で色修正するしかありませんでした。しかし、カラーマネジメントを導入することで、【正確な色再現】ができるようになりました。

【メリット1】素材に忠実な色のマテリアルが作れる
【メリット2】別の担当者が作った素材は色修正する必要が無く、誰でも流用することができる
【メリット3】外光や照明の色がレンダリングで正確に再現できるので、色が正確な建築シミュレーションができて、付加価値がつく
【メリット4】プリントや印刷でも、大きな色修正はいらない

業務の効率化が実現するだけでなく、色が正確だということが競合他社との差別化に繋がっているのが特徴です。


カラーマネジメントの導入は競合他社との差別化に繋がる

すでに広くカラーマネジメントの導入が行われたのが【印刷/写真業界】だと前回お話ししましたが、この業界の導入段階のことを思い出してみると、3DCG業界での導入時期のヒントが得られるかもしれません。

導入当初は、「私たちはカラーマネジメントできます」というのが売りになって、競合他社との差別化に一役買いました。その理由は、カラーマネジメントは制作の業務効率を高めますが、それにより恩恵を受けるのは自分たちだけでなく、仕事を依頼してくれたお客様にも及びます。まず、仕上がりが早くなりますし、効率が上がった分だけ料金を下げることができます。それにもしお客様からカラーマネジメントされたデータが支給された場合は、できない会社には仕事の発注そのものが無くなってしまいます。

いずれは空気のような存在に

カラーマネジメントは業務効率の改善のほか、競合他社との差別化(営業行為として使えます)にも効果を発揮します。そして使い始めると、「無くてはならない存在」になります。それはもう、「空気のような存在」で、ごく自然に仕事を支えてくれる重要なシステムとなります。

私ももちろん、カラーマネジメントが整った環境で作業しています。ハード/ソフトの調整、ワークフローが整った状態で、統一されたカラーマネジメントシステムを組んでいます。しかし時々、外部のカラーマネジメントが整っていない環境に接すると、色が合っていないからどんな色を作っているのかわからなくなり、モニターの質が悪いからトーンジャンプが起こって細かな調整ができない、など困ることがあります。業務効率が極端に落ちるだけでなく、精神的に追い詰められる感じになります。自分の環境に帰ってきたときの、「ほっ」とした感じはカラーマネジメントの重要性を改めて感じさせてくれます。 ぜひ、カラーマネジメントを導入して、【仕事を楽にしてくれる空気】を味わってください。

とはいえ、カラーマネジメントの導入は豊富な知識と経験が必要ですので、私たちも導入のためのサポート活動を行っていこうと思います。
導入の相談や、セミナー開催日などは私たちのサイトをご覧いただけたらと思います。
>>PERCHカラーマネジメントのページ

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