トレンド&テクノロジー / カラーマガジン
第1回:The ASC Color Decision List

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みなさんはASC CDLという言葉を聞いたことがあるだろうか。ASC CDLとは、1つのワークフローにおいて、ベーシックなグレーディング情報についてコミュニケーションする方法を提供するものである。記念すべき「The Color Magazine」の第一弾は、この新しい、興味深いテクノロジーについて紹介する。


CDL、またはカラーディシジョンリストは、ASC (American Society of Cinematographers、米国撮影監督協会) 技術委員会の分科委員会である デジタルインターメディエイト・サブコミッティーによって作成・推奨されており、現在ではAutodesk Lustreを始め、多くのカラーコレクションツールが対応している。ASC CDLは基本的なカラーコレクションの演算子によるリフト、ゲイン、ガンマの計算方法を決定し、一般的なファイルフォーマット(CMX EDL, FlEx, ALE, XML)で演算子がパラメータを共有する方法を提供する。

これによる利点は、シンプルなプライマリのみのスタイル・グレードによるルックの場合、ワークフローを通して、異なるアプリケーション上でも一貫したリフト・ゲイン・ガンマのレンダリングが可能になることだ。例えば、いくつかのポストプロダクション企業(テクニカラー、レーザーパシフィック等)が現在提供しているデジタルデイリーのサービスでは、デイリーのグレードにおけるコミュニケーションでCDLを使用している。シネマトグラファーはビデオによるデイリーの代わりに、プリントフィルムのエミュレーショントランスフォームにCDLを適用するプレイバックシステムを使用して、オンセット(撮影現場)でログイメージをレビューすることができる。このCDLは後にワークフローの中で、Lustre等によるデジタルインターメディエイトでのグレードの出発点として使用されることがある。さらに、CDLのパラメータはシネマトグラファーとデイリーのカラーリストの間のコミュニケーションでも使用される。以前でいうプリンターライトのようなものである。

またGamma & Density社製3cP等のオンセットのルック開発ツールは、CDLのパラメーターセットのように、イメージプロセッシングのインストラクションをルックに付随させてエクスポートする機能を持っている。さらにオンセットのモニタリングデバイスには、CDLに対応したものもある(Cinetalモニター等)。この機能はデジタルシネマカメラで撮影する場合のような、オンセットでリアルタイムにルックを適用したいケースで特に有用である。CDLはその後イメージファイル(またはテープ)と一緒に他のロケーションに送られ、意図したルックを再現するためのコミュニケーションにおいて使用される。

CDLは、次の3つの機能をパラメータ化したものである:Slope (ゲインのようなもの)、Offset (シフト。プリンターライトのようなもの)およびPower (パワー機能。ガンマのようなもの)。これらはそれぞれ1つのパラメータを、RGBのそれぞれのチャネルに割り当てるため、結果として1つのカラーディシジョンにおいて9つの数値を有することになる。チャネル毎に保有する3つのパラメータは、1D LUTに類似した形で定義される。しかしながら、Slope/Offset/Powerによる表示は、パラメータのエンコーディングを目的としており、アプリケーションはこれらの数値を、それぞれのアプリケーションが持つUIに適合した形に変換することができる(例えば、Slope/Offset/Powerをそれぞれリフト/ゲイン/ガンマに変換)。CDLはキー、マスクおよび他のセカンダリ・カラーコレクションが受け持つ領域のものはサポートしていないが、コミッティーは近いうちにサチュレーションコントロールをスペックに追加する予定だ。

ASC CDLは、あくまでカラーコレクションにおけるコミュニケーションのためのものであり、カラーマネージメントを目的にしていないことを認識することは非常に重要である。そこを踏まえないで利用すると、かえって混乱する原因となってしまう恐れがある。例えば、CDLがログイメージとともに使用されるために作成され、後にそのイメージのビデオバージョンに適用させられた場合、期待したルックにはならないのである。単純に、CDLがもしブロードキャストモニター向けに作成された3D LUTとともに使用された場合、そして同じCDLと3D LUTがより広い色再現領域(gamut、ガモット)を持ったディスプレイ(P3モードのデジタルシネマプロジェクタ等)に表示される場合、ルックは一致しない。カラーマネージメントは別途行わなければならないことを理解すれば、こういった間違いも明確に認識できるようになる。


もうひとつ認識しておきたいのは、CDLは3D LUTをビューしているのと同じように、ディスプレイに表示するイメージに適用するものであり、「ベイクイン」するためのものではないことである。オリジナルのピクセルを維持することで、後のデジタルインターメディエイト・グレーディングプロセスにおいてフレキシビリティを持つことができる。例えばLustreは、CDLのインとアウトを簡単に切り替えることができるので、シネマトグラファーによる最初のルックをフルDIグレードと比較することもできる。もちろんワークフローの冒頭部分で、ピクセルにCDLがベイクされてしまったらこれは不可能である。

ASC技術委員会は、共通のカラーコレクションの標準を様々な企業にサポートさせることに成功したと思う。確かに基本的なコントロールしか提供しておらず、またカラーマネージメントに対する配慮が別途必要ではあるが、ASC CDLはシネマトグラファーの意図したルックを、ワークフロー全体を通してコミュニケーションするためのすばらしい手段となっているのである。

本稿は「The Color Magazine」として2008年 4月号にメールマガジンとして配信されたものです。

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