トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第6回:これからの建築ビジュアライゼーション

更新日 2009.11.05

建築ビジュアライゼーションを生業としている方に質問ですが、1年前と比べて仕事に変化が出てきていませんか。

どの様な答えが頭に巡りましたか?「仕事が少なくなった」「単価が安くなった」等が回答のトップを占めるのではないかと思われますが、もう少し子細に考えてみて下さい。

・仕事が減少していると感じるクライアントの業種は?
(ゼネンコン or 組織事務所 or 小規模事務所 or デベロッパー or 不動産...)
・どんなプロジェクトが減少しているか?(プロポーザル or コンペ or 広告...)
・どんな建物種別の仕事が減っているか?(事務所ビル or マンション or 住宅...)
・どの様な仕事の単価が下がってきているか?(上記の例全て)
・何故そのような状況に陥っているのか?

この辺を分析していくと建築ビジュアライゼーションの現状が垣間見え、それによってこれからどう進んで,どう変化していくのかが見えてくると思います。今回は最近の建設業界の動向を踏まえた上で私が感じているクライアントの業態変化とそれに伴うニーズの変化、更にはこれらの変化によってこれまでと変わっていく建築ビジュアライゼーションについてお話ししたいと思います。それではまず建築ビジュアライゼーション業務が活況を呈すか否かを占う建設業の動向をお話ししましょう。


建設業の今

建築ビジュアライゼーションの景気が良いかどうかは建設業の景気が良いかどうかに直結しています。建設業あっての建築ビジュアライゼーションですから至極当たり前ですが、皆さんは建設業界の現状を知っていますか?またはこれまでに建設業界の動向をネットや活字で調査した事はありますか?建築ビジュアライゼーションをビジネスとしてきちんと捕らえている経営者の方であれば情報収集は当たり前の事ですが、案外出来ていないのではないでしょうか。これまでこの手の情報収集を怠っていたのであれば、今すぐにでもPCに向かって情報収集を試みて下さい。

そこで更に質問!小一時間調べてみて何か分かりましたか?建設業が不況である事は何となく分かったかと思いますが、それが建築ビジュアライゼーションの景気とどう結びつくのか?はたまた短絡的に「建設業が不況」≒「建築ビジュアライゼーションも不況」という回答に結びついてしまうのか良く分からなかったのではないでしょうか。

建設業が何となく不景気だという事は分かっても自分の仕事にどう直結してくるのかが掴みにくいと感じられた方が多かったのではないかと思います。正直、普通に入手できる情報から建築ビジュアライゼーションの動向を探るのは非常に難しいです。「良く分からない!」という答えが恐らく正しいと思います。

その理由は多岐に渡ります。まず建設業自体が政治や他の産業動向に大きく影響されるからで、公共投資は駄目でも民間事業はまあまあとか、マンション不動産系はだめでも特定業種の工場は景気が良いなど情報の切り口によっても見え方は様々に変わってくるため、建設業自体を眺めても実態は見えて来ません。見える物はせいぜい一般投資家が株式投資の際に入手出来る内容程度です。更にそれがビジュアライゼーションの動向ともなると内部事情に精通していないと不可能です。

私自身はどうかというと大体掴めているつもりです。もともと大手ゼネコン設計部に所属していたため建設会社、設計事務所、大学、更には製造業と情報のリソースが多く、また建築ビジュアライゼーション側から見たそれらの情報の料理の仕方も長年の経験でわかりますので大体の事は掴めます。このコラムを読んで下さっている方に、同じようになれというのは無茶な話ですが、普段のクライアントは建設業関係者というのが大多数でしょうから、業界動向を掴もうという意識で打合せの中の雑談として情報収集を心がける事で随分見方が変わりってくると思いますし見える物も違ってくるはずです。

本コラムで私が掴んでいる情報を全てお話しする事は出来ませんが、一つだけ言える事は「底は打ったな」という事です。言い換えれば「ようやく明るい話がチラホラ出だした」といえます。ただし長期的にこれから建築ビジュアライゼーション業務が上向きになるという事ではありません。流石にそこまでの動向は掴めません。しかし厚い雲から薄曇りになってきた事は確かのようです。しかし気を付けなければならないのは、建築ビジュアライゼーションの発注者側から見たフローもここ最近変わってきている事です。フローが変わってきているため、これまでのように景気の明るい話=CG制作量のUPという簡単な図式にならない事に注意をしなければなりません。

6_archi-viz_01.jpg


クライアント側の変化

パースを例に話をしますが、最近仕事量が減ってきていると感じている方が大半ではないでしょうか。その原因はクライアント側のパース制作ニーズが落ちてきているからでしょうか。確かに会社によっては不況による制作量の落ち込みは少なからずあるとは思いますが、私の知っている範囲では増えこそはすれ減ってはいない、又は制作量はあまり変わらないという話を良く聞きます。

一方でインハウスという言葉を最近よく耳にします。平たく言えば内制化の事ですが、建築ビジュアライゼーション業務もインハウス化が盛んになってきています。これでお分かりかと思いますが、制作量が減っているのではなく、パースのインハウス化=パースの外注量が減少しているというのが実態です。私が知る範囲の大手と呼ばれる会社ほどこの傾向が顕著で、これはこの先建設業界の景気が好転した時に必ずしもパースの外注量が増えるかどうかの判断が難しい事を意味します。

こういうと正社員として組織に属さないと今後食べていけなくなるのかと心配になりますが、それほど単純で悲観的状況でもありません。よく考えてみればわかる事ですが、これまでアウトソースに頼っていた物を急激にインハウスでこなそうとし、しかも人員増無しに行うには無理があるのは明らかです。しかもアウトソースしていた物の多くは品質を求められる物が多かったり量を求められる物だったりと、インハウスを育てる制作内容の物を外部に出していたため内部が育ちにくい状況でした。

結果としてインハウスの制作能力やキャパは今の要求に応えられるだけ成長する事が出来ていないと言えます。もちろん全ての会社に言える事ではありませんが、会社の外から見た時に案外見えていない非常に重要な問題点です。この様な状況下でクライアントサイドではどのような制作フローが取られているのか。ここにこれからの建築ビジュアライゼーションの方向性が見えてきます。

6_archi-viz_02.jpg


インハウスの問題点を業務の強みに

インハウスの問題点からアウトソースにこぼれそうな業務を強くする。これが手っ取り早い生き残り手段です。先の例を踏まえて幾つか例をあげてみます。

・インハウスでは制作できない品質のCGを制作できるスキル。
・インハウスでは制作不可能な量を制作できるキャパシティやワークフローを持つ。
・インハウスでは対応できない短納期の制作に対応できるスキルやワークフローを持つ。

話の流れから想像がつく例だったとは思いますが但し書きがあります。品質を謳っていますが、これは単純にフォトリアルを指すものではありません。現在でも私の所にもフォトリアル系の仕事の相談が舞い込みますが、恐ろしいほど単価が下がっています。逆に私が発注者ならこれくらいの値段であればフォトリアルも悪くないな。と思わせるほどです。

このように仕事はあるかもしれませんが、受注しても経営の厳しさは変わりません。逆にシステマチックな設定手法でフォトリアル品質を量産できるようにして単価に見合う作業量に出来れば強みになる可能性もあります。しかしこの先永続的にやっていけるかと問われれば判断が難しいとうのが事実です。私の経験からすればここでいう品質とはリアル云々を抜きにした表現力です。施主の趣味趣向に合わせたCGが欲しい、新しく建てる病院なので明るいイメージにして欲しいなど、これまで私のコラムを読んで下さっている方ならすぐにわかる内容のものです。しかもフォトリアル系ほど値崩れを起こしていません。また永続的な観点からも表現力は未来永劫に重要なので現在の業務に幅を持たせるためにもトライして損は無いと思います。

量や短納期の問題はこれまで以上に重要になります。それはまとまった業務を入手できるのは勿論、単価もさほど下げられずにすむからです。逆に上がってきている事例もあるくらいニーズとしては高まっています。この場合も先に述べた品質は重要ですが、制作できる仕組みを構築出来る事が更に重要になります。そのため同業者や異業種間でのコラボレーションやネットワークの仕組み作りが必須となります。いわばバーチャルカンパニー的な発想でこれまでのライバルと手を取り合って現状の業務に対して互いを補完し合う仕組み作りです。但し互いがgive&take又はwin-win の関係を築けなければ失敗します。誰と組もうが仕事を貰うだけでなく与える事(又はそれに見合う対応)が出来ないと良好な関係を築けません。私自身この考えで業務を行っていますが、takeだけで近寄ってくる人が多い事を残念に思います。

ビジネスパートナーとして関係を築くためには短期的には身銭を切る位の覚悟がないとお付き合いできないですよね。因みに当社ではパートナーを随時募集しています。私の考えに賛同頂ける方、または私の頭に新風を注ぎ込んでくれる方がいらっしゃいましたら遠慮無くご一報下さい。


建築ビジュアライゼーションに求められる Change!

これまで現実的に目に見える問題と対処について話してきましたが、目に見えにくい話としてクライアント側での制作ニーズやフローが変わって来ている事が上げられます。BIMはその最たる事例ですが、その中にはこれまでと変わらないニーズではあるがその答えが変わってきているものの含まれます。実はこの変化がこれからの建築ビジュアライゼーション業務の行く末に大きく影響を及ぼすと私は思っています。クライアントの変化を的確に掴み、それに呼応する形で建築ビジュアライゼーション側も変わる時が来ています。 Change!どこかの大統領が言ってましたが、建築ビジュアライゼーションの世界もChangeの波が訪れようとしています。

次回はChangeについて具体的にお話ししたいと思います。皆さんも次回までに皆さんなりのChangeを考えてみて頂ければ、次回このコラムを読む際により面白くなるかもしれません。次回が凡庸な内容でつまらなく感じた方がいたら、あなたの考える(感じる)Changeにはビジネスチャンスが詰まっているのかもしれませんね。

更新日 2009.11.05
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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